大人になってから勉強するということ

2015年度秋季2級合格
新井 郷子
大学教員(東京大学医学系研究科)・東京都

今から約20年前に大学の教養課程で第2外国語としてフランス語を2年間学び、それからフランスに憧れを抱きながら、いつかまたフランス語を学びたいなあ、と漠然と考える日々をずっと過ごしていました。でも仕事も忙しいし、毎週語学学校に通うなんて無理かなあ…と考え、何もせずにいた日々。そんなときに起こったのが2011年3月の東日本大震災でした。福島に住む近い親戚が被災し、自分や家族には直接の被害こそなかったものの、東京でも震災後しばらくは節電やそれによる交通機関の混乱で仕事も日常もままならない不安な日々を過ごしたことが、私に人生について考えさせることになりました。そのとき「人生は短い。やりたいことはすぐにやらなければ」と強く感じたのが、再びフランス語を勉強することになったきっかけです。思い立ったその足でフランス語学校の申し込みに行き、それから今日まで、週1回の教室通いを続けています。

20150201sa-01こうして突如始まった私のフランス語教室通いは、幸い気の合う学友や素晴らしい先生達にめぐまれ、楽しく過ごしながらゆるゆると学び続けていつしか約4年という歳月が流れました。そんななか、だんだんと自分の上達に行き詰まりを感じはじめ、このままでいいのかな…と思ったのが仏検を受験したきっかけです。

「ただ授業を受けているだけ」になりつつある自分。このままでは思い描くようなフランス語を喋れる自分は程遠いと感じ、今のレベルを知り、明確な目標に向かって進みたいという気持ちが芽生えてきたのです。そしてまずは準2級と2級に挑戦し、結果、無事両方合格したものの、ここから先へ進むには今とは違う努力をしないと無理だな、という実感も生まれました。

仏検当日は、フランス語関連の専攻と思われるたくさんの学生さん達に囲まれて久しぶりに試験というものを受け、こんなにも多くの若者がフランス語を勉強しているんだなあと感心すると共に、私ももっと早くから勉強を始めていれば…、と少し悔しい気持ちにもなりました。と同時に、普段一緒に学んでいる仲間達の多くは大人になってから趣味で勉強している人ばかりであり、誰に強制されるわけでもなく、純粋に「フランス語が好き」という人達であることが、逆になんだかすごいことのように思えてきました。

それぞれ本業もあり、また若い頃とは違い物覚えも悪くなった年齢で語学を習得するのは決して容易いことではありません。仕事が忙しかったり疲れていたり、途中で息を吐きながらも、ときに仲間と励ましあい、フランス語の勉強を継続すること、それは以前は私にとって生活の‟スパイス“でありましたが、いつしか生活の一部になり、そして今では自分を構成する大切なひとつの要素になっていると感じます。

そんななか今回の仏検受験は、私の終わりなきフランス語学習における現在の自分の立ち位置を確認させ、そしてそれがさらなる目標を与えてくれる良い機会となりました。大人になってから得た一生付き合える趣味、勉強、そして夢として、生涯フランス語を学び続けたいと思います。

 

遅きに失せず ― Mieux vaut tard que jamais

2015年春季1級合格・文部科学大臣賞
小原 功子
通訳翻訳業・埼玉県

フランスの文化にさしたる興味も無いまま、私が某大学のフランス語科に入学したのは、1970年のことでした。30~40名程度の少人数クラスで、実技科目として毎日のように試験はあるし、1分でも遅刻すれば「教室から出て行きなさい!」と言われるし、ひどい所に来てしまったと後悔したものです。

しかし、3年生になると大胆にもフランス語を使うさまざまなアルバイトに勤しみ、現場タタキアゲ系の会話力を身につけ始める一方、学業は疎かになりましたが、奇跡的に4年で卒業できました。それから40年余り・・・仏検なるものの存在すら知らずに時は流れ、フランス語とは無縁の歳月も10年以上ありました。フランス語圏留学経験も在住経験もなく、1~2泊から1ヵ月以上の業務出張やバカンスを合算しても、滞在期間は数年に満たないでしょう。

一昨年に時間的な余裕ができたので、仏検2級から挑戦しようと思いたち、過去問題集を買いましたが、語学試験というものから遠ざかっていた年月はあまりにも長く、「こんな面倒な文法を習っただろうか?」と途惑うばかり。その時から1級を目指したものの、設問を見ても非常に難しく、無謀な挑戦に思われましたが、「不合格なら、潔くあきらめる!」と決めていました。

さりとて秘策はなく、毎朝10分程度TV放映されるフランスのニュースを見聞きし、Le Monde等のWEB版を読み、時事用語や時制の一致といった文法の確認をしましたが、日々30分~1時間程度の勉強が限度でした。フランス語の書籍を入手することさえ困難だった私の学生時代とは比べようもなく、今は無料の教材も溢れていますが、齢を重ねると雑事に追われる上に、記憶力は刻々と劣化することを実感。家族の通院送迎の待ち時間に、車の中で過去問を解くといった状況で臨んだ1級試験は取りこぼしが多く、不合格も覚悟しておりましたので、準1級に続く表彰は、誠にうれしい誤算でした*。

このように、高齢者となってからの遅過ぎる受験かつ粗雑な準備でしたが、おかげさまで仏検挑戦以前より、語彙も増え、自己流デタラメであった表現も整ってきたような気がします。実務では90%以上の正確性が要求されるのに対し、検定試験では60%超なら合格基準のようで、仕事に必要な資格取得のために貴重な時間を割いて挑戦される方々には、年齢学歴不問の親切な制度だと思われます。すでにフランス語を駆使し、活躍されている方々にとっても、ご自分の基礎力を確認する良い機会になるのではないでしょうか。

理想論ではありますが、1級合格は到達点ではなく、言葉は生きものであり、スポーツのように練習と実戦を繰り返して習得するものなので、脳も筋肉のように鍛えるためにも、フランス語を学び続けるつもりです。

また、フランス語は確かに難しい言語ですが、日本語を母国語とする者ならば、外国語の習得にエネルギーを注ぐあまり、日本語力が伴わないのは本末転倒。人それぞれの言語感覚に応じて、外国語と日本語を、そして話し言葉と書き言葉も、同等の質で使えるようになりたいものであります。


*(仏検事務局註)小原様は、2014年度成績優秀者表彰式でも準1級で文部科学大臣賞を受賞され、2015年度は1級での連続受賞を遂げられました。おめでとうございました!

 

人生を通じたフランス語 ― 現在5合目、山頂を目指して

2015年春季1級合格・在日フランス大使館賞
S.Y. (フリーランス翻訳者)


私は、中学校2年の時、パリの華やかなイメージとフランス語の美しい発音に魅了されて、外国語大学でフランス語を勉強する目標を掲げました。
将来の夢はフランス語の通訳になることでした。
そして、高校では目標の大学に合格するため、受験勉強に専念しました。

高校生になると、私の内気な性格から、通訳よりは翻訳の方が向いているのではないかと思い始め、将来の目標を翻訳へと切り替えました。

念願の大学に合格後、フランス語を勉強しましたが、私の努力不足で、大学卒業時には、まだ仕事で使えるという自信はありませんでした。
地元の企業に就職し、英語を使う仕事で勤務していましたが、やはり私の一番の夢はフランスに行き、フランス語力を高めることだと思い、数年後、会社を辞めて渡仏しました。

« Petit à petit, l’oiseau fait son nid. » 

オンタリオ州にて現在は翻訳の仕事をしていますが、それまでの道のりは容易いものではなく、どうやってたどり着けるか分からない模索の日々が続いた時期もありました。そんな状況の中でも夢を諦めなかったのは、フランス語への愛着と、フランス語を使う仕事をしたいという強い願いを持っていたからだと思います。

フランス語の勉強を通して得られたものは、フランス語力だけではありません。

大学生の頃、何度か訪れたモントリオールでは何人かの親しい友人ができ、その後も長年、友人関係が続きました。
フランスでは翻訳の仕事仲間もできました。
私の人生は、フランス語を通じて出会った友人と得られた経験により、豊かなものになったと思います。

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ロレンシャンの紅葉

先日、福岡のホテルの受付でインド人の方が働いていらっしゃり、少しお話ししました。英語を解する外国人のお客様には英語で、日本人には流暢な日本語で対応していらっしゃったので、随分前から日本に住んでいらっしゃるのですか、と質問をしたところ、昨年、日本に来ました、というお返事で、とても驚きました。

短期間の滞在なのに物怖じせず、上手な日本語をお話しになっている姿を拝見して、長い間フランス語に携わっている私は、もっと自信を持って、最初の夢である通訳に一歩踏み出してもいいのではないか、と思い始めました。
フランスにも数年滞在し、リスニング力も上がった今、以前の私では到底叶えられないと思っていた夢に立ち向かう勇気が持てるようになったと思います。

これからも私のフランス語人生はまだまだ続きそうです。
皆さんも、心引かれるままに、有意義なフランス語人生をお送りになられますようにお祈りしております。

追伸:先日の表彰式ならびにレセプションにご招待頂き、ありがとうございました。めったにないこのような機会に、他の合格者の方々ともお話ができ、今後の人生に資する有意義な時間になったと思います。

 

2015年度 団体賞受賞のことば

文部科学大臣賞団体賞は2013年度に創設され、その年度における出願者数とその増加率および試験結果等を勘案し、年度を通じたフランス語教育への取り組みを総合的に判断した上で、特に優秀と認められた3団体に授与されます。2015年度は、お茶の水女子大学、東海大学湘南校舎外国語教育センター、共同受賞として神奈川県立神奈川総合高等学校・神奈川県立横浜国際高等学校が選出され、今年3月に実施された成績優秀者表彰式において、賞状と記念の楯が授与されました。


お茶の水女子大学 田中 琢三 先生

(写真左より)アカデミック・アシスタント 梶谷彩子様(お茶の水女子大学)・西澤文昭APEF理事長

この度は文部科学大臣賞団体賞を頂けることとなり、大学でフランス語教育に携わる者の一人として望外の喜びです。本学では「グローバル人材育成推進事業」のもと、外国語学習のための環境が整備され、ここ数年で仏検の受験者数が大幅に増加しました。フランス語教育に尽力され、仏検の周知に努めていただいた教職員の皆様、そして何よりもフランス語を熱心に勉強してくれた学生たちに深く感謝しています。この受賞を励みとして、今後も我が国のフランス語教育の一層の発展のために努力していきたいと思います。最後になりますが、このような素晴らしい賞を与えて頂いたフランス語教育振興協会の皆様に心より御礼申し上げます。
(写真左より)アカデミック・アシスタント 梶谷彩子様(お茶の水女子大学)・西澤文昭APEF理事長

東海大学国際教育センター・国際言語教育部門 惟村 宣明 先生

(写真左より)惟村宣明先生(東海大学)・西澤理事長

この度は栄誉ある賞を賜り、大変嬉しく、また有難く思っております。私達は、第二外国語としてフランス語を学ぶ学生に目標を与えるために、また、各級の取得が彼らの将来の手助けとなる事を願って仏検受験を勧めてまいりました。近年本学の受講生たちは一層高いレベルを目指して自覚的に学習に励み、大きな成果を上げるようになってまいりました。これも全て仏検があったからこそと感謝いたしております。私達は、フランス語の鍛錬を通して学生たちが国際性を涵養し、人格を陶冶し、グローバル社会で活躍出来るよう、ますます努力してゆく所存です。末筆ながら、私達の活動にご理解ご協力をいただいた関係諸氏、諸機関に深く感謝の意を表します。
(写真左より)惟村宣明先生(東海大学)・西澤理事長


神奈川県立神奈川総合高等学校 
鈴木 典子 先生

(写真左より)鈴木典子先生(神奈川県立神奈川総合高等学校)・西澤理事長

このたびは栄えある文部科学大臣賞団体賞をいただき、校長以下職員一同心より喜んでおります。神奈川総合高校では5年前より横浜国際高校と合同で準会場を実施し、生徒のフランス語学習のモチベーションの向上をはかってまいりました。仏検は生徒達にとって日頃の学習成果を試すことができる好機であると同時に、自学自習の精神を育む機会にもなっています。事実、本校では自学自習でさらに上の級にチャレンジしようとする生徒も多数おり、フランス語担当者としてもできる限りのサポートを行っております。今後も仏検を大いに活用させていただきながらフランス語教育に取り組んで行きたいと考えています。
(写真左より)鈴木典子先生(神奈川県立神奈川総合高等学校)・西澤理事長


  神奈川県立横浜国際高等学校 松本 卓也 先生

(写真左より)松本卓也先生・高木陽子先生(神奈川県立横浜国際高等学校)・西澤理事長・ 横浜国際高等学校高校のみなさん

この度は団体賞に選出して頂き、心より感謝申し上げます。
本校は名前に「国際」を冠していることから、必修の第二外国語の一つとしてフランス語を設置しており、非常に多くの生徒が学んでおります。進度は非常にゆっくりとしたものですが、生徒が発展的学習を望む気持ち、学習の証を何らかの形で残したいという気持ちに応えるために、補習の時間等を活用して日々指導にあたっております。今後も仏検が大学生・社会人だけではなく、高校生にとっても自己実現の目標として魅力あるものであり続けることを願ってやみません。最後になりますが、本校と共に準会場として試験を実施し、会場を貸与して下さっている神奈川総合高校の皆様に御礼申し上げます。
(写真左より)松本卓也先生・高木陽子先生(神奈川県立横浜国際高等学校)・西澤理事長・ 横浜国際高等学校高校のみなさん



福岡大学のフランス語教育と団体受験の利点

山本 大地(福岡大学人文学部フランス語学科)

福岡大学のフランス語教育

フランス語を話せるランゲージプラザ

福岡大学人文学部フランス語学科は1学年45〜50名程度に対して、教員は11名という体制を維持しており、各地の大学でフランス語専攻の縮小化が進む中、我々は恵まれた環境にあります。第二外国語への全学的な取り組みも盛んで、一例を挙げると学習言語を気軽に実践できる “ランゲージプラザ” があります。月曜はフランス語、火曜はドイツ語と、毎日各言語の母語話者が待機しており、そこに来ればおしゃべりすることができます。また正課外教育を担うエクステンションセンターでは、仏検対策講座を開講しています。本学の学生がほとんどですが、社会人の方もしばしば受講されており、仏検は大学と地域をつなぐかけ橋にもなっています。

語学研修の様子フランス語学科では総合的なフランス語学習およびフラン文学・言語学の授業が充実しており、希望者はフランス語と英語の教員免許も取得できます。2016年度からフランス人のフランス語教育の専門家も一人増えるので、今後FLEを専門にしたい学生にも対応できる体制を作れるかもしれません。2年次にはベルギーのルーヴァンカトリック大学で3週間の語学研修が実施されています。ベルギーの後パリにも1週間滞在しますが、学生の声を聞くとベルギーの滞在のほうが現地の学生との交流が盛んなため、充実感があるようです。

授業資料私は主に初級・中級文法の授業を担当しています。本来検定試験は普段の学力の腕試しであるべきですが、中級レベルではどうしても仏検を意識してしまいます。3級以降は動詞を活用させる問題があり、学生はこの問題が大変苦手です。そこで3・4年の文法の授業では、授業時間の半分を動詞の活用の体系的な習得に費やすことにしました。éteindre, recevoirのような、日常語なのに初級では教える余裕がない動詞を選んで取り上げています。綴りと発音を教え少し時間をとった後、パワーポイントを利用してランダムに動詞を表示し、学生は指示された時制・法で答えるという活動を行います。40分も動詞の活用のみをやり続けるのは学生にとって容易ではありません。「先生の授業ゴリゴリっすよー」とも言われました。しかし何が出てくるかわからない緊張感とゲーム感覚もあって、学生は能動的に参加してくれています。



団体受験の利点

福岡大学では以前から毎年福岡全体の仏検会場を担当していますが、本学学生のための団体受験制度を始めたのは、2014年秋からです。きっかけは少しでも受験料を安くできるようにということでしたが、実際にやってみると団体受験には様々な利点があることがわかり、今ではそちらのほうに重要性を感じています。最大の利点の一つは、仏検事務局が送付してくれる一覧表のおかげで、受験した学生とその点数を把握できることです。しかもこの一覧には筆記、書き取り、聞き取りの内訳まで記載されており、個別に適切な対策をする上で大変役に立ちます。授業でよくできる学生が合格していなかったので内訳をみてみると、書き取りの点数が低かったという事例がありました。確かに授業では書き取りの練習を行っていなかったと、普段の授業を振り返るきっかけにもなりました。

長期的に見ると、今後団体受験を続けていくことで年度ごとの点数の変化を把握でき、学科にとって貴重なデータとなります。文部科学省は大学に自己点検を課していて、その項目の一つに「教育成果について定期的な検証を行い、その結果を教育課程や教育内容・方法の改善に結びつけているか」というものがあります。フランス語学科におけるフランス語学習の「教育成果について定期的な検証を行」う上で、仏検の結果ほどふさわしいものはありません。

学生にとっては、郵便局や書店に行くより馴染みの教員にお金を払って願書を提出するほうが心理的に楽なようです。中には財布片手に研究室にきて、ペンを借りその場で願書を記入、一万円札で受験料を払い、お釣りをもらって帰ってゆく、というつわものもいます。教員としても受験する学生と顔を合わせることになるので、ついでに励ましたり、勉強のコツを教えたり、過去問のコピーを渡したりすることができて、隠れた効果があると考えています。

2015年度の結果を見てみると、3年生の時点で2級合格者が5名いました。4年生になると就職活動で忙しくなりますが、うまくいけば卒業までに準1級を取得することができるかもしれません。このうちの一人は春に2級に合格していたので、秋に準1級に挑戦しました。結果は惜しかったものの、授業の予習・復習に一切手を抜くことはなく、無遅刻・無欠席のこの学生は、大学の勉強をきちんとこなせば、高いレベルに到達できるということを証明してくれました。

もうひとつエピソードがあります。熱心な非常勤講師の先生が、ご自身の第二外国語のクラスの願書と受験料を取りまとめるという大変な労を執ってくださいました。そして偶然にも、そのクラスは前年に私が担当したクラスで、多くが4級に合格していることがわかりました。第二外国語の場合、担当した後は学生と接する機会がなくなってしまうのですが、その学生達の成長を知ることができたのも団体受験のおかげです。

2016年度からフランス語学科はドイツ語学科とともに新しいコースを開始します。少人数のクラス、学部と修士を5年で卒業できる制度、留学生が参加する授業など、これまで以上に充実した教育内容になっています。団体受験でわかる結果は、新しいコースの教育効果をはかる指標として不可欠なものとなるでしょう。

最後になりますが、事務局をはじめ仏検の運営に携わるすべての方々に、この場をお借りしてお礼申し上げます。

中・高生へのフランス語の取り組み

島田 幸子(大妻中野中学校・高等学校)

私が勤務している大妻中野中学校・高等学校は都内にある私立の中高一貫校の女子校で、中高合わせて約1500名在籍しています。そのうち高校生のみ、外国語設置科目としてフランス語を選択することができます。取得単位数は1〜3年まで各2単位(自由選択科目)となっていますが、既存のフランス語クラスのほかに28年度から設置されるGLC(グローバルリーダーズコース)クラスでは、中学1年生(1単位)と高校1年生(2単位)のフランス語が必修科目としてスタートします。

在籍数は多いのですが、フランス語履修生徒は70名(27年度)と少なく若干マイノリティーな状況の中での授業となるため、周囲の環境からフランス語に対する学習意欲を維持させることが少し難しい反面、目が行き届きやすく生徒のモチベーションに対応しやすいことが利点であると感じています。中・高校生の最大の関心事である受験勉強や部活動と並行して、新たにフランス語にチャレンジすることはとても大きな決断となっているようです。ただ、実際授業を始めてみると少人数なだけにフランス語選択者には結束感や一体感が生まれ、他教科と比べて授業に積極的に参加しているように見受けられ、生徒それぞれが個人の目標を達成するために努力しているように思います。卒業生の話を聞いてみると、受験科目には直結しないもののフランス語を学習していたことが生徒自身の満足感や達成感となり、その充実した高校生活が受験にもいい影響を与えていたようです。また、卒業後も定期的に学校へ顔を見せに来てくれて、フランス語の学習状況の現状であったり、フランス語選択者同志で一緒にフランスへ行ったりしていると話に来てくれます。私としても、生徒たちが将来も何らかの形でフランス語とつながっていてくれることを純粋に嬉しく感じています。

