福山市立大学におけるフランス語学習−フランス語を使って行動するために−

大庭 三枝(福山市立大学)

福山市立大学は広島県東部に位置する公立大学で、保育者養成の伝統を誇る福山市立女子短期大学を前身とし、2011年に開学しました。教育学部(教育コース・保育コース)と都市経営学部からなり、大学院(教育学研究科・都市経営学研究科)を合わせても学生数1,000人強の小さな大学です。

教育学部は、1年次に必修の英語(週2コマ、通年)に加え、第2外国語としてフランス語・中国語・ポルトガル語の中から一つ選択必修(週1コマ、通年)となっています。都市経営学部は1年次に英語(週2コマ、通年)と中国語(週1コマ、通年)が必修で、2年次以降に選択科目としてフランス語・ポルトガル語を勉強することができます。大学全体では毎年約40人程度の学生がフランス語を履修しています。

La carte de Noel(授業で作成し交換)本学のフランス語学習の特徴は、「フランス語を日常的に使う」ところにあります。フランス語履修者は(既修者も)、私と学内で会うと必ずフランス語で挨拶し会話をします。地方都市の福山でフランス語会話の機会は限られていますので、私をフランス人(練習相手)として最大限に「利用」する、フランス語で気軽に話せる環境がキャンパスの中にはあります。

担当教員の私はというと、日本の大学・大学院時代に第2外国語としてフランス語を学習しましたが、在外教育施設(日本人学校)教員としてフランスに赴任した時、聞き取りと会話ができなかったために悔しい思いをしました。地歴公民(当時は社会)科と保健体育科の教員免許を有し両教科を教えていましたが、社会見学に引率するにも、市の体育館・プールを使用するにも、フランス語で交渉ができなくては仕事になりませんでした。

しかし、現地バレーボールチームに所属して国内を転戦、大学院でも学ぶうち、公私ともにフランス語で議論する豊富な経験が、赴任時にほとんどしゃべれなかった私をフランス人と渡り合える日本人教員へと育ててくれたのです。フランスで一番美しいフランス語が話されるという「フランスの庭園」Touraine地方で鍛えられたことも幸いしました。そこで、当時の校長先生からFLE(Francais Langue Etrangere)教員研修とフランス語科へのコンバートを提案され、「現地で苦労しながら習得した過程を経験しているからこそ、日本人が苦手な部分を教えられる」という言葉に、教育のあり方と教員としての姿勢を教えられたような気がしました。

以来、フランスでも日本でもフランス語を教える時は、頭も目も耳も(時には舌も鼻も)口も手も体全身を使い、五感を総動員して学ぶ環境を創出しています。現在は週に1回90分どっぷりとフランス語・フランス文化に浸かります。フランス語の音とリズムに慣れ、フランス語の指示で体を動かしながら、フランスの食べ物等を実際に味わい、フランス文化を体験し、実物に触れ体感しながら学習します。わずか週1回の授業ですが、フランス語運用能力の4つの要素(聴解力、会話力、読解力、文書表現力)を偏りなく育てることを目標としています。

定期試験では筆記(仏問仏答:Comprehension Ecrite, Expression Ecrite)、聞き取り(Comprehension Orale)、口頭(Expression Orale)の3種類の試験いずれも基準を満たすまで指導します。そのために、生活の中で見聞きするフランス語に敏感でいるよう呼びかけていると、「CMの曲が聞き取れた」、「ケーキの名前が理解できた」など、学生たちはプチ成功体験を報告してくれます。あらゆる感覚を駆使して感受した小さなフランス語体験をできるだけ多く積み重ねること、そのためのアンテナを鋭敏にしておくことを推奨しています。また、時計・カレンダーや天気予報を見た時、「フランス語を頭によぎらせる(思い浮かべる)、よぎった数だけ頭に残る」、と即時的かつ日常的に想起することをすすめています。フランス語で感受する力と表現する力をいかにして伸ばすか、担当教員として常に模索しています。

UPEC学生が福山市立大学学生と共に活動:二上りおどり、ふくやま子どもフェスティバル、仏語授業

その中で、Francophoneとの直接接触は何よりも大きな動機づけとなります。フランス時代からの研究協力者が勤務するパリ・エスト・クレテイユ大学(L’UNIVERSITE PARIS EST CRETEIL以下UPEC、旧パリ第12大学)と2014年に大学間交流協定を締結、同年春には本学学生がUPEC訪問、秋には研修下見に先方教員が本学訪問、遂に2015年秋にはUPEC学生5人の福山市立大学研修が実現したのです。彼らは教育学部学生でしたから、フランス語授業だけでなく、私が担当する教育学部専門科目(表現指導法等)や学外実践に日本人学生とともに参加しました。日仏両国の学生たちは豊かな体験を共有し、教育・保育職を目指して学習意欲が一段と増したようです。

また、私がOMEP(Organisation Mondiale pour l’Education Prescolaire:世界幼児教育・保育機構)でフランス語圏諸国とともに共同研究する関係から、2016年7月 OMEPフランス・カナダ代表をお迎えして2016年にはOMEPフランス代表・カナダ(ケベック)代表ら3人が来学してくれました。このように2014年以来毎年、フランス語を母語とする人たちに授業参加してもらい、ゲストを囲む小グループで直接「フランス語を理解する、伝える」機会を設けています。学生たち曰く「生フランス人との遭遇」体験が、異文化理解と学習意欲の向上に寄与していると思います。

実用フランス語技能検定レベルと単純には比較できませんが、本学のフランス語授業(年間30コマ)を学習すると「4.5級」レベル、すなわち5級は確実、もう少し頑張れば4級合格というところまで鍛えます。身に付けたフランス語運用能力を証明するために、希望者は実用フランス語技能検定(4級、5級)に挑戦してきました。2012年に準会場として実施して以来、受験者数は毎年20人前後(のべ)で推移し、4級、5級ともに平均合格率90%を上回る好成績を収めています。本学受験者の特徴は、聞き取り試験の得点率が高く(4級78%、5級86%)、筆記試験得点率を常に上回っている点にあります。

合格証書を手にニッコリ毎年開催する仏検受験報告会は、受験者だけでなく受験を考えている下級生や仏検実施を応援してきた教職員など誰でも参加OKです。現地で調達してきたフランス各地のお菓子を囲みながら受験者の努力を労い、さらなる学習・交流や次の受験に向けての構えを形成します。仏検を媒介として異学年交流と学内における理解を促進することで、本学におけるフランス語学習とフランスとの交流がさらに進んできたと思います。

2016年度までは、「フランス語I」・「フランス語II」を終えさらに学びたい学生たちに対し、自主講座を開き対応してきましたが、継続学習の要望に応え2017年度より「フランス語III」(1単位)を開講しました。フランス語運用能力の基礎を固め、さらに発展させるこの授業には、1年・2年でUPEC学生と交流した経験を持ちながら保育実習等で受験できなかった仏検に3年・4年になってから挑戦しようとする学生が受講するなど、UPECとの交流がフランス語学習に功を奏しているといえます。

教育学部既修者の中には、青年海外協力隊で赴任中の卒業生もいます。フランス語学習がきっかけとなって、異文化への窓を開き相互理解を深めることのできる人材として成長し、日本でも世界でも活躍してもらいたいと願っています。

慶應義塾大学理工学部のフランス語教育

小林 拓也(慶應義塾大学)

基本データ

慶應義塾大学理工学部は11の学科から形成され、1学年は約1,000人、1~2年生は横浜の日吉キャンパス、3~4年生は隣接する矢上キャンパスで学んでいます。2年進級時に学科、4年進級時に研究室を選択し、卒業後は約7割が大学院へ進学します。 

1年時に英語以外の1言語(週2回)が必修となっており、入学前にドイツ語、フランス語、ロシア語、中国語、朝鮮語の中から選択、それによりクラス編成も行われます。2017年度の内訳は、順に36.2%、30.8%、3.1%、26.1%、3.8%です。「ドイツ語が最大派閥」、「スペイン語がない」、「ロシア語の専任教員がいる」などが、他学部や他校の方から驚かれる事項です。

そんな中、フランス語では15名の教員(内、語学担当専任は3名)により、1年生の10クラスや2つの既修者クラス、主に2年生を対象とした週3回のインテンシヴコースなど、各学期およそ25の授業が提供されています。特徴的なこととしては、「1年生各クラスは、1人の教員が週2回を受持つ」、「3~4年生や大学院生対象の授業も開講されている」、「フランス語のみで数学や物理を学ぶ授業がある」、「夏にはIMT-Atlantique、春にはCentrale Nantesでの短期語学研修プログラムが用意されている」などがあり、学生たちのフランス語熱は一般に想像されているよりも遥かに高く、高度で実践的な教育が行われています。その決定的要因となっているのが、理工系3大グランゼコールの1つ、Écoles Centralesとのダブルディグリープログラムです。

Écoles Centralesとのダブルディグリープログラム

本プログラムは、3年時の6月に渡仏、2年間を過ごした後、帰国して修士課程を修めると両校から学位が授与されるというものです。パリ、リヨン、マルセイユ、リール、そしてナントに校舎がありますが、学生の所属先はフランス側の判断に委ねられます。いずれにせよ、一般教養や語学も含まれる多くの必修科目は全てフランス語、企業や国際機関などでのインターンも行わなければならないという、おそらくは文系の博士課程留学と同等かそれ以上に過酷なものです。

2006年以降、平均して毎年6.4名が派遣されていますが、それ以外にも選考で落とされたり、出願を思いとどまる学生もいます。また、「交換」留学制度ですから、フランス側からも平均して毎年12.5名が2年間を矢上で過ごすためにやって来ます。こうした人々と日々触れ合うことで、「フランス」やフランス語学習はキャンパス内で身近なものとなっています。カフェテリアや喫煙所がフランス人に占拠されていることはよくありますし、彼らをTAとして雇用する制度もあります。また、OFJという日仏学生交流団体も、エシャンジュやピクニックなど、学内外で様々な活動を行っています。

プログラム参加希望者には、フランス政府給費留学生試験を受験することを強く勧めています。2015年度は2名、2016年度は5名が合格、今年度も数名がチャレンジする予定です。文系の方によく驚かれる数字ですが、派遣先がG. エッフェルやA. ミシュラン、A. プジョーなどを輩出した名門であること、プログラムの理念が、「現代社会に必要とされる国際的な視野、そして深い専門知識とを併せ持つ国際エンジニアを育成する」ことであること、そして修了者たちが、実際に日仏の懸け橋となるべく様々な分野で活躍していることなどを考えれば、決して偶然によるものではないはずです。

仏検の活用

2016年度からは、仏検受験も積極的に教室運営に取り入れています。学生たちのさらなるモチベーションアップと、修士課程までを含めた6年間の学習の指標とするためです。同時に団体コードを取得し、様々なデータの提供も受けるようになりました。既にその絶大な効果を実感しているところですが、事務局へのお礼を兼ねたささやかな情報提供として、いくつかの数字を示してみたいと思います。

まず、これまで3回(16春・秋、17春)の結果ですが、総計で2級7名、準2級30名、3級61名、4級23名、5級6名の合格者を出すことができました。受験はあくまで任意で補助金や単位認定はなし、長時間に及ぶ実験演習などの合間を縫ってのやりくりとなりますので、既修者以外の1年生や3~4年生の受験は少なく、短・長期の留学を考えている2年生が中心となっています。

また、今年度より、「学部卒業までに準1級、大学院修了までに1級」という目標を立てています。上記のダブルディグリーの修了者も考慮に入れれば、十分実現可能なものと考えています。そのためには、初修者の場合、「1年秋に4級、2年春に3級、秋に準2級、春の研修に参加し、3年春に2級、4年秋に準1級、M2春までに1級」、既修者の場合、「1年春に3級、秋に準2級、2年春に2級、夏の研修に参加し、秋に準1級、M1春までに1級」、そしてダブルディグリーに参加する場合は、「出発までに2級以上、帰国後の春に1級」という目安を設定しました。そのためのカリキュラムは軌道に乗り始めていますし、団体コードや上記ステップも浸透しつつあるので、合否一覧表にその結果が現れる日も、そう遠くはないと信じています。

おわりに:理系こそフランス語!

以上、慶應義塾大学理工学部のフランス語教育を手短に紹介させて頂きましたが、考えてみれば、実は理系こそフランス語を学ぶべきであり、教室外で活用することのできる機会は文系よりも遥かに多いのかもしれません。事実、フランスはCERN(欧州原子核研究機構)やパストゥール研究所などの研究機関、また、EVで先行するルノー、航空機のエアバス、鉄道車両のアルストムといった企業を抱え、歴史的にもフェルマーやフーリエ、ラヴォワジェなどの科学者を輩出した理系大国です。さらに、理工学とも強い繋がりのある農業や金融といった分野でも参照されることが多いのは周知の事実です。また、国連やWHO、ITUなどのフランス語が公用語である機関や、今後発展の見込まれるフランス語圏のアフリカ諸国などでは、理系の人材やその知識は一層求められることになるでしょう。

実際の研究や仕事は英語が中心とはいえ、街の中や同僚との会話はフランス語となるケースは多いはずです。事実、理系の教員や学生の方が海外出張や国際会議への参加には慣れており、「現地でフランス語を使ってきた!」という話をよくききます。

このように、理系こそ、実はフランス語を活かす機会に恵まれているのです。数年前の本欄で紹介された韓国のフランス語事情(2014年9月号、p. 1-3)のように、悲観的な文系とは裏腹に、理系や職業的な領域では、実はフランス語、そしてフランス語教育の未来は明るいのかもしれません。 

日本とフランス語圏の架け橋に

2015年度春季1級合格
渡邊 暁洋
会社員(三菱商事株式会社)・東京都


父親の仕事の関係で2度フランスへ引越し、合計約9年間パリに住んでいました。
フランス語は、フランス滞在中現地校に通っていたお蔭で身に付きました。

現地校での日々は、今振り返ると非常に貴重な体験ばかりでした。

ビュッフェ形式の給食、ルーヴル美術館での模写授業、表現力と感性を養う目的で行われるthéâtre 試験(有名な演劇等の一部を家で暗記し、後日クラスの前でジェスチャー等を織り交ぜつつ暗唱するもの)、異性の友達と交わす bise(右・左と2~4回互いの頬を合わせる挨拶)etc… 他にも沢山ありますが、現地校に通って一番良かったのは、「自分が日本人である」ということに誇りを持つようになったことだと思います。

いくら “人種の坩堝” と呼ばれるパリでも、外国人は異なる扱いを受けることがあります。しかし、最先端テクノロジーやMANGA等といった切り口で日本に興味を持ってくれる人も多く、そのお蔭で私はそういった扱いを受けても、日本という国や自分が日本人であることに対して嫌悪感を抱かずにいられました。

また、遠足の際に敢えておにぎりを持参したり、学校のプリントで折り紙を作って友人にプレゼントしたりといった自分の行動をきっかけに、日本文化に興味を持ち始めてくれた友人が沢山いたことも強く印象に残っています。

このような経験があって、私は自分のルーツに誇りを持つことができ、将来は日本人として世界を相手にできるような仕事がしたいと思うようになりました。

  *

私が仏検を意識し始めたのは大学2年生頃。就職活動を意識し始めたことがきっかけです。

語学はあくまでツールでしかないということは承知の上で、それでもフランス語を自分の一つのアピールポイントにしたいという気持ちがあり、それを企業に客観的に伝える最も確実な指標は仏検1級であると考えました。

正直、最初は自信に満ち溢れていましたが、試しに購入した参考書を開いた途端、強い焦燥感に駆られたのを覚えています。仏検1級は、名詞化の設問や多義語の設問をはじめとして、非常に高度な語彙力が求められますが、まさに当時の私にはこの語彙力が決定的に欠けていました。

そこで、私が合格に向けて実践した勉強法は主に以下の3つです。

・入手可能な参考書や過去問を全て解く。
・フランス語の類語辞典(dictionnaire des synonymes)を一通り読み、知らない単語があればその都度ネット上で例文を探す。
・大学が購読していたLe Monde紙を読み、気になった記事をノートに書き写す(同じ内容が日本の新聞にも載っている場合は、内容を見比べて両者の着眼点の違いを考察することも興味深かったです)。

とはいえ、正直、”仏検1級” を持っているだけでは就職活動は上手く行かないと感じました。これは他の語学でも言えることだと思いますが、前述の通り、語学はあくまでツールでしかなく、肝心なのは「そのツールを使って今後自分は何がしたいのか」ということだと思います。

しかしながら、仏検1級という目標に向かって自分なりに試行錯誤した経験は、就職活動に於いて大きな糧となり、選考に挑む際の“自信”に繋がったと思います。そういった意味で、就職活動に備えて仏検を目指すことは、個人的に非常にオススメです。なにより、仏検1級に向って勉強する中で出会った単語や言い回しが沢山あり、以前よりもフランス語を好きになりました。

今後の展望としては、仕事でフランス語圏へ行き、日本とその国の架け橋になること。

正直フランスに戻りたい気持ちはありますが、それよりも今は、西アフリカ諸国に魅力を感じます。未だ日本という国があまり浸透していないような場所で、日本のプレゼンスを高められるような存在になりたいと思っています。それが、かつて私が現地校で感じた“日本ブランド”を確立してこられた先人達や、私にフランス語を教えて下さった先生方や友人への恩返しに繋がると考えているからです。


再びアフリカへ

2016年度春季1級合格
井上 龍
国連難民高等弁務官事務所・ ケニア

青年海外協力隊として、当時まだ準仏語圏であったルワンダ共和国へ派遣されたのをきっかけに、フランス語を勉強するようになりました。当初、フランス語のリエゾンや数の数え方(80のことを4×20と表す等)に触れた頃は、「不思議なコトバだなぁ」と感じたことを、今でもよく覚えています。

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ルワンダから帰国した後も、会社員として勤めるかたわら、国際機関に入り込むことを念頭にフランス語の学習はコツコツ続けていました。そんな中、学習のペースメーカーとして、仏検は恰好の試験制度でした。そしてこの度、仏検1級合格とほぼ同時期に国際機関への転職も叶い、現在はケニアでIT技術者として勤務しています。

私が地道に続けた勉強法は、インターネットでニュースを視聴、要点を5W1Hでメモし、関連記事を読んで答え合わせをするというものです。最初はスピードが速すぎて着いていけなかったニュースも、1年、2年と経つにつれ、聞き取れるようになっていっただけでなく、時事用語にも慣れることができました。

またとにかく語彙数を増やすため、フランス語の問題集をゲーム感覚で解けるスマホのアプリを自作し、通勤電車の中や、ちょっとした待ち時間にひたすら解くといったことも続けていました。

ただ、私は仕事の関係上、教室に通う時間的余裕がなかったため、フランス語を喋る機会がほとんどないのが大きな課題でした。もちろん、普段の仕事でフランス語を使用する機会は皆無。そこで喋る練習として、視聴したニュースの要点メモを基に、ニュースの内容を口頭で説明する訓練を繰り返しました(自宅の一室で1人フランス語を話している姿は、傍から見るとかなり滑稽でしたが)。

語学の学習は、楽器の練習と非常に似ていると感じます。ある日を境に飛躍的に力が伸びることはなく、毎日ちょっとずつしか上達しません。成果がなかなか見えない中、フランス語学習のモチベーションを保つのは本当に大変です。特に私のように、普段の仕事や生活において、フランス語がまったく不要な環境にいる場合は尚更です。

それでも私が地道に学習を続けることができたのは、仏検が目標達成に向けたマイルストーンの役割を果たしてくれたからです。着実に前進していることを、少しでも実感できた仏検の存在には、とても感謝しています。

2016年度 文部科学大臣賞団体賞 受賞のことば

文部科学大臣賞団体賞は2013年度に創設され、その年度における出願者数とその増加率および試験結果等を勘案し、年度を通じたフランス語教育への取り組みを総合的に判断した上で、特に優秀と認められた3団体に授与されます。2016年度は、武庫川女子大学、慶應義塾大学商学部、カリタス女子中学高等学校が選出され、今年3月に実施された成績優秀者表彰式において、賞状と記念の楯が授与されました。表彰団体の先生方からお寄せいただいた受賞のことばをご紹介します。


武庫川女子大学 近藤 由佳 先生

(写真左より)西澤文昭APEF理事長・近藤由佳先生(武庫川女子大学)

この度は文部科学大臣賞団体賞に選出いただきましたことを大変嬉しく、光栄に思っております。
武庫川女子大学にはフランス語専攻科はありませんが、英語文化学科の第2外国語と共通教育科目として学習する環境が整っています。学生たちは新しい言語を学ぶことの難しさと楽しさを同時に感じながら、仏検にもとても前向きに、熱意を持って取り組んでいます。 この栄誉ある団体賞受賞を励みに、今後も学生たちと力を合わせ、フランス語教育と仏検の発展に尽力できますよう、より一層努力していく所存です。
最後になりましたが、フランス語教育振興協会および仏検関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。
(写真左より)西澤文昭APEF理事長・近藤由佳先生(武庫川女子大学)

慶應義塾大学 商学部 御園 敬介 先生

(写真より)西澤理事長・御園敬介先生(慶應義塾大学)

2016年度文部科学大臣賞団体賞を賜りました。ご選出いただきましたフランス語教育振興協会の皆様に心より御礼申し上げます。この度の受賞は、日頃より慶應義塾大学商学部のフランス語教育にご尽力いただいております皆様のお陰と存じております。入念な準備のもと質の高い授業を展開されている先生方、およびそれを多方面から細やかに支援してくださる教職員の皆様に、この場をお借りしまして、改めて感謝申し上げます。この栄誉を励みに、一人でも多くの学生にフランス語やフランス文化に関心を持ってもらえるよう努力を続ける所存です。今後とも皆様のご指導をいただければ幸いに存じます。
(写真左より)西澤理事長・御園敬介先生(慶應義塾大学)

カリタス女子中学高等学校 鷲頭 弘子先生

((写真左より)西澤理事長・鷲頭弘子先生(カリタス女子中学高等学校)

この度は文部科学大臣賞団体賞という名誉な賞を頂戴し、大変光栄に思っております。校長はじめ生徒たちも喜んでおります。カナダのケベック州にある修道女会を母体とするカリタスでは創立当初より、生徒全員が英語とフランス語を学び、併設の小学校からフランス語で大学受験をする高校生まで5級から準1級と幅広い級を受検させていただいております。小中高生がフランス語の学習を続けていく中で、仏検は生徒達の目標となり、普段の学習やカナダ研修、フランス留学の成果を確かめ、さらに学習意欲を高めるきっかけとなっています。今後、大学入試における外部検定試験に認められることを願っております。これからも大いに仏検を活用させていただきながら、フランス語学習者のサポートに努めてまいりたいと思います。末筆ながら、仏検のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。
(写真左より)西澤理事長・鷲頭弘子先生(カリタス女子中学高等学校)


 

福島県立福島南高等学校でのフランス語指導

南條 かおる(福島県立福島南高等学校)

福島県立福島南高等学校は、文理科(大学進学を目指す普通科)・国際文化科(語学に重点を置いた主に私大文系への進学を目指す科)・情報会計科(商業系・情報系の資格取得と進学・公務員を目指す科)の3学科から成り立っている高校です。1学年5クラス(文理2+国文1+情会2)で、フランス語はこのうち国際文化科の選択教科として、2学年と3学年で開講されています。2学年国際文化科40名のうち、フランス語を選択する生徒は、例年35〜38名、つまり殆どの生徒が履修します。3学年では、さらにその生徒の中でのフランス語選択者となり、10〜30名と少ない人数での授業となります。

授業は週2回、ALT(外国語指導助手、母国語は英語)とのTT(複数の教師が協力して教育指導にあたる方式)で行います。授業中の使用言語はフランス語、英語、日本語です。授業で心掛けていることは、生徒がフランス語を使う活動をできるだけ多くすることで、会話を中心にペアワーク、グループワークを取り入れながら、まずはフランス語に親しませることを目標としています。例えば、「買い物・注文をする」ことを学習する課では、手作りのメニューやユーロ紙幣やコインを使って、店員役と客役をロールプレイしました。また年に何度かは、フランス映画を観たり、フランスの歌を学習したり、テーマを決めてフランス文化について紹介したりする機会を作り、フランスに対する興味を引き出すことを心掛けています。今年度は、3年生の最後のテーマとして「フランコフォン」を取り上げました。生徒たちはインターネット等を使って情報を集め、それぞれグループ毎にケベック、仏領ギニア、マルティニーク、ベルギーについてフランス語でプレゼンテーションを行いました。

44-2_recadree仏検の指導は、主に放課後、自主的に集まってくる生徒に対して行っています。今年度は春季で5級に10名が合格し、そのうちの3名が秋季で4級に合格しました。これは全員3年生で、またなんと合格率は100パーセントでした。仏検への準備を行いながら、生徒は授業で使ってきた表現が、きちんと文法的に整理され、良く理解できるようになったと感想を述べます。

授業そのものとは分けて仏検指導をすることは、放課後の時間をかなり割かれ、指導する側としては少々大変なこともありますが、成績とは直接関係のない課外活動とすることで、生徒のモチベーションもあげることができていると思います。実際こうした生徒の中から、毎年フランス語学科に進学する生徒が出ていることも指導者としては嬉しいことです。

高校でのフランス語指導は、(少なくとも本校では)直接大学受験には関係のないものですが、英語偏重になりがちな外国語教育の中で、文化の多様性に気付く機会を提供し、生徒の視野を広げ、幅広い教養を培っていくきっかけのひとつになることを期待しながら、これからも指導を続けていきたいと思っています。