生徒のモチベーションが大切なフランス語学習においてまず注目していることは、国際交流(留学生の存在)と仏検です。本校は海外帰国生徒を多く受け入れていることと(全校生徒の約10%)、2015年度からSGH(スーパーグローバルハイスクール)アソシエイトに認定されていることもあり、国際交流・国際教育に力を入れています。そのため英語圏との交流としてはアメリカ、ニュージーランド、オーストラリアの提携校と実施し、海外研修旅行としてもカナダ(中2)、ニュージーランド(中3)、オーストラリア・アメリカ(高1・2)を夏期に実施しています。

ブルキナファソ大使夫人アンジェリーナ・ナナ氏の講話(2014年7月)昨年度は7月にはブルキナファソ大使夫人のフランス語によるお話、2月にはケベックからの留学生を迎えての文化交流をフランス語・英語で行いました。その他の国際交流行事として、中2から高1までが一堂にそろっての外国語発表会(フランス語・英語)、早稲田大学留学生との交流セッション(文化祭)や帰国小学生英語教室(英語保持教室)、模擬国連やタイの提携校へのフィールドワークなども行っています。フランスとの交流としては、コリブリネットワーク(短期留学)に加盟し、2009度からはほぼ毎年数名程度参加させ、同様にフランス本土やニューカレドニアからの留学生を受け入れています。受け入れ形態としては完全交換留学となり、3週間ずつ日本とフランスで過ごします。本校に在籍中は、バディーである日本人生徒のHRクラスに参加しながら、留学生にはフランス語の授業だけでなく、学校行事・部活にも参加してもらいます。高校の普通授業は1日に3時間程度とし、他学年の授業(中学生の理科や英語、高校の芸術・家庭科の授業等)にも参加させて、学校全体でフランスの風を感じてもらえるようにしています。

さらにフランス人留学生を中学生の授業に参加させたり、集会や校内向けのラジオ放送にも参加させたりすることで、中学生のうちから英語とは異なる文化圏の存在に気付くことが出来、フランス語や文化に自然と興味を持たせることが出来ているように思います。その結果、高校へ入学してから始まるフランス語学習を楽しみにしていたり、フランス語を話している先輩に憧れたりしていて、フランス語の授業へスムーズに移行できているのではないかと思います。

また、仏検の存在も大きいと思っています。授業では仏検取得を目標にし、高校1年生で5級、2年生は4級、高校3年生は3級以上と設定しています。ただ実際には、3級以上を授業の学習だけで取得することはなかなか難しく、生徒本人の相当な熱意と授業外での学習が欠かせません。そのような理由から仏検受験の義務化はしていませんが、仏検の受験を積極的にすすめ成績にも加点しています。通常の定期試験とは異なる仏検を受験することで、自分たちの他にもフランス語を学習している人がたくさんいることを知ってもらいたいことと、英語とは異なり教育指導要領での縛りが少ないために、通常の定期テストだけでは感じにくい学習面で達成感をも感じてもらいたいことがその理由です。特に高校1年生の秋季に行われる仏検では、出題項目の学習が毎年ぎりぎりとなるため綱渡り的な調整となってしまいますが、その結果手にした5級合格の喜びというものは絶大で、毎年嬉しそうに知らせに来てくれます。その後も順調に3級や準2級を無事合格した生徒には、大学のAO試験で活用したり、大学へ入学してからの単位認定を申請したり活用するよう指導しています。

現在は便利な情報社会となり、インターネットを使用すればすぐに海外の情報が手に入るグローバルな時代です。でも中高時代にフランス語を学ぶことは、残念ながらまだまだメジャーなことではありません。単にフランス語やフランス文化の知識を増やすことだけが目標となるのでなく、生徒自身の視野が広がることで将来への選択肢を広げ、新しいことを果敢にチャレンジすることで生まれる苦しみと楽しみを感じ、自分とは異なる相手の文化を拒否せずに受け入れ、相手にも自分のことを受け入れてもらえるように提案できる、強くしなやかな日本女性へと成長してほしいと常々感じています。また、プラスしてフランス語が生徒自身の一生の友となってくれることが私の希望です。

ブルキナアファソ大使夫人とともにブルキナアファソ大使夫人とともに

準会場について

準会場とは

1次試験で、団体受験を行う団体が、学校や企業などの施設を使用して独自に設置する会場を「準会場」といいます。原則として10名以上の団体受験者で開設が可能です。試験日・試験時間は一般会場に準じ、独自の日時で実施することはできません。

準会場を実施すると、施設使用料や人件費等、試験実施に係わる費用として、受験者の検定料総額から規定の割合で準会場費が還付されます。

準会場費の還付率

受験者のべ総数に応じて、検定料総額に下記の還付率を掛けて算出します。
 10名以上:検定料総額の5% 
 20名以上:検定料総額の10% 
 30名以上:検定料総額の20% (すべて円未満切り捨て)

準会場費は、とりまとめ出願時に検定料と相殺するか、出願期間終了後に別途、銀行振込で受け取ることができます。

※準会場での受験希望者が個別出願を行う場合は、出願期間が終了し、準会場受験者数が確定した後で、団体宛に準会場費が還付されます。

準会場を実施するには

準会場の開設にあたっては、当協会と準会場取扱契約書を締結していただきます。実施運営については、当協会の規定およびマニュアルを遵守し、厳正に行わねばなりません。

実施を希望される団体は、仏検事務局までお電話でお問い合わせいただくか、学校・団体名、所在地、電話番号、担当者名をご記入のうえメールでご申請ください。

準会場の新規開設の申請期限は、春季試験で4月末、秋季試験で9月末までです。

仏検1級合格者の会(ALFI)

仏検1級合格者の会(ALFI)へのお誘い

仏検1級合格者の会(Association des Lauréats du Futsuken Ikkyu、略称「ALFI/アルフィ」) は、公益財団法人フランス語教育振興協会(APEF)の公認を受け、仏検1級合格者のみで構成される任意団体です。2006年7月、「日本におけるフランス語の地位向上」の理念に基づき、合格者同士の交流促進のため有志が集い正式に発足しました。2024年2月現在の会員数は112名、幅広い世代で異なるバックグラウンドを持ったメンバーが集まり、ゆるやかなコミュニティを作っています。

当会の趣旨は、①会員間の親睦と交流、②フランス語力のさらなる向上、③フランス及びフランコフォン関連団体とのパートナーシップ構築にあります。当会はアンスティテュ・フランセFrance Alumni などのフランス政府公式機関やフランス関連の諸団体と連携し、フランス語を軸にした交流を長年にわたり深めています。

当会の活動としては、在日フランス人・フランコフォン協会(AFJ)との共催で日本の伝統文化に関するワークショップや鑑賞会を行っています。様々な分野のプロフェッショナルを招いた講演会「ALFIアカデミア」や、フランス語を生かしたキャリア実践やそれぞれの専門分野について語る会員間の交流「ジョブトークス」をリモート/対面で定期的に開催しています。また、フランス人講師を招いた翻訳塾やアート・サロンなどの活動も会員有志で積極的に行われています。

2023年にリニューアルしたウェブサイトでは、イベント情報だけでなく、フランス語人材の求人情報など、会員に対して有用な情報を多数発信しております。
仏検1級合格後もさらにフランス語を極めたい方、フランス語を使って仕事をしたい方、フランス語を通じて交流の輪を広げたい方、ご入会を心よりお待ちしております。

お問い合わせ

ALFI事務局 info@alfi-jp.com / ALFI ウェブサイト https://alfi-jp.com

 

フランス語との出会い

2014年秋季5級合格・全国検定振興機構理事長賞
金巻 奈那
小学生(カリタス小学校)・神奈川県


nk_ceremonie私の通っているカリタス学園は、幼稚園の時からフランス語に親しんでいます。幼稚園では、歌でABCのフランス語独特の発音を覚えたり、「Tiens」「Merci」と言いながらバラの花を友達に回したりしたのを覚えています。日本語はあまり使わずに、耳で一生懸命に聞いていました。

小学生になると、たくさんの歌をみんなで歌いました。リズムがどの曲もおもしろくて、とても楽しかったです。自然に耳にスッと入ってきて真似したくなるような歌ばかりでした。身体全体でリズムやイントネーションを感じました。私は、フランス語のひびきが大好きになり、先生に発音をほめていただいたのがとてもうれしくて、もっとフランス語を頑張ろう!と思いました。そして私は仏検合格を目標にしました。

学校ではいち早くタブレット学習を取り入れていてフランス語は他の授業と一味違う感覚がありました。6年生の時に、フランス語で「赤ずきん」を暗唱して、自分の絵を入れた電子ブックと共に発表しました。「Le petit chaperon rouge」と口に出しただけで、フランス人になったような気分です。夜、寝る前にそのテープを何度も聞いてはくり返しを続けました。フランス語で「赤ずきん」が読めたら素敵だなぁと思っていたので、頑張って練習できたのだと思います。
暗唱した『赤ずきん』は自分の絵を入れた電子ブックで発表それから小学校でフランス語の思い出としてとてもよく残っているのがたくさんのフランス人が通うリセに一日入学したことです。自分が外国人の立場になる経験をした事は今までなかったので、コミュニケーションのとり方に苦労したけれど、日本とは違う文化を肌で感じる事ができてうれしかったです。私のクラスは、教室がだまりこんでしまう事もあるけれど、リセではみんなが元気よく手を上げてとても積極的だったので、私も見習いたいと思いました。私も含めて、日本人は、自分の意見をはっきりと言えない人が多いので、もっと外国語を勉強して、外国人と意見を交わせるようになりたいです。フランス語は私にとって幼稚園から学んできたとても身近な言語です。

5年後に開かれる東京オリンピックは、たくさんの外国人の方たちと会話できる絶好のチャンスです。フランスには、お菓子や料理、芸術、特に美術や音楽などすばらしいものがたくさんあるので、そんな国の言葉を自由自在に話せたらと思うと夢がふくらみます。ぜひ、恥ずかしがらずにたくさん話しかけてお役に立ちたいです。そこで自分の得意なフランス語を活用できたら最高だなと思っています!

そしていつかフランス留学をして、フランス人の友達をたくさん作り、日本の文化も紹介してあげたいと思います。

“J’adore le francais !!! ” nk_manuscrit






仏検1級合格…そして、世界へ

2014年春季1級合格・エールフランス特別賞
森永 佳奈
(フランス語通訳・フランス語講師)


2014年度仏検成績優秀者表彰式にてフランス語との出会いは大学1年の春。鉛筆を転がして適当に選んだ第2外国語、それがフランス語でした。出会いは全くの偶然でしたが、フランス語の美しさにあっという間に魅了されました。その後仏文科に進み、大学を卒業する頃にはフランス語通訳の職に就きたいと考えるようになっていました。しかし通訳を目指すにあたって、フランス語圏滞在歴が短いことが私にとって最大のコンプレックスでした。そこでフランス語力の向上と自信を得るために掲げた目標が仏検1級でした。

仏検に特化した勉強を行った期間は約4ヶ月です。学校には通わず、自習室に通って毎日ひたすらフランス語を学びました。この間は毎朝NHKのフランス語ニュースを聞くことから始めました。その日のニュースの中で最も意味が取りにくかった、もしくはわからない単語や表現が多く含まれていた記事を一つだけ選び、できるだけ毎日ディクテーションしました。そしてもう一つ私が重要視したのが名詞化です。これはフランス語を書いたり話したりする際の基礎となりますから、仏検合格後のことも考えて必死に習得しました。わずか4ヶ月の受験生活でしたが、集中的にフランス語を学んだこの期間は、私にとってとても貴重な時間でした。この時の努力がなければ、私のフランス語力は今日の向上を見なかったと思います。

仏検合格を機に、周りの景色が少しずつですが、着実に変わる手応えを感じてきました。在ベルギー大使公邸での交流会諸先輩方の豊富な経験を伺うことのできる仏検一級合格者の会「ALFI」との出会いや、「若手フランス語圏フォーラム」派遣プログラムへの参加はその中でも特に大きなものでした。この派遣プログラムは、日本政府と日本フランコフォニー推進評議会が民間交流を通じて日本の魅力を世界に発信するために行っている事業です。私は6人の仲間と共にフランス4都市、そしてベルギーのリエージュで行われた『若手フランス語圏フォーラム』へ派遣されました。
TV5モンドによるインタビューを受ける筆者派遣期間中は様々な国・地域のフランス語話者と出会い、フランス語でプレゼンを行うなど、それぞれの文化や価値観を共有しながら、貴重な時間を過ごすことができました。また海外メディアのインタビューやフランス、ベルギー各地の日本語学習者、両国の政府関係者の方々との交流を通じて、フランス語力も向上したと思いますし、世界のフランス語圏を相手に仕事をする上でも、今後の課題や改善点を体得することができました。

 このように、仏検が私に与えてくれたものはここに書ききれないほどありますが、その中でも一番大きなものは大切な仲間、素敵な人々に出会うきっかけをくれたことだと思います。これからもさらに努力を重ね、フランス語・日本語を通して世界に貢献するという夢を現実のものにしていきたいと思っています。

   在日ジブチ大使、ケベック州駐日代表、日本国首相官邸参事官補佐、仲間たちと


 

第21回 準2級からはじまる「言い換え問題」(中級)

 専門:スイス・ロマンド文学 正田 靖子  


語頭のアステリスク(*)は、その語が誤りを含むことを表します。 


「同じ表現の繰り返しを嫌う」


これはフランス語の特徴のひとつと言えるでしょう。同じ語を避けるために、代名詞をよく使い、名詞のほか動詞や形容詞なども言い換えます。人物の名前さえも、たとえば政治家ならば、肩書、前歴、口癖といったように、その人物に関する情報を積み重ねていきます。 

仏検では、準2級から動詞を使った「言い換え問題」がはじまります。提示されたフランス語文とほぼ同じ意味になるフランス語文を完成させる問題です。今回は2014年度秋季準2級の問題 [3] を使って、ポイントを見ていきましょう。完成させるべき文の空欄に、下にあたえられた7つの動詞から適合するものをひとつ選び、法・時制などを考慮して、適切な形に変化させます。

                

さあチャレンジしてください!各問2ポイント、全問正解で10ポイントです。


(1)   A  Chaque matin, Émilie se réveille à 7 heures.
        B  Chaque matin, Émilie (      ) jusqu’à 7 heures.

(2)   A  Christine arrêtera de travailler dans un mois.
        B  Christine (      ) son travail dans un mois.

(3)   A  Isabelle a fait le ménage dans sa chambre.
        B  Isabelle (      ) sa chambre.

(4)   A  Laisse Luc tranquille !
        B  Ne (      ) pas Luc !

(5)   A  Nous devions rentrer le plus tôt possible.
        B  Nous (      ) besoin de rentrer le plus tôt possible.

      —————————————————————–
           avoir       déranger       dormir       mettre     
                  nettoyer       prendre       quitter
 

それでは、正答にたどりつくためのツボを探っていきましょう。

        

ツボその1:活用は正確に覚える

(1)   A  Chaque matin, Émilie se réveille à 7 heures.
        B  Chaque matin, Émilie (      ) jusqu’à 7 heures.

設問 (1) A Chaque matin, Émilie se réveille à 7 heures. 「Émilie は毎朝7時に目を覚ます」。の文では動詞のあとが à ではなく、jusqu’à になっていますが、それ以外の部分は も も同じ文です。「目が覚める」までの行為、すなわち動詞 dormir 「眠る」を選び、現在形に正しく活用させれば正解です。

Oh là là ! *dormit ですか?dormir の活用変化は finir と同型ではなく、partir と同型ですから、正解は、Chaque matin, Émilie ( dort ) jusqu’à 7 heures. となります。正しい動詞が選べても、活用でまちがえてしまってはもったいない。活用変化は発音しながら、実際になんども書いて覚えるようにしましょう。

        

ツボその2:時制を合わせる

(5)   A  Nous devions rentrer le plus tôt possible.
        B  Nous (      ) besoin de rentrer le plus tôt possible.

設問 (5) A Nous devions rentrer le plus tôt possible. 「私たちは、できるだけ早く帰らなければならなかった」。の文では devoir が用いられているのに対して、の文では besoin de が動詞の直後にきています。これらの情報から、〈 avoir besoin de+不定詞 〉「~することが必要である」という表現であることがわかります。

Oh là là ! *avons ですか?の文と時制が合っていません。avoir を半過去に正しく活用させて、正解はNous ( avions ) besoin de rentrer le plus tôt possible. となります。

        

ツボその3:慣用表現に強くなる

(2)   A  Christine arrêtera de travailler dans un mois.
        B  Christine (      ) son travail dans un mois. 

設問 (2) A Christine arrêtera de travailler dans un mois.「Christine は1ヵ月後に仕事をやめる」。〈 arrêter de + 不定詞 〉で、「~するのをやめる」という意味になります。の文では動詞のあとに son travail がありますから、「(仕事を)やめる」という意味になる動詞を選びます。quitter が思い浮かびましたか?もし思い浮かんでいたなら、すばらしい。動詞を単純未来形に活用させれば2ポイントゲットです。正解はChristine ( quittera ) son travail dans un mois. となります。

設問 (2) のように動詞1語を同義の動詞1語で書き換える問題は得意だけれども、設問 (3) や (4) のように複数の語からできた慣用表現を動詞1語にする問題は、苦手という人もあるでしょう。問題に答えながら、語彙力をアップさせましょう。

(3)   A  Isabelle a fait le ménage dans sa chambre.
        B  Isabelle (      ) sa chambre. 

設問 (3) A Isabelle a fait le ménage dans sa chambre. 「Isabelle は自分の部屋を掃除した」。の文では動詞のあとに sa chambre が続きますから、nettoyer 「~を掃除する」を選び、複合過去形に正しく活用させれば正解です。つまり、Isabelle ( a nettoyé ) sa chambre. となります。〈 faire le ménage 〉「掃除をする」という表現はだいじょうぶでしたか?このほかにも faire を使った表現はいろいろありますから、まとめて復習しておきましょう。

(4)   A  Laisse Luc tranquille !
        B  Ne (      ) pas Luc ! 