富山大学の仏検一般会場化への軌跡

中島 淑恵(富山大学)

2015年3月北陸新幹線が開通し、東京・富山間は2時間余りで移動可能となった。富山人にとって東京とこのように短時間で結ばれることは戦前からの悲願であり、東京出張は日帰りがデフォルトになってしまったというあまり嬉しくない副産物はあるものの、その便利さは否定するべくもない。いきおい外国人観光客が増え(その最終目的地は多くの場合金沢で、富山は単なる通過点に過ぎない場合も多いが)、かつてのような、「街角で西洋人を見たらロシア人」という状況は一変したように思われる。

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私が富山大学に赴任したのはもう20年以上前、ふた昔も前のことになる。当時はちょうど第3セクターのほくほく線が開通したばかりで、東京に出るのに米原周りで東海道新幹線という迂回経路を取らずとも(この場合ゆうに5時間以上かかっていたらしい)、越後湯沢乗り換えで上越新幹線、それでも4時間以上はかかるという時代であった。また、東京出張の行き帰りの途上、ほくほく線の車中で雪や突風のために何度も缶詰めになり、雪や風に強い新幹線の開通を一日千秋の思いで待ったものである。

 富山大学の前身は旧制高等学校で、もともと理科系が強いこともあり、第2外国語としてはドイツ語の勢力が強く、次いで近隣諸国の言語である中国語・ロシア語・朝鮮語の学習者も相当数いたため、他の地域と比べフランス語の履修者が相対的に少なく、また質実剛健な土地柄から、「ちゃらちゃらしたおフランス」への反発のようなものも少なからずあったようにも思う。というわけで私の赴任当時富山大学における仏検受験者はたぶんゼロであった。無理もない。受験しようと思えば検定料以上の交通費を払い、ほぼ一日仕事になる時間をかけて直近の一般会場である金沢まで行かなければならないのである。これでは受験者がいないはずで、何とかして準会場受験に漕ぎつけたのが赴任後1年目であった。以来自分自身も会場責任者と監督者を兼ねながら、非常勤講師の方や町中でフランス語教室を主宰している方にお手伝い願って、準会場受験を18年間実施してきた。そうこうするうちに、初めはこわごわ5級や4級を受験していた学生たちが、やがて3級に合格、2級の1次試験に受かる者も出てきた。また、長く富山に暮らしているうちに、一般市民の方の中にも意外にフランス語学習者の方がいらして、上位級にトライする方もいらっしゃるという事情が、だんだんと分かるようになってきた。

実は当時、金沢で2次試験は実施されておらず、2次となると東京か京都、あるいは名古屋まで出なければならないのが常であった。当然新幹線のない時代である。2次を受けるのに泊りがけ、お金のない学生たちは夜行で移動するのが常だったが、ここに季節の壁が立ちはだかる。秋季試験の2次は1月末。都会の方には想像もできないことかも知れないが、雪で交通機関が止まってしまい、泣く泣く受験をあきらめたというケースもあった。春季ならば大丈夫かというと、実はこれがまた大風や台風の時期にあたり、交通機関の混乱で、出発したものの指定時刻に会場にたどり着けなかった、という事態も発生したのである。10年ほど前から金沢で2次受験が可能になり、今では多くの富山大生が金沢会場での2次受験に臨んでいる。

準会場受験は、初めは富山大生限定で大掛かりな宣伝はせず、自分の声の届く範囲で専攻の学生を中心に受験させていたが、受験者数が少ないときに、フランス語教室に通う一般の方にもお声掛けすることになった。その頃にさる富山の名家の大奥様に言われたことが今でも忘れられない。その方は現在80代、東京の女子大の英文科を卒業されている(富山の名門のお嬢様は今でも大体このような経歴を辿るのが常である)。大奥様曰く、「もう大昔のこと、私がまだ若いお嫁さんだったころに、大学の第2外国語で勉強したフランス語をものにしたくて、一人で勉強を続けていたの。そして金沢に仏検を受けに行ったのだけれど、もちろん婚家には内緒で出かけなければならなかったので、実家のおつかいとかなんとか取り繕って一日がかりで出かけたものよ」。当時は大卒というだけで婚期を逃すと言われた時代である。お嫁に行った先で仏検を受けに行くなどと言ったら、「なんと生意気な嫁、だから大学出は…と言われかねなかったことだろう。この大奥様の一言が富山会場を一般会場化する原動力になった。

いろいろあって少し時間がかかってしまったけれど、2016年度秋季仏検から富山会場を一般会場化させていただいた。始めは受験者がそれなりに集まるか心配で、学内だけでなく地元の外国語専門学校や取次の書店に私自ら営業活動に行ったが、ふたを開けてみるとまずまずの受験者数、しかも準2級以上の受験者が私の学生だけでなくかなり大きな割合を占めていることが分かった。当日は会場責任者を務めながらこっそり目頭が熱くなることが何度もあった。スタッフが集合して準備を始めたばかりの時間に会場にいらした年配の男性、卒中の後遺症かお体が不自由そうである。「富山会場なら障がい者用のタクシー券を使って来られるので…」と遠慮がちに言われたときは、本当に富山会場を一般にオープンしてよかったと思った。それから、見るからに上品そうなお母さまが車で連れて来られた小学生の姉妹、雰囲気からしてバレエか何かをやっている感じである。その日はとても寒く、受験者用に控えの教室を用意しているのでそちらでお待ちいただくようお母さまにお勧めしても、「私は受験者ではないので結構です」と譲らず、姉妹の受験が終わるまでロビーでひざ掛けをしてお待ちになっていた姿にも頭が下がった。

201609-1

私は富山出身ではないけれど、こんな風に遠慮がちで真面目、着実に努力する富山の方々が大好きである。そして、富山大学を一般会場化することで、「旅の人」である私を不器用に、けれど暖かく迎え入れてくださった富山の皆様に何がしかの恩返しができたとしたら、それは望外の喜びに他ならないのである。

(写真2点は雪の日の五福キャンパス)



65歳の手習い

2015年秋季準2級合格
和地 一則
無職・兵庫県

今年2016年3月末に会社を定年退職、現在2級試験受験準備中の66歳。

フランス語歴は1977-78年度のフランス政府給費留学生だが、その後フランス語は錆びついた。2012年久しぶりのパリ旅行でそのことを実感し(あるレストランで注文したのとは違うデザートが出てきた)、ショックを受けてフランス語の学習を再スタートすることにした。

仏検受験を決めたのは昨年1月。それまでの思いつきフランス語勉強ではらちが明かん、と一念発起した。仏検については何も知らず、仏検を目指す仲間も周りにいなかった。使える時間は、平日の通勤時間と帰宅夕食後のせいぜい2~3時間、それに休日。

受験する級は2級にするか3級にするかで迷ったが、過去の問題集などを見て、準2級が当時の実力相応と自覚し、10月1日に申し込んだ。筆記試験11月15日、面接試験1月24日を経て2月18日に合格メールが届いた。

文法の基礎事項の復習には『シェーマ式フランス語文法』を繰り返し読んだ。

問題集は過去問題集のほかに、世評名高い『完全予想仏検2級筆記問題編』を3回繰り返した。これは問題数が多く、一回解き終わるまで一か月もかかった。繰り返しの効果をみるために、各エクササイズの正答数を問題種ごとにまとめ、繰り返しの効果が上がらない問題種や同じ問題種の中でも正答率が低いエクササイズを見つけやすいようにした。

NHKラジオ『まいにちフランス語』は録音して今も聴く。

初級編は『百合のFranceウォッチング』再放送。たった15分間の番組だったが、最後の1~2分間のPause-caféで講師のシルヴィさんが語るフランス情報は興味深く、ディクテの教材にした。  « papillonner »(ネットサーフィンすること、« pianoter »(携帯のキーをたたくこと)、などの表現はこの時に覚えた。

応用編は『ニュースで学ぶフランス語』と『ニュースで知りたいフランス文化』が、まさにこんな番組を聴きたいと思ったときに放送され、講師が区切って読んでくれるフランス語ニュースでディクテの練習をした。人種差別の文脈で現れる « xénophobie »(外国人嫌い)という語はこの時に覚えた。

独習に潜む危険は間違いに気付かないことだ。あるとき出合った一行 : « Je suis un régime. »「私はun régimeである」とは何のことだろうと思い辞書を繰り頭をひねった。suisが動詞êtreではなくsuivreであることに気付いたのはしばらく経ってからのことだ。

面接試験が終わった1月24日の日記に「仏検準2級試験終了。明日2級に向けて再出発」と書いた。

 (2016年9月15日投稿)

【仏検事務局より】 このエッセイは2016年9月にお寄せいただいたものです。掲載が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。和地様はその後2016年度秋季試験で2級に見事合格されました。おめでとうございました!


 

フランス語の旅への第一歩

2015年秋季5級
橋井 美和子
会社員・愛知県

「じゃ、フランス語を習えばいいじゃない!」

私がフランス語を学ぶきっかけになったのは、友人のこの一言からでした。

実は私には3人の親友がおり、偶然にも全員が外国語(イギリス英語・イタリア語・スペイン語)を学んでいます。この4人のメンバーで欧州旅行をしたら楽しいだろうな~。でもフランス語が足りないか…なんて言ってしまったばかりに、友人が上記の言葉を発したのです。

恥ずかしながら語学は苦手でした。心の中でとんでもない失言をしてしまったと後悔しましたが、まずはフランスへ足を踏み入れてからと、早速パリ行きのチケットを手配しました。mh01これが丁度2年前のことです。初めての欧州そしてパリ、それは想像を超えた素晴らしさでした。子供の頃、社会の教科書で見たあの建造物や絵画を目の前にした時、自分が歴史の1ページに参加したような感動を覚え、その場に座り込んでしまったほどです。

「フランス人は冷たい」なんて言葉を何度か耳にしたことがありますが、あれは真っ赤な嘘です。手動扉のメトロを知らなかった私に、笑顔で扉を開けてくれた男性、迷子になった時に親切に声を掛けてくれた女性。そして何より私にフランス語習得の決断をさせてくれたのは、偶然入ったワインショップの店員さんでした。付け焼刃で覚えたフランス語にも丁寧に耳を傾けてくれ、そんな私の必死さに売り物のワインの栓を抜きご馳走してくださったのです。私がもっとフランス語を理解出来ていればきちんとお礼が言えたのですが、しどろもどろで上手い対応が出来ずじまいでした。mh02

帰国後すぐ名古屋市にあるアリアンス・フランセーズ愛知フランス協会という語学学校の門を叩きました。スケジュールが合わず継続して通うことが出来ない中、毎日テキストの付属CDを聞いて暗唱し、覚えた動詞の活用を一覧表にして部屋中に貼りました。また、数行でも日記を書き、先生に見て頂くようにもしました。

出来るだけ自然な形で日常生活にフランス語を取り入れたくて、自宅で聴くCDはフランス音楽にしています。最近までご縁がなかったフランス映画も今ではすっかり趣味の1つになっています。

フランス語を学び概算で1年経った時、ふと仏検のホームページを拝見しました。するとその日が2015年秋季の仏検申し込み締め切り日だったのです。これも何かのご縁と信じ、その場で申し込みをしました。試験日までは過去問題集と付属のCDを何度も確認しました。合格の通知を頂いた時は本当に嬉しかったです。

その後、自分へのご褒美として今年1月、2度目のパリ旅行をしました。mh03あの時全く聞き取れなかったフランス語もほんの少し聞き取れるようになり、暗記するほど聞き込んだフランス語CDのフレーズが口から自然に出て伝わった時は思わずガッツポーズが出ました。

次回は勿論4級を受けるつもりです。合格したら自分へのご褒美第2弾として、フランス語を学ぶ決定打になったあのワインショップへ行くつもりです。その日を楽しみに、フランス語の学習に励んでいます。

余談ですが、冒頭の親友たちが集まると話題は専ら自身が学ぶ言語の紹介大会となっています。勿論私はフランス語。親友4人で開催する小さな小さなEU会議は回を重ねるごとに白熱しています。

そう、私のフランス語の旅は始まったばかりです!

 

【仏検事務局より】 このエッセイは2016年9月にお寄せいただいたものです。掲載が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。橋井様はその後2016年度秋季試験で4級に見事合格されました。おめでとうございました!そして、Bon voyage !


 

ついにお話ができた心の恋人

2016年春季2級・準2級合格
山口 淳
会社役員・東京都

70年代後半の大学時代に法学を専攻し、それに役立つドイツ語を第2外国語として選択した。卒業後は国際的な仕事に従事したいと総合商社に就職した。欧州で英語・ドイツ語と並ぶ有力言語たるフランス語の素養がないことが当時の私の心の片隅でたいへん気がかりだった。

入社当初は鉄鋼製品の輸出を担当し貿易言語の英語の勉強を続ける傍ら、中南米への輸出案件でスペイン語の必要性が出てきたことより、その勉強を独学(基本書+NHKラジオ講座)で始めた。入社6年目に米国留学の機会を得、その後90年代と2000年代の2回のニューヨーク駐在を経験し計12年間の米国生活を送った。この間、北米のみならず中南米諸国の仕事もあった関係よりニューヨークで夜間にメキシコ人の先生にスペイン語会話を鍛えてもらった。

2010年、商社マン人生の終盤にさしかかり、今まで仕事で使った外国語を資格の形で残したいと思い、将来利用できる国家資格の通訳案内士試験の受験を決意。11年に英語、13年にスペイン語の資格を無事取得した。その翌年春に京都・奈良で開催された通訳案内士の新人研修を受講した際に仏語で合格された方が数名おられ、その方々の話をお伺いして心の片隅でずっと気がかりだった仏語への思いに火がついてしまった。気になり始めてから既に30数年の年月が経過していた。

ネット上で良い評価を得ている入門書、文法書と仏検対策本を直ぐに買い込み、仏検受験とNHKラジオ講座を進捗管理手段とすることを決意して独学で勉強を始めた。私は既に56歳となっていた。

英語・ドイツ語・スペイン語の基礎があった関係で、フランス語の文構造は非常に理解しやすかったが、それら文法や語彙使用に微妙な違いもあり、勘だけに頼らず必ず文法書と辞書を参照して確認した。辞書は紙の辞書を使い前後に記載されている語彙も例文を含め極力読むようにした。jy01フランス語の発音は他の言語とは全く異なり一番苦労した。NHKラジオ講座のネイティブの発音を注意して聞くことや仏検対策本附属のCDの聞き取りに専念した。

その甲斐あって仏検は15年春季に3級(成績優秀者として表彰頂いた)、16年春季に2級・準2級のダブル合格もできた。この合格通知が届いた時には私は既に59歳になっていた。35年以上の間、心の片隅で思い続けたフランス語という片思いの恋人についにお話しできたような嬉しさだった。今後も研鑽を続け、現在の仕事を離れた後には外国人に複数の言語で日本の歴史・文化・生活などを伝えられる民間外交官的な仕事をしたく思っている。




フランス語に救われた旅

2015年度秋季4級合格
E.I.
(会社員・東京都)

30年の長きに渡り、下手の横好きながらもドイツ語とは相性良く付き合って来ました。合唱音楽好きが高じ、現地で活躍する演奏家たちと交流する手段として独学で勉強し始めたドイツ語は、今では我流ではあれど、日常会話ではさほど苦にならないレベルとなりました。

photosdevoyages2そんなドイツ語一辺倒のわたしですが、過去にたった一度、フランス語を勉強してみようと思ったことがあります。20年前にフランスの合唱団が来日した時です。テキストや辞書を買い込んで、よしやるぞ、とページを繰った瞬間、早くもわたしの決心はあえなく崩れ去りました。書かれた文字を全て音にするドイツ語と違いすぎる。何があろうと定動詞は文の2番目に置かなくてはならないドイツ語と違いすぎる…等々。すべてがすべて、ドイツ語とは対極に位置する言語、それがフランス語だったのです。

それから19年、わたしの歴史とフランス語とが交差することはなく、これからもフランス語とは無縁だろうなと思っていた矢先のことでした。昨年(2015年)5月、公私ともに橋梁設計に高いウェイトを置く主人が言い出したのです。「長年憧れていたフランスのミヨー高架橋を生で見たい。来年(2016年)のGWに行こう!」と。

物理や数学においては優れた思考成果を発揮する彼の脳は、残念ながら言語分野においては記憶蓄積回路を持たず、ゆえに海外では常にわたしが現地の言語を担当してきました。しかし今回はフランス。過去に数回訪れた首都パリですら英語でのコミュニケーションが難しい かの国において、南仏ラングドック=ルシヨン地方の田舎(失礼!)で英語が通用しないことは容易に推測されます。実際に現地に行かれた方々のブログ等を拝読すると、やはりホテルですら英語が通じず、ジェスチャーで意思疎通を図った、という内容が多く見られました。

ついに重たい腰を上げる時が来ました。フランス語と向き合うことを決心したのです。20年前のようなゆるい気持ちではなく、本気で。上手くフランス語を吸収し、自分のものにするにはどうしたらよいか?そう考えた時に浮かんだのが「仏検受験」でした。

旅行用フランス語会話集を買ってみても、文法が理解できていない限り、それを応用することもできなければスムーズな暗記もできません。というわけで、11月の仏検で5級にトライすることを決意したわたしでした。

参考書と仏検公式ガイドブックを並行して進めていくうちに、自分の中の「フランス語アレルギー反応」が徐々に緩和されてゆく心地よさを覚えるようになりました。これは自分でも意外でした。ドイツ語との違いが出てくる都度「面白い!フランス語ではこうなのか!」という新鮮な感動が湧き出てきたのも驚きです。かくして、欲張りなわたしは出願の際には4級にも手を出し、11月の試験を迎えました。

ダブル受験の結果は周囲も沸かせた「両方とも満点」。これで完全に自信が付いたわたしは、5月までは旅行会話集丸暗記に没頭しました。暗記とはいっても表面的にそのまま文字列を覚えるのではなく、文法を理解しながら「どうしてこのシーンではこの単語が使われて、この助動詞がこのように変化するのか」等々、都度納得しながらの暗記です。

そして今年のGW到来。南仏モンペリエ、その名も「Méditerranée空港」に降り立ち、そこからはレンタカーです。早速空港のレンタカー事務所でフランス語を使う場面が。aeroport

「既に車を予約して、支払いも済ませている○○です」
「免許証を見せて下さい」

言えた!聞き取れた!この「通じた」感動は何年ぶりでしょうか。続くミヨーでも、宿泊地として選んだニームでも、どんどん自分の口をついて出てくるフランス語が自分たちの旅を導いてくれます。

スリリングなアクシデントは旅に付き物ですが、今回一番心臓が凍った出来事をひとつ。

5月5日(木)が今年はフランスでも祝日に当たることを知らなかった我々が予約していたのは、祝日はフロントクローズが18:00という格安アパートホテルでした。しかし到着したのが19:00。平日なら21:00までフロントが開いているので余裕でホテルに入ろうとしたら、まずドアが施錠されていて開かない。中に居たフランス人宿泊客が気づいてドアを開けてくれるも「…today… closed… tomorrow… again !… today… is… 」とたどたどしい英語で言われ、完全に意気消沈モードです。でもその宿泊客が「today… is… 」の後につなげたい言葉が気になります。そこで、もしかして…と思いながら「Fête ?」と発すると、彼女の表情が変わり、「Oui, oui !」とフランス語で何故今日はもうフロントが閉まっているのかを説明してくれます。arene_nimes「明日またいらっしゃい」と気の毒そうな顔で言われたその時、わたしが諦念も込めて「予約していて支払いも終えているんです…。」とため息をつくと、彼女の顔がぱっと輝き、「予約している?それなら、鍵の入った封筒がポストに入っているはず」とロビーに設置されているポストを教えてくれました。中を覗くと、自分たちの名字と部屋番号が書かれ、鍵の入った封筒がありました…。先ほどとは違う大きなため息が体を脱力させます。

もしもこのときフランス語がまったくできなかったら、1泊分の宿代を捨て、近くのホテルに空き部屋がないか、半泣き状態で尋ねに行っていたことでしょう。語学は身を助く。このときほどこれを実感したことはありません。目は口ほどにものを言う、ですとか、以心伝心ですとか、そういった格言は多々あれど、やはり実際生きていく上で必要になるのは「言葉」です。

主人は「眼前に屹立するミヨー高架橋」にいたく感激しておりましたが、わたしは「言語のなせる業の大きさと重さ」にあらためて感じ入った次第です。もちろん実際のミヨー高架橋は、極めて人工的であるはずなのに、周りの自然と見事な調和を成し遂げていて、その美しさと壮大さは生で見てこそ、の価値がありました。
viaducdemillau

ここまでお世話になったフランス語ですから、今後もお付き合いを続けていきたいと願っている今の自分は、1年前「GWの旅行が終わったら、フランス語とはまた無縁の生活に戻ろう」と、いやいや参考書を手に取った自分には想像できなかった姿です。

ドイツ語もそうですが、言語に触れてゆくと世界がどんどん広がります。横(相手との会話)にも縦(自分を内観)にも広がります。フランス語と出会えて、その広がりを更に増やすことができ、本当に良かったです。次回フランスを訪れた際には今回よりも多くの語彙や言い回しを使えるよう、日々楽しみながら亀の歩みを続けていきたいと思います。



第22回 冠詞に慣れよう(初級)

 専門:言語・文化教育学 中村 敦子  


語頭のアスタリスク(*)は、その語が誤りを含むことを表します。

22フランス語を始めたけれど、冠詞でつまづいてしまった、あるいはもやもやしたまま学習を進めている方、その悩みを解決します。

フランス語を始めたばかりの学習者が最初にぶつかる壁は、女性名詞と男性名詞の区別でしょう。名詞の性は意味のイメージで判別できませんし、語尾で判断するのも危険です。少し学習してくると e で終わる名詞は女性名詞のように思われますが、musée「美術館」は男性名詞 un musée です。

                


ツボその1:名詞の性は不定冠詞をつけて覚える

名詞の性を覚えるとき、「この名詞は女性名詞、これは男性名詞」のように覚えても、あるとき曖昧になってしまうものです。それだけでなく、実際にフランス語で表現するとき、たとえば une maison と言いたいときに「この名詞は女性名詞だから不定冠詞は une、 だから une maison だ」と考えてしまい、伝えるのに時間がかかります。そこで、名詞は不定冠詞をつけて、un musée [ アンミュゼ ]「美術館、博物館」、une maison [ ユヌメゾン ]「家」のように、不定冠詞をつけた音で覚えていきます。こうすれば、名詞の性が記憶されるだけでなく、すぐに une maison と表現できます。

ツボその2:母音、無音の h で始まる名詞に注意

定冠詞は名詞の性を覚えるのに役立ちません。le と la はエリジヨンするからです。エリジヨンとは、母音、無音の h で始まる語の前で e、a をとってアポストロフで示し l’ にして次の母音とひとつづきの音で発音することです。un hôtel [ アンノテル ]「ホテル」、une école [ ユネコル ]「学校」に定冠詞をつけると、l’hôtel [ ロテル ]、l’école [ レコル ] となります。習い始めのころは、とくに母音あるいは h で始まる語に注意しましょう。

ツボその3:複数名詞につける冠詞 desles に慣れる

英語を勉強してきた学習者にとって複数名詞につけるフランス語の冠詞もやっかいです。フランス語でも名詞を複数にするときは s をつけるのが原則です。ただし、この s は発音しません。フランス語のつづりの読み方では語末の子音字はふつう読みません。Paris は [ パり ] と発音することからもおわかりでしょう。単数の maison も 複数の maisons も名詞の音は同じです。そこで重要になるのが冠詞です。une [ ユヌ ] maison または la [ ラ ] maison と聞こえれば単数ですが、des [ デ ] maisons、les [ レ ] maisons と聞こえたら複数だと判断できるのです。複数名詞に用いる冠詞の存在はとても重要なのです。

  

5級聞き取り試験4にチャレンジしてみましょう。
フランス語の文を聞き取り、対応するイラストを選ぶ問題です。

5q16p4-4


聞こえる文は”Il y a des tomates.” (「トマトがあります」)。des [ デ ] の音を聞き取り、トマトが複数であると判断します。解答は②。

 


聞こえる文は”C’est une amie.”(「(女性の)友だちです」)。C’est [ セ ] の t を発音して次の une [ ユヌ ]とつづけて [ セテュヌ ]、une [ ユヌ ] は次の母音 ami [ アミ ] とつづけて [ ユナミ ]、文全体で C’est une amie. [ セテュナミ ] と聞こえます。男性の友だちであれば C’est un ami. [ セミ ] ですから、文中の不定冠詞の音の違いを聞き取り、解答は①の女性。

  

ツボその4:数ではなく、量でとらえる部分冠詞

フランス語には英語にはない部分冠詞と呼ばれる冠詞があります。不定冠詞、定冠詞は名詞が表わすものを数でとらえますが、部分冠詞はそれを量でとらえます。数えられない、とくに数えない名詞に用いるのはそのためです。De l’eau, s’il te plaît. 「水、お願い」のように、この部分冠詞はある量の水を表わしています。ここで注意するのは、カフェに入って「コーヒーを1つください」と言うときは Un café, s’il vous plaît. です。ここではコーヒーを量ではなく数の「ひとつ、1杯」としてとらえているからです。

ツボその5:数えられる名詞にも部分冠詞は使う

「数えられない名詞に用いるのが部分冠詞」と覚えがちですが、部分冠詞は数えられる名詞にも使います。その場合、数ではなく量を表わすので、1つのもののある1部分の量を表わします。パンをまるごと1つ表わすのが un pain で、その1つを切り分けた数切れを表わすのが du pain になります。

  

4級筆記試験1にチャレンジしましょう。4つの文のカッコに適切な冠詞または前置詞と定冠詞の縮約形を入れる問題です。


(1) Cécile a (  ) yeux bleus.