設問 (4) A Laisse Luc tranquille ! 「 Luc にかまわないで!」。肯定命令を否定命令で言い換えるために、反意語を選ぶ問題です。ここでは、〈 laisser + 〔人〕 + tranquille 〉「〔人〕をそっとしておく」から、déranger 「~を邪魔する」を使った命令文に書き換えます。2人称単数の命令法現在に正しく活用させれば正解です。つまり、Ne ( dérange ) pas Luc ! となります。

                



以上から、よく使われる不規則動詞の活用や、複合過去の性・数一致について確認し、時制に注意することがいかに重要であるかが、お分かりいただけたと思います。また動詞を用いた基本的な表現について、しっかりおさえておきましょう。

準2級で出題される表現は、頻繁に用いられるもののようですから、過去問題を復習すれば十分かもしれません。しかしそれだけではなく、日ごろから、辞書をひくときには、同意語・反意語・派生語にも目を通す習慣をつけるようにするとよいでしょう。そうすることによって、表現の幅は確実に広がっていくはずです。 

 

仏検によって前進した東海大学

惟村 宣明 (東海大学外国語教育センター)


私が勤務する東海大学湘南キャンパスには、文学部、政治経済学部、法学部、教養学部、理学部、情報理工学部、工学部、東海大学掲示板体育学部、観光学部(1年次生のみ)の9学部43学科があり、現在19,644名の学生が在籍しています。しかし、フランス語を主専攻とする学科はなく、第二外国語として選択必修を課しているのは、2学科1専攻のみです。私が所属している外国語教育センターは、湘南校舎の外国語教育全般を担当する部署で、英語、中国語、コリア語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語、フランス語の7言語が副専攻科目として開講されています。

この様な状況のもと、近年の英語重視の傾向から、それ以外の言語は、常に厳しい問いかけにさらされてきました。教えることに何の意味があるのか、何ができるのか、履修人数が増やせるのか、などを問われるのは、どこの教育現場でも同じだと思います。

私自身は、若者の知性を磨き、人格を陶冶するために、第二外国語学習は極めて重要であると考えています。発見や驚きに満ちた冒険だ、ということを伝えたいと思って教壇に立っています。しかし、それを理解してもらうためには時間が必要です。自由選択科目であるフランス語を継続して学習させるために、やりがいのある身近な目標を示すことが必要です。仏検は、まさにうってつけの目標となりました。

東海大学湘南校舎は、1998年秋より、準会場として団体受験を実施しています。最初の受験者総数は32名、そのうち3級合格者は2名と、ささやかなものでした。しかし学生たちの向上心には火が付いたようです。2000年に、1人の女子学生が「3級を取得し、新しい目標がほしいのですが、2級は私には無理でしょうか」と申し出てきました。2級はフランス語を主専攻とする大学4年生のレベルに相当するとされています。「授業以外で、特別な勉強をする必要があるだろう」と答えると、「仲間を何人か集めるから、勉強会をやってもらえないでしょうか」とのことで、3~4名の学生が集まってきました。その年の秋に最初の2級合格者があり、2015年度に至るまで、毎年合格者が出ています。仏検上級を目指す勉強会も今日まで存続しています。

書かせる問題が初めて出てくる3級では、当初の学生たちはかなり苦労し、優秀な学生でも何回か落ちるほどでした。最初の3年間は合格者が2~3名程でしたが、2002年度より6~8名になりました。2010年度には年間合格者数が20名近くになり、本学の学生にとって3級は普通に合格できる級となりました。

ここ10年間の仏検受験者数と3級・準2級・2級の合格者数、春学期のフランス語履修者数、派遣留学者数をまとめたデータがありますので、ここにご紹介したいと思います。 

東海大学では、第二外国語は多くの学科で必修科目からはずれ、受講者の減少とクラス数の減少という事態に見舞われました。2007年には、フランス語履修者数は過去最低となってしまいました。そこからゆっくりと履修者数が右肩上がりに回復しつつあることが見て取れます。これは、仏検合格者数が増えると、これに刺激されて、もっと向上しようする学生、自分も続こうと思う学生が増え、学習継続率が高まることを意味すると思います。そして、留学する学生が増え、さらに実力が高まり、雰囲気も良くなり、履修者が増えるという上昇の力に変わります。この表をみると、仏検受験が東海大学湘南校舎のフランス語履修者数増加とレベルアップに寄与していることは明らかです。2006年の資料が欠損し、2007年に受験者が激減していますが、これは、私が2006年に海外研究で不在だったことが影響しています。2014年に受験者数、中級以上の合格者数が急上昇しています。これは2013年に、優秀な同僚、深井陽介君が東海大学に赴任した結果です。

第45回全日本学生フランス語弁論大会の東海大学チーム第46回弁論大会にて実力をつけた学生たちが、さらに力試しをしてみたいということで、近年東海大学は、京都外国語大学が主催する「全日本学生フランス語弁論大会」と日仏会館主催の「フランス語コンクール」に参加するようになりました。しばしば決勝に進むようになりましたが、そこで我が校の学生は質疑応答に極端に弱いという欠点が暴露されてしまいました。深井君がこの弱点を大いに補強し、「全日本学生フランス語弁論大会」では、2013年優勝(写真②)、14年には連続優勝と5位入賞を果たし(写真①・③)、「フランス語コンクール」でも2013年入賞、14年中級の部に2名決勝進出という成果を得ることができました。

仏検というきっかけが与えられ、向上しようという学生が現れ、それを教員が支援する。ささやかな一歩から始まりましたが、これが今や大きな流れになりつつあります。ここで私たちが最も重視するのは、仏検やコンクールの結果ではありません。大切なのは、フランス語という共通の目的を持った仲間と人間関係を深め、目標を持ち、やり遂げたという経験なのだと思います。東海大学のフランス語教育は、まだまだ完成形ではありません。端緒に立ったばかりで改善すべきことは多々あります。しかし、学生と教員がチームとして、家族のように共に前進してゆきたいと思っています。特筆すべきは、東海大学で仏検やDELFの中級・上級に合格する学生、弁論大会などで活躍する学生の中に、航空宇宙学科、生命科学科、デザイン学科、芸術学科音楽専攻などの学生が含まれていることです。グローバル社会では、外国語に通じたこのような人材が求められているはずです。フランス語教育の可能性は無限にあると私たちは信じています。

喜寿過ぎて1級合格

青木 達郎

フランス語との関わり 

今はメガバンクの一つになったS銀行の退職者である私が、フランス語に興味を持つようになったのは同行I元頭取(当時最高顧問)が多彩な財界活動の一環として日仏政財界人の交流組織である「日仏クラブ」の会議出席のためパリに出張の折に秘書役として随行したことが切っ掛けである。会議には同時通訳が付くし現地支店もあるので、私自身がフランス語を必要とすることはなかったが、マティニョンと呼ばれる首相府やセーヌ川沿いの財務省にお供したり、パーティの末席に連なったりしている間に、フランスの誇る接遇文化の上質な香りに魅せられた。

一個の自由市民として暮らし始めた時に、それまでやろうと思っていた色々なことに手を染めたが、その一つがフランス語であり、学習進度を測るために仏検を受験しようと思い立った。

学習の道のり 

2003年秋季に5級4級に合格し、ここから10年をこえる仏検受験の幕が開くのだが、2004年春季3級秋季2級合格の辺りまでは、苦労はあったものの週1、2日学校に通いつつラジオ講座を聴いたり短期留学をしたり楽しみながら勉強していた。そして2006年春季の準1級に満を持して臨んだところ、1次試験は合格したが、2次試験(面接)は1点差で不合格になった。口頭試問の時、参考書によると「質問や単語の意味の分からない時は遠慮なく聞き返したり質問したりしましょう」とあったのを思い出し、試験官の質問を都度確認したことが聞き取り力不足と判定されたかと推測している。そこでもっぱら会話クラスに重点を置き2007年秋季に2次試験合格を果たした(1次試験免除)。

この年から1級を目指して受験準備を進めたが、準1級との難易度の格差は私にとっては大きく、いわば本当の仏検が立ちはだかっている感じで何度も敗退し、昨年春季に1級の合格通知を頂いた時には私は喜寿を過ぎていた。

1級試験の問題内容に従って受験者としての感想を述べてみたい。

[筆記]①名詞化 ②多義語 両者には毎回手こずった。教材として配布されるプリントはあっても仏和辞典以外に特別の参考書は見つからないから、語彙を増やしその応用力を身に付けることは本当に難しい。モンプリエの学校で出会ったケンブリッジ大の女子学生が、夏休み中に仏独語それぞれ500語を覚え休暇明けに教授の面接を受けるのだと、大きな方眼紙に教室で採取した単語を書き込んでいるのを見て、大陸への語学留学に長い伝統を持つ国の古典的な暗記法が語彙増強の王道かと感じたものだ。③前置詞 数が限られているので仏和辞典の主だった前置詞の項を拡大コピーし精読したが、1級ともなると熟語的なものが出題されるのであまり成果はあがらなかった。④時事用語 参考書の時事用語リストをベースに単語カードを作り、NHK Worldのフランス語ニュースで聞いた新しい単語を補充して行った。⑤動詞活用 出題される文法事項が大体決まっているので学習しやすい。⑥長文完成 ⑦内容理解 ⑧内容理解 読解については、現在は帰仏し上院のスタッフとして活躍中のF先生主催「Le Mondeを読む会」に参加したことがフランス語の文章構造に慣れて自信を付けることに役立ったと思う。⑨和文仏訳 通信教育や翻訳講座でフランス人の先生に指導を受けた。ここでも語彙力の涵養は重要で、2012年にアリの社会についての問題でどうしても「アリ」と「巣」と言う単語が浮かんで来ず惨敗した苦い思い出がある。

[書き取り]級が進むと試験で読まれる文章が長くなるせいか、途中で付いて行けなくなり苦労したが、dictéeのクラスを週2コマで数年間受講しているうちに、継続は力なりの言葉通り最後まで書き取れるようになった。

[聞き取り]①穴埋め ②内容一致 ネットからRFIのfait du jourを聴いて、付属している旨く工夫されたテストにトライした、ただしアフリカのフランス語圏のニュースが多いのに食傷気味となったが。

総じて過去問の練習が有効であることが分かってきたので、昨年は買い集めた1997年分からの公式問題集の復習に力を注いだ。

語学留学

時間的に自由な生活をしている上、マイレージ特典など航空会社のサービス進化とネットの急速な発展のお蔭で海外旅行が安直になったから、1、2週間の短期語学留学をかなりの頻度で実行した(別表)
ただし留学期間の前後に観光やオペラ鑑賞をしているので仏検の勉強をしたのかフランス旅行にはまったのかはっきりしない。留学先は公的品質保証とみられる Label Qualifié français langue étrangère が付与された学校のリストから選び、授業内容や宿泊先に関する学校との打ち合わせ、航空機や鉄道の予約はネットや電話を通じ個人で行って、これもフランス語の実践に役立てた。

留学先の学校や宿舎の受け入れ体制は良く、幸い金銭的あるいは感情的なトラブルを経験したことはない。敢て言えばパリなど大都会より地方の方が日本人の影も疎らになりフランスの生活にどっぷり漬かれるというものだ。なかでも南仏ムスティエ=サント=マリの古い修道院を改装したCrea-langues校では初心者の受け入れはなく参加者の水準も高くて良い勉強が出来た上、専属シェフの出すプロヴァンス風の食事やワインはなかなか美味であった、また「天国にいちばん近い島」があるニューカレドニアのCREIPAC校で、南洋の温暖な気候に包まれて少人数の授業の後にゴルフ、海水浴やグルメを楽しんだことも忘れ難い。 

おわりに
フランス語の学習を通じ、定期的に学校に行き、海外留学をし、試験を受けることで私は新しい生活のリズムを作り精神の高揚感を持続させて来たが、1級合格は柔剣道や碁将棋で言えば有段者になった感じで、今後は私のフランス語を如何にして深化させるかが課題だと思う。学習過程でお世話になった人や事柄は多いが、ここでは我が国のフランス語辞典の良質さに感謝したい。フランスの語学学校で色々な国籍の人と共に学ぶ間に、我が国の辞書は断然優れていることに気が付いた。電子辞書という優れものがあることはもとよりだが、内容が豊富適切でアップデイトされており、明治以来孜孜として行われてきた研究の成果を享受できるのは有難いことである。数年前「舟を編む」と言う日本語辞典の編纂をテーマにした映画を見たが、外国語が対象の事典づくりの場合には仕事の困難さは倍増するであろう。フランス語学界のますますの発展を心から祈念している。

決め手は、やはり、正書法


 2013年春季1級合格・エールフランス特別賞 
古谷 英之 
公立中学校教諭(数学科)/通訳案内士(フランス語)・東京都 


 1988年4月にNHKラジオフランス語講座入門編の門を叩いた一高校生が、2015年4月でフランス語学習28年生となりました。お蔭様で、昨年8月、2013年度エールフランス特別賞の航空券を片手に一路フランスへ。家内と共に、最高のパリ旅行を満喫いたしました。 
 

 *
 

 「父や母の時代のフランス語でお話しになりますね!」

 周遊時の拙い経験を体験記として還元させていただければと考えておりますと、シャンゼリゼ通りのルイ・ヴィトンの女性店員さんが、シャンパン入りのグラスをお出しになりながらかけてくださった言葉が思い出されます。

                                                                   *

 「財布を買いたいのですが…」
 「私も!」

 1995年3月、マルソー通りのヴィトンの店内にて、7年間学んできたフランス語で恐る恐る話しかけたご夫人からの返答に大恥をかいた理工学部4年生は、財布やベルトの注文に続き、免税手続きの確認でも大苦戦したものでした。ところが昨夏、芸術の都の新店舗では、人生初のパリ旅行での笑い話つきのベルトにピッタリのポシェットとキーホルダー、家内のバッグとカード入れを購入。記念の美酒に酔いながら、絵になる(?)買い物ができました。

                                                                   *

 「味噌汁をお飲みになるかをお客様に伺うには、どのように申し上げればよいのでしょうか?」

 花の都の老舗にて、愚鈍な学生の卒業旅行の思い出話に花が咲いておりました頃、今回の行きの機内でお受けいたしましたこの質問が心に浮かびました。自身作成のアルファベ表記による『日本語会話表現集』をじっくりと読んでくださったエールフランスの若手女性フライトアテンダントさんは、颯爽と接客を終えられると、すぐに私の座席にお見えになりました。
 「お勧めの日本の観光名所を教えていただけますか?」
 熱心にお尋ねになる美女に、ヴァカンス返上で、浅草界隈の様子を丁寧に説明いたしました。

                                                                   *

 「動詞だけでもここまで活用が複雑な言語を話せるようになるためには、どうすればよいのだろうか?」
 ラジオ講座初日以来、仏語学習1年生は、日々大きな不安に苛まれました。

 「人生という大舞台で、フランス人と共に、熱狂的な一幕を上演できるようになるためには、どうすればよいのだろうか?」
 現在、28年生として、寝食を忘れてこの壮大なテーマに取り組んでおります(笑)。

 こうした難問を解く鍵は、次の一点にあると思われます。

 「正書法遵守を目標とすること、すなわち、フランス人も驚くほど文法的に正確なフランス語の運用を理想とすること」

 4つの書物(仏和辞典・和仏辞典・仏仏辞典・文法書)で4つの学力(読む力・書く力・聞く力・話す力)を徹底的に磨きましょう! チャンスが訪れたら、自分のフランス語を全力でフランス人にぶつけましょう!

 正書法は、仏検突破のための強力な武器でもあります。受検生の皆様がご希望の級に合格され、フランス語をお使いになる度に一生の宝となる思い出を手にされますよう、心よりお祈り申し上げます。


 

向上心をもち、フランス語を楽しむ

2014年春季4・5級合格
梅本 郁乃
都内小学校教諭・神奈川県

私の母は大学でフランス文学を専攻し、フランス語の勉強をしています。子供の頃からそんな母の姿を見ていた私は、遊び半分でフランス語の発音を真似てみたり、フランスという国について興味をもったりするようになりました。

大学では第2外国語を迷わずフランス語にしました。母に鍛えてもらったおかげで何とか単位を落とすことなく、2年間フランス語を学ぶことができました。

大学卒業後、都内の公立小学校で有償ボランティアとして働き始めた私は、ある先生と出会いました。その方は長年教員をしている超ベテランの素敵な先生で、時間に余裕ができると、フランス語の参考書を片手に勉強していらっしゃいました。話を聞くと、「仏検を受けようと思うの。仕事が終わった帰りにカフェで勉強するのが楽しいのよ。趣味をもつのは大事よ。」とおっしゃいました。教員というのは、常に向上心をもって、自分を磨くことが大切なのだなぁ、と知った出来事でした。そして、いつか余裕ができたら、仏検を受けてみようかな。そんな想いが自分の中に出てきたのも、その時でした。

勉強のお供。ラデュレのノートでモチベーションを上げていました。

無事に小学校の正規の教員として採用され、仕事にも慣れて余裕が出てきた昨年の春、私は仏検の受験を思い立ちました。以前から「5級を受けてみれば?」と言われていたのですが、なかなか気持ちに踏ん切りがつかず、受験をためらっていました。しかし、近年のフランスブームに触発され、フランスに実際に行ってみたい、という想いを抱くようになった私は、「今年(2014年)の夏休みにフランスに行く!」という計画を立て、その前哨戦として、同じく仏検1級合格を目指して勉強している母と一緒に仏検を受けることにしたのです。受験を申し込んでから参考書を買い、仕事帰りに時間を作ってカフェへ行き、勉強しました。憧れの先生と同じように行動できている自分が、なんだか信じられず、嬉しかったのを覚えています。

仏検5級と4級を同時に受験し、結果は両方合格。5級では満点をとることができました。そして夏休みには母と2人で6泊8日のフランス旅行を敢行。仏検を経て僅かながら理解できるようになったフランス語をフル活用し、パリの文化を満喫することができました。

私は現在、小学校の教員という、フランス語とはあまり関係ない職に就いていますが、教養としてフランス語を学ぶ機会を得られたことや、それをきっかけに異文化を見聞きする機会を得られたことを嬉しく思っています。フランス語の単語や文章の意味がわかるようになってから、街中に溢れるフランス語を見るのが楽しくなりました。また実際にフランスに行ったことで、フランスや日本、またそれ以外の国にも興味をもち、それぞれの国の良さを知ることができました。フランス語をはじめ、言語を学ぶことで、人生を豊かにし、自分を磨くことができると思います。今年も私は仏検3級を受験します。またフランスに行ける日を夢見ながら、カフェでの勉強を楽しみたいと思っています。

 

【仏検事務局より】 このエッセイは2015年5月にお寄せいただいたものです。その後、2015年度春季試験で、梅本様は3級に、お母様は1級にそれぞれ見事合格されました。おめでとうございました!エッセイの掲載が遅くなりましたことをお詫び申し上げますと共に、ますますのご活躍を陰ながら応援しております。


知る喜びが増してくる

2014年秋季3級合格
横山 ゆりな
主婦・北海道

人生後半の50代。何か最後に新しい趣味に挑戦したくなり、頭に浮かんだのが外国語の習得でした。理由は、形がなくあとに物が残らないこと。また、文化や芸術など、自分が興味を持つ分野にも結びついて、学ぶ喜びが増すのではないかという期待もありました。

まずはイタリア語。その美しい響きや心地良いリズムに魅了されつつも、旅行で訪れた南仏の風景が忘れられず、次第にフランス語を学びたいという思いが募っていきました。

2013年春、入門講座へ。素敵なフランス人の先生に出会い、やる気全開で学び始めました。明確な目標を持つと早く伸びるということは伊検(実用イタリア語検定)で体験済みでしたので、最初から仏検受験を志しました。勉強法は、公式ガイドブックや参考書を繰り返し学ぶという、シンプルなものです。設問ごとのポイントが明快な仏検は、初心者でも効率的に学べ、習熟度が確認しやすい最適な試験だと実感しています。

日々の勉強で心掛けているのは、とにかく決してフランス語から離れないことです。暗記力が低下する年齢なので、毎日必ず本を開き、CDを聴き、手と口を動かすように努めています。


仏検を介して若い友人もできました。それに、フランス人の先生方は皆さんとても個性的。もっと深い会話ができたら、と私の意欲をかきたててくれます。まだ初歩レベルの語学力ですが、次第に見えてきたフランスは、地方の特色・独特の美意識や、思想・フランス語圏の国々など、予想以上に多様な魅力に満ちたものでした。語学のレベルが上がれば、知る喜びもさらに増すのではと期待しています。

50代の遅いスタートなので仕事や留学で活用する機会はありません。でも、仏検受験への意欲がある限り、少しずつでも自分が成長しているという実感が得られるので、私にとっては十分、実用フランス語と言えるのです。

物が残らない趣味の筈だったのに、諸先生方の熱心な語り口に誘われて、たくさん参考書を買っています。ただひとつの嬉しい誤算です。
 

 【仏検事務局より】横山様は2014年度春季4級で成績優秀者に選出され、そのご様子は札幌アリアンス・フランセーズのホームページでも取り上げられています。おめでとうございました!


 

公式ガイドブック正誤表アーカイブ

『仏検公式ガイドブック』に誤植・誤りがありました。
謹んでお詫びを申し上げ、訂正いたします。

仏検公式ガイドブック 正誤表

2015年度版

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2014年度版

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2013年度版

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2012年度版

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2011年度版

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フランス語は獣医師の競馬記者が手に入れたもう1つの武器。

2014年秋季準2級合格
若原 隆宏
中日新聞大阪支社報道部/中日スポーツ中央競馬担当・滋賀県


私は東大農学部獣医学課程を出て「獣医師免許あり」の触れ込みでスポーツ紙の競馬記者をしている。「東大出」の看板は世の中では得をすることもあるようだが、冷や汗をかくこともある。私の場合、後者の方が圧倒的に多い。

2011年10月だった。ローズキングダムというGI勝ち馬が「天皇賞・秋」でフランス人騎手のI. Mendizabalと初コンビを組むことになった。同馬を管理する橋口師はトレーニングセンターの坂路の上にある監視塔の定位置にいる。同騎手がまたがっての初調教。取材陣も当然、そこに顔を並べた。あいにく通訳が別の英国人騎手に取られてその場にいない。橋口師の周囲を見回す視線が私に止まる。「若原君、大学で第二外国語、なんだったかね」。「ふ・・・フランス語でしたが・・・」。「右手前で入って、ラスト1ハロンだけ伸ばしてって、通訳して」。滝汗である。駒場を出てすでに10年以上。「右ってdroit、いやdroiteだったか」。語学力はそんなレベルまで落ちていた。結局そこは、やはりつたない英語で乗り切った。

できないと悔しい。それが仏語学習再開のきっかけだった。取材環境を振り返ると仏語ができるとかなりのアドバンテージであることに気づく。外国人騎手がたくさん来日する中に、仏語圏の騎手も多い。中には英語があまり得意でない者もいる。今では英語も達者になったI. Mendizabalも、初来日当初は英語に不安を持っていたようだ。通常、取材は英語の通訳を介すか、たまに英語で直接。サシで話していてもいつの間にか、わらわら人が集まってきて囲みになってしまうのが競馬取材の常だ。加えて彼らの話す英語のコメントは、通り一遍で明らかに建前トーク。彼らに仏語で本音が聞きたい。 仏語なら、仮に他社の記者が集まってきても、話している内容の詳細まで共有されるまい。衆人環視の中でも、注目を集める人気馬について。「今回はダメだろう」なんて聞き出せる可能性だってある。

駒場時代の教科書と、ほとんどめくっていなかったPetit Royalを引っ張り出してきた。文法を一通りやりなおし、教科書の仏文和訳や新聞記事の和文仏訳を繰り返したが、2年ほどはほとんど上達しなかったように思う。体系だった勉強法を知らなかったからだろう。

13年秋、凱旋門賞取材を命じられ初渡仏。案の定、語学は思っていたほど通用しない。確勝と期待したオルフェーヴルは2着。重なる無力感とともに帰国し「勉強の物差しに」と仏検の受験を決めた。当初5級からと考えていたが、年明けには目標を上方修正して4、3級の併願に。幸いどちらも無事合格し、自信がついた。

できるようになると楽しいのは語学の常なのだろう。準2級勉強中の14年10月。今度は自費で凱旋門賞を見に渡仏。凱旋門賞前後は日本人が大挙してパリを訪れる。語学に融通の利く宿は割高になるらしい。メトロAnatole France近くの安宿はロシア人がたくさん泊まっており、ロシア語はどうだか分からないが、とにかく英語は通じない。仏語だけで通せばすむパリ行きは、宿代でずいぶん予算を抑えられた。日本馬の勝利はならなかったが、うれしかったのは夜に繰り出したPMUcafé。前年は分からなかったが、今度は周りのおっちゃんたちがなにを叫んでいるのかよく分かる。きわどい写真判定に”Il faut 16″ “Non ! 10″。日本の競馬場や場外で飛んでいるヤジと何ら変わらない。馬券好きの考えることは日仏共通なのだ。宿から帰路につくとき、”Il me reste l’addition encore ?” びっくりするくらい自然に口から出た。さらに自信をつけて帰国。ほどなく受けた準2級もなんとか合格することができた。

15年春、C. LemaireはJRAに転籍し、日本の騎手になった。彼はトレセンでは流ちょうな日本語で取材に応じているが、きちんと仏語で聞けばそこそこ仏語でつきあってくれる。ほかにも相変わらず仏語圏から毎年数人、騎手が来日。14年秋に来日したP.C. Budotは来日初勝利の感激を、京都競馬場で仏語で答えてくれた。仏語圏の騎手に打った◎が穴を開けたとき、半分くらいは獣医師の若原ではなく、francophoneの若原が仕留めた穴だと思ってほしい。

 

2014年度 団体賞受賞のことば

2013年度に創設された文部科学大臣賞団体賞では、仏検における出願者数、その増加率および試験結果等を勘案し、年度を通じたフランス語教育への取り組みを総合的に判断した上で、特に優秀と認められた3団体に授与されます。2014年度は、日本大学法学部、立命館大学、白百合学園中学高等学校が選出されました。

 

日本大学法学部 畠山 達 先生

この度の受賞は、日本大学法学部のフランス語教育に尽力してくださっている教職員のお陰であり、このような形で評価して頂き嬉しく思っております。積極的に仏検を利用して学生のやる気を引き出している教員の皆様には深く感謝しております。
また、そもそも大学の教室を準会場として利用できなければ仏検は実施できません。今日、益々高まりつつある第二外国語教育の重要性を理解してくださる関係者および職員の方々にも感謝の念が耐えません。 そして誰よりも感謝すべきは、努力をしてくれた学生たちです。日本大学法学部ではアヴィニヨン短期研修もあり幅広い外国語教育に取り組んでおります。その成果がこのような形に結びついたものと思っております。
この団体賞を励みにフランス語教育の発展に一層努力して参りたいと思っております。関係者の皆様には心よりお礼を申し上げます。
(写真 右より)畠山達先生(日本大学)、長谷川善一APEF理事長 

 

立命館大学 千川 哲生 先生

2014年度の文部科学大臣賞団体賞を頂いたことに心から感謝の念を表明いたします。本学にはいわゆるフランス語学科はありませんが、その代わり、さまざまな学部の枠を越えて2年間フランス語を共に学ぶ「副専攻」という制度があり、学生は日々楽しみながらフランス語の研鑽に努めています。ここ数年、本学の受験者数は春・秋ともに100名を超えており、身につけたフランス語能力を試したいという学生の熱意の表れだと考えています。これからもフランス語教育に携わる教職員の力を合わせて、フランス語検定の一層の普及に貢献できることを願っています。
(写真 右より)千川 哲生 先生(立命館大学)、長谷川理事長 

 

 白百合学園中学高等学校 伊賀山 かおる 先生

このたび団体賞受賞の知らせを受け、教員一同、驚くと同時に大変光栄な思いに包まれました。本校は「仏英和」という創設時の名称が示すとおり、130年余に渡り一貫してフランス語教育を続けてきました。そのカリキュラムは独特なもので、中学入学時に専攻外国語を英語またはフランス語の中から一つ選択するという形でした。つまり、フランス語を選択すれば内容の濃い学習ができるけれど、英語を選択した生徒にとってはフランス語は別世界のものだったのです。このため仏検の恩恵を受けられる生徒数も限られていました。
平成25年度、カリキュラムに大きな変更がありました。中学1年生から全員が英語と平行してフランス語を学ぶ制度となったのです。その結果、仏検受験を希望する生徒が大幅に増え、仏検の重要性が飛躍的に高まっております。多言語教育の一環としてのフランス語教育の充実のために仏検が果たす役割は計り知れません。仏検の更なるご発展を祈念しております。
(写真中央)伊賀山かおる先生(白百合学園中学高等学校)、白百合学園中学高等学校からの受賞者のみなさん、長谷川理事長 

フランスとの縁、そして仏検団体受験参加へ

 中村 翠(名古屋商科大学)

 私の所属する名古屋商科大学では、単位取得が必須な第2外国語の制度はありません。そのかわり、自由選択で英語以外の言語を学ぶことができます。フランス語、中国語、韓国語です。以前はベトナム語やタイ語の授業もあったようなのですが、現在ではありません。世界的に高まる英語の重要性に押される形で、その他の言語教育が縮小されていく傾向は、やはり本学にもあるのかも知れません。

 しかし、自由選択とはいえ上に挙げた語学の検定試験については、本学は単位認定制度を取り入れており、外国語の習得を積極的に促進しています。具体的には、最下の級に合格すると2単位が認定され、その後級があがるごとに1単位がそれぞれ認定されます。あるいは、初回で最下級よりも上の級を受験し合格すると、3単位が認定されます。

 しかも、これらの自由選択の外国語のうちでも、フランス語は本学において存在感を確保しています。それは、フランスと本学を結ぶ縁があるからといえます。

 まず、交換留学制度によるつながりがあります。本学は商科大学ですが、様々な海外の大学との交換留学を行っています。その中でも、全全体の提携校95校のうち、フランスの提携校は12校と、群を抜いています。さらに、平成26年度に本学に留学した学生総数26ヶ国88名のうち、フランスからの交換留学生は、前期9名後期17名、あわせて年間で26名と、他国に比べて最多です。なお平成27年度には前期だけで16名がフランスから留学予定ですので、後期をあわせると前年よりも増える見込みです。これら提携校には、グランゼコールのひとつであるInstitut d’études politiques de Lilleをはじめとして、有名校が名を連ねています。このように常に一定数のフランス人留学生がいますので、フランス語を学ぶ日本人学生の中には、留学生と交流をはかっている人もいるようです。

 また、実はモニュメントの面でもフランスとちょっとした縁があります。本学のキャンパス内に特徴のある建築物が二つあります。ミレニアム・ゲートと呼ばれる正門(写真①参照)と、インテリジェント・スクール・ビル(通称ISビルあるいはクリスタル・ビルディング)と呼ばれるガラスのピラミッド建築(写真②参照)です。すぐに気付く人も多いかと思いますが、1989年、フランス革命200周年を記念して、当時の大統領フランソワ・ミッテランが推進したグラン・プロジェ(Grand Projet)の一環、ラ・デファンスのグランド・アルシュ(Grande Arche de la Défence)と、ルーヴル美術館のピラミッド(Pyramide du Louvre)に良く似ています。

 誰しも、名古屋商科大学のこれら二つの建築物はフランスのグラン・プロジェからインスピレーションを得たのかと思うことでしょう。正門については、そうだと言えます。名古屋商科大学の新しい正門は、ラ・デファンスが出来てから約10年後の2000年に出来たため、ミレニアム・ゲートと呼ばれています。しかしISビルについては、栗本学長にインタビューしたところ、なんと1988年の建築だそうです(写真③の定礎板参照)。つまり、ルーヴルのピラミッドよりも少し先に出来ていたのです。学長によれば、二つのピラミッド建築のプロジェクトが似たような時期に立ち上げられたのはまったくの偶然だったそうです。

このように、フランスと直接的にも間接的にも縁のある本学ですが、仏検の団体受験はこれまで行ってきませんでした。仏検を受験する学生は、個人で申し込みを行っていました。ところがこの平成26年度秋季から、団体コードを取得し、団体受験ができるようになりました。本学での団体受験の申し込み方法は、まず教務事務局で受験料のチケットを購入します。

 このチケットと記入済みの申し込み書をあわせて、語学センターの窓口に持って行きます。提出された申込書を担当者がとりまとめて下さり、最終的に経理に提出します。

 こうして初めて実施された仏検団体受験によって、私のクラスと、同じくフランス語を担当されているキム=フレス先生のクラスを合わせてのべ14名が受験しました。受験する学生の中には、服飾関係や国際ボランティアなど、将来フランスのみならず世界中のフランス語圏と関わりのある仕事に就き、語学力を活かしたいと考えている人もいます。試験前には、私のクラスでは希望する学生に対して、授業前の休憩を利用して、15分だけ仏検対策の時間を設けました。思い切って受験した学生はやはり通常の授業でもフランス語力を定着することができていると感じられますし、また今後もフランス語を続けて次の段階に移りたいという意欲を新たにしているようです。

 次回以降、より多くの学生が受験することを願っています。

 (ご所属は寄稿当時のものです)

 

大阪府立松原高校におけるフランス語活動

 上田 亜津美 (大阪府立松原高校)

勤務し始めて5回目の春を迎える高校での、昨年度のフランス語活動をご紹介したいと思う。

大阪府立松原高校は、大阪府のほぼ中央に位置する松原市にある、生徒数約800人の総合学科高校である。興味や関心に応じて学習できるように、約160の科目から授業を選択することができ、フランス語は、2年生では週に2時間(昨年度は27人)、3年生では週に4時間(昨年度は9人)学ぶことができる。

生徒の選択理由は、話せたらかっこいいから。おしゃれだから。いつか行ってみたい国だから。パティシエになりたいから。フランスで働きたいから。といったところであるが、しかし、フランス語教師は、非常勤講師の私ひとりである。そこで、生徒たちにさまざまなフランス語体験をさせたいと思い、いろいろな活動を取り入れてみた。どの活動も、たくさんの方々の支えがあって成り立つもので、この場を借りて、お礼申し上げたい。

(1)交流授業

大阪市立大学商学部に短期留学に来るフランス人大学生との交流授業を行っている。7月の初めに行われるこの授業で出会う留学生は、ほとんどの生徒にとって、「初めて出会うフランス人」である。そのため、生徒たちは、授業前から準備に大変張り切り、授業当日は、留学生の発する言葉に耳を澄まし、身を乗り出して聴くという、普段は目にすることの出来ない(?)素晴らしい態度で授業に臨む。1時間の授業時間であるが、このときの授業内容の定着は、結果として、考査時にも抜群の効果を示している。

(2)コリブリ

松原高校は、日仏高校ネットワーク=colibriの加盟校である。この交換留学のしくみのおかげで、高校生は、自身の往復飛行機代を負担するだけで、互いの高校に留学できる。この留学を通じて、生活面での成長が望まれるのも(たとえば、家族と自分のお弁当作りを始める。)旅行にはない、コリブリの魅力である。

もちろん、このプログラムの真髄である、フランスの高校で学べるという経験から伝わってくることもある。ある生徒は、レポートの一節で次のように語っている。「フランスの高校では、フランス語、英語の他に、1、2個ほど語学を自発的に学んでいた。そのことが他国への理解へとつながっているのではないかと思う。[…]」このように気づくのであれば、様々な家庭環境や背景を持った生徒が集まってくる公立高校でこそ、複数の外国語を学ぶことができるチャンスの提供をしたいと思うし、また、こどもたちにとって、経済的な心配無しに、フランス語の勉強が出来る環境を整えたいとも思うのである。

(3)フランコフォニーを発見しよう!

一般的な話として、フランスと聞くと、マカロン、エッフェル塔などといった、見た目の華やかさを思い浮かべる人が多いのではないか?(そういうステレオタイプなイメージすら本校の生徒は持ち合わせていないのであるが。)そういったイメージに限定しないものとして、フランス語とその世界をとらえ直したかったので、そして何よりも生徒が楽しむだろうと思い、昨年12月の「フランコフォニーを発見しよう!」(主催:日本におけるフランコフォニー推進会議、日本フランス語教育学会)に参加した。まず、テーマを「フランコフォニーの学校生活」と決めて、自分たちと同じ年頃のリセの生徒を取材するところから始めた。フランス語が六角形のフランスだけで話されているのではないこと、また、彼らの様々な国籍や出身地である、日本、カナダ、チュニジア…を知り、フランコフォニーの世界を体感していく。途中、参加者5人の生徒たちの、東京の会場までの交通費を捻出するのにピンチがあったが、たくさんの方々に助けていただいたおかげで、参加が実現した。このイベントに参加した生徒のひとりは、フランス語学科に大学進学が決まった。私が松原高校で授業を担当してきた4年間で、初めてのフランス語学科への進学者である。今後もこのうれしい変化に期待したい。

(4)仏検

2013年春から、松原高校では学校行事として、準会場で開催している。5級からの実施である。開催のきっかけは、生徒に、「学校でしてくれたら交通費もかからなくて良いのに…。」と言われたことである。もっともなことと思い、学校の先生に相談したところ、「新しい試みでワクワクします。」と快諾してもらえた。日曜日に学校を開けてくれる先生を見つけることはそう簡単ではないと思っていたが、学校行事にすることでその不安は解消された。「生徒のためになること」であれば、教科は関係なく、先生方は力を貸してくださるものだと心強く感じた。昨秋の仏検の朝は寒かった。試験開始の数時間前から会場教室に来て受験勉強をしていた生徒の話によると、当日の担当を引き受けてくれた先生が、「教室は冷え切って寒いだろうから。」と職員室のストーブを入れて会場を暖めてくれたとのこと…。また、卒業生も受験にやって来る。高校卒業後も何らかの形で勉強を続けている姿を見ることは、現役の高校生にとっては、フランス語を続けることが絵空事ではなく、高いレベルの現実のこととして映る。「来年は4級、2年後は3級、または10年後、20年後に2級、1級を受けようね。」という話は最近したばかりである。仏検の日が、フランス語同窓会のようになるかと思うと、仏検を開催したかいがあったというものである。

さいごに。

3月に卒業した3年生たちが、最後のフランス語授業の際、思いがけず「メッセージ」を寄せてくれた(下の写真)。生徒のひとりが、このように書いてきた。「2年間、あほでうるさくて問題児な、えりなを、仏検5級取れるまでのレベルにしてくれてメルシー。」こういうことを言われると、今年もやっぱり仏検受験に向けて、授業をがんばろうと思うのである。

フランス語でつながる世界

2014年秋季2級合格
平栗 響子
大学生(お茶の水女子大学)・東京都


「なんでフランス語を学んでいるの?」

これは大学でフランス語を専攻している私に度々投げかけられる質問です。日本において接する機会の多い英語や中国語ではなく、あまり身近に感じないフランス語の世界に飛び込んだ理由はいくつかあります。

まず高校生の時から英語以外の言語を習得したいという想いがあり、その頃に偶然国際交流の場でフランス人の友人ができたことです。彼女は私にとって初めて接するフランス人で、彼女から聞くフランスの話はなにもかも新鮮なものでした。その後は何度も英語でメールのやりとりをし、遠く離れながらも友好を深めました。このような経験から、私は次第にフランスを身近に感じると共に興味を持ち、彼女と彼女の母国語で話をしたいと強く思うようになっていました。そして幼い頃から音楽や芸術、ファッションに関心があったため、それらとフランスの深い関わりや日本とフランスの関わりを大学でしっかり学びたいと考えていたこと、さらに花の都パリへの憧れが私の背中を押しました。

初めの1年間は幾度となく初歩的な困難にぶつかり、フランス語から逃げ出したい時もありました。基礎固めには相当苦労をしましたが、日々の授業や自習に必死に取り組むことで少しずつ自信をつけていきました。それから仏検に挑戦し、初めての合格時に文部科学大臣賞を頂いたことは、今までの努力が認められたような気持ちがして大変嬉しかったです。この受賞はフランス語へのモチベーションを高め、大学3年生の夏にはストラスブール大学でのサマープログラムに参加しました。約1カ月の滞在中にはパリ、ランス、コルマール、ドイツにも足を運びました。目に映る全てが美しく、フランス語を学んできて良かったと思える瞬間でもありました。

大学でも様々な貴重な経験が出来ました。その中でも特に印象に残っているのは、イタリア、ウクライナ、韓国、ギリシャ、ロシアなど世界各地から集まった生徒たちがフランス語で懸命にコミュニケーションをとろうと、辞書を使いながらも会話をしていたことです。英語ならば少しはスムーズにできる会話も、お互いを支え合いながらフランス語を使おうとしていた様子は、それぞれのフランス語習得への熱意を感じました。また彼らに「日本、東京から来た」と話すと、目を輝かせて日本について数えきれないほどの質問をしてくれたことも心に残っています。日本の文化がこれほどまでに世界で認知され、興味を持たれていることに驚きを覚え、将来は日本を世界に発信したいという気持ちが芽生えるきっかけとなりました。

あっという間に大学生活最後の年を迎えましたが、これからも努力を惜しまずに研鑽を積みたいと思います。そしてふらっと気軽にフランス旅行できるような女性になるためにも卒業後も継続的にフランス語に親しみ、仏検にどんどんチャレンジしたいです。
 

フランス語の思い出と想い

2014年秋季3級合格
坂田 和恵
会社員・東京都

この度は2014年度仏検成績優秀者表彰式にて、全国検定振興機構理事長賞、朝日出版社賞を戴き感謝いたします。大人になってからの受賞は大変嬉しいものです。

昔ピアノを学ぶ為、渡仏した際、音楽学校で学びながらソルボンヌ大学近くの公立小学校で大人のために行われる夜間授業に登録し週二回、フランス語の初歩を学びました。外国人のために行われる授業は様々な国の多様な職業の人で活気があり、約20人/クラスをフランス人の先生が熱心に教えてくださいました。

外国人と一緒に学ぶ大人の活気とは、大人でありながら学ぶ姿勢は子供のようで間違いを恐れず、間違えても先生の教え方によってユーモアに変わり自然に正解に導かれる。又、カードでのゲームも子供のように真剣にやり、コミュニケーションの練習をしながら明るく笑いのある雰囲気で積極的に学ぶ姿勢が身に付きました。

授業にスピード感があり、聞いて座っているだけのものでなく、質問が生徒よりドンドンなげかけられるので先生は答えるのが大忙しの授業でした。

日本に帰国し一年経たないうちに青年海外協力隊に参加し、北アフリカのモロッコで活動をしました。フランスで学んだ全てのこと、語学、音楽、食文化、衣服文化、気候の違いへの対応、外国人との習慣の違いの吸収やコミュニケーション能力を最大限活かしての生活。

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あれから9年もの年月が流れ、オリンピックが日本にやってくる!という朗報を聞き、久しぶりにフランス語学習を再開。世界中の選手や人々が日本にやってくると思うと嬉しくてたまらない。

日常生活で全くフランス語を使わない日がほとんどとなり、仕事をしながら時間が無く勉強するのは大変でした。ただインターネットでフランスのニュースを見たり、iPhoneが出てからはフランスのラジオを通勤時に聞き、聞き取りは常にやっていたので試験の時幸いしたと思います。文法は一通りやり直し、予想問題集を1冊4回繰り返しました。

フランス語は私にとって芸術的な言語であり、言語文化(言葉の使い方・表現の仕方)の違いが魅力的なのです。常に肯定的な表現を使い、単語一つにしてもポジティフ・ネガティフのニュアンスを把握し言葉を選ぶ。フランスの大人の活気、元気、高齢者の威厳、動物を愛する心は今も強く印象が残っています。素敵な思い出をたくさん下さったフランスでお世話になった先生や人々に感謝しています。

過去の貴重な思い出を大切にしながらこれからもフランス語は継続し、仏検を通して勉強の課題として取り組んでいきたいと思っています。 

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第20回 自然なフランス語を書くためには?(上級)

慶應義塾大学准教授 井上 櫻子 

 

仏検では、上級レベルの準1級、1級に達すると、和文仏訳の問題が登場します。特に、1級では和文仏訳の配点は20点と、書き取り、聞き取り 1 番とならんで1次試験の中で最も配点が高い設問ですから、この問題を制することなくして仏検最上位級合格はあり得ないと言ってもいいでしょう。

作文力を高めるには、文法や構文に関する知識固めと豊かな語彙の獲得が大前提となりますが、加えて「自然なフランス語」を書くためには、日本語の発想とフランス語の発想の違いに対するセンス、そしてフランス語の単語および表現のもつ細かなニュアンスに対するセンスをみがくことも不可欠です。

 

                


ここでは、2014年度春季1級の問題を例に検討していきましょう。

今回は、隣人である老婦人から遠回しに庭を掃除してほしいと頼まれたときの印象を語った生活情景の一コマをどのようにフランス語で表現するか、受験者の技量が試される問題でした。

(問題)

 玄関を出たら、お隣のおばあちゃんが寄ってきた。嫌味たっぷりに「きのうはひどい風でしたね」と言うので、「またか」とお隣の庭先をみると、案の定、うちの庭木の葉がたくさん落ちていた。どうせなら「掃除してちょうだい」とはっきり言ってほしい。

(解答例)

 Alors que je sortais de la maison, la mamie d’à côté s’est approchée de moi. M’ayant dit d’un ton aigre : « Il y avait un vent terrible hier, n’est-ce pas ? », j’ai pensé « encore ! » en regardant son jardin : comme je m’y attendais, il était jonché de feuilles de notre arbre. S’il en est ainsi, j’aimerais mieux qu’elle me demande clairement de les balayer.