(2) Il a mal (  ) dents.

(3) Nous avons (  ) gros chien.

(4) Tu veux encore (  ) viande ?

—————————————————————–
① aux  ② de  ③ de la
④ les   ⑤ un  ⑥ une
 

まず選択肢を見ていきましょう。①は前置詞 à と定冠詞複数 les の縮約形です。*à les ではなく、aux になります。②は否定の冠詞 de 、③は女性名詞に用いる部分冠詞、④は定冠詞複数形、⑤は不定冠詞男性単数形、⑥は不定冠詞女性単数形です。

(1) 形容詞 bleus に s がついていますから yeux は複数名詞です。これは un œil「目」の複数形です。④の定冠詞複数形を入れて Cécile a ( les ) yeux bleus. 「セシルは青い目をしている」となります。セシルの目のことを述べていますから、特定されたものを表わす定冠詞が使われます。

(2) avoir mal à ~ で「〜が痛い」の意味になります。この前置詞 à のあとに les dents「歯」の定冠詞複数形がつづきますから à と les の縮約形を用いて Il a mal ( aux ) dents. 「彼は歯が痛い」となります。実際に歯が痛いとき、痛い歯は一本かもしれませんが、設問文では定冠詞複数形 les を用いています。これは具体的に痛い歯を伝えているのではありません。「お腹」や「頭」ではなく、歯という体の部分が痛いことを伝えているだけです。歯は複数で成り立っていますから、「歯」というものを表わすときは複数形の定冠詞を用います。(J’ai mal à la tête.「頭が痛い」や、J’ai mal au ventre.「お腹が痛い」もいっしょに覚えておきましょう。)

(3) chien は単数名詞です。男性形の形容詞 gros から chien が男性名詞単数であることがわかります。男性単数に用いる冠詞は⑤の un しかありません。Nous avons ( un ) gros chien. 「私たちは大きな犬を飼っています」となります。不定冠詞は、話し手が聞き手に周知されていないものを伝える時に用います。聞き手は話し手が飼っている「大きな犬」のことを初めて聞いたことになります。話し手と聞き手の両者に周知されているものが話題になっているときは定冠詞を用います。

(4) viande は「肉」ですから、数ではなく量としてとらえるので部分冠詞を使います。Tu veux encore ( de la ) viande? 「お肉をもう少しいる?」と尋ねています。塊のロースト肉のある量を問題にして、もう少し欲しいかどうかを尋ねています。

4級では冠詞を使い分ける基礎知識が問われますが、難しそうだと思いこまないことです。まず6つの選択肢をしっかり見ること、次に設問文の名詞に注目し、性と数を確認します。その際、形容詞の形がポイントです。また数と量のどちらを表わしているのか。さらに aimer「好きである」のような動詞は総称を表わす定冠詞を用いることなどをおさえておけばもう大丈夫です!

              

いかかでしたか。冠詞のツボをおさえることができたら、次は実戦です!『仏検公式ガイドブック』に過去の問題と解説・解答が掲載されていますから、これを利用して検定試験の準備につなげていきましょう。 

東京大学教養学部におけるフランス語教育

寺田 寅彦(東京大学)

大学に入るときに皆さんは何を自分の専門とするか、ひいては何学部に入るかということを考えることでしょう。東京大学では入学した学生はいわゆる科類ごとのクラスに所属することでそれぞれのおおまかな将来の専門性を持ちながらも、全員がまず駒場キャンパスにある教養学部前期課程に入学し、リベラル・アーツの理念に基づく教養教育を受けることになっています。これは東京大学の学びにおいて、専門課程に進むために必要な知識や知的技能を身につけることも大切ではあるものの、特定の専門分野に偏らない総合的な視野を獲得させることで専門的なものの見方や考え方の基本を学び取ることが必要であると考えられているからです。

このリベラル・アーツ教育の根幹をなす科目の一つが外国語科目です。文科生と理科生とでは取得すべき単位数は異なるものの、両者とも必ず二つ以上の外国語を履修することが必要です。多くの学生は既修外国語、すなわちすでに学んだことのある外国語として英語を履修し、初修外国語として初めて学ぶ外国語を一つ選択します(既修外国語を二つ選択することも可能です)。基礎科目とよばれるいわゆる必修の初修外国語として開講されている外国語はドイツ語、フランス語、中国語、ロシア語、スペイン語、韓国朝鮮語、イタリア語の七つですが、この他に自由に選択できる総合科目として現用語から古語にいたるまでのさまざまな外国語が履修できるようにカリキュラムが設計されています。

201609-1

基礎科目のフランス語では主に文法を勉強します。また選択自由な総合科目では、初級、中級、上級の各レベルで、会話や作文、読解、演習、表現練習といったさまざまな授業が展開されています。フランス語を集中的に学びたいという意欲的な学生に向けて、週2コマのペースで行われるインテンシヴ・コースの授業も初級と中級で開講されています。ネイティヴスピーカーの教員の指導による運用能力向上を図るインテンシヴ・コースは、学生の間でも人気の高い科目の一つです。

2016年度からは、履修すべき単位数と総合科目週3コマを合わせて初修外国語でありながら高い運用能力の修得を目指すトライリンガル・プログラム(TLP)フランス語がスタートしました。このトライリンガル・プログラムとは、その名のとおり三か国語をマスターした学生の育成を図るプログラムで、グローバルリーダー育成プログラム(GLP)の一環として発足しました。グローバル化が急速に進んだ現代の世界において、国際的に活躍する人材には高度な英語力はもとより、それに加えて少なくとももう一つの外国語の運用能力を有することがひろく要請されるようになりましたが、そのような要請に応えるべく一定レベルの英語力を有すると認められる学生(上位一割程度)のうち希望者を対象として、日本語と英語に加え、もう一つの外国語の運用能力を集中的に鍛えるために開設されたのです。トライリンガル・プログラムの履修期間は前期課程在学中の1年半で、修了要件を満たした履修生には修了証が授与されます。

2013年度に始まった当初は中国語のみのプログラムでしたが、この2016年度からドイツ語、ロシア語と共にフランス語でもこのトライリンガル・プログラムが始まっています。フランス語では前期日程入試、推薦入試、外国学校卒業学生特別選考のすべての合格者を対象としており、履修者数は最大で40人までであるため、履修希望者が定員を超える場合には成績上位者から履修を許可するシステムをとっています。各セメスター(学期)終了時に期末評価がなされて、英語の成績やフランス語の成績からレベルに達していないと判断された履修者は次のセメスターでトライリンガル・プログラム向けの開講科目を履修できない設計になっています。厳しい制度ですが、2クラスに分かれた学習者はレベルの高い授業を楽しく学んでいます。言語運用能力向上を図る目的から、AV機材の充実した教室や、アクティヴラーニングに対応した「21 Komaba Center for Education Excellence(21 KOMCEE)」(写真参照)という最新の建物の教室を主に使いながら授業が行われていることも魅力の一つです。

トライリンガル・プログラムフランス語はその修了時に「ヨーロッパ言語共通参照枠(CECR)」A2レベルに十分達し、特に優秀な履修者がB1レベルを狙いうる能力に達していることを目指します。履修者は自身のレベルを知るために、さまざまなフランス語資格試験の一つとして仏検で運用能力のレベルをはかることが考えられます。仏検は準2級がおおよそCECRのA2レベル、仏検2級がおおよそCECRのB1レベルです。準2級からは筆記試験の一次試験と個人面接の二次試験があり、文法の知識はもとより、読む、書く、聞く、話すというフランス語の運用能力を試すことができます。一つの具体的な目標として仏検合格を目指すことは有意義なことです。

フランス語は当然のことながらさまざまな専門に開かれた言語です。文学や哲学といった人文科学分野のみならず、政治や歴史・地理といった社会科学分野、数学や化学・物理学・生物学といった自然科学分野、さらに芸術などの分野で偉大な業績を挙げた人物を多く輩出しています。東京大学の学生もその将来の専門性の違いをこえて、基礎科目からトライリンガル・プログラムまで、さまざまなレベルでのフランス語の勉強を楽しんでいます。

東京大学提供

21 KOMCEE

 

フランス語カリキュラムと仏検への取り組み

近藤 由佳(武庫川女子大学)

私が勤務している武庫川女子大学ではフランス語はドイツ語、イタリア語、スペイン語、中国語、ハングルと並んで共通教育科目の中の語学の1つとして選択することができます。また文学部英語文化学科では1、2年次はフランス語かドイツ語のいずれかを選択必修科目として、3年次では自由選択科目としてフランス語を第2外国語として学ぶことができます。

今回は私が担当している、英語文化学科のフランス語カリキュラムと仏検への取り組みについてお話しさせていただきます。

1. 1年次

週2回の開講で、文法の授業を行います。使用しているテキストが仏検をターゲットにしたものであるため、効率よく仏検と連動した授業ができていると思います。文法力を徹底して強化するために、テキストの練習問題だけにとどまらず、補助的にテキストに準拠しない問題ばかりを集めたプリントを配布するなどして、とにかく数多くの問題に当たらせることで、応用力をつけさせています。もちろん、検定日が近づいてくる頃には本番さながらに時間を計り、過去問を解いていきます。

解説をする際には「ここは整序問題としてよく出題される」であるとか、「このイディオムは毎年のように出ている」など、常に仏検の情報を織り込むようにしています。そうすることで、学生たちもおのずと仏検を意識して受講するようになります。

また英語が好きな学生たちばかりであることを利用して、仏英比較をしながら解説をすることも多々あります。同じ意味のフランス語と英語の文を板書して、相違点や類似点を視覚的に明確にしていくのです。授業アンケートには「相乗効果でフランス語と英語の両方において理解が深まった」、「語学は暗記科目ではなく、理論を理解しなければいけないと実感した」といったコメントがかなり多く見られます。1年生でフランス語初心者である学生たちに対してはこのやり方が功を奏し、私の担当するクラスでは5級はほぼ全員が合格、4級は合格率8割以上となっています。

2. 2年次

英語文化学科の学生たちは原則として全員が1年次の2月初めから2年次の5月末までの約4か月間、ワシントン州スポケーン市にあるアメリカ分校に留学することになっています。したがって、フランス語の授業は後期のみ、週2回の開講となります。

留学して、“生きた英語” に触れて刺激を受けて来た学生たちが、それと同様の経験をフランス語でもできるように、コミュニケーション中心の授業を行っています。

1年次では手薄になってしまっていた “話す” “聞く” に力点を置き、留学と夏休みによる約半年間のブランクを取り戻すために文法の復習も交えつつ、自分たちの日常生活に必要な表現を身につけて、フレーズを作り、それを伝えることができるようにすることを授業目的としています。“読む” “書く” “話す” “聞く” の4技能をバランスよく向上させることで、次の目標である仏検3級合格ラインが見えてきます。とは言え、やはりほとんどフランス語に触れていない半年間のブランクは大きく、2年次での3級合格者は少ないのが実情です。

3. 3年次

自由選択科目で、週1回のみの開講となります。各実習や就職活動の時期と重なってしまうにもかかわらず、毎年履修者は35人以上を下回ることはなく、多い時には50人を超えることもあります。仏検3級以上の受験者をターゲットとし、仏検に特化した授業内容ということもあり、学生たちのモチベーションはかなり高いです。出題傾向に応じた対策授業を望む声がほとんどなので、過去問を授業中に解くのは2、3回にとどめ、冠詞、代名詞、動詞、応答文…というように項目別に問題を集め、重要ポイントを簡潔にまとめたプリントをメインに進めています。

まずはある程度の時間を与えてひととおり問題を解き、その後にかなり細かいところまで丁寧に解説をしていきます。積極的に質問をしてくる学生がとても多く、その質問内容も具体的かつ高度なものが多いです。

近年は準2級に挑戦する者も出てきて、仏検を取得したいという強い意欲を持った学生が増加しているのを実感します。

4. 仏検受験のメリット

英語文化学科では担当者が願書を取りまとめ、団体受験という形を10年以上前から取っています。仏検受験は強制でないにもかかわらず、毎年ほぼ全員が受験するのはこの団体受験というシステムの効力が大きいと言わざるを得ません。数人が仏検に興味を持ち、受験を希望すると、それに感化されるかのように自然とクラス全体が同じ方向を向き始めます。自分1人だけではなく、仲間と一緒だから頑張れると思えるのでしょう。また就職の際の履歴書に書けるということを考えてのことなのかもしれません。いずれにせよ、検定取得という具体的な目標ができることで、前向きにフランス語学習に取り組む姿勢がより顕著になっていくのを感じます。

そうなれば授業にも積極的に参加してくれるので、理想の授業形態である双方向の授業が成立し、質問や発言をしやすい環境が生まれ、とても活気のある空気を作り出すことができるのです。

仏検を含め、フランス語の学習を通して、フランス語を好きになってほしいという思いはもちろんあります。でも、もしどうしても好きになることができなかったとしても、新しい何かを学ぶことの楽しさ、一生懸命物事を考えることのおもしろさ、目標に向かってチャレンジすることの大切さを体得し、それをフランス語以外の勉強や、今後の人生にぜひ生かしていってほしいと切に願っています。

最後になりましたが、仏検に携わってくださるすべての方々に、この場をお借りして心から感謝申し上げます。

『シェリーとフランス語』(三修社)仏検を意識して作成、使用しているテキスト

『シェリーとフランス語』(三修社) 仏検を意識して作成、使用しているテキスト

 

 

高校3年の春、フランス語はじめました

2015年度秋季5級合格
藤澤 優香
学生(聖心女子大学)・大阪府

私がフランス語の勉強を始めたのは、高校3年生の4月です。選択科目でフランス語の授業を選び、初めて英語以外の外国語を勉強することになりました。

一番に好きになったのは、フランス語の発音です。独特なRの発音や、リエゾンやエリジオンから作られる流れるような文の読み方に魅せられて、どんどんフランス語を好きになりました。これまで好きな英語ばかり勉強してきたので、別の言語にも挑戦してみようと気軽な気持ちで決めたフランス語ですが、授業のある金曜日が毎週の楽しみになりました。

仏検5級の試験範囲にはまだ授業で習っていない文法事項も含まれていたので、秋の仏検前は対策本や過去の試験問題を使って毎日フランス語の勉強をしていました。フランス語に触れてから日は浅いですが、5級合格という目標を決めることで集中して力をつけることができたのだと思います。放課後に先生とクラスメイトと集まって勉強会をしたり、毎日フランス語で挨拶してみたり、楽しみながら一緒に勉強できる仲間がいてとても幸せでした。

無事に合格し、成績優秀者として賞もいただけたことは、本当に嬉しくこれから勉強を続けていくための励みになりました。

この春からは大学に進学し、第2外国語でフランス語を学んでいます。勉強を進めていくにつれて、伸び悩む苦しい時期もこれから経験するのだと思いますが、新しいことを学べる楽しさをいつも思い出してフランス語とのご縁を大切にしていきたいと思います。



国際協力とフランス語

2015年春季1級合格
清水 修司
一般財団法人日本国際協力システム(JICS)・神奈川県

1. 仏検受検のきっかけ

私は、国際協力(ODA)実施を支援する団体に勤務しており、日常業務で世界各地の被援助国とやりとりを行っております。大学時代にフランス語を専攻していた関係上、フランス語圏の国とやりとりをしたり、そこに出張したりする機会も多く、業務を通じてフランス語を研鑽できるというありがたい環境におります。このため、フランス語についてはある程度の自信を持っていたのですが、昨年、独立行政法人国際協力機構(JICA)が、国際協力分野で活躍する人材の語学力判定にあたり語学試験の免状に10年間の「賞味期限」を設けたことから、20数年ぶりにフランス語検定試験を受けることとなりました。

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JICSが建設に協力したセネガルの小学校。校舎の壁に小さく日章旗プレートが埋め込まれている

 

2. 勉強方法

赤ちゃんが母語を覚える過程を鑑みるに、外国語の習得はいかに長く言葉のシャワーを浴びるかにつきると思います。私の場合幸いなことに、日常業務にてフランス語圏の国から寄せられる上質なフランス語で書かれたレターやペーパーを精読する機会が多々あります。それらを読み込むことで、和仏辞書では見つけられない多様な表現やボキャブラリーを習得することができました。また、出張や電話などを通して被援助国の人と様々な協議を行い、彼らのフランス語を直接耳にすることで微妙なニュアンスの伝え方や議論の進め方を皮膚感覚で知ることができました。インターネットでフランス語のニュース番組を視聴したりもしました。様々な機会を通してフランス語のシャワーを浴び続けることがきっと仏検合格への近道なのであろうと、思います。

3. 国際協力

20151004ss-04アフリカを中心にフランス語圏(Francophone)と呼ばれる国が多数あります。私は、国際協力の仕事を始める前は旧フランス植民地の国だからフランス語を教養として理解する人が多いのだろうと漠然と思っていました。
しかしながら実際にFrancophoneの国に行くと、行政や教育、あるいは、ビジネスが現地語ではなくフランス語でなされている実態を垣間見ました。極論すればフランス語がFrancophoneの国においては生きるための必要手段であるのだと感じました。これらの国々の人々は、自国の発展のため日夜がんばっていますが、まだまだ日本がこれらの国の発展のためにお手伝いできる分野がたくさん残っています。このことを思うと、フランス語を勉強した我々日本人の進む道として国際協力という選択肢もあるのではないでしょうか?

4. 最後に

Francophoneの知識層は、自分のフランス語に自信と誇りを持っています。私が交渉に際して提示した文書を見た相手がう〜んと首を傾げるので、何かお気に召さないことがあるのかとひやひやするのですが、熟考の末「ここは単数形ではなく、複数形のほうがフランス語として正確」と指摘されて、安堵と同時に拍子抜けしたこともたびたびあります。

美しいフランス語を習得していることはそういった方々からの尊敬と信頼を勝ち得ることにつながります。その意味でアカデミックなフランス語を学習する機会を与えていただける仏検に大いに感謝する次第です。

 

フランス語と共に、フランス語に浸り、フランス語を通じて

2015年春季1級合格・APEF特別賞
国津 洋子
大学職員(関西大学 社会学部 社会システムデザイン実習室勤務)・大阪府


yk_01このたびは、2015年度特別賞受賞の栄誉に浴し、嬉しくそして誇りに思います。今日までフランス語の勉強を続けることができましたのは、私の努力だけではなく、様々な方々との幸運な巡り会わせや支えがあってのことだと実感しております。

ご承知の通り、日本にいながらのフランス語学習はそんなに簡単ではありません。参考書の数も英語に比べて少なく、話す機会、場所も限られています。にもかかわらず、今日まで勉強を続けることができた、私の道のりをご参考までにご紹介いたします。

幼いころから、私は西洋の芸術に憧れを抱いていました。とりわけ、私はフランス文化のとりこになりました。大学は迷わず仏文学科に進学しましたが、最初は、複雑な文法と難解な発音に音を上げたものです。フランスへの短期語学研修は、実りあるものでしたし、フランス総領事館DATARでの勤務も、語学力アップにはうってつけでした。こうした体験は、当然フランス語力の向上に役に立ち、有益でした。

しかしながら、ふり返ってみると、このように恵まれた環境にもかかわらず、当時の私は語学力を向上させるのにさほど熱心ではありませんでした。私の場合、フランス語学習に火をつけたのは、与えられた理想的な環境ではなく、本を読もうという内部からの欲求でした。このフランス文学探究への欲求を満たしてくれたのは、関西学院大学の同窓会講座“ふらまど”です。家事育児に忙しいながらも、進むべき道を見つけることができました。この場をかりてお礼申し上げます。

フランス文学にふれることによって、偉大な作家、パスカル、モリエール、ヴォルテール、バルザック、フロベール、モディアノの作品から、よりよく生きる人生のヒントをもらいました。いろいろな作品を読むことで、時を超え、国を超え、文化や宗教を超えて、作中のあらゆる人物像やあらゆる思想と共に、生きることができるのです。まさにそこに、人間のリアリティーを実感できるのです。読書はもちろん楽しいものなのですが、既成概念への挑戦でもあります。思考が解き放たれる絶好の機会ですし、新たな視点で私たちの人生そのものを、もう一度、考え直さざるをえなくなるのです。このような文学の探求を通して、翻訳という新たな分野の可能性を感じています。

仏検合格への道ですが、粘り強さと子細にこだわる細かさが大切だと思います。フランス語に限らず外国語上達への道はひたすらくりかえすことだといえるでしょう。時には単調すぎてつらく感じることもあります。
しかし、この道のりは避けて通れないもので、さながらピアニストの音階練習や、運動選手のウォーミングアップみたいなものです。単語や語句を機械的にできるだけたくさん暗記する作業は大変ですが、より深く、より広く思いを伝える段階になると、その努力は花開くのです。訓練すればするほど、伝えたいことが鮮明になるのです。

仏検に挑戦されるにあたり、ご自分に合った勉強法で試験勉強を進めていかれるのが一番だと思います。勉強のやり方も人の数だけ方法があります。各々が、独自のものを生み出していくのだと思います。そこで肝心なのは、直観と、成長したいという、内から湧き上がる己の情熱を信じることだと思います。

 

Avec, dans et à travers la langue française

Yoko Kunitsu

yk_02Tout d’abord, je voudrais vous exprimer ma joie d’avoir été sélectionnée en tant que lauréate du prix spécial du DAPF de l’année de 2015. J’en suis heureuse et fière. Mais je dois avant tout dire aussi que si j’ai pu continuer mon étude de la langue française jusqu’ici, ce n’est pas dû uniquement à mes efforts, mais également à des chances que la vie m’a données et notamment au soutien chaleureux de nombreuses personnes.

Comme vous le savez, apprendre la langue française tout en vivant au Japon, est loin d’être facile. Par rapport à l’anglais le nombre de manuels de langue française est limité, les occasions de la parler sont elles aussi limitées. J’ai néanmoins eu la chance de pouvoir poursuivre mon étude de cette langue. Je vous présenterai ici le chemin qui a été le mien.

Depuis toujours, j’ai une grande admiration pour l’Occident et en particulier pour l’art occidental. Ainsi suis-je assez tôt devenue une amatrice de la culture française. Quand je suis arrivée au moment du concours d’entrée à l’université, j’ai choisi sans hésitation le département de littérature et de langue françaises d’une faculté des lettres. Au début, la complexité de la grammaire et les difficultés de la prononciation m’ont tracassée. Deux séjours linguistiques en France m’ont par ailleurs beaucoup aidée et enrichie. Mon travail comme assistante à l’antenne de DATAR, au Consulat Général de France, m’a permis de développer mes capacités linguistiques. Cette expérience professionnelle m’a été évidemment utile et s’est montrée efficace pour améliorer mon niveau en français.

Cependant ce milieu favorable n’a pas vraiment éveillé mon intérêt. Dans mon cas, ce n’est pas un environnement si favorable soit-il, mais la lecture, qui relève d’une volonté spontanée, qui m’a conduite à reprendre mon étude du français. Mon deuxième élan a consisté à retrouver une motivation pour reprendre mon exploration de la littérature française. Grâce aux cours de Kwansei-Gakuin destinés aux anciens étudiants qui veulent continuer ou reprendre leurs études de français, j’ai pu, malgré mes tâches familiales, retrouver un chemin à suivre. Je voudrais exprimer à cette occasion toute ma reconnaissance envers « Furamado » (« Une fenêtre ouverte sur la France »).

De grands écrivains français comme Pascal, Molière, Voltaire, Balzac, Flaubert ou Modiano m’inspirent des réflexions et m’aident à mieux vivre. Ceci dit à mon humble niveau bien sûr. En lisant leurs livres, j’ai vécu avec toutes sortes de personnages, toutes sortes de pensées, en passant par-delà les barrières du temps, des nations, des cultures, des religions. La réalité humaine, le réel de la vie est là. Bien là. La lecture est évidemment un plaisir, mais c’est surtout un défi contre les préjugés. Une formidable chance pour la pensée de s’ouvrir au dehors, en nous forçant à penser notre vie – et la vie – d’une nouvelle manière. Explorer le monde de la littérature m’a amenée de plus à m’intéresser à d’autres domaines comme celui de la traduction.

À propos de la préparation pour réussir à un examen, je pense que la ténacité et la minutie sont indispensables. Le progrès dans l’apprentissage d’une langue étrangère vient avec la répétition. Cela peut être senti comme monotone et dur. Avec parfois l’envie d’abandonner. yk_03Pourtant cette démarche est inévitable, comme faire des gammes pour un pianiste ou s’échauffer pour un athlète. Le travail pour mémoriser machinalement des mots et des expressions autant que possible demande de la peine. Pourtant, cela porte de grands fruits au niveau de l’expression de nos pensées vastes et profondes. Plus nous faisons des exercices, plus ce que nous désirons exprimer devient clair.

Pour clore ce petit essai, je dirai que le mieux est de suivre avec confiance son propre chemin. Il est évident que la manière de travailler varie selon chacun. Et chacun invente. L’essentiel étant, me semble-t-il, d’avoir confiance en son intuition et en ses désirs.