  
      

多くの受験者がつまずいたところを順に見ていきましょう。

1つ目の文は、比較的取り組みやすいように思われるかもしれません。しかし、ここにも落とし穴があります。実際に、答案の中には、冒頭の一節、「玄関を出たら」Alors que je sortais de la maison の「玄関を(=玄関から)」を de la porte de ma maison としたものがかなりありました。おそらくは、日本語の「玄関」という語をフランス語の語彙に忠実に置きかえようとした結果でしょう。
しかし、フランス語の発想では「玄関を出ること」とは、「家を出ること」だととらえますので、de la porte は不要です。同様に、「玄関を(から)」を de l’entrée、de la sortie とした答案もかなりありましたが、これも不可です。
 

同様に、2つ目の文の「お隣の庭先をみると」en regardant son jardin の「庭先」についても、受験者が「庭先」(特に「先」)という語のニュアンスにとらわれ、無理にフランス語に写し取ろうとしたようです。そのため、le (un) bout de son jardin、une partie de son jardin とした答案が少なからず見うけられました。ここは言葉のあやに惑わされず、「語り手は結局何が言いたいのか」ということだけを考慮に入れて少々発想転換すれば、意外とシンプルに処理できたところです。

以上の2つの事例は日本語とフランス語が必ずしも一対一対応しないことを示す好例だと言えます。


         

また、本問にはフランス語の単語および表現のもつニュアンスに対するセンスが試された箇所もありました。

まず、2つ目の文の冒頭の一節「嫌味たっぷりに」d’un ton aigre です。この問題で最も難しかった箇所のようで、ほとんどの受験者が ironiquement としていました。しかし、この語は「嫌味」(相手を不快にさせる言葉)というよりも「皮肉」や「風刺」(相手を非難すること)の意味合いが強くなり、問題文のニュアンスとはやや異なります。

次に、3つ目の文の一節「掃除してちょうだい」の「掃除する」(les) balayer(=「掃く」)を nettoyer とした答案が数多く確認されましたが、nettoyer は「清潔にする」「汚れを落とす」を基本義としますので、ここでは不適切です。

                

それでは、日仏の発想の違いに対するセンス、フランス語の単語および表現のニュアンスに対するセンスはどのように培われるのでしょうか。

まず、日頃から辞書(1級であれば仏和辞典だけでなく、Le Petit Robert のような仏仏辞典も)の定義を、用例も含めて丁寧に読み込むのが肝要であることは言うまでもありませんが、さらに、新聞や雑誌などを読んでいて「フランス語独特の表現だ」と感じる表現を自分で書き出して覚えていくのもきわめて効果的です。自分の手を動かし、「表現集」を作っていくのは時として面倒に思われるかもしれません。しかし、このような手堅い作業を通してこそ、1級合格のゴールは確実に近づいてくるのです。


 

第19回 前置詞あれこれ(初級から中級へ)

                  神戸大学教授  松田 浩則 


フランス語の上達には動詞の活用をきちんとおぼえたり、名詞や形容詞の性・数一致の規則を習得したりする作業がとりわけ肝心なことは、今さら力説するまでもありませんが、前置詞の用法をきちんと把握しておくことも同様にきわめて重要です。前置詞というと、すぐに à、de、en、pour、dans などが思い浮かぶでしょうが、これら基本的な例を含む多くの前置詞には、多種多様な使い方があり、それらを確実に習得することでフランス語力のアップがはかられるはずです。
 

                


今回は、日本人が苦手とする前置詞の習得法を、2014年度春季4級の問題 [6] を手がかりに探っていきましょう。  

(     ) の内に入れるべき最も適切な前置詞を3つの選択肢の中から選ぶ問題です。

 (1)  Elle se promène (     ) la plage.
    ①    entre      ②    pendant        ③    sur  
 (2)  Il est à Paris (     ) trois jours.
    ①    à            ②    avec             ③    pour
 (3)  Il y a une rivière (     ) la maison.
    
①    chez       ②    derrière       ③    en
 (4)  Qu’est-ce que vous ferez (     ) vos études ?
    ①    après      ②   depuis          ③   vers

 

(1)から見ていきましょう。

 (1)  Elle se promène (     ) la plage.

          ①   entre      ②   pendant        ③   sur  

選択肢の ① entre が「~と~の間」、② pendant が「~の間に、~の間ずっと」、③ sur が「~の上」という意味だと大体の見当をつけておきます。そのうえで、(1)の全体がどのような意味になるかを考えてみると、「彼女は浜辺を散歩している(する)」となりそうです。①や②では文の意味が成立しませんので、③が入って Elle se promène ( sur ) la plage. となります。それほど難しくはなかったはずですが、得点率は66%にとどまりました。

ここでの sur の使い方は、たとえば、Il y a un livre sur la table. 「テーブルの上に本が一冊ある」と同じように、「事物の表面との接触」を表す最も基本的な用法に属しますので、確実に覚えてください。少しレベルが高くなりますが、sur に関しては、たとえば Je vais trouver ce CD sur Internet. 「私はそのCDをインターネット上で見つけるつもりだ」(場所)、とか Cet hôtel donne sur le lac Léman. 「そのホテルはレマン湖に面している」(「〜に面して」、方向性)などの便利な表現もありますので、ぜひ覚えておきましょう。

さらに、同じ se promener 「散歩する」でも、たとえば、Le dimanche, beaucoup de gens se promènent dans les rues. 「日曜日には、たくさんの人が街を散歩する」の場合は dans を用います。これはフランス(ヨーロッパ)の「道」rue(s) が、建物群に囲まれた「谷の底」にある、つまり建物群の中に組み込まれている、という発想から使われています。また、例えば J’aime me promener en voiture. 「私はドライブをするのが好きだ」の場合の en voiture では、移動手段や方法を示す en が使われています。「飛行機で」 en avion、「電車で」 en train などと表現できます。

 

 (2)  Il est à Paris (     ) trois jours.

          ①   à         ②   avec        ③   pour  

(2)も同じように、それぞれの選択肢の意味を考えながら、文全体がどのような意味になるかをまず大まかに把握します。文の前半 Il est à Paris が「彼はパリにいる」という意味になるのはすぐにわかるはずですが、① à 「~で、~に」、② avec 「~といっしょに」、③ pour 「~のために」と、それぞれの前置詞が最も頻繁に使われる平均的意味の範囲内で考えているかぎりでは、文全体が明快な意味をまとうとは言えません。ここでは、pour に「~の予定で」という「時期や期間」を表現する機能(使用法)があることを前もって知っている必要があります。正解は Il est à Paris ( pour ) trois jours. となり、「彼は3日間の予定でパリに (来て) いる」という意味になります。得点率は72%でしたが、なかなか難しい使用法だと言えます。

同種の用法としては、たとえば、-Vous partez pour combien de temps ? 「どれくらいの期間、旅立たれる予定ですか」 -Pour un mois. 「一ヵ月の予定です」、-C’est pour quand, ton départ ? 「君の出発はいつの予定?」 -Pour dans un mois. 「一ヵ月後だよ」などが挙げられます。最後の例は、Pour (dans un mois) と理解すればいいでしょう。「dans +時間表現」は「〜(の期間の)のち」という意味になりますので、「1ヵ月後の予定で」という意味が成立するわけです。

 

 (3)  Il y a une rivière (     ) la maison.

          ①   chez      ②   derrière        ③   en  

(3)選択肢 ① chez はほとんどの場合、Je reste chez moi cet après-midi. 「今日の午後は外出しないで家にいます」、Va chez le boulanger acheter du pain. 「パン屋さんでパンを買ってきて」のように「 chez +人」という形で使いますので、① は簡単に排除できます。③ en は、様々な意味で用いられますが、文脈から推してこの文の内にすっきり収まる気配はありません。すると、消去法で ② derrière 「~の後ろに、裏に」が正解だと推測でき、Il y a une rivière ( derrière ) la maison. 「その家の後ろには小川が流れている」に辿り着きます。derrière は他の前置詞と比べて用法の数が少ないので比較的容易だったはずですが、得点率は66%にとどまりました。

ざっと整理しておきますと、空間的に「~の前に」は devant、「~の後ろに」は derrière を用います。ちなみに、時間的に「~の前に」は avant を、「~の後に」は après を使用します。

 

 (4)  Qu’est-ce que vous ferez (     ) vos études ?

          ①    après      ②    depuis        ③    vers  

(4)文の動詞が単純未来形であることに着目しましょう。文全体の意味は、「(あなたは)勉学を終えたら(卒業後)、どうする予定ですか」となるはずです。② depuis 「~以来」、③ vers 「~頃;~に向かって」では適切な文が成立しませんので、① が入って、Qu’est-ce que vous ferez ( après ) vos études ? となります。得点率は62%でした。

上述した通り après は、時間的に「~の後に」という意味で使われます。熟語的に Après vous. と言う表現がありますが、「あなたの後に」という文字通りの意味から、「お先にどうぞ」という転義が派生します。ただし、たとえば、Le chien court après un chat. のようなケースでは、「犬が猫を追いかけている」となり、時間的な「後続」のニュアンスは希薄になり、むしろ「欲望の対象」を追求する意味合いが強まります。
 

          

   
   

以上の記述からも推察されると思いますが、各前置詞の「守備範囲」(基本義)をきっちりと押さえることを、まずは学習の基礎に据えましょう。その後、さまざまな前置詞が、さらにいかなる使用法へと派生的に広がって行くのか、その広範な意味のネットワークを複合的に把握することが、フランス語の上達には欠かせないと思います。そのためにも、具体的なフランス語の例文とともに、たくさんの用法を覚えていくよう、地道な努力を怠らないで下さい。



 

フランスに住みたい!!

2013年秋季準2級合格
松本 賢治
公務員・東京都

私は今回仏検を受験するにあたって、ほぼ初めてフランス語を学ぶような状態から始めましたが、まずはフランス語特有の言回しや言葉選びの感覚を身に付けたいと考え、例文を暗記するところから始めました。また、数多くの例文に触れる中で、動詞や形容詞の活用、単語の並び順、代名詞の用法など疑問に感じた部分を参考書で調べていくという方法で文法を学びました。

こうした勉強と並行して仏検の過去問を解いてみると、単語力とリスニング力が不足していることに気付き、対策を始めました。リスニングについては、音声を聴くだけではなかなか上達しませんでしたが、自分の口に出して発音する練習を始めたことがきっかけで、急に聴き取ることができるようになってきました。

他にも過去問を解いていく中で弱点を見付けては対策するということを繰り返していくうちに、だんだんとフランス語が身に付いてきました。

そのおかげで、勉強を始めて約1年程経った頃のパリ旅行の際には、つたないながらも現地の人達とフランス語でふれあうことができ、これまで勉強してきた甲斐があったと深く感動しました。自分で考えたフランス語のフレーズが初めてフランス人に伝わったときの喜びは、今でも忘れられません。カフェ店員の方やホテルの方等と一緒にたくさん写真を撮らせていただいたので、次回パリに行くときには、また彼らに会いに行って、フランス語で書いた手紙と一緒に写真を渡したいと思います。そして、そのときにはもっと会話ができるように、勉強して行きたいです。

仏検は非常にバランス良く問題を構成しているので、過去問を解いてみると自分のどこが弱いのかがよく分かるし、日常的に使用されるフレーズや熟語が多く含まれているので、試験勉強をすることで、自然と会話力も身に付くように思います。フランス語は一つの単語が多くの意味をもっていたり、複数の単語を組み合わせることで想像していなかったような意味が生まれたり、勉強をしていると毎日新しい発見があります。新しい文章に出会うと、「この単語にはこんな意味もあったのか」といつも驚かされます。最近は仏作文の楽しみに目覚めてきました。フランス語で自分の考えを表現するだけでも嬉しいのですが、それがフランス人に伝わったらと思うと、とてもワクワクします。

私は学生の頃からパリがとても好きで、いつかフランスに住みたいと願っていました。もし少しでもフランスに住むことができたら、限られた期間の中で最大限の知識を吸収したいと思います。そのためにも、フランス語の能力を日々高めていくことができるよう、努力を継続していきたいと思います。

韓国におけるフランス語の現状

                     チェ・ミギョン 
(会議通訳者・ソウル梨花女子大学通訳翻訳大学院教授)

今季の「APEF通信」は、ソウル梨花女子大学通訳翻訳大学院教授で会議通訳者も務めていらっしゃるチェ・ミギョン氏に、韓国におけるフランス語教育の現状に関するエッセイをお寄せいただきました。是非ご一読ください。(原文フランス語はこちら

 
 
この20年の間に、韓国におけるフランス語教育は中等教育で大きな後退を経験した。フランス語を担当する教員はその犠牲となり、英語や他教科の教育へと変更を余儀なくされた。状況は、今のところ、安定しているように見える。アフリカのフランス語圏との交易が盛んになっているおかげで、高等教育ではフランス語に対する関心が明らかに回復してきている。これらの国々との公的なパートナーシップや民間の投資により、フランス語を使う通訳者、翻訳者、プロの職人への求人が高まっていることが、もはや文学ではなく、職業を目的とするフランス語教育をめざすように圧力をかけているのである。

フランス語教育(1900 - 2005)

韓国におけるフランス語教育はフランス人司祭によって聖書やカテキスムの翻訳とともにはじまり、これを目的としていた。植民地時代に消滅したフランス語はその解放後に復活するが、「日本の影響下、めざす目標は人文主義的教養の習得になり、実践的な目標は軽視され、学びの中心は文学が対象となる。」(ミヨー、2011 : 28)この傾向は韓国社会に完全に適合し、孔子の伝統にそまったこの社会は自然と文学研究に力を入れるようになる。独裁政治(1960-1980)の間、実存主義の虜となった韓国の知識人はフランス語の学習に自ら熱心に取り組んでいく。イ・オリョンやノーベル賞候補者で大江健三郎の友人であるファン・ソクヨンのような有識者は、高校でフランス語を学び、サルトル、マルローそしてカミュを、またスタンダール、フロベール、ボードレール、ランボー、ジィド…などを読んだ。

中等教育で必修の第2外国語は1990 年代初頭まで、女子生徒は英語に加えてフランス語を、男子生徒はドイツ語を学ぶように勧められていた。ロシアやとくに中国などの周辺諸国との付き合いやグローバリゼーションも手伝って、生きた第2言語の教育が急速に進んでいく。中国語や日本語に目を向ける高校生が次第に増え、フランス語とドイツ語は影が薄くなっていく。教授法がふさわしくなかったり、習得の難しい言語だと考えられていることなどの要因がフランス語にマイナスに働いていく。中等教育最終試験はその成績で受験生が受験したい大学を決定するが、この試験でフランス語は不利になる。日本語や中国語、アラビア語でさえ、フランス語よりも良い成績をより簡単にとれるからだ。

2011年に政府は第2外国語の必修を廃止する。以後、自由選択科目となり、第2外国語を選択する生徒数が1年間で71万6千人から59万6百人へと大きく落ち込んだ。ドイツ語がいちばん打撃を受ける。2012年、ソウルにある196の高校が日本語教育を実施している。176校が中国語を、わずか27校だけがフランス語を教えている。各高校の自由裁量に任せたことが、中等教育最終試験でより簡単に良い成績のとれる科目に集中するという結果を招いた。ただ学区によっては第2外国語教育に熱心に取り組んでいるところもある。キョンギやチュンブク地域の学区がその例で、2013年11月にフランス大使と大学のフランス語教員が出席して討論大会を開催している。いくつかの学区では、高校と大学の連携による教育を行っていて、高校生は自分の高校のカリキュラムにフランス語がないとき、大学のフランス語の授業を受けることが可能になっている。

また外国語専門高等学校が存在し、多くの家庭が志望する優秀な学校になっている。ソウルには6校ある。そこではネイティブスピーカーが教育の大半を担っている。生徒たちは高校1年から1つの言語を専門に勉強する。高校卒業の時点で大学1年次または2年次修了にも匹敵するレベルを身につける。彼らは自分が専門とした外国語に余裕があるため、大学では専門を2つ選ぶことが多い。

2007年に導入したフランス語能力検定資格試験のひとつであるDELF/DALF(「仏検」という独自の資格試験をもつ日本と異なり、韓国はそのときまで検定試験がなかった)はフランス語学習者数の維持に間違いなく貢献した。DALF C1の資格をもつ高校生はほぼ自動的に大学への入学が許可される。この措置によってDELF/DALFへの関心が高まり、2013年度の受験申込み者は7,950名で、韓国は世界で最も多くのDELF/DALF受験者を迎える国になっている。若者の資格試験に対するモチベーションは、競争が激しい環境で、自分を大半の若者と区別してもらう資格を取得する必要性に起因している。英語に次いで、第2の西洋言語であるフランス語は、今日、エリートが選択する言語とみなされている。

高校生はまた中等教育最終試験の英語を別の第2言語に置き換えることができる。これにより2012年には3,433名の高校生が英語の代わりにフランス語を選択してバカロレアに相当する試験を受けた。

  *  *  *

高等教育では1990年代から英語一極化がすすみ、1997年の金融危機がこの流れを加速させた。フランス語科は閉鎖され、ヨーロッパ文明研究と呼ばれるもののなかに取り込まれてしまう。大学生は英語のテスト(TOEICまたはTOEFL)を受け、輸出中心の経済のなかでは理解できることではあるが、その成績は世界のビジネスを英語で行う大手企業の採用時に決定的な意味をもつ。このようななか、国立ソウル大学は受験生に入学試験で第2外国語の受験を課している。

高等教育におけるフランス語の状況は停滞気味である。しかしながら福島の事故で日本語科の受験生の減少が起こり、フランス語科には幸いしたことを述べておこう。フランス文化と文明の授業はとても人気がでており、受講者数は継続して増えている。ただフランスの言語と文学研究はこの流れにのれていない。英語科でも同じような現象を経験している。学生は実践的な学びにより多くの関心をもち、シェークスピアへの関心はうすれている。いずれにしろ70の大学のフランス語科は、職業を目的とするフランス語教育のプラス面を体験し始めている。
 