大人になってから勉強するということ

2015年度秋季2級合格
新井 郷子
大学教員(東京大学医学系研究科)・東京都

今から約20年前に大学の教養課程で第2外国語としてフランス語を2年間学び、それからフランスに憧れを抱きながら、いつかまたフランス語を学びたいなあ、と漠然と考える日々をずっと過ごしていました。でも仕事も忙しいし、毎週語学学校に通うなんて無理かなあ…と考え、何もせずにいた日々。そんなときに起こったのが2011年3月の東日本大震災でした。福島に住む近い親戚が被災し、自分や家族には直接の被害こそなかったものの、東京でも震災後しばらくは節電やそれによる交通機関の混乱で仕事も日常もままならない不安な日々を過ごしたことが、私に人生について考えさせることになりました。そのとき「人生は短い。やりたいことはすぐにやらなければ」と強く感じたのが、再びフランス語を勉強することになったきっかけです。思い立ったその足でフランス語学校の申し込みに行き、それから今日まで、週1回の教室通いを続けています。

20150201sa-01こうして突如始まった私のフランス語教室通いは、幸い気の合う学友や素晴らしい先生達にめぐまれ、楽しく過ごしながらゆるゆると学び続けていつしか約4年という歳月が流れました。そんななか、だんだんと自分の上達に行き詰まりを感じはじめ、このままでいいのかな…と思ったのが仏検を受験したきっかけです。

「ただ授業を受けているだけ」になりつつある自分。このままでは思い描くようなフランス語を喋れる自分は程遠いと感じ、今のレベルを知り、明確な目標に向かって進みたいという気持ちが芽生えてきたのです。そしてまずは準2級と2級に挑戦し、結果、無事両方合格したものの、ここから先へ進むには今とは違う努力をしないと無理だな、という実感も生まれました。

仏検当日は、フランス語関連の専攻と思われるたくさんの学生さん達に囲まれて久しぶりに試験というものを受け、こんなにも多くの若者がフランス語を勉強しているんだなあと感心すると共に、私ももっと早くから勉強を始めていれば…、と少し悔しい気持ちにもなりました。と同時に、普段一緒に学んでいる仲間達の多くは大人になってから趣味で勉強している人ばかりであり、誰に強制されるわけでもなく、純粋に「フランス語が好き」という人達であることが、逆になんだかすごいことのように思えてきました。

それぞれ本業もあり、また若い頃とは違い物覚えも悪くなった年齢で語学を習得するのは決して容易いことではありません。仕事が忙しかったり疲れていたり、途中で息を吐きながらも、ときに仲間と励ましあい、フランス語の勉強を継続すること、それは以前は私にとって生活の‟スパイス“でありましたが、いつしか生活の一部になり、そして今では自分を構成する大切なひとつの要素になっていると感じます。

そんななか今回の仏検受験は、私の終わりなきフランス語学習における現在の自分の立ち位置を確認させ、そしてそれがさらなる目標を与えてくれる良い機会となりました。大人になってから得た一生付き合える趣味、勉強、そして夢として、生涯フランス語を学び続けたいと思います。

 

遅きに失せず ― Mieux vaut tard que jamais

2015年春季1級合格・文部科学大臣賞
小原 功子
通訳翻訳業・埼玉県

フランスの文化にさしたる興味も無いまま、私が某大学のフランス語科に入学したのは、1970年のことでした。30~40名程度の少人数クラスで、実技科目として毎日のように試験はあるし、1分でも遅刻すれば「教室から出て行きなさい!」と言われるし、ひどい所に来てしまったと後悔したものです。

しかし、3年生になると大胆にもフランス語を使うさまざまなアルバイトに勤しみ、現場タタキアゲ系の会話力を身につけ始める一方、学業は疎かになりましたが、奇跡的に4年で卒業できました。それから40年余り・・・仏検なるものの存在すら知らずに時は流れ、フランス語とは無縁の歳月も10年以上ありました。フランス語圏留学経験も在住経験もなく、1~2泊から1ヵ月以上の業務出張やバカンスを合算しても、滞在期間は数年に満たないでしょう。

一昨年に時間的な余裕ができたので、仏検2級から挑戦しようと思いたち、過去問題集を買いましたが、語学試験というものから遠ざかっていた年月はあまりにも長く、「こんな面倒な文法を習っただろうか?」と途惑うばかり。その時から1級を目指したものの、設問を見ても非常に難しく、無謀な挑戦に思われましたが、「不合格なら、潔くあきらめる!」と決めていました。

さりとて秘策はなく、毎朝10分程度TV放映されるフランスのニュースを見聞きし、Le Monde等のWEB版を読み、時事用語や時制の一致といった文法の確認をしましたが、日々30分~1時間程度の勉強が限度でした。フランス語の書籍を入手することさえ困難だった私の学生時代とは比べようもなく、今は無料の教材も溢れていますが、齢を重ねると雑事に追われる上に、記憶力は刻々と劣化することを実感。家族の通院送迎の待ち時間に、車の中で過去問を解くといった状況で臨んだ1級試験は取りこぼしが多く、不合格も覚悟しておりましたので、準1級に続く表彰は、誠にうれしい誤算でした*。

このように、高齢者となってからの遅過ぎる受験かつ粗雑な準備でしたが、おかげさまで仏検挑戦以前より、語彙も増え、自己流デタラメであった表現も整ってきたような気がします。実務では90%以上の正確性が要求されるのに対し、検定試験では60%超なら合格基準のようで、仕事に必要な資格取得のために貴重な時間を割いて挑戦される方々には、年齢学歴不問の親切な制度だと思われます。すでにフランス語を駆使し、活躍されている方々にとっても、ご自分の基礎力を確認する良い機会になるのではないでしょうか。

理想論ではありますが、1級合格は到達点ではなく、言葉は生きものであり、スポーツのように練習と実戦を繰り返して習得するものなので、脳も筋肉のように鍛えるためにも、フランス語を学び続けるつもりです。

また、フランス語は確かに難しい言語ですが、日本語を母国語とする者ならば、外国語の習得にエネルギーを注ぐあまり、日本語力が伴わないのは本末転倒。人それぞれの言語感覚に応じて、外国語と日本語を、そして話し言葉と書き言葉も、同等の質で使えるようになりたいものであります。


*(仏検事務局註)小原様は、2014年度成績優秀者表彰式でも準1級で文部科学大臣賞を受賞され、2015年度は1級での連続受賞を遂げられました。おめでとうございました!

 

人生を通じたフランス語 ― 現在5合目、山頂を目指して

2015年春季1級合格・在日フランス大使館賞
S.Y. (フリーランス翻訳者)


私は、中学校2年の時、パリの華やかなイメージとフランス語の美しい発音に魅了されて、外国語大学でフランス語を勉強する目標を掲げました。
将来の夢はフランス語の通訳になることでした。
そして、高校では目標の大学に合格するため、受験勉強に専念しました。

高校生になると、私の内気な性格から、通訳よりは翻訳の方が向いているのではないかと思い始め、将来の目標を翻訳へと切り替えました。

念願の大学に合格後、フランス語を勉強しましたが、私の努力不足で、大学卒業時には、まだ仕事で使えるという自信はありませんでした。
地元の企業に就職し、英語を使う仕事で勤務していましたが、やはり私の一番の夢はフランスに行き、フランス語力を高めることだと思い、数年後、会社を辞めて渡仏しました。

« Petit à petit, l’oiseau fait son nid. » 

オンタリオ州にて現在は翻訳の仕事をしていますが、それまでの道のりは容易いものではなく、どうやってたどり着けるか分からない模索の日々が続いた時期もありました。そんな状況の中でも夢を諦めなかったのは、フランス語への愛着と、フランス語を使う仕事をしたいという強い願いを持っていたからだと思います。

フランス語の勉強を通して得られたものは、フランス語力だけではありません。

大学生の頃、何度か訪れたモントリオールでは何人かの親しい友人ができ、その後も長年、友人関係が続きました。
フランスでは翻訳の仕事仲間もできました。
私の人生は、フランス語を通じて出会った友人と得られた経験により、豊かなものになったと思います。

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ロレンシャンの紅葉

先日、福岡のホテルの受付でインド人の方が働いていらっしゃり、少しお話ししました。英語を解する外国人のお客様には英語で、日本人には流暢な日本語で対応していらっしゃったので、随分前から日本に住んでいらっしゃるのですか、と質問をしたところ、昨年、日本に来ました、というお返事で、とても驚きました。

短期間の滞在なのに物怖じせず、上手な日本語をお話しになっている姿を拝見して、長い間フランス語に携わっている私は、もっと自信を持って、最初の夢である通訳に一歩踏み出してもいいのではないか、と思い始めました。
フランスにも数年滞在し、リスニング力も上がった今、以前の私では到底叶えられないと思っていた夢に立ち向かう勇気が持てるようになったと思います。

これからも私のフランス語人生はまだまだ続きそうです。
皆さんも、心引かれるままに、有意義なフランス語人生をお送りになられますようにお祈りしております。

追伸:先日の表彰式ならびにレセプションにご招待頂き、ありがとうございました。めったにないこのような機会に、他の合格者の方々ともお話ができ、今後の人生に資する有意義な時間になったと思います。

 

2015年度 団体賞受賞のことば

文部科学大臣賞団体賞は2013年度に創設され、その年度における出願者数とその増加率および試験結果等を勘案し、年度を通じたフランス語教育への取り組みを総合的に判断した上で、特に優秀と認められた3団体に授与されます。2015年度は、お茶の水女子大学、東海大学湘南校舎外国語教育センター、共同受賞として神奈川県立神奈川総合高等学校・神奈川県立横浜国際高等学校が選出され、今年3月に実施された成績優秀者表彰式において、賞状と記念の楯が授与されました。


お茶の水女子大学 田中 琢三 先生

(写真左より)アカデミック・アシスタント 梶谷彩子様(お茶の水女子大学)・西澤文昭APEF理事長

この度は文部科学大臣賞団体賞を頂けることとなり、大学でフランス語教育に携わる者の一人として望外の喜びです。本学では「グローバル人材育成推進事業」のもと、外国語学習のための環境が整備され、ここ数年で仏検の受験者数が大幅に増加しました。フランス語教育に尽力され、仏検の周知に努めていただいた教職員の皆様、そして何よりもフランス語を熱心に勉強してくれた学生たちに深く感謝しています。この受賞を励みとして、今後も我が国のフランス語教育の一層の発展のために努力していきたいと思います。最後になりますが、このような素晴らしい賞を与えて頂いたフランス語教育振興協会の皆様に心より御礼申し上げます。
(写真左より)アカデミック・アシスタント 梶谷彩子様(お茶の水女子大学)・西澤文昭APEF理事長

東海大学国際教育センター・国際言語教育部門 惟村 宣明 先生

(写真左より)惟村宣明先生(東海大学)・西澤理事長

この度は栄誉ある賞を賜り、大変嬉しく、また有難く思っております。私達は、第二外国語としてフランス語を学ぶ学生に目標を与えるために、また、各級の取得が彼らの将来の手助けとなる事を願って仏検受験を勧めてまいりました。近年本学の受講生たちは一層高いレベルを目指して自覚的に学習に励み、大きな成果を上げるようになってまいりました。これも全て仏検があったからこそと感謝いたしております。私達は、フランス語の鍛錬を通して学生たちが国際性を涵養し、人格を陶冶し、グローバル社会で活躍出来るよう、ますます努力してゆく所存です。末筆ながら、私達の活動にご理解ご協力をいただいた関係諸氏、諸機関に深く感謝の意を表します。
(写真左より)惟村宣明先生(東海大学)・西澤理事長


神奈川県立神奈川総合高等学校 
鈴木 典子 先生

(写真左より)鈴木典子先生(神奈川県立神奈川総合高等学校)・西澤理事長

このたびは栄えある文部科学大臣賞団体賞をいただき、校長以下職員一同心より喜んでおります。神奈川総合高校では5年前より横浜国際高校と合同で準会場を実施し、生徒のフランス語学習のモチベーションの向上をはかってまいりました。仏検は生徒達にとって日頃の学習成果を試すことができる好機であると同時に、自学自習の精神を育む機会にもなっています。事実、本校では自学自習でさらに上の級にチャレンジしようとする生徒も多数おり、フランス語担当者としてもできる限りのサポートを行っております。今後も仏検を大いに活用させていただきながらフランス語教育に取り組んで行きたいと考えています。
(写真左より)鈴木典子先生(神奈川県立神奈川総合高等学校)・西澤理事長


  神奈川県立横浜国際高等学校 松本 卓也 先生

(写真左より)松本卓也先生・高木陽子先生(神奈川県立横浜国際高等学校)・西澤理事長・ 横浜国際高等学校高校のみなさん

この度は団体賞に選出して頂き、心より感謝申し上げます。
本校は名前に「国際」を冠していることから、必修の第二外国語の一つとしてフランス語を設置しており、非常に多くの生徒が学んでおります。進度は非常にゆっくりとしたものですが、生徒が発展的学習を望む気持ち、学習の証を何らかの形で残したいという気持ちに応えるために、補習の時間等を活用して日々指導にあたっております。今後も仏検が大学生・社会人だけではなく、高校生にとっても自己実現の目標として魅力あるものであり続けることを願ってやみません。最後になりますが、本校と共に準会場として試験を実施し、会場を貸与して下さっている神奈川総合高校の皆様に御礼申し上げます。
(写真左より)松本卓也先生・高木陽子先生(神奈川県立横浜国際高等学校)・西澤理事長・ 横浜国際高等学校高校のみなさん



福岡大学のフランス語教育と団体受験の利点

山本 大地(福岡大学人文学部フランス語学科)

福岡大学のフランス語教育

フランス語を話せるランゲージプラザ

福岡大学人文学部フランス語学科は1学年45〜50名程度に対して、教員は11名という体制を維持しており、各地の大学でフランス語専攻の縮小化が進む中、我々は恵まれた環境にあります。第二外国語への全学的な取り組みも盛んで、一例を挙げると学習言語を気軽に実践できる “ランゲージプラザ” があります。月曜はフランス語、火曜はドイツ語と、毎日各言語の母語話者が待機しており、そこに来ればおしゃべりすることができます。また正課外教育を担うエクステンションセンターでは、仏検対策講座を開講しています。本学の学生がほとんどですが、社会人の方もしばしば受講されており、仏検は大学と地域をつなぐかけ橋にもなっています。

語学研修の様子フランス語学科では総合的なフランス語学習およびフラン文学・言語学の授業が充実しており、希望者はフランス語と英語の教員免許も取得できます。2016年度からフランス人のフランス語教育の専門家も一人増えるので、今後FLEを専門にしたい学生にも対応できる体制を作れるかもしれません。2年次にはベルギーのルーヴァンカトリック大学で3週間の語学研修が実施されています。ベルギーの後パリにも1週間滞在しますが、学生の声を聞くとベルギーの滞在のほうが現地の学生との交流が盛んなため、充実感があるようです。

授業資料私は主に初級・中級文法の授業を担当しています。本来検定試験は普段の学力の腕試しであるべきですが、中級レベルではどうしても仏検を意識してしまいます。3級以降は動詞を活用させる問題があり、学生はこの問題が大変苦手です。そこで3・4年の文法の授業では、授業時間の半分を動詞の活用の体系的な習得に費やすことにしました。éteindre, recevoirのような、日常語なのに初級では教える余裕がない動詞を選んで取り上げています。綴りと発音を教え少し時間をとった後、パワーポイントを利用してランダムに動詞を表示し、学生は指示された時制・法で答えるという活動を行います。40分も動詞の活用のみをやり続けるのは学生にとって容易ではありません。「先生の授業ゴリゴリっすよー」とも言われました。しかし何が出てくるかわからない緊張感とゲーム感覚もあって、学生は能動的に参加してくれています。



団体受験の利点

福岡大学では以前から毎年福岡全体の仏検会場を担当していますが、本学学生のための団体受験制度を始めたのは、2014年秋からです。きっかけは少しでも受験料を安くできるようにということでしたが、実際にやってみると団体受験には様々な利点があることがわかり、今ではそちらのほうに重要性を感じています。最大の利点の一つは、仏検事務局が送付してくれる一覧表のおかげで、受験した学生とその点数を把握できることです。しかもこの一覧には筆記、書き取り、聞き取りの内訳まで記載されており、個別に適切な対策をする上で大変役に立ちます。授業でよくできる学生が合格していなかったので内訳をみてみると、書き取りの点数が低かったという事例がありました。確かに授業では書き取りの練習を行っていなかったと、普段の授業を振り返るきっかけにもなりました。

長期的に見ると、今後団体受験を続けていくことで年度ごとの点数の変化を把握でき、学科にとって貴重なデータとなります。文部科学省は大学に自己点検を課していて、その項目の一つに「教育成果について定期的な検証を行い、その結果を教育課程や教育内容・方法の改善に結びつけているか」というものがあります。フランス語学科におけるフランス語学習の「教育成果について定期的な検証を行」う上で、仏検の結果ほどふさわしいものはありません。

学生にとっては、郵便局や書店に行くより馴染みの教員にお金を払って願書を提出するほうが心理的に楽なようです。中には財布片手に研究室にきて、ペンを借りその場で願書を記入、一万円札で受験料を払い、お釣りをもらって帰ってゆく、というつわものもいます。教員としても受験する学生と顔を合わせることになるので、ついでに励ましたり、勉強のコツを教えたり、過去問のコピーを渡したりすることができて、隠れた効果があると考えています。

2015年度の結果を見てみると、3年生の時点で2級合格者が5名いました。4年生になると就職活動で忙しくなりますが、うまくいけば卒業までに準1級を取得することができるかもしれません。このうちの一人は春に2級に合格していたので、秋に準1級に挑戦しました。結果は惜しかったものの、授業の予習・復習に一切手を抜くことはなく、無遅刻・無欠席のこの学生は、大学の勉強をきちんとこなせば、高いレベルに到達できるということを証明してくれました。

もうひとつエピソードがあります。熱心な非常勤講師の先生が、ご自身の第二外国語のクラスの願書と受験料を取りまとめるという大変な労を執ってくださいました。そして偶然にも、そのクラスは前年に私が担当したクラスで、多くが4級に合格していることがわかりました。第二外国語の場合、担当した後は学生と接する機会がなくなってしまうのですが、その学生達の成長を知ることができたのも団体受験のおかげです。

2016年度からフランス語学科はドイツ語学科とともに新しいコースを開始します。少人数のクラス、学部と修士を5年で卒業できる制度、留学生が参加する授業など、これまで以上に充実した教育内容になっています。団体受験でわかる結果は、新しいコースの教育効果をはかる指標として不可欠なものとなるでしょう。

最後になりますが、事務局をはじめ仏検の運営に携わるすべての方々に、この場をお借りしてお礼申し上げます。

中・高生へのフランス語の取り組み

島田 幸子(大妻中野中学校・高等学校)

私が勤務している大妻中野中学校・高等学校は都内にある私立の中高一貫校の女子校で、中高合わせて約1500名在籍しています。そのうち高校生のみ、外国語設置科目としてフランス語を選択することができます。取得単位数は1〜3年まで各2単位(自由選択科目)となっていますが、既存のフランス語クラスのほかに28年度から設置されるGLC(グローバルリーダーズコース)クラスでは、中学1年生(1単位)と高校1年生(2単位)のフランス語が必修科目としてスタートします。

在籍数は多いのですが、フランス語履修生徒は70名(27年度)と少なく若干マイノリティーな状況の中での授業となるため、周囲の環境からフランス語に対する学習意欲を維持させることが少し難しい反面、目が行き届きやすく生徒のモチベーションに対応しやすいことが利点であると感じています。中・高校生の最大の関心事である受験勉強や部活動と並行して、新たにフランス語にチャレンジすることはとても大きな決断となっているようです。ただ、実際授業を始めてみると少人数なだけにフランス語選択者には結束感や一体感が生まれ、他教科と比べて授業に積極的に参加しているように見受けられ、生徒それぞれが個人の目標を達成するために努力しているように思います。卒業生の話を聞いてみると、受験科目には直結しないもののフランス語を学習していたことが生徒自身の満足感や達成感となり、その充実した高校生活が受験にもいい影響を与えていたようです。また、卒業後も定期的に学校へ顔を見せに来てくれて、フランス語の学習状況の現状であったり、フランス語選択者同志で一緒にフランスへ行ったりしていると話に来てくれます。私としても、生徒たちが将来も何らかの形でフランス語とつながっていてくれることを純粋に嬉しく感じています。

生徒のモチベーションが大切なフランス語学習においてまず注目していることは、国際交流(留学生の存在)と仏検です。本校は海外帰国生徒を多く受け入れていることと(全校生徒の約10%)、2015年度からSGH(スーパーグローバルハイスクール)アソシエイトに認定されていることもあり、国際交流・国際教育に力を入れています。そのため英語圏との交流としてはアメリカ、ニュージーランド、オーストラリアの提携校と実施し、海外研修旅行としてもカナダ(中2)、ニュージーランド(中3)、オーストラリア・アメリカ(高1・2)を夏期に実施しています。

ブルキナファソ大使夫人アンジェリーナ・ナナ氏の講話(2014年7月)昨年度は7月にはブルキナファソ大使夫人のフランス語によるお話、2月にはケベックからの留学生を迎えての文化交流をフランス語・英語で行いました。その他の国際交流行事として、中2から高1までが一堂にそろっての外国語発表会(フランス語・英語)、早稲田大学留学生との交流セッション(文化祭)や帰国小学生英語教室(英語保持教室)、模擬国連やタイの提携校へのフィールドワークなども行っています。フランスとの交流としては、コリブリネットワーク(短期留学)に加盟し、2009度からはほぼ毎年数名程度参加させ、同様にフランス本土やニューカレドニアからの留学生を受け入れています。受け入れ形態としては完全交換留学となり、3週間ずつ日本とフランスで過ごします。本校に在籍中は、バディーである日本人生徒のHRクラスに参加しながら、留学生にはフランス語の授業だけでなく、学校行事・部活にも参加してもらいます。高校の普通授業は1日に3時間程度とし、他学年の授業(中学生の理科や英語、高校の芸術・家庭科の授業等)にも参加させて、学校全体でフランスの風を感じてもらえるようにしています。

さらにフランス人留学生を中学生の授業に参加させたり、集会や校内向けのラジオ放送にも参加させたりすることで、中学生のうちから英語とは異なる文化圏の存在に気付くことが出来、フランス語や文化に自然と興味を持たせることが出来ているように思います。その結果、高校へ入学してから始まるフランス語学習を楽しみにしていたり、フランス語を話している先輩に憧れたりしていて、フランス語の授業へスムーズに移行できているのではないかと思います。

また、仏検の存在も大きいと思っています。授業では仏検取得を目標にし、高校1年生で5級、2年生は4級、高校3年生は3級以上と設定しています。ただ実際には、3級以上を授業の学習だけで取得することはなかなか難しく、生徒本人の相当な熱意と授業外での学習が欠かせません。そのような理由から仏検受験の義務化はしていませんが、仏検の受験を積極的にすすめ成績にも加点しています。通常の定期試験とは異なる仏検を受験することで、自分たちの他にもフランス語を学習している人がたくさんいることを知ってもらいたいことと、英語とは異なり教育指導要領での縛りが少ないために、通常の定期テストだけでは感じにくい学習面で達成感をも感じてもらいたいことがその理由です。特に高校1年生の秋季に行われる仏検では、出題項目の学習が毎年ぎりぎりとなるため綱渡り的な調整となってしまいますが、その結果手にした5級合格の喜びというものは絶大で、毎年嬉しそうに知らせに来てくれます。その後も順調に3級や準2級を無事合格した生徒には、大学のAO試験で活用したり、大学へ入学してからの単位認定を申請したり活用するよう指導しています。

現在は便利な情報社会となり、インターネットを使用すればすぐに海外の情報が手に入るグローバルな時代です。でも中高時代にフランス語を学ぶことは、残念ながらまだまだメジャーなことではありません。単にフランス語やフランス文化の知識を増やすことだけが目標となるのでなく、生徒自身の視野が広がることで将来への選択肢を広げ、新しいことを果敢にチャレンジすることで生まれる苦しみと楽しみを感じ、自分とは異なる相手の文化を拒否せずに受け入れ、相手にも自分のことを受け入れてもらえるように提案できる、強くしなやかな日本女性へと成長してほしいと常々感じています。また、プラスしてフランス語が生徒自身の一生の友となってくれることが私の希望です。

ブルキナアファソ大使夫人とともにブルキナアファソ大使夫人とともに

準会場について

準会場とは

1次試験で、団体受験を行う団体が、学校や企業などの施設を使用して独自に設置する会場を「準会場」といいます。原則として10名以上の団体受験者で開設が可能です。試験日・試験時間は一般会場に準じ、独自の日時で実施することはできません。

準会場を実施すると、施設使用料や人件費等、試験実施に係わる費用として、受験者の検定料総額から規定の割合で準会場費が還付されます。

準会場費の還付率

受験者のべ総数に応じて、検定料総額に下記の還付率を掛けて算出します。
 10名以上:検定料総額の5% 
 20名以上:検定料総額の10% 
 30名以上:検定料総額の20% (すべて円未満切り捨て)

準会場費は、とりまとめ出願時に検定料と相殺するか、出願期間終了後に別途、銀行振込で受け取ることができます。

※準会場での受験希望者が個別出願を行う場合は、出願期間が終了し、準会場受験者数が確定した後で、団体宛に準会場費が還付されます。

準会場を実施するには

準会場の開設にあたっては、当協会と準会場取扱契約書を締結していただきます。実施運営については、当協会の規定およびマニュアルを遵守し、厳正に行わねばなりません。

実施を希望される団体は、仏検事務局までお電話でお問い合わせいただくか、学校・団体名、所在地、電話番号、担当者名をご記入のうえメールでご申請ください。

準会場の新規開設の申請期限は、春季試験で4月末、秋季試験で9月末までです。

仏検1級合格者の会(ALFI)

仏検1級合格者の会(ALFI)へのお誘い

仏検1級合格者の会(Association des Lauréats du Futsuken Ikkyu、略称「ALFI/アルフィ」) は、公益財団法人フランス語教育振興協会(APEF)の公認を受け、仏検1級合格者のみで構成される任意団体です。2006年7月、「日本におけるフランス語の地位向上」の理念に基づき、合格者同士の交流促進のため有志が集い正式に発足しました。2024年7月現在の会員数は116名、幅広い世代で異なるバックグラウンドを持ったメンバーが集まり、ゆるやかなコミュニティを作っています。

当会の趣旨は、①会員間の親睦と交流、②フランス語力のさらなる向上、③フランス及びフランコフォン関連団体とのパートナーシップ構築にあります。当会はアンスティテュ・フランセFrance Alumni などのフランス政府公式機関やフランス関連の諸団体と連携し、フランス語を軸にした交流を長年にわたり深めています。

当会の活動としては、在日フランス人・フランコフォン協会(AFJ)との共催で日本の伝統文化に関するワークショップや鑑賞会を行っています。様々な分野のプロフェッショナルを招いた講演会「ALFIアカデミア」や、フランス語を生かしたキャリア実践やそれぞれの専門分野について語る会員間の交流「ジョブトークス」をリモート/対面で定期的に開催しています。また、フランス人講師を招いた翻訳塾やアート・サロンなどの活動も会員有志で積極的に行われています。

フランス・フランコフォンに関するイベント情報を案内する当会ウェブサイトはどなたでもご覧いただけ、会員ページではフランス語人材の求人情報など有用な情報を発信しております。

仏検1級合格後もさらにフランス語を極めたい方、フランス語を使って仕事をしたい方、フランス語を通じて交流の輪を広げたい方、ご入会を心よりお待ちしております。

お問い合わせ

ALFI事務局 info@alfi-jp.com / ALFI ウェブサイト https://alfi-jp.com

 

フランス語との出会い

2014年秋季5級合格・全国検定振興機構理事長賞
金巻 奈那
小学生(カリタス小学校)・神奈川県


nk_ceremonie私の通っているカリタス学園は、幼稚園の時からフランス語に親しんでいます。幼稚園では、歌でABCのフランス語独特の発音を覚えたり、「Tiens」「Merci」と言いながらバラの花を友達に回したりしたのを覚えています。日本語はあまり使わずに、耳で一生懸命に聞いていました。

小学生になると、たくさんの歌をみんなで歌いました。リズムがどの曲もおもしろくて、とても楽しかったです。自然に耳にスッと入ってきて真似したくなるような歌ばかりでした。身体全体でリズムやイントネーションを感じました。私は、フランス語のひびきが大好きになり、先生に発音をほめていただいたのがとてもうれしくて、もっとフランス語を頑張ろう!と思いました。そして私は仏検合格を目標にしました。

学校ではいち早くタブレット学習を取り入れていてフランス語は他の授業と一味違う感覚がありました。6年生の時に、フランス語で「赤ずきん」を暗唱して、自分の絵を入れた電子ブックと共に発表しました。「Le petit chaperon rouge」と口に出しただけで、フランス人になったような気分です。夜、寝る前にそのテープを何度も聞いてはくり返しを続けました。フランス語で「赤ずきん」が読めたら素敵だなぁと思っていたので、頑張って練習できたのだと思います。
暗唱した『赤ずきん』は自分の絵を入れた電子ブックで発表それから小学校でフランス語の思い出としてとてもよく残っているのがたくさんのフランス人が通うリセに一日入学したことです。自分が外国人の立場になる経験をした事は今までなかったので、コミュニケーションのとり方に苦労したけれど、日本とは違う文化を肌で感じる事ができてうれしかったです。私のクラスは、教室がだまりこんでしまう事もあるけれど、リセではみんなが元気よく手を上げてとても積極的だったので、私も見習いたいと思いました。私も含めて、日本人は、自分の意見をはっきりと言えない人が多いので、もっと外国語を勉強して、外国人と意見を交わせるようになりたいです。フランス語は私にとって幼稚園から学んできたとても身近な言語です。

5年後に開かれる東京オリンピックは、たくさんの外国人の方たちと会話できる絶好のチャンスです。フランスには、お菓子や料理、芸術、特に美術や音楽などすばらしいものがたくさんあるので、そんな国の言葉を自由自在に話せたらと思うと夢がふくらみます。ぜひ、恥ずかしがらずにたくさん話しかけてお役に立ちたいです。そこで自分の得意なフランス語を活用できたら最高だなと思っています!

そしていつかフランス留学をして、フランス人の友達をたくさん作り、日本の文化も紹介してあげたいと思います。

“J’adore le francais !!! ” nk_manuscrit






仏検1級合格…そして、世界へ

2014年春季1級合格・エールフランス特別賞
森永 佳奈
(フランス語通訳・フランス語講師)


2014年度仏検成績優秀者表彰式にてフランス語との出会いは大学1年の春。鉛筆を転がして適当に選んだ第2外国語、それがフランス語でした。出会いは全くの偶然でしたが、フランス語の美しさにあっという間に魅了されました。その後仏文科に進み、大学を卒業する頃にはフランス語通訳の職に就きたいと考えるようになっていました。しかし通訳を目指すにあたって、フランス語圏滞在歴が短いことが私にとって最大のコンプレックスでした。そこでフランス語力の向上と自信を得るために掲げた目標が仏検1級でした。

仏検に特化した勉強を行った期間は約4ヶ月です。学校には通わず、自習室に通って毎日ひたすらフランス語を学びました。この間は毎朝NHKのフランス語ニュースを聞くことから始めました。その日のニュースの中で最も意味が取りにくかった、もしくはわからない単語や表現が多く含まれていた記事を一つだけ選び、できるだけ毎日ディクテーションしました。そしてもう一つ私が重要視したのが名詞化です。これはフランス語を書いたり話したりする際の基礎となりますから、仏検合格後のことも考えて必死に習得しました。わずか4ヶ月の受験生活でしたが、集中的にフランス語を学んだこの期間は、私にとってとても貴重な時間でした。この時の努力がなければ、私のフランス語力は今日の向上を見なかったと思います。

仏検合格を機に、周りの景色が少しずつですが、着実に変わる手応えを感じてきました。在ベルギー大使公邸での交流会諸先輩方の豊富な経験を伺うことのできる仏検一級合格者の会「ALFI」との出会いや、「若手フランス語圏フォーラム」派遣プログラムへの参加はその中でも特に大きなものでした。この派遣プログラムは、日本政府と日本フランコフォニー推進評議会が民間交流を通じて日本の魅力を世界に発信するために行っている事業です。私は6人の仲間と共にフランス4都市、そしてベルギーのリエージュで行われた『若手フランス語圏フォーラム』へ派遣されました。
TV5モンドによるインタビューを受ける筆者派遣期間中は様々な国・地域のフランス語話者と出会い、フランス語でプレゼンを行うなど、それぞれの文化や価値観を共有しながら、貴重な時間を過ごすことができました。また海外メディアのインタビューやフランス、ベルギー各地の日本語学習者、両国の政府関係者の方々との交流を通じて、フランス語力も向上したと思いますし、世界のフランス語圏を相手に仕事をする上でも、今後の課題や改善点を体得することができました。

 このように、仏検が私に与えてくれたものはここに書ききれないほどありますが、その中でも一番大きなものは大切な仲間、素敵な人々に出会うきっかけをくれたことだと思います。これからもさらに努力を重ね、フランス語・日本語を通して世界に貢献するという夢を現実のものにしていきたいと思っています。

   在日ジブチ大使、ケベック州駐日代表、日本国首相官邸参事官補佐、仲間たちと


 

第21回 準2級からはじまる「言い換え問題」(中級)

 専門:スイス・ロマンド文学 正田 靖子  


語頭のアステリスク(*)は、その語が誤りを含むことを表します。 


「同じ表現の繰り返しを嫌う」


これはフランス語の特徴のひとつと言えるでしょう。同じ語を避けるために、代名詞をよく使い、名詞のほか動詞や形容詞なども言い換えます。人物の名前さえも、たとえば政治家ならば、肩書、前歴、口癖といったように、その人物に関する情報を積み重ねていきます。 

仏検では、準2級から動詞を使った「言い換え問題」がはじまります。提示されたフランス語文とほぼ同じ意味になるフランス語文を完成させる問題です。今回は2014年度秋季準2級の問題 [3] を使って、ポイントを見ていきましょう。完成させるべき文の空欄に、下にあたえられた7つの動詞から適合するものをひとつ選び、法・時制などを考慮して、適切な形に変化させます。

                

さあチャレンジしてください!各問2ポイント、全問正解で10ポイントです。


(1)   A  Chaque matin, Émilie se réveille à 7 heures.
        B  Chaque matin, Émilie (      ) jusqu’à 7 heures.

(2)   A  Christine arrêtera de travailler dans un mois.
        B  Christine (      ) son travail dans un mois.

(3)   A  Isabelle a fait le ménage dans sa chambre.
        B  Isabelle (      ) sa chambre.

(4)   A  Laisse Luc tranquille !
        B  Ne (      ) pas Luc !

(5)   A  Nous devions rentrer le plus tôt possible.
        B  Nous (      ) besoin de rentrer le plus tôt possible.

      —————————————————————–
           avoir       déranger       dormir       mettre     
                  nettoyer       prendre       quitter
 

それでは、正答にたどりつくためのツボを探っていきましょう。

        

ツボその1:活用は正確に覚える

(1)   A  Chaque matin, Émilie se réveille à 7 heures.
        B  Chaque matin, Émilie (      ) jusqu’à 7 heures.

設問 (1) A Chaque matin, Émilie se réveille à 7 heures. 「Émilie は毎朝7時に目を覚ます」。の文では動詞のあとが à ではなく、jusqu’à になっていますが、それ以外の部分は も も同じ文です。「目が覚める」までの行為、すなわち動詞 dormir 「眠る」を選び、現在形に正しく活用させれば正解です。

Oh là là ! *dormit ですか?dormir の活用変化は finir と同型ではなく、partir と同型ですから、正解は、Chaque matin, Émilie ( dort ) jusqu’à 7 heures. となります。正しい動詞が選べても、活用でまちがえてしまってはもったいない。活用変化は発音しながら、実際になんども書いて覚えるようにしましょう。

        

ツボその2:時制を合わせる

(5)   A  Nous devions rentrer le plus tôt possible.
        B  Nous (      ) besoin de rentrer le plus tôt possible.

設問 (5) A Nous devions rentrer le plus tôt possible. 「私たちは、できるだけ早く帰らなければならなかった」。の文では devoir が用いられているのに対して、の文では besoin de が動詞の直後にきています。これらの情報から、〈 avoir besoin de+不定詞 〉「~することが必要である」という表現であることがわかります。

Oh là là ! *avons ですか?の文と時制が合っていません。avoir を半過去に正しく活用させて、正解はNous ( avions ) besoin de rentrer le plus tôt possible. となります。

        

ツボその3:慣用表現に強くなる

(2)   A  Christine arrêtera de travailler dans un mois.
        B  Christine (      ) son travail dans un mois. 

設問 (2) A Christine arrêtera de travailler dans un mois.「Christine は1ヵ月後に仕事をやめる」。〈 arrêter de + 不定詞 〉で、「~するのをやめる」という意味になります。の文では動詞のあとに son travail がありますから、「(仕事を)やめる」という意味になる動詞を選びます。quitter が思い浮かびましたか?もし思い浮かんでいたなら、すばらしい。動詞を単純未来形に活用させれば2ポイントゲットです。正解はChristine ( quittera ) son travail dans un mois. となります。

設問 (2) のように動詞1語を同義の動詞1語で書き換える問題は得意だけれども、設問 (3) や (4) のように複数の語からできた慣用表現を動詞1語にする問題は、苦手という人もあるでしょう。問題に答えながら、語彙力をアップさせましょう。

(3)   A  Isabelle a fait le ménage dans sa chambre.
        B  Isabelle (      ) sa chambre. 

設問 (3) A Isabelle a fait le ménage dans sa chambre. 「Isabelle は自分の部屋を掃除した」。の文では動詞のあとに sa chambre が続きますから、nettoyer 「~を掃除する」を選び、複合過去形に正しく活用させれば正解です。つまり、Isabelle ( a nettoyé ) sa chambre. となります。〈 faire le ménage 〉「掃除をする」という表現はだいじょうぶでしたか?このほかにも faire を使った表現はいろいろありますから、まとめて復習しておきましょう。

(4)   A  Laisse Luc tranquille !
        B  Ne (      ) pas Luc ! 

設問 (4) A Laisse Luc tranquille ! 「 Luc にかまわないで!」。肯定命令を否定命令で言い換えるために、反意語を選ぶ問題です。ここでは、〈 laisser + 〔人〕 + tranquille 〉「〔人〕をそっとしておく」から、déranger 「~を邪魔する」を使った命令文に書き換えます。2人称単数の命令法現在に正しく活用させれば正解です。つまり、Ne ( dérange ) pas Luc ! となります。

                



以上から、よく使われる不規則動詞の活用や、複合過去の性・数一致について確認し、時制に注意することがいかに重要であるかが、お分かりいただけたと思います。また動詞を用いた基本的な表現について、しっかりおさえておきましょう。

準2級で出題される表現は、頻繁に用いられるもののようですから、過去問題を復習すれば十分かもしれません。しかしそれだけではなく、日ごろから、辞書をひくときには、同意語・反意語・派生語にも目を通す習慣をつけるようにするとよいでしょう。そうすることによって、表現の幅は確実に広がっていくはずです。 

 

仏検によって前進した東海大学

惟村 宣明 (東海大学外国語教育センター)


私が勤務する東海大学湘南キャンパスには、文学部、政治経済学部、法学部、教養学部、理学部、情報理工学部、工学部、東海大学掲示板体育学部、観光学部(1年次生のみ)の9学部43学科があり、現在19,644名の学生が在籍しています。しかし、フランス語を主専攻とする学科はなく、第二外国語として選択必修を課しているのは、2学科1専攻のみです。私が所属している外国語教育センターは、湘南校舎の外国語教育全般を担当する部署で、英語、中国語、コリア語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語、フランス語の7言語が副専攻科目として開講されています。

この様な状況のもと、近年の英語重視の傾向から、それ以外の言語は、常に厳しい問いかけにさらされてきました。教えることに何の意味があるのか、何ができるのか、履修人数が増やせるのか、などを問われるのは、どこの教育現場でも同じだと思います。

私自身は、若者の知性を磨き、人格を陶冶するために、第二外国語学習は極めて重要であると考えています。発見や驚きに満ちた冒険だ、ということを伝えたいと思って教壇に立っています。しかし、それを理解してもらうためには時間が必要です。自由選択科目であるフランス語を継続して学習させるために、やりがいのある身近な目標を示すことが必要です。仏検は、まさにうってつけの目標となりました。

東海大学湘南校舎は、1998年秋より、準会場として団体受験を実施しています。最初の受験者総数は32名、そのうち3級合格者は2名と、ささやかなものでした。しかし学生たちの向上心には火が付いたようです。2000年に、1人の女子学生が「3級を取得し、新しい目標がほしいのですが、2級は私には無理でしょうか」と申し出てきました。2級はフランス語を主専攻とする大学4年生のレベルに相当するとされています。「授業以外で、特別な勉強をする必要があるだろう」と答えると、「仲間を何人か集めるから、勉強会をやってもらえないでしょうか」とのことで、3~4名の学生が集まってきました。その年の秋に最初の2級合格者があり、2015年度に至るまで、毎年合格者が出ています。仏検上級を目指す勉強会も今日まで存続しています。

書かせる問題が初めて出てくる3級では、当初の学生たちはかなり苦労し、優秀な学生でも何回か落ちるほどでした。最初の3年間は合格者が2~3名程でしたが、2002年度より6~8名になりました。2010年度には年間合格者数が20名近くになり、本学の学生にとって3級は普通に合格できる級となりました。

ここ10年間の仏検受験者数と3級・準2級・2級の合格者数、春学期のフランス語履修者数、派遣留学者数をまとめたデータがありますので、ここにご紹介したいと思います。 

東海大学では、第二外国語は多くの学科で必修科目からはずれ、受講者の減少とクラス数の減少という事態に見舞われました。2007年には、フランス語履修者数は過去最低となってしまいました。そこからゆっくりと履修者数が右肩上がりに回復しつつあることが見て取れます。これは、仏検合格者数が増えると、これに刺激されて、もっと向上しようする学生、自分も続こうと思う学生が増え、学習継続率が高まることを意味すると思います。そして、留学する学生が増え、さらに実力が高まり、雰囲気も良くなり、履修者が増えるという上昇の力に変わります。この表をみると、仏検受験が東海大学湘南校舎のフランス語履修者数増加とレベルアップに寄与していることは明らかです。2006年の資料が欠損し、2007年に受験者が激減していますが、これは、私が2006年に海外研究で不在だったことが影響しています。2014年に受験者数、中級以上の合格者数が急上昇しています。これは2013年に、優秀な同僚、深井陽介君が東海大学に赴任した結果です。

第45回全日本学生フランス語弁論大会の東海大学チーム第46回弁論大会にて実力をつけた学生たちが、さらに力試しをしてみたいということで、近年東海大学は、京都外国語大学が主催する「全日本学生フランス語弁論大会」と日仏会館主催の「フランス語コンクール」に参加するようになりました。しばしば決勝に進むようになりましたが、そこで我が校の学生は質疑応答に極端に弱いという欠点が暴露されてしまいました。深井君がこの弱点を大いに補強し、「全日本学生フランス語弁論大会」では、2013年優勝(写真②)、14年には連続優勝と5位入賞を果たし(写真①・③)、「フランス語コンクール」でも2013年入賞、14年中級の部に2名決勝進出という成果を得ることができました。

仏検というきっかけが与えられ、向上しようという学生が現れ、それを教員が支援する。ささやかな一歩から始まりましたが、これが今や大きな流れになりつつあります。ここで私たちが最も重視するのは、仏検やコンクールの結果ではありません。大切なのは、フランス語という共通の目的を持った仲間と人間関係を深め、目標を持ち、やり遂げたという経験なのだと思います。東海大学のフランス語教育は、まだまだ完成形ではありません。端緒に立ったばかりで改善すべきことは多々あります。しかし、学生と教員がチームとして、家族のように共に前進してゆきたいと思っています。特筆すべきは、東海大学で仏検やDELFの中級・上級に合格する学生、弁論大会などで活躍する学生の中に、航空宇宙学科、生命科学科、デザイン学科、芸術学科音楽専攻などの学生が含まれていることです。グローバル社会では、外国語に通じたこのような人材が求められているはずです。フランス語教育の可能性は無限にあると私たちは信じています。

喜寿過ぎて1級合格

青木 達郎

フランス語との関わり 

今はメガバンクの一つになったS銀行の退職者である私が、フランス語に興味を持つようになったのは同行I元頭取(当時最高顧問)が多彩な財界活動の一環として日仏政財界人の交流組織である「日仏クラブ」の会議出席のためパリに出張の折に秘書役として随行したことが切っ掛けである。会議には同時通訳が付くし現地支店もあるので、私自身がフランス語を必要とすることはなかったが、マティニョンと呼ばれる首相府やセーヌ川沿いの財務省にお供したり、パーティの末席に連なったりしている間に、フランスの誇る接遇文化の上質な香りに魅せられた。

一個の自由市民として暮らし始めた時に、それまでやろうと思っていた色々なことに手を染めたが、その一つがフランス語であり、学習進度を測るために仏検を受験しようと思い立った。

学習の道のり 

2003年秋季に5級4級に合格し、ここから10年をこえる仏検受験の幕が開くのだが、2004年春季3級秋季2級合格の辺りまでは、苦労はあったものの週1、2日学校に通いつつラジオ講座を聴いたり短期留学をしたり楽しみながら勉強していた。そして2006年春季の準1級に満を持して臨んだところ、1次試験は合格したが、2次試験(面接)は1点差で不合格になった。口頭試問の時、参考書によると「質問や単語の意味の分からない時は遠慮なく聞き返したり質問したりしましょう」とあったのを思い出し、試験官の質問を都度確認したことが聞き取り力不足と判定されたかと推測している。そこでもっぱら会話クラスに重点を置き2007年秋季に2次試験合格を果たした(1次試験免除)。

この年から1級を目指して受験準備を進めたが、準1級との難易度の格差は私にとっては大きく、いわば本当の仏検が立ちはだかっている感じで何度も敗退し、昨年春季に1級の合格通知を頂いた時には私は喜寿を過ぎていた。

1級試験の問題内容に従って受験者としての感想を述べてみたい。

[筆記]①名詞化 ②多義語 両者には毎回手こずった。教材として配布されるプリントはあっても仏和辞典以外に特別の参考書は見つからないから、語彙を増やしその応用力を身に付けることは本当に難しい。モンプリエの学校で出会ったケンブリッジ大の女子学生が、夏休み中に仏独語それぞれ500語を覚え休暇明けに教授の面接を受けるのだと、大きな方眼紙に教室で採取した単語を書き込んでいるのを見て、大陸への語学留学に長い伝統を持つ国の古典的な暗記法が語彙増強の王道かと感じたものだ。③前置詞 数が限られているので仏和辞典の主だった前置詞の項を拡大コピーし精読したが、1級ともなると熟語的なものが出題されるのであまり成果はあがらなかった。④時事用語 参考書の時事用語リストをベースに単語カードを作り、NHK Worldのフランス語ニュースで聞いた新しい単語を補充して行った。⑤動詞活用 出題される文法事項が大体決まっているので学習しやすい。⑥長文完成 ⑦内容理解 ⑧内容理解 読解については、現在は帰仏し上院のスタッフとして活躍中のF先生主催「Le Mondeを読む会」に参加したことがフランス語の文章構造に慣れて自信を付けることに役立ったと思う。⑨和文仏訳 通信教育や翻訳講座でフランス人の先生に指導を受けた。ここでも語彙力の涵養は重要で、2012年にアリの社会についての問題でどうしても「アリ」と「巣」と言う単語が浮かんで来ず惨敗した苦い思い出がある。

[書き取り]級が進むと試験で読まれる文章が長くなるせいか、途中で付いて行けなくなり苦労したが、dictéeのクラスを週2コマで数年間受講しているうちに、継続は力なりの言葉通り最後まで書き取れるようになった。

[聞き取り]①穴埋め ②内容一致 ネットからRFIのfait du jourを聴いて、付属している旨く工夫されたテストにトライした、ただしアフリカのフランス語圏のニュースが多いのに食傷気味となったが。

総じて過去問の練習が有効であることが分かってきたので、昨年は買い集めた1997年分からの公式問題集の復習に力を注いだ。

語学留学

時間的に自由な生活をしている上、マイレージ特典など航空会社のサービス進化とネットの急速な発展のお蔭で海外旅行が安直になったから、1、2週間の短期語学留学をかなりの頻度で実行した(別表)
ただし留学期間の前後に観光やオペラ鑑賞をしているので仏検の勉強をしたのかフランス旅行にはまったのかはっきりしない。留学先は公的品質保証とみられる Label Qualifié français langue étrangère が付与された学校のリストから選び、授業内容や宿泊先に関する学校との打ち合わせ、航空機や鉄道の予約はネットや電話を通じ個人で行って、これもフランス語の実践に役立てた。

留学先の学校や宿舎の受け入れ体制は良く、幸い金銭的あるいは感情的なトラブルを経験したことはない。敢て言えばパリなど大都会より地方の方が日本人の影も疎らになりフランスの生活にどっぷり漬かれるというものだ。なかでも南仏ムスティエ=サント=マリの古い修道院を改装したCrea-langues校では初心者の受け入れはなく参加者の水準も高くて良い勉強が出来た上、専属シェフの出すプロヴァンス風の食事やワインはなかなか美味であった、また「天国にいちばん近い島」があるニューカレドニアのCREIPAC校で、南洋の温暖な気候に包まれて少人数の授業の後にゴルフ、海水浴やグルメを楽しんだことも忘れ難い。 

おわりに
フランス語の学習を通じ、定期的に学校に行き、海外留学をし、試験を受けることで私は新しい生活のリズムを作り精神の高揚感を持続させて来たが、1級合格は柔剣道や碁将棋で言えば有段者になった感じで、今後は私のフランス語を如何にして深化させるかが課題だと思う。学習過程でお世話になった人や事柄は多いが、ここでは我が国のフランス語辞典の良質さに感謝したい。フランスの語学学校で色々な国籍の人と共に学ぶ間に、我が国の辞書は断然優れていることに気が付いた。電子辞書という優れものがあることはもとよりだが、内容が豊富適切でアップデイトされており、明治以来孜孜として行われてきた研究の成果を享受できるのは有難いことである。数年前「舟を編む」と言う日本語辞典の編纂をテーマにした映画を見たが、外国語が対象の事典づくりの場合には仕事の困難さは倍増するであろう。フランス語学界のますますの発展を心から祈念している。

決め手は、やはり、正書法


 2013年春季1級合格・エールフランス特別賞 
古谷 英之 
公立中学校教諭(数学科)/通訳案内士(フランス語)・東京都 


 1988年4月にNHKラジオフランス語講座入門編の門を叩いた一高校生が、2015年4月でフランス語学習28年生となりました。お蔭様で、昨年8月、2013年度エールフランス特別賞の航空券を片手に一路フランスへ。家内と共に、最高のパリ旅行を満喫いたしました。 
 

 *
 

 「父や母の時代のフランス語でお話しになりますね!」

 周遊時の拙い経験を体験記として還元させていただければと考えておりますと、シャンゼリゼ通りのルイ・ヴィトンの女性店員さんが、シャンパン入りのグラスをお出しになりながらかけてくださった言葉が思い出されます。

                                                                   *

 「財布を買いたいのですが…」
 「私も!」

 1995年3月、マルソー通りのヴィトンの店内にて、7年間学んできたフランス語で恐る恐る話しかけたご夫人からの返答に大恥をかいた理工学部4年生は、財布やベルトの注文に続き、免税手続きの確認でも大苦戦したものでした。ところが昨夏、芸術の都の新店舗では、人生初のパリ旅行での笑い話つきのベルトにピッタリのポシェットとキーホルダー、家内のバッグとカード入れを購入。記念の美酒に酔いながら、絵になる(?)買い物ができました。

                                                                   *

 「味噌汁をお飲みになるかをお客様に伺うには、どのように申し上げればよいのでしょうか?」

 花の都の老舗にて、愚鈍な学生の卒業旅行の思い出話に花が咲いておりました頃、今回の行きの機内でお受けいたしましたこの質問が心に浮かびました。自身作成のアルファベ表記による『日本語会話表現集』をじっくりと読んでくださったエールフランスの若手女性フライトアテンダントさんは、颯爽と接客を終えられると、すぐに私の座席にお見えになりました。
 「お勧めの日本の観光名所を教えていただけますか?」
 熱心にお尋ねになる美女に、ヴァカンス返上で、浅草界隈の様子を丁寧に説明いたしました。

                                                                   *

 「動詞だけでもここまで活用が複雑な言語を話せるようになるためには、どうすればよいのだろうか?」
 ラジオ講座初日以来、仏語学習1年生は、日々大きな不安に苛まれました。

 「人生という大舞台で、フランス人と共に、熱狂的な一幕を上演できるようになるためには、どうすればよいのだろうか?」
 現在、28年生として、寝食を忘れてこの壮大なテーマに取り組んでおります(笑)。

 こうした難問を解く鍵は、次の一点にあると思われます。

 「正書法遵守を目標とすること、すなわち、フランス人も驚くほど文法的に正確なフランス語の運用を理想とすること」

 4つの書物(仏和辞典・和仏辞典・仏仏辞典・文法書)で4つの学力(読む力・書く力・聞く力・話す力)を徹底的に磨きましょう! チャンスが訪れたら、自分のフランス語を全力でフランス人にぶつけましょう!