ビジネス言語のフランス語と職業教育

文学と文化が、韓国ではフランス語に対する関心の源であったが、これからは経済的かつ産業的理由がこの言語の将来性を担うようにみえる。韓国によるTGVの購入がおそらくこの節目を記すものであろう。2004年に開通したソウル - 釜山(プサン)間、ソウル - 木浦(モッポ)間の超特急路線の交渉と建設そして技術移転によって、フランス語有資格者の雇用が必要となった。交渉会議、技術者やエンジニアの養成およびメンテナンスの講習会が多くの通訳者の募集につながった。数十万ページに及ぶ技術資料がフランス語翻訳者によって訳されなければならなかった。

パン・ギ・ムンが国連事務総長に選出されたことは、フランス語教育に新たな支持をもたらした。フランスが安全保障理事会の常任理事国であったため、彼のフランス語の知識がたとえ不完全なものでも彼を選出する決定打であったことを知る機会となった。また、パン・ギ・ムンは以前、外務大臣としてアフリカを数多く訪問しており、他方では、ノ・ムヒョン大統領は2005年にアルジェリアと戦略的互恵関係に調印しており、このことが韓国とアフリカのフランス語圏との強い協力関係のはじまりを印すものとなっていく。韓国はこのあと新しい都市建設やインフラ整備、地下鉄路線、石油化学工場建設計画など、アルジェリアにおける存在感を強めていく。多数の開発計画が韓国開発機関公共支援基金(韓国国際協力団)を通して、チュニジア、モロッコ、コンゴ民主共和国、ガボン、セネガル、マダガスカルで進められている。このように進展することで、韓国外務省は中東アフリカ局およびアフリカ諸国内の外交ポストに通訳者と翻訳者の採用を押し進めた。

サムスン、韓国GM (旧デーウ)、ヒュンダイ、ドンウォン、ドンミョンのような大規模なコングロマリット(複合企業)を代表する私企業が、今日、アフリカ大陸で存在感を高めている。KEPCO(韓国電力公社)のような国営または民営会社はフランス語の資格をもつ人材を募集している。フランス語の専門家は英語、中国語または日本語の専門家と比べて数が少ないため有利である。アフリカのポストを引き受ける人たちの報酬は多くの場合、大卒で就職した人より2倍から3倍高い。「インクルト」(韓国の就職情報サイト)の採用ポータルサイトに「フランス語のできる人優先」という文言が掲載されているのをよく目にする。マリアンヌ・ミヨーの報告によると、同じサイトで2006年(アフリカとの協力関係の開始時期)から2008年の間に、最も求められている言語であるフランス語の専門家に対する求人が15倍に増えた。長い間、フランス語を選択した学生たちに唯一採用見込みがあったのは教職と…フランス大使館ぐらいだったのに。韓国に開設されたフランス企業は、逆にフランス語振興のために少しも尽力していない。転勤してきた管理職はここでは英語での業務を選択しているからだ。

求人の一部はメディアからもきている。聯合ニュース(通信社)、KBS公共放送、季刊『コリアナ』、この雑誌は国際社会に韓国を知ってもらおうと、多くの記事をフランス語に翻訳させている。出版業界もまた通訳・翻訳専門養成所で育成されたプロの翻訳者を採用しているが、20年ほど前は大部分の翻訳はまだ大学教員によって行われていたのだ。韓国は翻訳・通訳養成所を2校もっていること(ソウルにある梨花女子大学と韓国外国語大学の大学院)を誇りにしており、6、7年前から、この養成所の受験者数が毎年、目に見えて大幅に増加している。私の養成所のフランス語科の学生は、卒業前でも、官公庁や大手の産業グループに数多く採用されている。

*  *  *

文学の言語であった韓国のフランス語は、一貫性のある将来を見据えた言語政策の欠如と英語一極化に苦しめられてきたが、2000年代半ばから新たな正当性を見いだしている。フランス語が韓国の労働市場でこんなに注目されたことは今だかってなかったと言ってよい。DELF/DALF資格試験の受験者数も、フランス語で仕事のできるプロの募集もこのことを証明している。

フランス語への関心を取り戻すことができたのは、プロの育成教育、すなわち非常に高いレベルの資格をもつ卒業生を労働市場に輩出してきた通訳翻訳者養成所が実施する教育にある。これからは好循環になりそうだ。雇用主はフランス語のプロが非常に優秀であると信じているため彼らを探し求め、フランス語のプロは自分たちの能力を欲しがる市場の存在を確信し、さらに能力を高めようと努めているからだ。この好循環は、若い女性(伝統的にフランス語学習によりすすんで目を向けてきたのは彼女たちだから)により一層の利益をもたらし、彼女たちが今日の韓国労働市場へ大勢参入するお供となっている。

アフリカのフランス語圏における多くの公共市場や開発計画は、まだ入札募集や契約調印の段階であること、またアフリカは年5%の平均経済成長率を記録していることを考慮すれば、韓国での職業を目的とするフランス語の未来を信じるだけの理由はあるのだ。

 

[関連サイト・参考文献]
http://www.koreaherald.co.kr (Recruiters seek speakers of French, Russian) (英語)
http://www.incruit.com/ (韓国語)
http://french.yonhapnews.co.kr/ (仏語)
Marianne Milhaud, « Paradoxe et perspectives du français en Corée », in Synergies Corée, n° 2, 2012. 

                 (原文仏語 訳:中村敦子)

思わぬ喜び

2013年秋季準1級合格
笠井 絹子
東京都


フランス語の学習歴は15年になりますが、まさか自分がこんなに長くフランス語を続けるとは思っていませんでした。

フランス語との出会いは、大学での第ニ外国語の授業です。当時は試験のために基礎文法を覚えるのがやっとのレベルでした。

大学卒業後は日本語教師となり、日本での大学進学をめざす外国人に日本語を教えていましたが、片言しか話せなかったはずの学生が、みるみるうちに上達していく姿には本当に驚きました。そんな彼らを見て、私も外国で言語を習得したい!と強く思うようになりました。そこで選んだのが、かろうじて基礎をマスターしていたフランス語です。

渡仏して最初の数ヶ月は発音がまったく通じず、ホームステイ先のマダムに辞書を見せながらコミュニケーションをとる毎日でした。
それが時間とともに、まずフランス語が理解できるようになり、そして少しずつ話せるようになっていきました。

1年間の語学留学の後、縁があってまたフランスに戻り、映像翻訳の仕事に就くことができました。結局4年半もの間フランスで生活しましたが、自分のフランス語に自信をもつことはできませんでした。日常会話には困りませんが、きちんと体系的に上級レベルまで学習した経験はなく、時事ネタなどの話にはついていけませんでした。

帰国してからもなんとなくフランスの新聞を読んだりラジオを聞いたりしていましたが、仏検を受けようと思ったのは、この「なんとなく」続けてきたフランス語のレベルを客観的に知りたいと思ったからです。

学習方法としては、毎日フランス語の新聞を読み、日本とフランスの時事ネタをフランス語で理解できるように訓練したり、インターネットラジオを聞いて新聞で使われるような単語を耳からも覚えるようにしました。また、口頭試験直前には、フランス語学校で自分の「上品ではない」話し方を試験にふさわしい「正しい」フランス語に直してもらい、集中的に口頭表現を学習をしました。この面接練習のおかげで当日は緊張せずに話せたので、とても有効だったと思います。

その結果、試験に合格したことはもちろん嬉しかったのですが、いつの間にか以前よりもフランス語の理解力が上がっていたことに何よりも喜びを感じました。これはまったく期待していなかったことで(考えてみれば当然の結果なのですが)、試験勉強を通して日常的に役に立つ能力を身につけることができていたのです。

試験に合格するために勉強しましたが、その後に思わぬ喜びが待っていました。以前よりもさらに楽しくフランス語の文章を読み、ラジオを聞くことができるようになりました。そして自分のフランス語に少し自信が持てたように思います。

この試験の先にある可能性を励みに、次のステップを目指していきたいと思います。


 

フランス語が私にもたらしてくれたもの

2013年秋季3級合格
小林 咲
学生(アンスティチュ・フランセ東京)・埼玉県


フランス語を話せるようになりたい、フランスをもっと知りたいという思いを持つようになったのは、遡ること私が物心ついた頃からあったような気がします。 

私が生まれる前、父の仕事の関係で両親と5つ離れた姉はフランスに住んでいたことがあり、私も小さいころからフランスの話を聞いたり、日本に来られる父の知り合いのフランス人の方と幾度か会う機会を通し、私にとってフランスは遠いようで近い、何だか特別な…そういう存在だったような気がします。私が小学生の頃、父に初めてフランス語の小さな辞書を買ってもらったことを思い出します。 

そんなフランスへの思いを持ちながら、語学学校でフランス語を学び始め、全くの初心者だった私は、フランス語で行われる授業の中で先生が話されていること、質問の内容も分からないことばかりで、「本当に理解できるようになるのか…」と思う日々でした。ですが、気持ちの中には、幼少のころからあった「フランス語を話せるようになりたい、フランスの事をたくさん知りたい!」という強い思いが変わらずあり、学校に入った初めての夏に、手探りでしたが今まで勉強したことを全て復習し、必死に机に向かいました。すると徐々にですが、以前とは違うものを感じることができるようになりました。それは先生の話すフランス語が以前に比べて理解できるようになり、自分が話したいことも少しずつ表現できるようになったということです。

それは私にとって何より嬉しいことで、「次も、もっとフランス語で先生と話せるようになりたい!もっとフランス語を通してフランスを知りたい!」という思いが強くなりました。その思いは今でも私の原動力になっています。

私の通う語学学校には様々な目標を持って来られる方が沢山いらっしゃいます。日本の大学からフランスの理系屈指の学校へ進む人、バレエ留学、音楽の留学、子育てを終えられて夢を叶えるためフランスへ渡った方、また、日本にて、フランス語の仕事に就くために努力をされている方。それぞれの環境の中で、目標の実現に向かい自分を信じて前に進んでゆく方々との出逢いは、私の人生の指針になったといっても過言ではりません。私がフランス語を始めたころから受け持ってくださっているフランス人の先生との出逢いも同じく、大きなものでした。時には厳しく、時には温かく、私のフランスへの想いや、上達したいという気持ちを応援してくださり、その先生から一から教えて頂けたことは、とても幸運なことだったと思います。感謝の気持ちでいっぱいです。

そして、昨年の秋、長年の夢だったフランスに初めて行くこととなりました。そこでも私は大切なものにたくさん出逢うことが出来ました。今まで学んだことを自分から発信して通じたときの喜び、日本とはまた違った独特の空気感や空の色、何よりずっと自分が行きたいと願っていた場所に実際に自分が立っているということが、言葉には出来ない喜びと感動でした。フランスが益々大切な存在になりました。「フランス語を学ぶ」という一つの枠組みから一歩出てみると、そこには新しい価値観や多くの発見があるということも知りました。

幼いころから憧れていたフランス、そしてフランス語は、今は「憧れ」ではなく明確な「目標」へと変わり、実際に言葉で表現することが出来る喜び、また、学ぶ事を通して出逢った多くの人や価値観は私にとってかけがえのない宝物となっています。

フランス語との出逢いは私に大きな目標をもたらしてくれました。夢に向かってこれからも努力していきたいと思います。

 

モンテーニュ『エセー』をフランス語で読みたくて

 Montaigne m’a invité à découvrir l’univers du français


Tomoki SAKAKIBARA
 
 2013年春季1級合格・エールフランス特別賞候補 
榊原 知樹 
翻訳業・東京都 


Tous les matins au réveil, la première chose que je fais avant de sortir du lit, c’est de lire les Essais de Montaigne, un livre français. D’habitude, je n’en lis pas beaucoup, une page ou moins, voire quelques centaines de mots car j’aime lire lentement ce qui m’apparaît important, savourer ce qui est délicieux. Pour moi, cette lecture est le petit-déjeuner de l’esprit, un instant de sérénité pour bien me préparer à affronter la journée qui commence. 

Montaigne est un écrivain humaniste du XVIe siècle. J’ai commencé par lire son œuvre traduite en japonais il y a plus de quinze ans. À cette époque, j’avais eu la sensation d’avoir trouvé un ami, ou plutôt un oncle au parler franc qui n’hésitait pas à partager avec moi ses pensées les plus intimes. J’ai souvent oublié le fait que je lisais un grand homme de la Renaissance qui avait vécu plus de 400 ans auparavant. Mon intérêt pour lui n’a cessé de grandir jusqu’à ce que je ne puisse plus résister à la tentation de le lire en langue originale. 

モンテーニュ『エセー』表紙

J’ai appris le français à l’université comme seconde langue étrangère. Le temps ayant passé, j’ai dû reprendre la grammaire dès la première page. J’ai ensuite lu une dizaine de livres français assez faciles pour m’échauffer. 

En octobre 2008, je me suis enfin lancé dans la lecture des Essais en français, en tant que projet personnel. C’est un volume de 800 pages et je n’avais aucune idée du temps qu’il me faudrait pour le terminer, ni même si je pourrais aller jusqu’à la fin. J’avançais pas à pas, en consultant des dictionnaires et en comparant souvent le texte avec la traduction. Lors du tremblement de terre de 2011, j’ai dû suspendre ma lecture pendant trois mois. Il m’aura fallu cinq ans, mais je l’ai finalement achevée l’année dernière. À peu près en même temps, j’ai passé et réussi le niveau le plus élevé de l’examen de langue française le plus répandu au Japon… S’agit-il d’une simple coïncidence ? 

Pourtant, je dois vous faire un aveu : je n’ai pas tout compris des Essais. À dire vrai, certaines choses se sont avérées bien trop difficiles, et parfois, je ne comprenais même pas pourquoi il les disait. Je ne m’en sens pas coupable cela dit, j’ai seulement suivi l’exemple de Montaigne lui-même, qui confesse que lorsqu’il lit des auteurs anciens et qu’il a des difficultés à saisir leurs propos, il essaie une ou deux fois de comprendre, mais ne poursuit pas plus loin. Je crois qu’il m’aurait permis de faire de même en le lisant. Bien sûr, j’aimerais malgré tout en comprendre un peu plus la prochaine fois que je le lirai. Quoi qu’il en soit, ce que j’ai compris cette fois-ci est bien suffisant pour que ma lecture vaille les années que j’y ai consacrées. 

モンテーニュ『エセー』原書見開き

D’où me vient cet attrait pour Montaigne ? Il a observé ce qui se passait autour de lui et réfléchi sur ses propres pensées. Il a également lu des poètes et philosophes grecs et romains, et en rapprochant ses réflexions et ses connaissances classiques, il a écrit une œuvre de sagesse dont chaque chapitre est un cristal brillant de mille feux. Dans les Essais, il discute de tous les sujets importants que l’on peut concevoir dans la vie : l’amitié, la lecture, l’ivresse, la vanité, la maladie, l’oisiveté, la vieillesse, la mort, etc. 

Ainsi, Montaigne m’a invité à découvrir l’univers du français. Je me suis rendu compte que j’en appréciais la sonorité. C’était passionant de réciter par cœur de petits morceaux de la littérature française. Je pense qu’un beau texte est comme un bijou — un objet d’art créé par un artisan des mots. Un tableau de Picasso, de Cézanne ou de Monet coûte une fortune, mais un beau texte littéraire de Proust, de Flaubert ou d’Hugo ne coûte rien, et nous pouvons garder leurs écrits en mémoire !

Mon dialogue avec Montaigne m’a appris à mieux vivre, à réfléchir sur mes expériences et mes souvenirs et à trouver de la valeur même dans les petites choses qui font de notre vie ce qu’elle est. Son message — bien qu’il soit impossible de faire le résumé d’un ouvrage aussi gigantesque — c’est que la vie vaut la peine d’être vécue et d’être bien vécue. Voici ce qu’il dit vers la fin des Essais :

C’est une absolue perfection, et comme divine, de savoir jouir loyalement de son être.   (Livre III, Chapitre XIII, « De l’expérience »)

La lecture de Montaigne et l’apprentissage du français sont à mon sens deux choses indissociables. Chaque pas que je fais dans l’une me fait progresser un peu plus dans l’autre. Ce qui est sûr, c’est qu’elles resteront toujours de grandes sources de plaisir et d’inspiration pour moi.


* 2013年度成績優秀者表彰式当日に実施されたエールフランス特別賞選考会のために提出されたエッセイを、ご本人の許可を得て転載させていただきました。

 

夢を叶えるために

2013年秋季準2級合格
松浦 千絵
広島県


聴覚障がい者用字幕制作者の試験に不合格という大きな挫折後、「真剣にフランス語を学び直したい!」と思い、学習し始めました。

大学時代にフランス語を学んだものの、その後はフランス映画を観賞したり、「リサとガスパール」や「ペネロペ」シリーズの絵本を読んだりする程度でした。ブランクが長く、四十路半ば近い自分の現状を考えると、かなり無謀かも…、と迷った時には、3回の渡仏旅行の写真を見ては、気合を入れ直しました。因みに、私のベスト4は(多すぎて3には絞り込めません)、長距離バスで訪れた「モン・サン=ミッシェルの絶景と修道院」。ジヴェルニーの日本の橋(モネ)オルセー、オランジュリー、マルモッタン美術館を巡った後で、訪れたジベルニーの夏の花咲き乱れる「モネの家と庭」。TGVで訪れた「近郊都市への1泊旅行」。そして、現地在住の友人のお蔭で堪能した「ワインと庶民の美味しいフランスの食」。ビストロやパン屋さんのみならず、デリや専門店のテイクアウト料理も絶品でした。


20年以上ぶりに、フランス語に再挑戦するために購入したNHKのテキストで、仏検を思い出し、ウォーミングアップに受験することにしました。

2013年6月に4級を受験。多少感覚が戻ってきた2013年秋季試験では、3級と準2級を併願し、9月以降は、準2級に照準を絞って学習しました。学習時間が限られているため、最初にNHKラジオフランス語会話のCDを反復「傾聴⇔音読」し、4月~9月分放送の初級編のディアログを覚えました。2013年の久松健一先生の講座は、仏検に適した内容で、効率よく試験対策を進められました。次に、準2級の攻略本、ガイドブック、過去問題集を繰り返し解いては、間違えた項目を覚えるよう心掛けました。

また仏検HPの「合格者の声」と「学習のツボ」のコーナーも、非常に効果的でした。自宅学習を重視される方にはお薦めです。

準2級の1次試験では、書き取り試験でミスをしました。そこで2次試験に向けて、3年間の過去問題の分析と、NHKのテキストの音読に力を入れました。その甲斐もあり、2次試験の本番では、落ち着いて臨めたと思います。

現在も、学習時間が限られているため、NHKラジオ講座の応用編と、テレビ講座の反復視聴をベースに、毎日フランス語を聴くことを心掛けています。

4度目のフランス旅行を、今度は娘と一緒に実現する日を夢見ながら、2級へのレベルアップを目標に、これからも頑張りたいと思います。

 

在仏外国人とフランス語

2013年秋季準1級合格
円谷 智子
研究員・福島県


私は長年フランスで生活し、大学に在籍していた経験がありますが、語学の勉強はかれこれ10年ぶりでした。日本に帰国後、昔友人からもらった仏検問題集2級と準1級を発見し、試しに解いてみました。日本語の解説を読み、各種辞書を引き、改めてフランス語に外国語として意識して向かい合い、フランス滞在時とは別な頭の部分を使っているような不思議な感覚でした。

特に、日本語からフランス語への変換の難しさを痛感すると共にフランス語表現の奥深さ、面白さを発見しました。日本の文化や社会情勢に関する意見を発表する経験も初めてで、日本でフランス語を話す妙な気恥ずかしさもあり新鮮でした。思い切って受験した結果、時制の弱点、細かいところのいい加減さ、訓練不足が即座に露呈しました。準1級合格後に成績優秀者に選出され、受賞に驚きましたが、久々に向上心が生まれました。

フランス人社会ではフランス語が話せて、読み書きができるのは当たり前です。しかし、フランス語が母国語ではない、生業でもない一般外国人にとって、常に正確なフランス語の運用が求められる生活は試練です。努力不足を認めつつ、私には諦めや苦手意識がありました。フランス生活では、無意識にフランス語で受信し、フランス語で発信していたはずですが、発信においては伸び悩み、むしろ時と共に崩れていきました。日本語の思考や運用レベルに対して、フランス語力が釣り合わないからなのでしょう。環境が変わった今、頭を意識的にリセットし、仏検での「対訳」の訓練も侮れないと感じています。