 正書法は、仏検突破のための強力な武器でもあります。受検生の皆様がご希望の級に合格され、フランス語をお使いになる度に一生の宝となる思い出を手にされますよう、心よりお祈り申し上げます。


 

向上心をもち、フランス語を楽しむ

2014年春季4・5級合格
梅本 郁乃
都内小学校教諭・神奈川県

私の母は大学でフランス文学を専攻し、フランス語の勉強をしています。子供の頃からそんな母の姿を見ていた私は、遊び半分でフランス語の発音を真似てみたり、フランスという国について興味をもったりするようになりました。

大学では第2外国語を迷わずフランス語にしました。母に鍛えてもらったおかげで何とか単位を落とすことなく、2年間フランス語を学ぶことができました。

大学卒業後、都内の公立小学校で有償ボランティアとして働き始めた私は、ある先生と出会いました。その方は長年教員をしている超ベテランの素敵な先生で、時間に余裕ができると、フランス語の参考書を片手に勉強していらっしゃいました。話を聞くと、「仏検を受けようと思うの。仕事が終わった帰りにカフェで勉強するのが楽しいのよ。趣味をもつのは大事よ。」とおっしゃいました。教員というのは、常に向上心をもって、自分を磨くことが大切なのだなぁ、と知った出来事でした。そして、いつか余裕ができたら、仏検を受けてみようかな。そんな想いが自分の中に出てきたのも、その時でした。

勉強のお供。ラデュレのノートでモチベーションを上げていました。

無事に小学校の正規の教員として採用され、仕事にも慣れて余裕が出てきた昨年の春、私は仏検の受験を思い立ちました。以前から「5級を受けてみれば?」と言われていたのですが、なかなか気持ちに踏ん切りがつかず、受験をためらっていました。しかし、近年のフランスブームに触発され、フランスに実際に行ってみたい、という想いを抱くようになった私は、「今年(2014年)の夏休みにフランスに行く!」という計画を立て、その前哨戦として、同じく仏検1級合格を目指して勉強している母と一緒に仏検を受けることにしたのです。受験を申し込んでから参考書を買い、仕事帰りに時間を作ってカフェへ行き、勉強しました。憧れの先生と同じように行動できている自分が、なんだか信じられず、嬉しかったのを覚えています。

仏検5級と4級を同時に受験し、結果は両方合格。5級では満点をとることができました。そして夏休みには母と2人で6泊8日のフランス旅行を敢行。仏検を経て僅かながら理解できるようになったフランス語をフル活用し、パリの文化を満喫することができました。

私は現在、小学校の教員という、フランス語とはあまり関係ない職に就いていますが、教養としてフランス語を学ぶ機会を得られたことや、それをきっかけに異文化を見聞きする機会を得られたことを嬉しく思っています。フランス語の単語や文章の意味がわかるようになってから、街中に溢れるフランス語を見るのが楽しくなりました。また実際にフランスに行ったことで、フランスや日本、またそれ以外の国にも興味をもち、それぞれの国の良さを知ることができました。フランス語をはじめ、言語を学ぶことで、人生を豊かにし、自分を磨くことができると思います。今年も私は仏検3級を受験します。またフランスに行ける日を夢見ながら、カフェでの勉強を楽しみたいと思っています。

 

【仏検事務局より】 このエッセイは2015年5月にお寄せいただいたものです。その後、2015年度春季試験で、梅本様は3級に、お母様は1級にそれぞれ見事合格されました。おめでとうございました!エッセイの掲載が遅くなりましたことをお詫び申し上げますと共に、ますますのご活躍を陰ながら応援しております。


知る喜びが増してくる

2014年秋季3級合格
横山 ゆりな
主婦・北海道

人生後半の50代。何か最後に新しい趣味に挑戦したくなり、頭に浮かんだのが外国語の習得でした。理由は、形がなくあとに物が残らないこと。また、文化や芸術など、自分が興味を持つ分野にも結びついて、学ぶ喜びが増すのではないかという期待もありました。

まずはイタリア語。その美しい響きや心地良いリズムに魅了されつつも、旅行で訪れた南仏の風景が忘れられず、次第にフランス語を学びたいという思いが募っていきました。

2013年春、入門講座へ。素敵なフランス人の先生に出会い、やる気全開で学び始めました。明確な目標を持つと早く伸びるということは伊検(実用イタリア語検定)で体験済みでしたので、最初から仏検受験を志しました。勉強法は、公式ガイドブックや参考書を繰り返し学ぶという、シンプルなものです。設問ごとのポイントが明快な仏検は、初心者でも効率的に学べ、習熟度が確認しやすい最適な試験だと実感しています。

日々の勉強で心掛けているのは、とにかく決してフランス語から離れないことです。暗記力が低下する年齢なので、毎日必ず本を開き、CDを聴き、手と口を動かすように努めています。


仏検を介して若い友人もできました。それに、フランス人の先生方は皆さんとても個性的。もっと深い会話ができたら、と私の意欲をかきたててくれます。まだ初歩レベルの語学力ですが、次第に見えてきたフランスは、地方の特色・独特の美意識や、思想・フランス語圏の国々など、予想以上に多様な魅力に満ちたものでした。語学のレベルが上がれば、知る喜びもさらに増すのではと期待しています。

50代の遅いスタートなので仕事や留学で活用する機会はありません。でも、仏検受験への意欲がある限り、少しずつでも自分が成長しているという実感が得られるので、私にとっては十分、実用フランス語と言えるのです。

物が残らない趣味の筈だったのに、諸先生方の熱心な語り口に誘われて、たくさん参考書を買っています。ただひとつの嬉しい誤算です。
 

 【仏検事務局より】横山様は2014年度春季4級で成績優秀者に選出され、そのご様子は札幌アリアンス・フランセーズのホームページでも取り上げられています。おめでとうございました!


 

公式ガイドブック正誤表アーカイブ

『仏検公式ガイドブック』に誤植・誤りがありました。
謹んでお詫びを申し上げ、訂正いたします。

仏検公式ガイドブック 正誤表

2015年度版

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2014年度版

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2013年度版

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2012年度版

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2011年度版

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フランス語は獣医師の競馬記者が手に入れたもう1つの武器。

2014年秋季準2級合格
若原 隆宏
中日新聞大阪支社報道部/中日スポーツ中央競馬担当・滋賀県


私は東大農学部獣医学課程を出て「獣医師免許あり」の触れ込みでスポーツ紙の競馬記者をしている。「東大出」の看板は世の中では得をすることもあるようだが、冷や汗をかくこともある。私の場合、後者の方が圧倒的に多い。

2011年10月だった。ローズキングダムというGI勝ち馬が「天皇賞・秋」でフランス人騎手のI. Mendizabalと初コンビを組むことになった。同馬を管理する橋口師はトレーニングセンターの坂路の上にある監視塔の定位置にいる。同騎手がまたがっての初調教。取材陣も当然、そこに顔を並べた。あいにく通訳が別の英国人騎手に取られてその場にいない。橋口師の周囲を見回す視線が私に止まる。「若原君、大学で第二外国語、なんだったかね」。「ふ・・・フランス語でしたが・・・」。「右手前で入って、ラスト1ハロンだけ伸ばしてって、通訳して」。滝汗である。駒場を出てすでに10年以上。「右ってdroit、いやdroiteだったか」。語学力はそんなレベルまで落ちていた。結局そこは、やはりつたない英語で乗り切った。

できないと悔しい。それが仏語学習再開のきっかけだった。取材環境を振り返ると仏語ができるとかなりのアドバンテージであることに気づく。外国人騎手がたくさん来日する中に、仏語圏の騎手も多い。中には英語があまり得意でない者もいる。今では英語も達者になったI. Mendizabalも、初来日当初は英語に不安を持っていたようだ。通常、取材は英語の通訳を介すか、たまに英語で直接。サシで話していてもいつの間にか、わらわら人が集まってきて囲みになってしまうのが競馬取材の常だ。加えて彼らの話す英語のコメントは、通り一遍で明らかに建前トーク。彼らに仏語で本音が聞きたい。 仏語なら、仮に他社の記者が集まってきても、話している内容の詳細まで共有されるまい。衆人環視の中でも、注目を集める人気馬について。「今回はダメだろう」なんて聞き出せる可能性だってある。

駒場時代の教科書と、ほとんどめくっていなかったPetit Royalを引っ張り出してきた。文法を一通りやりなおし、教科書の仏文和訳や新聞記事の和文仏訳を繰り返したが、2年ほどはほとんど上達しなかったように思う。体系だった勉強法を知らなかったからだろう。

13年秋、凱旋門賞取材を命じられ初渡仏。案の定、語学は思っていたほど通用しない。確勝と期待したオルフェーヴルは2着。重なる無力感とともに帰国し「勉強の物差しに」と仏検の受験を決めた。当初5級からと考えていたが、年明けには目標を上方修正して4、3級の併願に。幸いどちらも無事合格し、自信がついた。

できるようになると楽しいのは語学の常なのだろう。準2級勉強中の14年10月。今度は自費で凱旋門賞を見に渡仏。凱旋門賞前後は日本人が大挙してパリを訪れる。語学に融通の利く宿は割高になるらしい。メトロAnatole France近くの安宿はロシア人がたくさん泊まっており、ロシア語はどうだか分からないが、とにかく英語は通じない。仏語だけで通せばすむパリ行きは、宿代でずいぶん予算を抑えられた。日本馬の勝利はならなかったが、うれしかったのは夜に繰り出したPMUcafé。前年は分からなかったが、今度は周りのおっちゃんたちがなにを叫んでいるのかよく分かる。きわどい写真判定に”Il faut 16″ “Non ! 10″。日本の競馬場や場外で飛んでいるヤジと何ら変わらない。馬券好きの考えることは日仏共通なのだ。宿から帰路につくとき、”Il me reste l’addition encore ?” びっくりするくらい自然に口から出た。さらに自信をつけて帰国。ほどなく受けた準2級もなんとか合格することができた。

15年春、C. LemaireはJRAに転籍し、日本の騎手になった。彼はトレセンでは流ちょうな日本語で取材に応じているが、きちんと仏語で聞けばそこそこ仏語でつきあってくれる。ほかにも相変わらず仏語圏から毎年数人、騎手が来日。14年秋に来日したP.C. Budotは来日初勝利の感激を、京都競馬場で仏語で答えてくれた。仏語圏の騎手に打った◎が穴を開けたとき、半分くらいは獣医師の若原ではなく、francophoneの若原が仕留めた穴だと思ってほしい。

 

2014年度 団体賞受賞のことば

2013年度に創設された文部科学大臣賞団体賞では、仏検における出願者数、その増加率および試験結果等を勘案し、年度を通じたフランス語教育への取り組みを総合的に判断した上で、特に優秀と認められた3団体に授与されます。2014年度は、日本大学法学部、立命館大学、白百合学園中学高等学校が選出されました。

 

日本大学法学部 畠山 達 先生

この度の受賞は、日本大学法学部のフランス語教育に尽力してくださっている教職員のお陰であり、このような形で評価して頂き嬉しく思っております。積極的に仏検を利用して学生のやる気を引き出している教員の皆様には深く感謝しております。
また、そもそも大学の教室を準会場として利用できなければ仏検は実施できません。今日、益々高まりつつある第二外国語教育の重要性を理解してくださる関係者および職員の方々にも感謝の念が耐えません。 そして誰よりも感謝すべきは、努力をしてくれた学生たちです。日本大学法学部ではアヴィニヨン短期研修もあり幅広い外国語教育に取り組んでおります。その成果がこのような形に結びついたものと思っております。
この団体賞を励みにフランス語教育の発展に一層努力して参りたいと思っております。関係者の皆様には心よりお礼を申し上げます。
(写真 右より)畠山達先生(日本大学)、長谷川善一APEF理事長 

 

立命館大学 千川 哲生 先生

2014年度の文部科学大臣賞団体賞を頂いたことに心から感謝の念を表明いたします。本学にはいわゆるフランス語学科はありませんが、その代わり、さまざまな学部の枠を越えて2年間フランス語を共に学ぶ「副専攻」という制度があり、学生は日々楽しみながらフランス語の研鑽に努めています。ここ数年、本学の受験者数は春・秋ともに100名を超えており、身につけたフランス語能力を試したいという学生の熱意の表れだと考えています。これからもフランス語教育に携わる教職員の力を合わせて、フランス語検定の一層の普及に貢献できることを願っています。
(写真 右より)千川 哲生 先生(立命館大学)、長谷川理事長 

 

 白百合学園中学高等学校 伊賀山 かおる 先生

このたび団体賞受賞の知らせを受け、教員一同、驚くと同時に大変光栄な思いに包まれました。本校は「仏英和」という創設時の名称が示すとおり、130年余に渡り一貫してフランス語教育を続けてきました。そのカリキュラムは独特なもので、中学入学時に専攻外国語を英語またはフランス語の中から一つ選択するという形でした。つまり、フランス語を選択すれば内容の濃い学習ができるけれど、英語を選択した生徒にとってはフランス語は別世界のものだったのです。このため仏検の恩恵を受けられる生徒数も限られていました。
平成25年度、カリキュラムに大きな変更がありました。中学1年生から全員が英語と平行してフランス語を学ぶ制度となったのです。その結果、仏検受験を希望する生徒が大幅に増え、仏検の重要性が飛躍的に高まっております。多言語教育の一環としてのフランス語教育の充実のために仏検が果たす役割は計り知れません。仏検の更なるご発展を祈念しております。
(写真中央)伊賀山かおる先生(白百合学園中学高等学校)、白百合学園中学高等学校からの受賞者のみなさん、長谷川理事長 

フランスとの縁、そして仏検団体受験参加へ

 中村 翠(名古屋商科大学)

 私の所属する名古屋商科大学では、単位取得が必須な第2外国語の制度はありません。そのかわり、自由選択で英語以外の言語を学ぶことができます。フランス語、中国語、韓国語です。以前はベトナム語やタイ語の授業もあったようなのですが、現在ではありません。世界的に高まる英語の重要性に押される形で、その他の言語教育が縮小されていく傾向は、やはり本学にもあるのかも知れません。

 しかし、自由選択とはいえ上に挙げた語学の検定試験については、本学は単位認定制度を取り入れており、外国語の習得を積極的に促進しています。具体的には、最下の級に合格すると2単位が認定され、その後級があがるごとに1単位がそれぞれ認定されます。あるいは、初回で最下級よりも上の級を受験し合格すると、3単位が認定されます。

 しかも、これらの自由選択の外国語のうちでも、フランス語は本学において存在感を確保しています。それは、フランスと本学を結ぶ縁があるからといえます。

 まず、交換留学制度によるつながりがあります。本学は商科大学ですが、様々な海外の大学との交換留学を行っています。その中でも、全全体の提携校95校のうち、フランスの提携校は12校と、群を抜いています。さらに、平成26年度に本学に留学した学生総数26ヶ国88名のうち、フランスからの交換留学生は、前期9名後期17名、あわせて年間で26名と、他国に比べて最多です。なお平成27年度には前期だけで16名がフランスから留学予定ですので、後期をあわせると前年よりも増える見込みです。これら提携校には、グランゼコールのひとつであるInstitut d’études politiques de Lilleをはじめとして、有名校が名を連ねています。このように常に一定数のフランス人留学生がいますので、フランス語を学ぶ日本人学生の中には、留学生と交流をはかっている人もいるようです。

 また、実はモニュメントの面でもフランスとちょっとした縁があります。本学のキャンパス内に特徴のある建築物が二つあります。ミレニアム・ゲートと呼ばれる正門(写真①参照)と、インテリジェント・スクール・ビル(通称ISビルあるいはクリスタル・ビルディング)と呼ばれるガラスのピラミッド建築(写真②参照)です。すぐに気付く人も多いかと思いますが、1989年、フランス革命200周年を記念して、当時の大統領フランソワ・ミッテランが推進したグラン・プロジェ(Grand Projet)の一環、ラ・デファンスのグランド・アルシュ(Grande Arche de la Défence)と、ルーヴル美術館のピラミッド(Pyramide du Louvre)に良く似ています。

 誰しも、名古屋商科大学のこれら二つの建築物はフランスのグラン・プロジェからインスピレーションを得たのかと思うことでしょう。正門については、そうだと言えます。名古屋商科大学の新しい正門は、ラ・デファンスが出来てから約10年後の2000年に出来たため、ミレニアム・ゲートと呼ばれています。しかしISビルについては、栗本学長にインタビューしたところ、なんと1988年の建築だそうです(写真③の定礎板参照)。つまり、ルーヴルのピラミッドよりも少し先に出来ていたのです。学長によれば、二つのピラミッド建築のプロジェクトが似たような時期に立ち上げられたのはまったくの偶然だったそうです。

このように、フランスと直接的にも間接的にも縁のある本学ですが、仏検の団体受験はこれまで行ってきませんでした。仏検を受験する学生は、個人で申し込みを行っていました。ところがこの平成26年度秋季から、団体コードを取得し、団体受験ができるようになりました。本学での団体受験の申し込み方法は、まず教務事務局で受験料のチケットを購入します。

 このチケットと記入済みの申し込み書をあわせて、語学センターの窓口に持って行きます。提出された申込書を担当者がとりまとめて下さり、最終的に経理に提出します。

 こうして初めて実施された仏検団体受験によって、私のクラスと、同じくフランス語を担当されているキム=フレス先生のクラスを合わせてのべ14名が受験しました。受験する学生の中には、服飾関係や国際ボランティアなど、将来フランスのみならず世界中のフランス語圏と関わりのある仕事に就き、語学力を活かしたいと考えている人もいます。試験前には、私のクラスでは希望する学生に対して、授業前の休憩を利用して、15分だけ仏検対策の時間を設けました。思い切って受験した学生はやはり通常の授業でもフランス語力を定着することができていると感じられますし、また今後もフランス語を続けて次の段階に移りたいという意欲を新たにしているようです。

 次回以降、より多くの学生が受験することを願っています。

 (ご所属は寄稿当時のものです)

 

大阪府立松原高校におけるフランス語活動

 上田 亜津美 (大阪府立松原高校)

勤務し始めて5回目の春を迎える高校での、昨年度のフランス語活動をご紹介したいと思う。

大阪府立松原高校は、大阪府のほぼ中央に位置する松原市にある、生徒数約800人の総合学科高校である。興味や関心に応じて学習できるように、約160の科目から授業を選択することができ、フランス語は、2年生では週に2時間(昨年度は27人)、3年生では週に4時間(昨年度は9人)学ぶことができる。

生徒の選択理由は、話せたらかっこいいから。おしゃれだから。いつか行ってみたい国だから。パティシエになりたいから。フランスで働きたいから。といったところであるが、しかし、フランス語教師は、非常勤講師の私ひとりである。そこで、生徒たちにさまざまなフランス語体験をさせたいと思い、いろいろな活動を取り入れてみた。どの活動も、たくさんの方々の支えがあって成り立つもので、この場を借りて、お礼申し上げたい。

(1)交流授業

大阪市立大学商学部に短期留学に来るフランス人大学生との交流授業を行っている。7月の初めに行われるこの授業で出会う留学生は、ほとんどの生徒にとって、「初めて出会うフランス人」である。そのため、生徒たちは、授業前から準備に大変張り切り、授業当日は、留学生の発する言葉に耳を澄まし、身を乗り出して聴くという、普段は目にすることの出来ない(?)素晴らしい態度で授業に臨む。1時間の授業時間であるが、このときの授業内容の定着は、結果として、考査時にも抜群の効果を示している。

(2)コリブリ

松原高校は、日仏高校ネットワーク=colibriの加盟校である。この交換留学のしくみのおかげで、高校生は、自身の往復飛行機代を負担するだけで、互いの高校に留学できる。この留学を通じて、生活面での成長が望まれるのも(たとえば、家族と自分のお弁当作りを始める。)旅行にはない、コリブリの魅力である。

もちろん、このプログラムの真髄である、フランスの高校で学べるという経験から伝わってくることもある。ある生徒は、レポートの一節で次のように語っている。「フランスの高校では、フランス語、英語の他に、1、2個ほど語学を自発的に学んでいた。そのことが他国への理解へとつながっているのではないかと思う。[…]」このように気づくのであれば、様々な家庭環境や背景を持った生徒が集まってくる公立高校でこそ、複数の外国語を学ぶことができるチャンスの提供をしたいと思うし、また、こどもたちにとって、経済的な心配無しに、フランス語の勉強が出来る環境を整えたいとも思うのである。

(3)フランコフォニーを発見しよう!

一般的な話として、フランスと聞くと、マカロン、エッフェル塔などといった、見た目の華やかさを思い浮かべる人が多いのではないか?(そういうステレオタイプなイメージすら本校の生徒は持ち合わせていないのであるが。)そういったイメージに限定しないものとして、フランス語とその世界をとらえ直したかったので、そして何よりも生徒が楽しむだろうと思い、昨年12月の「フランコフォニーを発見しよう!」(主催:日本におけるフランコフォニー推進会議、日本フランス語教育学会)に参加した。まず、テーマを「フランコフォニーの学校生活」と決めて、自分たちと同じ年頃のリセの生徒を取材するところから始めた。フランス語が六角形のフランスだけで話されているのではないこと、また、彼らの様々な国籍や出身地である、日本、カナダ、チュニジア…を知り、フランコフォニーの世界を体感していく。途中、参加者5人の生徒たちの、東京の会場までの交通費を捻出するのにピンチがあったが、たくさんの方々に助けていただいたおかげで、参加が実現した。このイベントに参加した生徒のひとりは、フランス語学科に大学進学が決まった。私が松原高校で授業を担当してきた4年間で、初めてのフランス語学科への進学者である。今後もこのうれしい変化に期待したい。

(4)仏検

2013年春から、松原高校では学校行事として、準会場で開催している。5級からの実施である。開催のきっかけは、生徒に、「学校でしてくれたら交通費もかからなくて良いのに…。」と言われたことである。もっともなことと思い、学校の先生に相談したところ、「新しい試みでワクワクします。」と快諾してもらえた。日曜日に学校を開けてくれる先生を見つけることはそう簡単ではないと思っていたが、学校行事にすることでその不安は解消された。「生徒のためになること」であれば、教科は関係なく、先生方は力を貸してくださるものだと心強く感じた。昨秋の仏検の朝は寒かった。試験開始の数時間前から会場教室に来て受験勉強をしていた生徒の話によると、当日の担当を引き受けてくれた先生が、「教室は冷え切って寒いだろうから。」と職員室のストーブを入れて会場を暖めてくれたとのこと…。また、卒業生も受験にやって来る。高校卒業後も何らかの形で勉強を続けている姿を見ることは、現役の高校生にとっては、フランス語を続けることが絵空事ではなく、高いレベルの現実のこととして映る。「来年は4級、2年後は3級、または10年後、20年後に2級、1級を受けようね。」という話は最近したばかりである。仏検の日が、フランス語同窓会のようになるかと思うと、仏検を開催したかいがあったというものである。

さいごに。

3月に卒業した3年生たちが、最後のフランス語授業の際、思いがけず「メッセージ」を寄せてくれた(下の写真)。生徒のひとりが、このように書いてきた。「2年間、あほでうるさくて問題児な、えりなを、仏検5級取れるまでのレベルにしてくれてメルシー。」こういうことを言われると、今年もやっぱり仏検受験に向けて、授業をがんばろうと思うのである。

フランス語でつながる世界

2014年秋季2級合格
平栗 響子
大学生(お茶の水女子大学)・東京都


「なんでフランス語を学んでいるの?」

これは大学でフランス語を専攻している私に度々投げかけられる質問です。日本において接する機会の多い英語や中国語ではなく、あまり身近に感じないフランス語の世界に飛び込んだ理由はいくつかあります。

まず高校生の時から英語以外の言語を習得したいという想いがあり、その頃に偶然国際交流の場でフランス人の友人ができたことです。彼女は私にとって初めて接するフランス人で、彼女から聞くフランスの話はなにもかも新鮮なものでした。その後は何度も英語でメールのやりとりをし、遠く離れながらも友好を深めました。このような経験から、私は次第にフランスを身近に感じると共に興味を持ち、彼女と彼女の母国語で話をしたいと強く思うようになっていました。そして幼い頃から音楽や芸術、ファッションに関心があったため、それらとフランスの深い関わりや日本とフランスの関わりを大学でしっかり学びたいと考えていたこと、さらに花の都パリへの憧れが私の背中を押しました。

初めの1年間は幾度となく初歩的な困難にぶつかり、フランス語から逃げ出したい時もありました。基礎固めには相当苦労をしましたが、日々の授業や自習に必死に取り組むことで少しずつ自信をつけていきました。それから仏検に挑戦し、初めての合格時に文部科学大臣賞を頂いたことは、今までの努力が認められたような気持ちがして大変嬉しかったです。この受賞はフランス語へのモチベーションを高め、大学3年生の夏にはストラスブール大学でのサマープログラムに参加しました。約1カ月の滞在中にはパリ、ランス、コルマール、ドイツにも足を運びました。目に映る全てが美しく、フランス語を学んできて良かったと思える瞬間でもありました。

大学でも様々な貴重な経験が出来ました。その中でも特に印象に残っているのは、イタリア、ウクライナ、韓国、ギリシャ、ロシアなど世界各地から集まった生徒たちがフランス語で懸命にコミュニケーションをとろうと、辞書を使いながらも会話をしていたことです。英語ならば少しはスムーズにできる会話も、お互いを支え合いながらフランス語を使おうとしていた様子は、それぞれのフランス語習得への熱意を感じました。また彼らに「日本、東京から来た」と話すと、目を輝かせて日本について数えきれないほどの質問をしてくれたことも心に残っています。日本の文化がこれほどまでに世界で認知され、興味を持たれていることに驚きを覚え、将来は日本を世界に発信したいという気持ちが芽生えるきっかけとなりました。

あっという間に大学生活最後の年を迎えましたが、これからも努力を惜しまずに研鑽を積みたいと思います。そしてふらっと気軽にフランス旅行できるような女性になるためにも卒業後も継続的にフランス語に親しみ、仏検にどんどんチャレンジしたいです。
 

フランス語の思い出と想い

2014年秋季3級合格
坂田 和恵
会社員・東京都

この度は2014年度仏検成績優秀者表彰式にて、全国検定振興機構理事長賞、朝日出版社賞を戴き感謝いたします。大人になってからの受賞は大変嬉しいものです。

昔ピアノを学ぶ為、渡仏した際、音楽学校で学びながらソルボンヌ大学近くの公立小学校で大人のために行われる夜間授業に登録し週二回、フランス語の初歩を学びました。外国人のために行われる授業は様々な国の多様な職業の人で活気があり、約20人/クラスをフランス人の先生が熱心に教えてくださいました。

外国人と一緒に学ぶ大人の活気とは、大人でありながら学ぶ姿勢は子供のようで間違いを恐れず、間違えても先生の教え方によってユーモアに変わり自然に正解に導かれる。又、カードでのゲームも子供のように真剣にやり、コミュニケーションの練習をしながら明るく笑いのある雰囲気で積極的に学ぶ姿勢が身に付きました。

授業にスピード感があり、聞いて座っているだけのものでなく、質問が生徒よりドンドンなげかけられるので先生は答えるのが大忙しの授業でした。

日本に帰国し一年経たないうちに青年海外協力隊に参加し、北アフリカのモロッコで活動をしました。フランスで学んだ全てのこと、語学、音楽、食文化、衣服文化、気候の違いへの対応、外国人との習慣の違いの吸収やコミュニケーション能力を最大限活かしての生活。

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あれから9年もの年月が流れ、オリンピックが日本にやってくる!という朗報を聞き、久しぶりにフランス語学習を再開。世界中の選手や人々が日本にやってくると思うと嬉しくてたまらない。

日常生活で全くフランス語を使わない日がほとんどとなり、仕事をしながら時間が無く勉強するのは大変でした。ただインターネットでフランスのニュースを見たり、iPhoneが出てからはフランスのラジオを通勤時に聞き、聞き取りは常にやっていたので試験の時幸いしたと思います。文法は一通りやり直し、予想問題集を1冊4回繰り返しました。

フランス語は私にとって芸術的な言語であり、言語文化(言葉の使い方・表現の仕方)の違いが魅力的なのです。常に肯定的な表現を使い、単語一つにしてもポジティフ・ネガティフのニュアンスを把握し言葉を選ぶ。フランスの大人の活気、元気、高齢者の威厳、動物を愛する心は今も強く印象が残っています。素敵な思い出をたくさん下さったフランスでお世話になった先生や人々に感謝しています。

過去の貴重な思い出を大切にしながらこれからもフランス語は継続し、仏検を通して勉強の課題として取り組んでいきたいと思っています。 

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第20回 自然なフランス語を書くためには?(上級)

慶應義塾大学准教授 井上 櫻子 

 

仏検では、上級レベルの準1級、1級に達すると、和文仏訳の問題が登場します。特に、1級では和文仏訳の配点は20点と、書き取り、聞き取り 1 番とならんで1次試験の中で最も配点が高い設問ですから、この問題を制することなくして仏検最上位級合格はあり得ないと言ってもいいでしょう。

作文力を高めるには、文法や構文に関する知識固めと豊かな語彙の獲得が大前提となりますが、加えて「自然なフランス語」を書くためには、日本語の発想とフランス語の発想の違いに対するセンス、そしてフランス語の単語および表現のもつ細かなニュアンスに対するセンスをみがくことも不可欠です。

 

                


ここでは、2014年度春季1級の問題を例に検討していきましょう。

今回は、隣人である老婦人から遠回しに庭を掃除してほしいと頼まれたときの印象を語った生活情景の一コマをどのようにフランス語で表現するか、受験者の技量が試される問題でした。

(問題)

 玄関を出たら、お隣のおばあちゃんが寄ってきた。嫌味たっぷりに「きのうはひどい風でしたね」と言うので、「またか」とお隣の庭先をみると、案の定、うちの庭木の葉がたくさん落ちていた。どうせなら「掃除してちょうだい」とはっきり言ってほしい。

(解答例)

 Alors que je sortais de la maison, la mamie d’à côté s’est approchée de moi. M’ayant dit d’un ton aigre : « Il y avait un vent terrible hier, n’est-ce pas ? », j’ai pensé « encore ! » en regardant son jardin : comme je m’y attendais, il était jonché de feuilles de notre arbre. S’il en est ainsi, j’aimerais mieux qu’elle me demande clairement de les balayer.


  
      

多くの受験者がつまずいたところを順に見ていきましょう。

1つ目の文は、比較的取り組みやすいように思われるかもしれません。しかし、ここにも落とし穴があります。実際に、答案の中には、冒頭の一節、「玄関を出たら」Alors que je sortais de la maison の「玄関を(=玄関から)」を de la porte de ma maison としたものがかなりありました。おそらくは、日本語の「玄関」という語をフランス語の語彙に忠実に置きかえようとした結果でしょう。
しかし、フランス語の発想では「玄関を出ること」とは、「家を出ること」だととらえますので、de la porte は不要です。同様に、「玄関を(から)」を de l’entrée、de la sortie とした答案もかなりありましたが、これも不可です。
 

同様に、2つ目の文の「お隣の庭先をみると」en regardant son jardin の「庭先」についても、受験者が「庭先」(特に「先」)という語のニュアンスにとらわれ、無理にフランス語に写し取ろうとしたようです。そのため、le (un) bout de son jardin、une partie de son jardin とした答案が少なからず見うけられました。ここは言葉のあやに惑わされず、「語り手は結局何が言いたいのか」ということだけを考慮に入れて少々発想転換すれば、意外とシンプルに処理できたところです。

以上の2つの事例は日本語とフランス語が必ずしも一対一対応しないことを示す好例だと言えます。


         

また、本問にはフランス語の単語および表現のもつニュアンスに対するセンスが試された箇所もありました。

まず、2つ目の文の冒頭の一節「嫌味たっぷりに」d’un ton aigre です。この問題で最も難しかった箇所のようで、ほとんどの受験者が ironiquement としていました。しかし、この語は「嫌味」(相手を不快にさせる言葉)というよりも「皮肉」や「風刺」(相手を非難すること)の意味合いが強くなり、問題文のニュアンスとはやや異なります。

次に、3つ目の文の一節「掃除してちょうだい」の「掃除する」(les) balayer(=「掃く」)を nettoyer とした答案が数多く確認されましたが、nettoyer は「清潔にする」「汚れを落とす」を基本義としますので、ここでは不適切です。

                

それでは、日仏の発想の違いに対するセンス、フランス語の単語および表現のニュアンスに対するセンスはどのように培われるのでしょうか。

まず、日頃から辞書(1級であれば仏和辞典だけでなく、Le Petit Robert のような仏仏辞典も)の定義を、用例も含めて丁寧に読み込むのが肝要であることは言うまでもありませんが、さらに、新聞や雑誌などを読んでいて「フランス語独特の表現だ」と感じる表現を自分で書き出して覚えていくのもきわめて効果的です。自分の手を動かし、「表現集」を作っていくのは時として面倒に思われるかもしれません。しかし、このような手堅い作業を通してこそ、1級合格のゴールは確実に近づいてくるのです。


 

第19回 前置詞あれこれ(初級から中級へ)

                  神戸大学教授  松田 浩則 


フランス語の上達には動詞の活用をきちんとおぼえたり、名詞や形容詞の性・数一致の規則を習得したりする作業がとりわけ肝心なことは、今さら力説するまでもありませんが、前置詞の用法をきちんと把握しておくことも同様にきわめて重要です。前置詞というと、すぐに à、de、en、pour、dans などが思い浮かぶでしょうが、これら基本的な例を含む多くの前置詞には、多種多様な使い方があり、それらを確実に習得することでフランス語力のアップがはかられるはずです。
 

                


今回は、日本人が苦手とする前置詞の習得法を、2014年度春季4級の問題 [6] を手がかりに探っていきましょう。  

(     ) の内に入れるべき最も適切な前置詞を3つの選択肢の中から選ぶ問題です。

 (1)  Elle se promène (     ) la plage.
    ①    entre      ②    pendant        ③    sur  
 (2)  Il est à Paris (     ) trois jours.
    ①    à            ②    avec             ③    pour
 (3)  Il y a une rivière (     ) la maison.
    
①    chez       ②    derrière       ③    en
 (4)  Qu’est-ce que vous ferez (     ) vos études ?
    ①    après      ②   depuis          ③   vers

 

(1)から見ていきましょう。

 (1)  Elle se promène (     ) la plage.

          ①   entre      ②   pendant        ③   sur  

選択肢の ① entre が「~と~の間」、② pendant が「~の間に、~の間ずっと」、③ sur が「~の上」という意味だと大体の見当をつけておきます。そのうえで、(1)の全体がどのような意味になるかを考えてみると、「彼女は浜辺を散歩している(する)」となりそうです。①や②では文の意味が成立しませんので、③が入って Elle se promène ( sur ) la plage. となります。それほど難しくはなかったはずですが、得点率は66%にとどまりました。

ここでの sur の使い方は、たとえば、Il y a un livre sur la table. 「テーブルの上に本が一冊ある」と同じように、「事物の表面との接触」を表す最も基本的な用法に属しますので、確実に覚えてください。少しレベルが高くなりますが、sur に関しては、たとえば Je vais trouver ce CD sur Internet. 「私はそのCDをインターネット上で見つけるつもりだ」(場所)、とか Cet hôtel donne sur le lac Léman. 「そのホテルはレマン湖に面している」(「〜に面して」、方向性)などの便利な表現もありますので、ぜひ覚えておきましょう。

さらに、同じ se promener 「散歩する」でも、たとえば、Le dimanche, beaucoup de gens se promènent dans les rues. 「日曜日には、たくさんの人が街を散歩する」の場合は dans を用います。これはフランス(ヨーロッパ)の「道」rue(s) が、建物群に囲まれた「谷の底」にある、つまり建物群の中に組み込まれている、という発想から使われています。また、例えば J’aime me promener en voiture. 「私はドライブをするのが好きだ」の場合の en voiture では、移動手段や方法を示す en が使われています。「飛行機で」 en avion、「電車で」 en train などと表現できます。

 

 (2)  Il est à Paris (     ) trois jours.

          ①   à         ②   avec        ③   pour  

(2)も同じように、それぞれの選択肢の意味を考えながら、文全体がどのような意味になるかをまず大まかに把握します。文の前半 Il est à Paris が「彼はパリにいる」という意味になるのはすぐにわかるはずですが、① à 「~で、~に」、② avec 「~といっしょに」、③ pour 「~のために」と、それぞれの前置詞が最も頻繁に使われる平均的意味の範囲内で考えているかぎりでは、文全体が明快な意味をまとうとは言えません。ここでは、pour に「~の予定で」という「時期や期間」を表現する機能(使用法)があることを前もって知っている必要があります。正解は Il est à Paris ( pour ) trois jours. となり、「彼は3日間の予定でパリに (来て) いる」という意味になります。得点率は72%でしたが、なかなか難しい使用法だと言えます。

同種の用法としては、たとえば、-Vous partez pour combien de temps ? 「どれくらいの期間、旅立たれる予定ですか」 -Pour un mois. 「一ヵ月の予定です」、-C’est pour quand, ton départ ? 「君の出発はいつの予定?」 -Pour dans un mois. 「一ヵ月後だよ」などが挙げられます。最後の例は、Pour (dans un mois) と理解すればいいでしょう。「dans +時間表現」は「〜(の期間の)のち」という意味になりますので、「1ヵ月後の予定で」という意味が成立するわけです。

 

 (3)  Il y a une rivière (     ) la maison.

          ①   chez      ②   derrière        ③   en  

(3)選択肢 ① chez はほとんどの場合、Je reste chez moi cet après-midi. 「今日の午後は外出しないで家にいます」、Va chez le boulanger acheter du pain. 「パン屋さんでパンを買ってきて」のように「 chez +人」という形で使いますので、① は簡単に排除できます。③ en は、様々な意味で用いられますが、文脈から推してこの文の内にすっきり収まる気配はありません。すると、消去法で ② derrière 「~の後ろに、裏に」が正解だと推測でき、Il y a une rivière ( derrière ) la maison. 「その家の後ろには小川が流れている」に辿り着きます。derrière は他の前置詞と比べて用法の数が少ないので比較的容易だったはずですが、得点率は66%にとどまりました。

ざっと整理しておきますと、空間的に「~の前に」は devant、「~の後ろに」は derrière を用います。ちなみに、時間的に「~の前に」は avant を、「~の後に」は après を使用します。

 

 (4)  Qu’est-ce que vous ferez (     ) vos études ?

          ①    après      ②    depuis        ③    vers  

(4)文の動詞が単純未来形であることに着目しましょう。文全体の意味は、「(あなたは)勉学を終えたら(卒業後)、どうする予定ですか」となるはずです。② depuis 「~以来」、③ vers 「~頃;~に向かって」では適切な文が成立しませんので、① が入って、Qu’est-ce que vous ferez ( après ) vos études ? となります。得点率は62%でした。

上述した通り après は、時間的に「~の後に」という意味で使われます。熟語的に Après vous. と言う表現がありますが、「あなたの後に」という文字通りの意味から、「お先にどうぞ」という転義が派生します。ただし、たとえば、Le chien court après un chat. のようなケースでは、「犬が猫を追いかけている」となり、時間的な「後続」のニュアンスは希薄になり、むしろ「欲望の対象」を追求する意味合いが強まります。
 

          

   
   

以上の記述からも推察されると思いますが、各前置詞の「守備範囲」(基本義)をきっちりと押さえることを、まずは学習の基礎に据えましょう。その後、さまざまな前置詞が、さらにいかなる使用法へと派生的に広がって行くのか、その広範な意味のネットワークを複合的に把握することが、フランス語の上達には欠かせないと思います。そのためにも、具体的なフランス語の例文とともに、たくさんの用法を覚えていくよう、地道な努力を怠らないで下さい。



 

フランスに住みたい!!

2013年秋季準2級合格
松本 賢治
公務員・東京都

私は今回仏検を受験するにあたって、ほぼ初めてフランス語を学ぶような状態から始めましたが、まずはフランス語特有の言回しや言葉選びの感覚を身に付けたいと考え、例文を暗記するところから始めました。また、数多くの例文に触れる中で、動詞や形容詞の活用、単語の並び順、代名詞の用法など疑問に感じた部分を参考書で調べていくという方法で文法を学びました。

こうした勉強と並行して仏検の過去問を解いてみると、単語力とリスニング力が不足していることに気付き、対策を始めました。リスニングについては、音声を聴くだけではなかなか上達しませんでしたが、自分の口に出して発音する練習を始めたことがきっかけで、急に聴き取ることができるようになってきました。

他にも過去問を解いていく中で弱点を見付けては対策するということを繰り返していくうちに、だんだんとフランス語が身に付いてきました。

そのおかげで、勉強を始めて約1年程経った頃のパリ旅行の際には、つたないながらも現地の人達とフランス語でふれあうことができ、これまで勉強してきた甲斐があったと深く感動しました。自分で考えたフランス語のフレーズが初めてフランス人に伝わったときの喜びは、今でも忘れられません。カフェ店員の方やホテルの方等と一緒にたくさん写真を撮らせていただいたので、次回パリに行くときには、また彼らに会いに行って、フランス語で書いた手紙と一緒に写真を渡したいと思います。そして、そのときにはもっと会話ができるように、勉強して行きたいです。

仏検は非常にバランス良く問題を構成しているので、過去問を解いてみると自分のどこが弱いのかがよく分かるし、日常的に使用されるフレーズや熟語が多く含まれているので、試験勉強をすることで、自然と会話力も身に付くように思います。フランス語は一つの単語が多くの意味をもっていたり、複数の単語を組み合わせることで想像していなかったような意味が生まれたり、勉強をしていると毎日新しい発見があります。新しい文章に出会うと、「この単語にはこんな意味もあったのか」といつも驚かされます。最近は仏作文の楽しみに目覚めてきました。フランス語で自分の考えを表現するだけでも嬉しいのですが、それがフランス人に伝わったらと思うと、とてもワクワクします。

私は学生の頃からパリがとても好きで、いつかフランスに住みたいと願っていました。もし少しでもフランスに住むことができたら、限られた期間の中で最大限の知識を吸収したいと思います。そのためにも、フランス語の能力を日々高めていくことができるよう、努力を継続していきたいと思います。

韓国におけるフランス語の現状

                     チェ・ミギョン 
(会議通訳者・ソウル梨花女子大学通訳翻訳大学院教授)

今季の「APEF通信」は、ソウル梨花女子大学通訳翻訳大学院教授で会議通訳者も務めていらっしゃるチェ・ミギョン氏に、韓国におけるフランス語教育の現状に関するエッセイをお寄せいただきました。是非ご一読ください。(原文フランス語はこちら

 
 
この20年の間に、韓国におけるフランス語教育は中等教育で大きな後退を経験した。フランス語を担当する教員はその犠牲となり、英語や他教科の教育へと変更を余儀なくされた。状況は、今のところ、安定しているように見える。アフリカのフランス語圏との交易が盛んになっているおかげで、高等教育ではフランス語に対する関心が明らかに回復してきている。これらの国々との公的なパートナーシップや民間の投資により、フランス語を使う通訳者、翻訳者、プロの職人への求人が高まっていることが、もはや文学ではなく、職業を目的とするフランス語教育をめざすように圧力をかけているのである。

フランス語教育(1900 - 2005)

韓国におけるフランス語教育はフランス人司祭によって聖書やカテキスムの翻訳とともにはじまり、これを目的としていた。植民地時代に消滅したフランス語はその解放後に復活するが、「日本の影響下、めざす目標は人文主義的教養の習得になり、実践的な目標は軽視され、学びの中心は文学が対象となる。」(ミヨー、2011 : 28)この傾向は韓国社会に完全に適合し、孔子の伝統にそまったこの社会は自然と文学研究に力を入れるようになる。独裁政治(1960-1980)の間、実存主義の虜となった韓国の知識人はフランス語の学習に自ら熱心に取り組んでいく。イ・オリョンやノーベル賞候補者で大江健三郎の友人であるファン・ソクヨンのような有識者は、高校でフランス語を学び、サルトル、マルローそしてカミュを、またスタンダール、フロベール、ボードレール、ランボー、ジィド…などを読んだ。

中等教育で必修の第2外国語は1990 年代初頭まで、女子生徒は英語に加えてフランス語を、男子生徒はドイツ語を学ぶように勧められていた。ロシアやとくに中国などの周辺諸国との付き合いやグローバリゼーションも手伝って、生きた第2言語の教育が急速に進んでいく。中国語や日本語に目を向ける高校生が次第に増え、フランス語とドイツ語は影が薄くなっていく。教授法がふさわしくなかったり、習得の難しい言語だと考えられていることなどの要因がフランス語にマイナスに働いていく。中等教育最終試験はその成績で受験生が受験したい大学を決定するが、この試験でフランス語は不利になる。日本語や中国語、アラビア語でさえ、フランス語よりも良い成績をより簡単にとれるからだ。

2011年に政府は第2外国語の必修を廃止する。以後、自由選択科目となり、第2外国語を選択する生徒数が1年間で71万6千人から59万6百人へと大きく落ち込んだ。ドイツ語がいちばん打撃を受ける。2012年、ソウルにある196の高校が日本語教育を実施している。176校が中国語を、わずか27校だけがフランス語を教えている。各高校の自由裁量に任せたことが、中等教育最終試験でより簡単に良い成績のとれる科目に集中するという結果を招いた。ただ学区によっては第2外国語教育に熱心に取り組んでいるところもある。キョンギやチュンブク地域の学区がその例で、2013年11月にフランス大使と大学のフランス語教員が出席して討論大会を開催している。いくつかの学区では、高校と大学の連携による教育を行っていて、高校生は自分の高校のカリキュラムにフランス語がないとき、大学のフランス語の授業を受けることが可能になっている。

また外国語専門高等学校が存在し、多くの家庭が志望する優秀な学校になっている。ソウルには6校ある。そこではネイティブスピーカーが教育の大半を担っている。生徒たちは高校1年から1つの言語を専門に勉強する。高校卒業の時点で大学1年次または2年次修了にも匹敵するレベルを身につける。彼らは自分が専門とした外国語に余裕があるため、大学では専門を2つ選ぶことが多い。

2007年に導入したフランス語能力検定資格試験のひとつであるDELF/DALF(「仏検」という独自の資格試験をもつ日本と異なり、韓国はそのときまで検定試験がなかった)はフランス語学習者数の維持に間違いなく貢献した。DALF C1の資格をもつ高校生はほぼ自動的に大学への入学が許可される。この措置によってDELF/DALFへの関心が高まり、2013年度の受験申込み者は7,950名で、韓国は世界で最も多くのDELF/DALF受験者を迎える国になっている。若者の資格試験に対するモチベーションは、競争が激しい環境で、自分を大半の若者と区別してもらう資格を取得する必要性に起因している。英語に次いで、第2の西洋言語であるフランス語は、今日、エリートが選択する言語とみなされている。

高校生はまた中等教育最終試験の英語を別の第2言語に置き換えることができる。これにより2012年には3,433名の高校生が英語の代わりにフランス語を選択してバカロレアに相当する試験を受けた。

  *  *  *

高等教育では1990年代から英語一極化がすすみ、1997年の金融危機がこの流れを加速させた。フランス語科は閉鎖され、ヨーロッパ文明研究と呼ばれるもののなかに取り込まれてしまう。大学生は英語のテスト(TOEICまたはTOEFL)を受け、輸出中心の経済のなかでは理解できることではあるが、その成績は世界のビジネスを英語で行う大手企業の採用時に決定的な意味をもつ。このようななか、国立ソウル大学は受験生に入学試験で第2外国語の受験を課している。