とはいえ、移民大国のフランスでは、様々な社会問題を抱えながら、多くの外国人がフランス語と母国語を場に応じて使い分け、たくましく生きています。街頭からはいろんな言語、いろんなフランス語が聞こえてきて、いろんな国の文化の共存がフランスという国に彩りを与えているのだと思います。私もいろんなフランス人と出会い、彼らの懐の深さを享受した外国人の一人ですので、今後、対外的に変わらざるを得ないであろう日本社会で、懐の深い日本人になれるように心がけたいです。

カンペール(ブルターニュ)のコルヌアイユ祭り

カンペール(ブルターニュ)のコルヌアイユ祭り


 

2013年度 団体賞受賞のことば

2013年度より文部科学大臣賞団体賞が創設されました。今年3月に実施された成績優秀者表彰式において、受賞団体に賞状が授与されました。仏検における出願者数、その増加率および試験結果等を勘案し、年度を通じたフランス語教育への取り組みを総合的に判断した上で、特に優秀と認められた3団体に授与されます。栄えある第一回目の受賞団体には、拓殖大学、成城大学文芸学部ヨーロッパ文化学科、埼玉県立伊奈学園総合高等学校が選出されました。

 

拓殖大学 寺家村 博 先生

本年度より新設された文部科学大臣賞(団体)をいただけたことに心より感謝申し上げる。1998年度秋季のフランス語検定から拓殖大学は準会場として連続して参加させていただいている。一歩一歩、コツコツと積み上げてきた私たちの歩みをよく見ていてくださり、評価をしていただいたことはこれからの大きな励みとなる。

 検定を取り入れたことで生じた効果に関して簡単に述べさせていただくことで受賞の感謝の言葉にかえさせていただく。まず大学の初年次教育の枠組みの中にフランス語検定を取り入れる試みを行っている。毎年初修言語としてフランス語を選択する1年生たちほぼ全員に秋の検定で5級受験を課している。これは4月から学習してきたことが検定合格という一つの現実の形になる喜びを学生たちに実感してもらうと同時に目標に向かって計画的に学習する習慣を身につけてもらうためでもある。合格で得た自信は専門科目の学習にも波及効果をもたらすのである。第二に検定を目指すことで語学環境を整えられることである。例えば検定に必要な語彙集や共通テキストの作成、検定に特化した演習クラスや検定合格者への表彰制度の設立など具体的な形での整備が進んでいる。受賞を良い機会としてさらに教育環境の整備を一つ一つ実現していきたい。
(写真 右より)髙橋敏夫先生(拓殖大学学長)、長谷川善一APEF理事長 

 

成城大学 文芸学部 ヨーロッパ文化学科 高名 康文 先生

準会場で受験生を増やしていることが、受賞の理由の一つと聞きました。僅かながら貢献ができたことを喜ばしく存じます。 本学の文芸学部と法学部では、仏検合格が、その学期のフランス語の成績に反映されます。共通試験を実施して単位の実質化に努めているという前提も、受験の動機になっているようです。また、検定試験対策用の授業を全学共通科目として設けています。法学部では履修者のほぼ全員が仏検を受験しています。 それにもまして、休日に教室を使わせてくれる大学の柔軟性、監督を手伝ってくれる非常勤の先生方と大学院生、学生の日頃の学習のおかげです。会場責任者の所属学科名での受賞ですが、大学全体で頂いた賞と心得ています。
(写真 右より)高名康文先生、末永朱胤先生(成城大学)、長谷川理事長 

 

 埼玉県立伊奈学園総合高等学校 森内 悠佳子 先生

この度は文部科学大臣賞団体賞に選出して頂き、誠にありがとうございます。生徒、教員一同大変喜んでおります。本校では、学習2年目にフランス語検定4級から挑戦しています。部活動も盛んな中、学業との両立は容易なことではありませんが、年に二回の検定合格を目標にすることで、メリハリのある学習や生徒同士が切磋琢磨する環境ができているのだと思います。近年、本校のフランス語学習者は増加傾向にあります。それに伴い、検定準備にも時間を要しますが、今後とも当検定を学習と教育に有効利用させていただきたいと思っております。また検定実施に当たり、ご尽力を頂いておりますフランス語教育振興協会に心より感謝申し上げます。 
(写真 右より)森内悠佳子先生(埼玉県立伊奈学園総合高等学校)、後藤一也さん(在日フランス大使館賞受賞、同校3年)、長谷川理事長 

仏検と大学におけるフランス語の復権

長沼 圭一 (愛知県立大学 外国語学部)

私が6年前から勤務している愛知県立大学には外国語学部があり、フランス語専攻が存在している。高いモチベーションを持ってフランス語を学んでいる学生も少なくない。そのため、仏検については、強制されずとも、毎年それなりの数の学生たちが出願し受験していた。そこで、学生たちの受験状況を把握したく、私は愛知県立大学の頭文字をとってAKDの名前でAPEFさんに団体受験の登録を申請した。団体受験と言っても、会場提供や一括申込のような大掛かりなことはせず、個別に申し込む学生たちに団体コードを願書に書いてもらい、合否の通知が私のところに届くようにしたというだけであった。

私がこの大学に赴任した当初、私が所属するところは「フランス学科」という名称であり、10名の日本人教員がいた。ところが、その翌年、新カリキュラムの導入に伴い、「ヨーロッパ学科フランス語圏専攻」という名称に変わった。それまでの「フランス学科」、「スペイン学科」、「ドイツ学科」がまとめられ、「ヨーロッパ学科」となったのである。その際に、ヨーロッパ学科の3専攻は教員の定員を1名ずつ削減され、9名となった。さらに、この新カリキュラムが導入されて5年経った今年、また新たなカリキュラムが導入されることになった。5年前と同じようにヨーロッパ学科の3専攻は教員の定員がさらに1名ずつ減り、8名となった。そのうえ、今回は学生の募集定員も50名から45名へと削減されたのである。なぜ、こんな風にヨーロッパがどんどん縮小されてしまうのか。

これは全国的な傾向であるように思われるが、現在の大学では実利的な部分ばかりが求められているのではないであろうか。現在の世界の経済成長は、アジアにおいて著しいものがある。したがって、今後は大学でも中国や東南アジアに関する学問を提供する場を拡張していくことが必要だと考えられ、相対的にヨーロッパの需要は少ないという判断なのであろう。しかしながら、これについては2つの疑問の念を禁じえない。1つは実利と学問を同じ土俵に乗せてよいのかという疑問である。学問というのは、利益と結びつかなければやる意味がないのであろうか。人は知りたいことがあるからこそ真実を追究し学問にいそしむのではないのか。ヨーロッパで長い年月を経て培われてきた英知をそんなに簡単に切り捨ててよいものであろうか。知を愛することこそが学問の本質ではないのか。もちろんこれが理想に過ぎないことは私もよく理解していることであり、実利的な目的で学ぶことを否定するつもりはない。しかし、これをよしとしたならば、2つ目の疑問が湧くことになる。今後経済成長が期待されるのはアジアだけであろうか。もっと長い目で世界を見れば、アフリカの経済発展は無視できないはずである。フランス語はヨーロッパだけで使用されている言語ではなく、アフリカにはフランス語を公用語とする国が21ヶ国あり、通用語も含めれば29ヶ国にのぼる。本当に実利主義をとるつもりならば、大学におけるフランス語教育を縮小するのは決して得策とは言えないではずである。では、フランス語をいつ学ぶのか。

そんな中、本学では、文部科学省のグローバル人材育成推進事業に申請していたプロジェクトが採択され、2012年度後期からこのプロジェクトが始動した。このグローバル人材育成推進プロジェクトの一環として本学に誕生したのが、iCoToBa(多言語学習センター)という語学学習スペースである。この名称の由来であるが、iには、愛知県立大学の「愛」、I(わたし)、independent(自主性のある)の「i」、Coには、communication(コミュニケーション)、community(共同体)、cooperation(協同)の「co」、Toには、格助詞の「と」、to(~へ)、together(一緒に)の「to」、Baには「場」といった意味が込められており、「愛知県立大学においてコミュニケーションによって世界とつながる場」というコンセプトで新設された。このiCoToBaには英語2名、フランス語1名、スペイン語1名、ドイツ語1名、中国語1名、合計6名のネイティブ教員が配属されている。ネイティブ教員は、大学の正課には組み込まれていないiCoToBa独自の授業を担当する他、iCoToBa施設内のラウンジでの学生とのフリートーク、各種イベントの企画・運営なども行っている。また、iCoToBa施設内には、パソコンを使ってe-Learningができるスペースや大画面テレビで外国語放送やブルーレイ・DVDが見られるスペースも用意されている。

また、グローバル人材育成推進プロジェクトの一環として2013年度後期から実施されたのが、語学検定試験の受験料負担制度である。当初は外国語学部の学生全員分を負担することを目指していたが、結局は予算の都合で2年生と4年生のみが対象者となり、秋季のみ補助されることとなった。仏検については、フランス語専攻の4年生は準1級を、フランス語専攻の2年生は準2級を、第二外国語としてフランス語を履修して2年目の学生は3級を、大学側の受験料負担のもと、受験することが義務付けられた。当然のことながら、これまで学生が自分の意志により私費で受験していたときと比べ、圧倒的に受験者の数は増加した。これに伴い合格者の数も増加したことは言うまでもない。例えば、準1級は私の記憶では以前は毎年1人合格者がいるかどうかという程度ではなかったかと思われるが、今回の2013年度秋季では12人の学生が合格となった。正直なところ、これは私の予想を上回る嬉しい誤算であったが、今後仏検の団体受験が学生にとってフランス語習得のモチベーションを上げるよいきっかけとなり、さらには大学におけるフランス語の復権につながることを期待したい。

 

フランス語は、高校生中学生に世界を開いてくれる

菅沼 浩子(聖母被昇天学院中学校高等学校)

「フランス語を学べてホントによかった」「フランス語の授業が楽しみだった」「フランス語と出会えて世界が広がった」「この学校に来てよかったと思うことの一つはフランス語をやれたこと」「進路が見つけられた」「大学でも続けるね」etc. 今年も高3の卒業生達が卒業式にたくさんの嬉しいメッセージをプレゼントしてくれた。

本校は、各学年2クラス約70名という小規模校だが、母体となるAssomption修道会の創立者がフランス人であるため、高1からフランス語を第二外国語として必修で履修させている。国公立、理系を目指す生徒をのぞき、高2高3もほとんどの生徒が履修を続け、3年間フランス語とかかわる。ただ3年間といっても、1コマ45分授業を週2回、行事等で授業が抜けることも多く、年間では60回程度。1コマの時間も大学の半分だが、高校生達は、毎日1時間目から7時間目(あるいは6時間目)まで、1時間ごとに違った科目を学び1日を過ごす。数学の次は、大急ぎで着替えて体育、また大急ぎで着替えて単語テストから始まる英語、古典、フランス語、情報、世界史といった具合だ。

このような生活の中で、受験科目でもなく、高校で二外を学ぶことが一般的ではない現状で、フランス語を必修で学ぶということが生徒達にどのような意味をもたらすのかを全校生徒達へのアンケートをもとに探ってみた。というのも、創立者の精神を伝えるために、開校以来フランス語教育を行ってきた本校でさえ、数年ごとに行われるカリキュラム編成の際、受験に関係ない科目を必修で残す必要があるかどうかという問題に常に直面しているからだ。また、長年、公立や他の私立高校で1年間または2年間選択科目として教えてきた私としては、数年前本校で仕事を始める際、3年間続けて教えられるということで今までとは違う様々な可能性を感じていた。しかし、実際にはクラス全員、30数名の生徒を相手に語学を教えることは簡単なことではなく、3年生ともなると仏検3級取得者から、動詞の現在形もおぼつかない生徒が同じ教室におり、上位層の生徒を伸ばし切ってやれていないということが悩みだった。それを解決するには、必修でなくとも選択で興味のある生徒との小人数クラスにしてもいいのではないかという思いも少し持ち始めていた。

しかし、今回のアンケートから見えてきたものは、やらされている感が強いのではという私の考えとは少し違うものだった。「フランス語が必修であるほうがいいか、選択科目のほうがいいか」という問いに対して、各学年2〜3名の生徒以外は、必修であるほうが望ましいと答えている。その理由の多くは、必修であったからこそフランス語と出会え、世界や視野を広げることができたというものだ。もし、高1の時点で選択科目としてフランス語が設定されていた場合は選んでいなかったと答えた生徒は4割程度いた。つまり、この4割の生徒は必修でなければフランス語と出会わなかった生徒達である。そして、フランス語を学んだからこそ気づけたことを一人一人何らかの形で実感していた。つまり、より多くの高校生にフランス語と出会わすことが重要なのだ。

もちろん前述のように忙しい高校生にとって、フランス語学習の時間をそれほどさけるわけでもなく、私自身も高校での第二外国語は異文化へのスタート地点となればいいと考えてきた。基本的にその考えは変わってはおらず、他教科と違い、ある程度は生徒達自身が自分なりの目標を決めフランス語と付き合ってくれればいいと思っている。そのため以前から仏検には積極的に取り組ませていたものの、希望者が中心だった。しかし、必修で学んでいる彼女達にとって、公的な評価もモチベーションの一つなのではないかと考え、2年前から自校を準会場とし、基本的には高2で全員5級取得を目標とした。ただ、英検と違い、土曜日に行えないため、現実的には様々な理由から全員受験とはいかない。けれども生徒達からは、「まさか自分が高校時代に仏検を取得できるとは思っていなかった。」「取得できて嬉しい。」「また次を目指したい」という声が聞こえているそして、2013年度の秋は、高1も今まで以上に多くの生徒が5級にチャレンジし、高2高3で、4級、3級を受験する生徒達も少しずつ増えてきている。また、3年間学ぶとはいえ、前述したとおり3級を取得するのは授業外での生徒本人の相当の努力が必要なのが現状だが、たとえ5級であっても、日本のほとんどの高校生が英語のみを学んでいる中、他言語の資格を取得したということは高校生にとっては優越感や自信という意味を見出し、その後の学習へのモチベーションアップへつながっていくのだ。

さらに、必修のメリットには学校全員がやっているということにもある。フランス語を学ぶ人、仏検を受験する人が学校内で一部の特別な存在ではないということは、彼女達にとってかなり重要なポイントである。

また、高3では主にフランコフォニーの国々について学んでいるが、ステレオタイプ的なフランスとは違う文化に触れることでフランス語への関心を高めたと感じている生徒が多いのも興味深いし、学年が進むにつれ、フランス語を学習してとてもよかったと感じている生徒が増加していくのも興味深い。そして7割強の生徒たちが卒業後もなんらかの形でフランス語学習を続けると回答している。

中学生についても少し見てみると、本校は中高一貫校であり、隔年ボルドーの姉妹校から来る10数名の高校生が、中高関係なく生徒たちの家にホームステイもする。そのため、中学生にもフランス語は身近にあり、高校で第二外国語を学ぶことに9割程度の生徒が肯定的で、中3の約7割は高校から学ぶフランス語を楽しみにしている。けれども、兵庫県の公立中学3年生150名に行ったアンケートでは、おそらくほとんどは二外のない高校に進学する彼らからも、高校で英語以外の言語を学ぶことが必要か、学びたいかという2つの質問に対して、両方とも7割程度の生徒達がそう思うという結果が得られた。そして具体的に学びたい言語の多くは、大学で人気の中国語や朝鮮語ではなく、スペイン語、フランス語、ドイツ語などヨーロッパ言語があげられていた。(仏検を知っていると答えた生徒は数名だったが。)これらの結果を見ても、中高校生たちにとってフランス語また英語以外の言語を学ぶことは負担感よりも、むしろメリット感の方が強いといえる。

このように、外国語学習を柔らかい頭でとても前向きにとらえている中高生達。フランス語が世界を開いてくれると感じている中高生達。我々大人は彼らをサポートすることをもっと真剣に早急に取り組んでいかねばならない。私たち非常勤講師では様々な限界があるのも現実だが、まず、カリキュラムで削られないための近道として、進路を決める際にも、進学の際にも、フランス語を学んでいることにいかにメリットがあるかを、二外への意識は20年前とほとんど変わっていない高校の現場に示さねばならない。そのためには、大学で高校での履修経験(仏検3級を取得してでさえも)が明確に考慮されていない場合が多々あるが、大学側にももっと高校での現状を知ってもらい、高校側への働きかけをしていただきたい。二外を学ぶ高校生はまだまだマイノリティで、彼らを特別扱いすることは大学でも難しいことは承知だが、フランス語学習者を減らさず、本当の意味での視野の広いグローバルな人材を育てるためにはこれは必須であり、今後は高大連携でめやすを作るなど、高大教員がさらに協力して取り組むべきだと痛切に感じる。

砂漠にて

2013年春季3級合格
沖田 翔
学生(筑波大学)・茨城県

大学の3年生になるまで、つまりは去年の春の時点まで、私はフランス語を学習したことがありませんでした。フランス語を学習し始めて10ヵ月と少し、一言で言ってしまえば私はまだまだ学習を始めてから日の浅い、フランス語初心者ということになります。大学1年生からならまだしも、なぜそんな中途半端な時期にフランス語を始めようと思ったのか、当然疑問に思われることでしょう。もちろん始めるきっかけとなった出来事がいくつかあったのですが、今回はその中の一つであるサハラマラソンについて、触れてみたいと思います。

「サハラマラソン」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?フランス語での正式名称はMarathon des sables で、文字通りサハラ砂漠を舞台にして行われるマラソンレースです。フランスが主催している国際大会であり、レースの特徴としては 

1) 一週間をかけて250キロを走破する耐久レースであること

2) レースの間の食事や寝袋などは自給自足。つまり一週間分の食料や水、寝袋などを全て背負い全行程を走り抜けるレースであること

等が挙げられます。サハラ砂漠は日中は50度、朝方は10度前後と気温の差が激しく、重い荷物だけでなくこの気温差もレースを過酷なものとしています。私は一昨年の4月に、このレースの第27回大会に参加しました。「精神的な鍛錬がしたかった」というのがその動機です。20歳になった自分への、いわば通過儀礼のような意味合いもありました。

とはいうものの、走ってみるとやはりレースは過酷で、一日目から脱水症状に陥ってしまいました。暑さで内臓がやられ、体内の水分も尽きて汗すらかけず、いくら水を飲んでも、いくら塩のタブレットを飲んでも頭痛と吐き気が止まりませんでした。しかしそんな時、一人のランナーが私に声をかけてくれたのです。その人は初老の、紳士然とした男性で、ゼッケンの国籍欄にはFRANCEの文字がありました。声をかけてくれたといっても、その時の私には彼の話すフランス語が理解できなかったのですが、彼はどうやら「水を飲め、一緒に走ろう。」と言っているようでした。彼に励まされ、私は再び走りだすことができました。そうして結局、彼はその日のゴールまで私のことを気遣いながら併走してくれたのです。道中、初めてのフランス語に触れた私はなんとか片言の英語で彼との会話を試みたのですが、あまり上手くいきませんでした。その時、フランス語の簡単な挨拶だけでも勉強しておけばよかったと激しく後悔したのですが、ただ、彼の方は終始鼻歌を歌っていて、そんなことはちっとも気にしていないようでした。サハラマラソンのランナー達は、どこか通じるものがあります。日本から参加していたメンバーとは話が合い、直ぐに仲良くなれました。ならば、あの陽気なフランスの男性とも、もしも私があの時彼が話す言葉を話せていれば、何事かを語りえたはずです。そしてそのように考えると、せっかくのかけがえのない、大切な機会を取り逃してしまったように感じたのでした。

レースが終わり、日本に戻った後も、その時の出来事がいつまでも心に引っ掛かり続けていました。そうして私は、思い切って独学でフランス語の学習を始めることにしたのです。そして今まで、フランス語を短い期間ながらも学習してきた現在になって思うことは、語学を始めるのに「遅い」ということはないということです。私は、物事の「縁」というものを信じています。なにかに強く心惹かれるのなら、それは必然的な文脈の上でそうなっているのだと感じますし、そしてそういった「縁」を感じて何かに夢中になるタイミングというものは、「遅い」とか「早い」とかといった言葉でくくることはできないようにも思うのです。それはあたかも、人間の意図というものとは無関係に、向こうの方からある時突然やってくるかのようです。あの砂漠のレースでの出会いに「縁」を感じた私は、フランス語の世界にどんどん夢中になっていきました。そうして情熱を持って学習していくにつれて、見える世界がどんどん変わっていくのを実感していったのです。例えば、街中には思いがけないほど多くのお店がフランス語の店名を掲げています。聞き覚えのある数々の曲が、実はフランスの歌手が歌うシャンソンであることに気付いた時は、驚きもしました。そして理性的な言語によって紡がれる、フランス哲学の精緻な論理の美しさには目もくらむほどです。フランス語を学び始めて出会った多くの本や音楽、フランスに特有の「理性」の精神は、間違いなく私の生活を豊かにしてくれました。私は、思い切ってフランス語の世界に飛び込んで、本当に良かったと断言できます。そして、それは例え私が50歳からフランス語を始めようが、70歳から始めようが同じように満足したとも思うのです。それは、「知る喜び」というものはそれを求める人間の年齢に関係なく、誰の前にも開かれているということを常々感じるからです。

私はこれからも、あの時砂漠で得た「縁」を胸に、日々「知る喜び」を噛みしめながらフランス語の学習に取り組んでいきたいと考えています。そして、走り続けて、サハラマラソンのようなレースに参加し続けることで、いつかあの時の陽気なランナーに再会することが出来たなら、その時は彼と走ることについてゆっくりと語りあってみたい。そう、強く願っています。

 

第18回 書き取りに強くなるには?(中級)

慶應義塾大学准教授 井上 櫻子 

 

仏検では、準2級以上のレベルになると書き取り問題が登場します。一次試験において最も配点の高い設問ですから、この問題で高得点を獲得するのが合格への鍵だといえるでしょう。しかし、ただ漫然とフランス語の「音」を聴いているだけでは、書き取りの力は身に付きません。それではどのような点に気をつけながら学習すればよいのでしょうか。
 

                

ここでは2013年度秋季2級書き取り問題を例に検討していきましょう。

本問では、2人の女ともだちとともにパリへやってきた女性が、オルセー美術館で有名な絵画の数々を目にしたときの印象が語られています。以下、正解の一部を抜粋します。  

Nous étions toutes les trois très heureuses de voir des toiles qu’on connaît bien. En effet, ce sont des tableaux qu’on avait déjà étudiés au lycée. Pourtant, est-ce qu’on a vraiment regardé la peinture ? Non. Nous étions simplement contentes de retrouver des œuvres célèbres.