高等教育におけるフランス語の状況は停滞気味である。しかしながら福島の事故で日本語科の受験生の減少が起こり、フランス語科には幸いしたことを述べておこう。フランス文化と文明の授業はとても人気がでており、受講者数は継続して増えている。ただフランスの言語と文学研究はこの流れにのれていない。英語科でも同じような現象を経験している。学生は実践的な学びにより多くの関心をもち、シェークスピアへの関心はうすれている。いずれにしろ70の大学のフランス語科は、職業を目的とするフランス語教育のプラス面を体験し始めている。
 

ビジネス言語のフランス語と職業教育

文学と文化が、韓国ではフランス語に対する関心の源であったが、これからは経済的かつ産業的理由がこの言語の将来性を担うようにみえる。韓国によるTGVの購入がおそらくこの節目を記すものであろう。2004年に開通したソウル - 釜山(プサン)間、ソウル - 木浦(モッポ)間の超特急路線の交渉と建設そして技術移転によって、フランス語有資格者の雇用が必要となった。交渉会議、技術者やエンジニアの養成およびメンテナンスの講習会が多くの通訳者の募集につながった。数十万ページに及ぶ技術資料がフランス語翻訳者によって訳されなければならなかった。

パン・ギ・ムンが国連事務総長に選出されたことは、フランス語教育に新たな支持をもたらした。フランスが安全保障理事会の常任理事国であったため、彼のフランス語の知識がたとえ不完全なものでも彼を選出する決定打であったことを知る機会となった。また、パン・ギ・ムンは以前、外務大臣としてアフリカを数多く訪問しており、他方では、ノ・ムヒョン大統領は2005年にアルジェリアと戦略的互恵関係に調印しており、このことが韓国とアフリカのフランス語圏との強い協力関係のはじまりを印すものとなっていく。韓国はこのあと新しい都市建設やインフラ整備、地下鉄路線、石油化学工場建設計画など、アルジェリアにおける存在感を強めていく。多数の開発計画が韓国開発機関公共支援基金(韓国国際協力団)を通して、チュニジア、モロッコ、コンゴ民主共和国、ガボン、セネガル、マダガスカルで進められている。このように進展することで、韓国外務省は中東アフリカ局およびアフリカ諸国内の外交ポストに通訳者と翻訳者の採用を押し進めた。

サムスン、韓国GM (旧デーウ)、ヒュンダイ、ドンウォン、ドンミョンのような大規模なコングロマリット(複合企業)を代表する私企業が、今日、アフリカ大陸で存在感を高めている。KEPCO(韓国電力公社)のような国営または民営会社はフランス語の資格をもつ人材を募集している。フランス語の専門家は英語、中国語または日本語の専門家と比べて数が少ないため有利である。アフリカのポストを引き受ける人たちの報酬は多くの場合、大卒で就職した人より2倍から3倍高い。「インクルト」(韓国の就職情報サイト)の採用ポータルサイトに「フランス語のできる人優先」という文言が掲載されているのをよく目にする。マリアンヌ・ミヨーの報告によると、同じサイトで2006年(アフリカとの協力関係の開始時期)から2008年の間に、最も求められている言語であるフランス語の専門家に対する求人が15倍に増えた。長い間、フランス語を選択した学生たちに唯一採用見込みがあったのは教職と…フランス大使館ぐらいだったのに。韓国に開設されたフランス企業は、逆にフランス語振興のために少しも尽力していない。転勤してきた管理職はここでは英語での業務を選択しているからだ。

求人の一部はメディアからもきている。聯合ニュース(通信社)、KBS公共放送、季刊『コリアナ』、この雑誌は国際社会に韓国を知ってもらおうと、多くの記事をフランス語に翻訳させている。出版業界もまた通訳・翻訳専門養成所で育成されたプロの翻訳者を採用しているが、20年ほど前は大部分の翻訳はまだ大学教員によって行われていたのだ。韓国は翻訳・通訳養成所を2校もっていること(ソウルにある梨花女子大学と韓国外国語大学の大学院)を誇りにしており、6、7年前から、この養成所の受験者数が毎年、目に見えて大幅に増加している。私の養成所のフランス語科の学生は、卒業前でも、官公庁や大手の産業グループに数多く採用されている。

*  *  *

文学の言語であった韓国のフランス語は、一貫性のある将来を見据えた言語政策の欠如と英語一極化に苦しめられてきたが、2000年代半ばから新たな正当性を見いだしている。フランス語が韓国の労働市場でこんなに注目されたことは今だかってなかったと言ってよい。DELF/DALF資格試験の受験者数も、フランス語で仕事のできるプロの募集もこのことを証明している。

フランス語への関心を取り戻すことができたのは、プロの育成教育、すなわち非常に高いレベルの資格をもつ卒業生を労働市場に輩出してきた通訳翻訳者養成所が実施する教育にある。これからは好循環になりそうだ。雇用主はフランス語のプロが非常に優秀であると信じているため彼らを探し求め、フランス語のプロは自分たちの能力を欲しがる市場の存在を確信し、さらに能力を高めようと努めているからだ。この好循環は、若い女性(伝統的にフランス語学習によりすすんで目を向けてきたのは彼女たちだから)により一層の利益をもたらし、彼女たちが今日の韓国労働市場へ大勢参入するお供となっている。

アフリカのフランス語圏における多くの公共市場や開発計画は、まだ入札募集や契約調印の段階であること、またアフリカは年5%の平均経済成長率を記録していることを考慮すれば、韓国での職業を目的とするフランス語の未来を信じるだけの理由はあるのだ。

 

[関連サイト・参考文献]
http://www.koreaherald.co.kr (Recruiters seek speakers of French, Russian) (英語)
http://www.incruit.com/ (韓国語)
http://french.yonhapnews.co.kr/ (仏語)
Marianne Milhaud, « Paradoxe et perspectives du français en Corée », in Synergies Corée, n° 2, 2012. 

                 (原文仏語 訳:中村敦子)

思わぬ喜び

2013年秋季準1級合格
笠井 絹子
東京都


フランス語の学習歴は15年になりますが、まさか自分がこんなに長くフランス語を続けるとは思っていませんでした。

フランス語との出会いは、大学での第ニ外国語の授業です。当時は試験のために基礎文法を覚えるのがやっとのレベルでした。

大学卒業後は日本語教師となり、日本での大学進学をめざす外国人に日本語を教えていましたが、片言しか話せなかったはずの学生が、みるみるうちに上達していく姿には本当に驚きました。そんな彼らを見て、私も外国で言語を習得したい!と強く思うようになりました。そこで選んだのが、かろうじて基礎をマスターしていたフランス語です。

渡仏して最初の数ヶ月は発音がまったく通じず、ホームステイ先のマダムに辞書を見せながらコミュニケーションをとる毎日でした。
それが時間とともに、まずフランス語が理解できるようになり、そして少しずつ話せるようになっていきました。

1年間の語学留学の後、縁があってまたフランスに戻り、映像翻訳の仕事に就くことができました。結局4年半もの間フランスで生活しましたが、自分のフランス語に自信をもつことはできませんでした。日常会話には困りませんが、きちんと体系的に上級レベルまで学習した経験はなく、時事ネタなどの話にはついていけませんでした。

帰国してからもなんとなくフランスの新聞を読んだりラジオを聞いたりしていましたが、仏検を受けようと思ったのは、この「なんとなく」続けてきたフランス語のレベルを客観的に知りたいと思ったからです。

学習方法としては、毎日フランス語の新聞を読み、日本とフランスの時事ネタをフランス語で理解できるように訓練したり、インターネットラジオを聞いて新聞で使われるような単語を耳からも覚えるようにしました。また、口頭試験直前には、フランス語学校で自分の「上品ではない」話し方を試験にふさわしい「正しい」フランス語に直してもらい、集中的に口頭表現を学習をしました。この面接練習のおかげで当日は緊張せずに話せたので、とても有効だったと思います。

その結果、試験に合格したことはもちろん嬉しかったのですが、いつの間にか以前よりもフランス語の理解力が上がっていたことに何よりも喜びを感じました。これはまったく期待していなかったことで(考えてみれば当然の結果なのですが)、試験勉強を通して日常的に役に立つ能力を身につけることができていたのです。

試験に合格するために勉強しましたが、その後に思わぬ喜びが待っていました。以前よりもさらに楽しくフランス語の文章を読み、ラジオを聞くことができるようになりました。そして自分のフランス語に少し自信が持てたように思います。

この試験の先にある可能性を励みに、次のステップを目指していきたいと思います。


 

フランス語が私にもたらしてくれたもの

2013年秋季3級合格
小林 咲
学生(アンスティチュ・フランセ東京)・埼玉県


フランス語を話せるようになりたい、フランスをもっと知りたいという思いを持つようになったのは、遡ること私が物心ついた頃からあったような気がします。 

私が生まれる前、父の仕事の関係で両親と5つ離れた姉はフランスに住んでいたことがあり、私も小さいころからフランスの話を聞いたり、日本に来られる父の知り合いのフランス人の方と幾度か会う機会を通し、私にとってフランスは遠いようで近い、何だか特別な…そういう存在だったような気がします。私が小学生の頃、父に初めてフランス語の小さな辞書を買ってもらったことを思い出します。 

そんなフランスへの思いを持ちながら、語学学校でフランス語を学び始め、全くの初心者だった私は、フランス語で行われる授業の中で先生が話されていること、質問の内容も分からないことばかりで、「本当に理解できるようになるのか…」と思う日々でした。ですが、気持ちの中には、幼少のころからあった「フランス語を話せるようになりたい、フランスの事をたくさん知りたい!」という強い思いが変わらずあり、学校に入った初めての夏に、手探りでしたが今まで勉強したことを全て復習し、必死に机に向かいました。すると徐々にですが、以前とは違うものを感じることができるようになりました。それは先生の話すフランス語が以前に比べて理解できるようになり、自分が話したいことも少しずつ表現できるようになったということです。

それは私にとって何より嬉しいことで、「次も、もっとフランス語で先生と話せるようになりたい!もっとフランス語を通してフランスを知りたい!」という思いが強くなりました。その思いは今でも私の原動力になっています。

私の通う語学学校には様々な目標を持って来られる方が沢山いらっしゃいます。日本の大学からフランスの理系屈指の学校へ進む人、バレエ留学、音楽の留学、子育てを終えられて夢を叶えるためフランスへ渡った方、また、日本にて、フランス語の仕事に就くために努力をされている方。それぞれの環境の中で、目標の実現に向かい自分を信じて前に進んでゆく方々との出逢いは、私の人生の指針になったといっても過言ではりません。私がフランス語を始めたころから受け持ってくださっているフランス人の先生との出逢いも同じく、大きなものでした。時には厳しく、時には温かく、私のフランスへの想いや、上達したいという気持ちを応援してくださり、その先生から一から教えて頂けたことは、とても幸運なことだったと思います。感謝の気持ちでいっぱいです。

そして、昨年の秋、長年の夢だったフランスに初めて行くこととなりました。そこでも私は大切なものにたくさん出逢うことが出来ました。今まで学んだことを自分から発信して通じたときの喜び、日本とはまた違った独特の空気感や空の色、何よりずっと自分が行きたいと願っていた場所に実際に自分が立っているということが、言葉には出来ない喜びと感動でした。フランスが益々大切な存在になりました。「フランス語を学ぶ」という一つの枠組みから一歩出てみると、そこには新しい価値観や多くの発見があるということも知りました。

幼いころから憧れていたフランス、そしてフランス語は、今は「憧れ」ではなく明確な「目標」へと変わり、実際に言葉で表現することが出来る喜び、また、学ぶ事を通して出逢った多くの人や価値観は私にとってかけがえのない宝物となっています。

フランス語との出逢いは私に大きな目標をもたらしてくれました。夢に向かってこれからも努力していきたいと思います。

 

モンテーニュ『エセー』をフランス語で読みたくて

 Montaigne m’a invité à découvrir l’univers du français


Tomoki SAKAKIBARA
 
 2013年春季1級合格・エールフランス特別賞候補 
榊原 知樹 
翻訳業・東京都 


Tous les matins au réveil, la première chose que je fais avant de sortir du lit, c’est de lire les Essais de Montaigne, un livre français. D’habitude, je n’en lis pas beaucoup, une page ou moins, voire quelques centaines de mots car j’aime lire lentement ce qui m’apparaît important, savourer ce qui est délicieux. Pour moi, cette lecture est le petit-déjeuner de l’esprit, un instant de sérénité pour bien me préparer à affronter la journée qui commence. 

Montaigne est un écrivain humaniste du XVIe siècle. J’ai commencé par lire son œuvre traduite en japonais il y a plus de quinze ans. À cette époque, j’avais eu la sensation d’avoir trouvé un ami, ou plutôt un oncle au parler franc qui n’hésitait pas à partager avec moi ses pensées les plus intimes. J’ai souvent oublié le fait que je lisais un grand homme de la Renaissance qui avait vécu plus de 400 ans auparavant. Mon intérêt pour lui n’a cessé de grandir jusqu’à ce que je ne puisse plus résister à la tentation de le lire en langue originale. 

モンテーニュ『エセー』表紙

J’ai appris le français à l’université comme seconde langue étrangère. Le temps ayant passé, j’ai dû reprendre la grammaire dès la première page. J’ai ensuite lu une dizaine de livres français assez faciles pour m’échauffer. 

En octobre 2008, je me suis enfin lancé dans la lecture des Essais en français, en tant que projet personnel. C’est un volume de 800 pages et je n’avais aucune idée du temps qu’il me faudrait pour le terminer, ni même si je pourrais aller jusqu’à la fin. J’avançais pas à pas, en consultant des dictionnaires et en comparant souvent le texte avec la traduction. Lors du tremblement de terre de 2011, j’ai dû suspendre ma lecture pendant trois mois. Il m’aura fallu cinq ans, mais je l’ai finalement achevée l’année dernière. À peu près en même temps, j’ai passé et réussi le niveau le plus élevé de l’examen de langue française le plus répandu au Japon… S’agit-il d’une simple coïncidence ? 

Pourtant, je dois vous faire un aveu : je n’ai pas tout compris des Essais. À dire vrai, certaines choses se sont avérées bien trop difficiles, et parfois, je ne comprenais même pas pourquoi il les disait. Je ne m’en sens pas coupable cela dit, j’ai seulement suivi l’exemple de Montaigne lui-même, qui confesse que lorsqu’il lit des auteurs anciens et qu’il a des difficultés à saisir leurs propos, il essaie une ou deux fois de comprendre, mais ne poursuit pas plus loin. Je crois qu’il m’aurait permis de faire de même en le lisant. Bien sûr, j’aimerais malgré tout en comprendre un peu plus la prochaine fois que je le lirai. Quoi qu’il en soit, ce que j’ai compris cette fois-ci est bien suffisant pour que ma lecture vaille les années que j’y ai consacrées. 

モンテーニュ『エセー』原書見開き

D’où me vient cet attrait pour Montaigne ? Il a observé ce qui se passait autour de lui et réfléchi sur ses propres pensées. Il a également lu des poètes et philosophes grecs et romains, et en rapprochant ses réflexions et ses connaissances classiques, il a écrit une œuvre de sagesse dont chaque chapitre est un cristal brillant de mille feux. Dans les Essais, il discute de tous les sujets importants que l’on peut concevoir dans la vie : l’amitié, la lecture, l’ivresse, la vanité, la maladie, l’oisiveté, la vieillesse, la mort, etc. 

Ainsi, Montaigne m’a invité à découvrir l’univers du français. Je me suis rendu compte que j’en appréciais la sonorité. C’était passionant de réciter par cœur de petits morceaux de la littérature française. Je pense qu’un beau texte est comme un bijou — un objet d’art créé par un artisan des mots. Un tableau de Picasso, de Cézanne ou de Monet coûte une fortune, mais un beau texte littéraire de Proust, de Flaubert ou d’Hugo ne coûte rien, et nous pouvons garder leurs écrits en mémoire !

Mon dialogue avec Montaigne m’a appris à mieux vivre, à réfléchir sur mes expériences et mes souvenirs et à trouver de la valeur même dans les petites choses qui font de notre vie ce qu’elle est. Son message — bien qu’il soit impossible de faire le résumé d’un ouvrage aussi gigantesque — c’est que la vie vaut la peine d’être vécue et d’être bien vécue. Voici ce qu’il dit vers la fin des Essais :

C’est une absolue perfection, et comme divine, de savoir jouir loyalement de son être.   (Livre III, Chapitre XIII, « De l’expérience »)

La lecture de Montaigne et l’apprentissage du français sont à mon sens deux choses indissociables. Chaque pas que je fais dans l’une me fait progresser un peu plus dans l’autre. Ce qui est sûr, c’est qu’elles resteront toujours de grandes sources de plaisir et d’inspiration pour moi.


* 2013年度成績優秀者表彰式当日に実施されたエールフランス特別賞選考会のために提出されたエッセイを、ご本人の許可を得て転載させていただきました。

 

夢を叶えるために

2013年秋季準2級合格
松浦 千絵
広島県


聴覚障がい者用字幕制作者の試験に不合格という大きな挫折後、「真剣にフランス語を学び直したい!」と思い、学習し始めました。

大学時代にフランス語を学んだものの、その後はフランス映画を観賞したり、「リサとガスパール」や「ペネロペ」シリーズの絵本を読んだりする程度でした。ブランクが長く、四十路半ば近い自分の現状を考えると、かなり無謀かも…、と迷った時には、3回の渡仏旅行の写真を見ては、気合を入れ直しました。因みに、私のベスト4は(多すぎて3には絞り込めません)、長距離バスで訪れた「モン・サン=ミッシェルの絶景と修道院」。ジヴェルニーの日本の橋(モネ)オルセー、オランジュリー、マルモッタン美術館を巡った後で、訪れたジベルニーの夏の花咲き乱れる「モネの家と庭」。TGVで訪れた「近郊都市への1泊旅行」。そして、現地在住の友人のお蔭で堪能した「ワインと庶民の美味しいフランスの食」。ビストロやパン屋さんのみならず、デリや専門店のテイクアウト料理も絶品でした。


20年以上ぶりに、フランス語に再挑戦するために購入したNHKのテキストで、仏検を思い出し、ウォーミングアップに受験することにしました。

2013年6月に4級を受験。多少感覚が戻ってきた2013年秋季試験では、3級と準2級を併願し、9月以降は、準2級に照準を絞って学習しました。学習時間が限られているため、最初にNHKラジオフランス語会話のCDを反復「傾聴⇔音読」し、4月~9月分放送の初級編のディアログを覚えました。2013年の久松健一先生の講座は、仏検に適した内容で、効率よく試験対策を進められました。次に、準2級の攻略本、ガイドブック、過去問題集を繰り返し解いては、間違えた項目を覚えるよう心掛けました。

また仏検HPの「合格者の声」と「学習のツボ」のコーナーも、非常に効果的でした。自宅学習を重視される方にはお薦めです。

準2級の1次試験では、書き取り試験でミスをしました。そこで2次試験に向けて、3年間の過去問題の分析と、NHKのテキストの音読に力を入れました。その甲斐もあり、2次試験の本番では、落ち着いて臨めたと思います。

現在も、学習時間が限られているため、NHKラジオ講座の応用編と、テレビ講座の反復視聴をベースに、毎日フランス語を聴くことを心掛けています。

4度目のフランス旅行を、今度は娘と一緒に実現する日を夢見ながら、2級へのレベルアップを目標に、これからも頑張りたいと思います。

 

在仏外国人とフランス語

2013年秋季準1級合格
円谷 智子
研究員・福島県


私は長年フランスで生活し、大学に在籍していた経験がありますが、語学の勉強はかれこれ10年ぶりでした。日本に帰国後、昔友人からもらった仏検問題集2級と準1級を発見し、試しに解いてみました。日本語の解説を読み、各種辞書を引き、改めてフランス語に外国語として意識して向かい合い、フランス滞在時とは別な頭の部分を使っているような不思議な感覚でした。

特に、日本語からフランス語への変換の難しさを痛感すると共にフランス語表現の奥深さ、面白さを発見しました。日本の文化や社会情勢に関する意見を発表する経験も初めてで、日本でフランス語を話す妙な気恥ずかしさもあり新鮮でした。思い切って受験した結果、時制の弱点、細かいところのいい加減さ、訓練不足が即座に露呈しました。準1級合格後に成績優秀者に選出され、受賞に驚きましたが、久々に向上心が生まれました。

フランス人社会ではフランス語が話せて、読み書きができるのは当たり前です。しかし、フランス語が母国語ではない、生業でもない一般外国人にとって、常に正確なフランス語の運用が求められる生活は試練です。努力不足を認めつつ、私には諦めや苦手意識がありました。フランス生活では、無意識にフランス語で受信し、フランス語で発信していたはずですが、発信においては伸び悩み、むしろ時と共に崩れていきました。日本語の思考や運用レベルに対して、フランス語力が釣り合わないからなのでしょう。環境が変わった今、頭を意識的にリセットし、仏検での「対訳」の訓練も侮れないと感じています。

とはいえ、移民大国のフランスでは、様々な社会問題を抱えながら、多くの外国人がフランス語と母国語を場に応じて使い分け、たくましく生きています。街頭からはいろんな言語、いろんなフランス語が聞こえてきて、いろんな国の文化の共存がフランスという国に彩りを与えているのだと思います。私もいろんなフランス人と出会い、彼らの懐の深さを享受した外国人の一人ですので、今後、対外的に変わらざるを得ないであろう日本社会で、懐の深い日本人になれるように心がけたいです。

カンペール(ブルターニュ)のコルヌアイユ祭り

カンペール(ブルターニュ)のコルヌアイユ祭り


 

2013年度 団体賞受賞のことば

2013年度より文部科学大臣賞団体賞が創設されました。今年3月に実施された成績優秀者表彰式において、受賞団体に賞状が授与されました。仏検における出願者数、その増加率および試験結果等を勘案し、年度を通じたフランス語教育への取り組みを総合的に判断した上で、特に優秀と認められた3団体に授与されます。栄えある第一回目の受賞団体には、拓殖大学、成城大学文芸学部ヨーロッパ文化学科、埼玉県立伊奈学園総合高等学校が選出されました。

 

拓殖大学 寺家村 博 先生

本年度より新設された文部科学大臣賞(団体)をいただけたことに心より感謝申し上げる。1998年度秋季のフランス語検定から拓殖大学は準会場として連続して参加させていただいている。一歩一歩、コツコツと積み上げてきた私たちの歩みをよく見ていてくださり、評価をしていただいたことはこれからの大きな励みとなる。

 検定を取り入れたことで生じた効果に関して簡単に述べさせていただくことで受賞の感謝の言葉にかえさせていただく。まず大学の初年次教育の枠組みの中にフランス語検定を取り入れる試みを行っている。毎年初修言語としてフランス語を選択する1年生たちほぼ全員に秋の検定で5級受験を課している。これは4月から学習してきたことが検定合格という一つの現実の形になる喜びを学生たちに実感してもらうと同時に目標に向かって計画的に学習する習慣を身につけてもらうためでもある。合格で得た自信は専門科目の学習にも波及効果をもたらすのである。第二に検定を目指すことで語学環境を整えられることである。例えば検定に必要な語彙集や共通テキストの作成、検定に特化した演習クラスや検定合格者への表彰制度の設立など具体的な形での整備が進んでいる。受賞を良い機会としてさらに教育環境の整備を一つ一つ実現していきたい。
(写真 右より)髙橋敏夫先生(拓殖大学学長)、長谷川善一APEF理事長 

 

成城大学 文芸学部 ヨーロッパ文化学科 高名 康文 先生

準会場で受験生を増やしていることが、受賞の理由の一つと聞きました。僅かながら貢献ができたことを喜ばしく存じます。 本学の文芸学部と法学部では、仏検合格が、その学期のフランス語の成績に反映されます。共通試験を実施して単位の実質化に努めているという前提も、受験の動機になっているようです。また、検定試験対策用の授業を全学共通科目として設けています。法学部では履修者のほぼ全員が仏検を受験しています。 それにもまして、休日に教室を使わせてくれる大学の柔軟性、監督を手伝ってくれる非常勤の先生方と大学院生、学生の日頃の学習のおかげです。会場責任者の所属学科名での受賞ですが、大学全体で頂いた賞と心得ています。
(写真 右より)高名康文先生、末永朱胤先生(成城大学)、長谷川理事長 

 

 埼玉県立伊奈学園総合高等学校 森内 悠佳子 先生

この度は文部科学大臣賞団体賞に選出して頂き、誠にありがとうございます。生徒、教員一同大変喜んでおります。本校では、学習2年目にフランス語検定4級から挑戦しています。部活動も盛んな中、学業との両立は容易なことではありませんが、年に二回の検定合格を目標にすることで、メリハリのある学習や生徒同士が切磋琢磨する環境ができているのだと思います。近年、本校のフランス語学習者は増加傾向にあります。それに伴い、検定準備にも時間を要しますが、今後とも当検定を学習と教育に有効利用させていただきたいと思っております。また検定実施に当たり、ご尽力を頂いておりますフランス語教育振興協会に心より感謝申し上げます。 
(写真 右より)森内悠佳子先生(埼玉県立伊奈学園総合高等学校)、後藤一也さん(在日フランス大使館賞受賞、同校3年)、長谷川理事長