私たちは3人とも、よく知っている絵を目の当たりにしてひじょうに満足だった。というのも、それらは高校ですでに習ったことのある絵だったのだ。しかし、本当によく絵を見ていたのだろうか。そうではない。私たちはただ、有名な作品を見つけてうれしかったにすぎないのだ。


  
              

多くの受験者がつまずいたポイントを4点挙げていきます。すると、落とし穴は音を正確に聞き取って単語や表現にむすびつける次元(聴取レベル)よりもむしろ、文法的に正確な文に組み立てる次元(統辞レベル)にあると分かるでしょう。 

1.  正解  Nous étions toutes les trois très heureuses  
                   「3人ともひじょうに満足だった」

まず、toutes les trois は本問で特にできが悪かった箇所の1つです。誤答例で最も多かったのが toute les trois。つまり、発音されない複数形の語末の s を忘れていたのですが、これは形容詞 tout の性数一致に気をつければ避けられたはずのミスです。同様に、heureuses についても、heureuse と単数形にした誤答がめだちました。
 

2.  正解  des toiles qu’on connaît bien  「よく知っている絵」

この一節では、qu’on connaît bien の qu’on がエリジヨンのせいで聞き取りにくかったようです。quand、comme などとした誤答がかなり認められました。しかしこのような接続詞の後に仮に connaît bien と続けてしまうと、従属節に主語が存在しないことになり、文として成立しません。確かに quand と qu’on を純粋に音のレベルで聞き分けるのは難しいかもしれませんが、文法的(統辞的)に正しい表現を意識すれば、うまく切り抜けられたのではないでしょうか。
 

3.   正解  des tableaux qu’on avait déjà étudiés au lycée
                 「高校ですでに習ったことのある絵」

ここにも多くの受験者が苦戦した箇所があります。qu’on avait déjà étudiés の étudiés です。正答率はほぼ1割程度で、半数近くの受験者が étudié としていました。他動詞が複合形の時制(直説法の複合過去や大過去など、助動詞 avoir をともなう時制)で用いられており、さらに直接目的補語が動詞 ( avoir +過去分詞) の前方に置かれた場合は、過去分詞が直接目的補語と性数一致する規則を思い出してほしかったと思います。直接目的補語が人称代名詞や関係代名詞 que の先行詞として動詞の前方に置かれている場合などがこれにあてはまります。ちなみに des tableaux のように単数形に x をつけて複数形とするような特殊な名詞、形容詞も出題されやすいのでチェックしておきましょう。
 

4.   正解  des œuvres célèbres  「有名な作品」

1. で指摘したことと重複しますが、やはりここでも célèbres が単数になっている誤答が目立ちました。また、アクサンの向きや場所を間違っている答案もかなり見受けられました。『仏検公式ガイドブック』でも強調されていることですが、アクサンもつづりの重要な要素の一つですから、アクサンの場所、形をしっかり覚え、かつ明確に記すようにしてください。
 

                

ここまで取り上げたポイントに難しい表現や単語はありません。書き取り問題を制するには、聴取能力や語彙力に加えて、基本的な文法事項をしっかりマスターしていることが実はきわめて重要なのです。書き取りの点数が伸び悩んでいる人は、ぜひ文法書を参照し、実際に手を動かしながらフランス語の文を筆記する練習をおこなってください。得点率はずいぶんかわってくるはずです。








 

 

仏検準1級を受験、取得して

2012年秋季準1級合格
下村 達郎
寺院住職・東京都

準1級の試験において、2級までと大きく違うのは、二次の面接において現実に話題となっている時事問題を扱う点でしょう。

例えば「消費税率引き上げの是非」。消費者として税率が上がらないことを望むのは当然ですが、では引き上げなくてはならないとされる根拠は何なのか。他の税ではなく、消費税にスポットを当てられる理由は何か。そもそも今の日本はどういった目標を掲げ、それにはどの程度のお金が不足しているのか。消費税は日々買い物をする度に支払う最も身近な税金です。しかしながら、私自身その必要性について根拠や背景を把握し、意見を持って日常生活を送っていたわけではなかったため、改めて考える良い機会となりました。

また、「オリンピックを東京で開催したいかどうか」というテーマも考えられます。主催することでもたらされる経済効果や、国際都市としての東京を改めて世界に対し知らしめることができるといった利点が挙げられます。逆に、大掛かりな準備に見合う景気回復が見込めるのか、国内外から多くの人が訪れることによって交通渋滞等の問題が起こらないか、そもそも会場を確保できるのかなど、課題も挙げられます。

一般に日本人は自国のことに関心がない、意見を持たず説明すらできないと言われることがあります。学習を進め、今後海外の方とフランス語で交流する機会が増えていくことを考えますと、この仏検準1級の試験を通じ、自分自身が身を置く社会の現状を見つめ直すきっかけを与えてもらえたのは大変有意義なことであったと実感しています。

話は変わりまして、余談ながら私が準1級受験までに行った勉強について書かせて頂きます。仏語圏に留学したことはなく(一週間程度のフランス滞在は計5回、宗関連の行事等で渡仏することもあります)、NHKラジオ講座(基礎編半年分×1、応用編3ヶ月分×2のディアログを全文暗唱しました)やインターネット上の教材を利用し、同時に東京の語学学校において4年間、週1~2回の授業を受けたところで合格、表彰式にもご招待頂きました。


※写真は2013年6月に行われた浄土宗フランス開教地主催、シャトーにおいての法要の際に撮影

具体的な部分に関して、一次の筆記試験については、[1]で出題される動詞や形容詞を名詞で言い換えるという練習は欠かせないとしても、それ以外はより多くの文章に触れ、自分の中にストックしている語句、表現の量の底上げをする他にないと感じました。また上で触れてきた二次の面接について、私の場合はまず大学入試用の小論文の参考書を読み、質問に対してどういう答えをするものかを確認しました(上でも書きましたが、「税率引き上げについて」を問われた時、「払いたくないから反対」だけでは議論にならないので)。その上で想定したいくつかのテーマに対する回答を用意、ネイティブの友人に添削してもらって、完成した文章を覚え込みました。意見をまとめる際には、そのテーマについてフランス語で書かれた記事をウェブ上で検索し、表現を抜粋するなどして、少しでもナチュラルな表現に近づけるよう努力しました。

勉強の仕方、ペースは人それぞれですが、少しでも皆様の学習の参考になりましたら幸いです。
 

【仏検事務局より】 このエッセイは2013年度7月にお寄せいただいたものです。掲載が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。


 

フランス文学を原文で楽しみたい!

2012年秋季4級合格
奥泉 知佳
会社員・東京都


思えばフランスに興味を持ったのは、小学校高学年の時に読んだある本がきっかけでした。

日本人とフランス人のハーフである主人公が、自分のアイデンティティに悩み、また、他人と見た目が違うことによるいじめ、家族との別離などを経験し、さまざまな障害を乗り越えて成長していく物語で、私はその主人公の強さに憧れるのと同時に、本の中に描かれていたパリに強く心を惹かれました。

その後中学生になり、読書好きだった私は、ヴィクトール・ユゴー、サンテグジュペリなどフランス文学ばかりを好んで繰り返し読んでいることに気づき、いつしか「フランス語を学んで、原文でこの本を読んでみたい」と思うようになりました。

しかし、フランス語を学ぶ機会はなかなか訪れませんでした。憧れのパリに行くことも、やっと実現したのは社会人になって5年目になったとき、去年のことでした。

ついにパリに行けると決まった時、私は、夢と憧れの詰まったその旅を最高のものにしたいと思いました。なるべく現地の人とふれあい、現地の空気をできるだけたくさん吸い込みたいと思ったのです。そこから独学で仏検の勉強を始め、2か月後に5級、その半年後に4級を無事取得することができました。 

社会人になって新しいことを学ぶということは、時間の面でもいろいろと制約があり難しいことではありますが、心の中にひとつ新しい芽が生えたような、フレッシュな気持ちになれます。現在は3級取得に向けて勉強中ですが、目下の目標は2級を取得し、フランスに短期留学をすることです。最終的には大好きなフランス文学を、原文で楽しめるようになれれば・・・と夢見ています。

社会人になって数年経ち、弛んでいた私の心に、風を吹きこんでくれたフランス語。
本当にありがとう。 



【仏検事務局より】 このエッセイは2013年度4月にお寄せいただいたものです。掲載が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。奥泉様はその後2013年度春季試験で3級に合格されました。おめでとうございました!


 

フランス語学習を通し、夢を育てる

2012年秋季準2級合格
安原 章
高校教員(立教池袋高等学校)・埼玉県


私の場合、高校教員として日々多忙なこともあり、仏語学習の時間をいかに捻出するか、独学ながらいかに学習を効果的なものにするかに苦慮しました。

通勤電車で動詞活用を確認したり、帰宅後録音しておいたラジオ講座を聴いたり。そして、ことあるごとに簡単な仏作文を声に出しながら行ったり…
電車の中で分厚い紙の辞書の例文を頭の中で音読しながら頭に叩き込むのも効果的であるように感じます。紙の辞書特有の「芳醇な香り」を愉しみつつ…そう、やはり外国語学習は五感を総動員して味わうものですね。特に「文化」の香りが豊かなこの言語は、自分の生活に彩りを加えてくれます。

昨冬はパリひとり旅の夢が叶い、クリニャンクールの蚤の市に出かけ、かねてから興味のある昔のビュヴァール(企業広告が印刷されたインク吸い取り紙)を扱う店の方と片言の会話を楽しんできました。自分の発した言葉がネイティヴに通じたときの歓びは何物にも代え難いですね。時の過ぎるのも忘れ、お店に並んでいる1960年代のビュヴァールや紙袋の意匠の細部に見とれてしまいました。

あるいは、ルイ・マル監督『地下鉄のザジ (Zazie dans le Métro) 』に登場するガブリエル叔父さんの暮らすアパートの前で写真を撮ったり…Bonne Nouvelle界隈も50年前の雰囲気をそのまま残し、映画の舞台にタイムスリップしてきました。

また、高架部分を走ることが多い地下鉄6号線に目的もなく乗り、車窓の街並から歴史を味わい、訳ありの駅名を本で調べたりしていました。ニューヨークの地下鉄の駅名が「〜丁目」と付けられていることが多いのに対し、歴史的記念日や人名が刻まれたパリの駅名は、口に出して発音するだけでも愉しいものです。Place d’Italieの明るい「イ」の音や、Barbès-Rochechouartに3回現れる“r”の音に、本業で教えている英語にはない艶やかさと気品さえ感じられます。

この他、いわゆる「美しく洒落た」パリとは対極的な、「普段着」のパリ(18区など)でセネガル料理を味わったり、すっかりこの街の懐の深さに吸い込まれ、すでに引退後の逗留計画を立てています!!

外国語学習は忘却との闘いで骨が折れますが、何事にも代えがたい歓びと宝物が手に入るということを、自らの学習を通し、日々生徒にも伝えていければと思っております。そして、業務や付加価値のためとしての語学は勿論、好奇心や興味といった純粋かつ情動的な部分も外国語学習の推進力となるのだと、あらためて認識しました。学習の具体的なステップを与えてくれた仏検に感謝しており、今後も上位級目指し、地道に励もうと思います。


 

第17回 日本語表現をフランス語の発想に移しかえる(中級)

                               中央大学教授 小野 潮

語頭のアスタリスク(*)は、その語が誤りを含むことを表します。
 

どのような言語でも、日常的によく用いられ、それを理解することで会話の流れの把握が容易になり、また自分で用いることができれば、発話を滑らかにできる言い回し、しかし、文法学習をしているだけではなかなか身につかず、それ自体を学習しないと覚えられない言い回しが存在します。

実用フランス語技能検定試験(仏検)では、そうした言い回しは5級のレベルから既にテキストには頻繁に用いられていますが、とくに3級、準2級、2級では、日本語の表現に対応させる形で、あるいはフランス語を書き取る形式で、こうした言い回しを問う文章が出題されています。なぜなら、こうした言い回しを、読んで、聞いて理解しインプットした上で、さらに、自分が発話し積極的に書くというアウトプットにも応用できるようになることが、フランス語をなるべく自然に話すためにおおいに役立つものだからです。この問題に出題される言い回しを自分で使えるようになれば、フランス語を話す際の滑らかさが格段に増すはずです。

                

今回は、2013年度春季3級 [1] の問題を検討してみましょう。

それぞれの設問について日本語が与えられ、それに対応するフランス語の表現がその下に記されていますが、その1語が空欄になっており、解答すべき語の冒頭の文字が与えられています。

 (1)  今日は何日ですか。
   Nous ( s       ) le combien, aujourd’hui ?
 (2)  たぶんね。
   Sans ( d       ) .
 (3)  はい、もう二度としません。
   Non, je ne ferais plus ( j       ) ça !
 (4)  まさか!
   Ce n’est pas ( v       ) !

この問題を解くには手がかりが3つあります。

  • 1つ目は、与えられた日本語です。これを読んで、すぐフランス語の表現を思いつけ、それがフランス語で与えられた表現そのものであるならば、既にこの問題は解けているに等しいでしょう。
  • 2つ目は与えられたフランス語表現の(   )を除いた部分です。とくに(   )の前後の表現から、(   )内に入れるべき語の品詞が想定できる場合が多いからです。
  • 3つ目は(   )内に与えられた語の最初の文字です。この最初の文字が現れない解答を思いついても、それは正答にはなりません。改めて、この文字から始まる語を探してください。 


  
        

それでは各設問を検討していきましょう。

 (1)  今日は何日ですか。
   Nous ( s       ) le combien, aujourd’hui ?

(1)で与えられている日本語は「今日は何日ですか」です。このうち「今日は」の部分は aujourd’hui で表わされており、数字を問う「何日」の部分は combien によって表わされています。combien に先立つ定冠詞のleは、日付けを表わす数字の前に現れるものです。この文全体の主語は nous で、これとこれに続く動詞で、日にち、曜日を訊くために用いられる表現を知っているかどうかが問われています。正答は être です。Nous ( sommes ) le combien, aujourd’hui ? となります。もし「今日は何曜日ですか」という問いに変えたいならばNous sommes quel jour, aujourd’hui ? という文が使えます。また主語をそれぞれ on に変えて On est le combien, aujourd’hui ?、On est quel jour, aujourd’hui ? という文も成り立ちます。

この設問に対してなされた誤答で目立ったのは、*somme です。être の活用形であるということまではわかったものの、それを正しく活用できなかったものです。être の活用は基本中の基本です。しっかり覚えましょう。

 (2)  たぶんね。
   Sans ( d       ) .

(2)で与えられている日本語は「たぶんね」です。フランス語で与えられている文の最初の語 sans は前置詞で「~なしに、~せずに」の意味を表わし、これに続くのは動詞、もしくは名詞です。「~なしに」が「たぶんね」という意味を表わすことができるためには「~」の部分に「疑い」あるいは「可能性」などの意味を帯びる語が必要になります。正答は「疑い」の意味を表わす doute です。つまり、Sans ( doute ) . となります。「たぶんね」に相当するフランス語としては Peut-être. もよく使われますが、この設問の、sans で始まり次に d が冒頭にくる語が続くという条件にあてはまりませんから、この問題の答えにはなりません。

この設問に対してなされた誤答で多かったのは d’accord というものでした。d’accord は「了解しました、同意します」の意味を伝える言い回しで、d’accord の d’ は de がエリジヨンした形であり、それ自体が前置詞です。前置詞 sans の後ろに、さらに前置詞の de が続くことはありません。

 (3)  はい、もう二度としません。
   Non, je ne ferais plus ( j       ) ça !

(3)で与えられている日本語は「はい、もう二度としません」です。このうち「はい」の部分は Non で、「もうしません」の箇所は je ne ferais plus ( … ) ça で表わされており、「二度と」を ( j     ) によって表現します。より正確に言えば、この設問で難しいのは ne が ne… plus 「もう~しない」と ne… jamais 「二度と~しない」の二重の役割を果たす形で用いられていることです。正答は jamais です。Non,  je ne ferais plus ( jamais ) ça ! となります。

この設問に対してなされた誤答で多かったのは jusque でした。jusque は前置詞ですが、やはり前置詞である à と連続させ jusqu’à という形で用いられることがもっとも多く、また他の前置詞や、時を示す副詞である alors や maintenant の前で用いられます。

 (4)  まさか!
   Ce n’est pas ( v       ) !

(4)で与えられている日本語は「まさか!」です。この日本語は「まさか、そんなことはありえない」、「まさか、そんなことは本当ではない」といった具合に用いられますから、これを発話する人間が、聞いたことがらについて「信じられない」という感情を示すものです。「ありえない」は、「そんなことは不可能だ」「そんなことは可能ではない」ということで C’est impossible ! や Ce n’est pas possible ! といったフランス語が考えられます。日本語に自由に対応させるだけなら、これらの言い回しでも「まさか!」の意は伝わります。ただし、この設問では(   )内の語の冒頭の文字を v にするという制約がつきますので、これに適合する語を探さなければなりません。 Ce n’est pas possible ! の possible の位置に入る語ですから形容詞を探します。すると vrai という語が適当だと推測できます。正解は Ce n’est pas ( vrai ) ! となります。

この設問に対してなされた誤答で多かったのは *vien というものでした。 *vien という語はフランス語には存在しません。おそらくは bien という語が最初に頭に浮かんだのでしょうが、最初の文字として与えられたのが v だったので苦し紛れに *vien という綴りを記したのだと思われます。しかし、Ce n’est pas bien ! という文では「それは良くない」という意味にしかならず、日本語で与えられている「まさか!」というニュアンスは出ません。

                

この問題で出題されている表現は、いずれも頻繁に用いられるものばかりです。3級から準2級、2級と級が上がるにつれて、日本語とフランス語の発想の違いが問題にされることが多くなり、正解に達することはより難しくなりますが、それでも非常に使い勝手がよい表現が問われていることに変わりはありません。
これらの表現を確実に習得していくことは、自信をもって、かつ滑らかにフランス語を発話するためにおおいに役立つはずです。

仏検活用術 in 群馬

                        佐藤 公彦(外国語会話学校エスパス)

私とAPEFのお付き合いは1993年に遡る。この年の秋、北海道東海大学で開催された学会秋季大会の夜、たまたま学会の幹事を仰せつかっていた私は、偉い先生方に誘われるまま2次会、3次会と流れてススキノのカラオケスナックに辿りついた。そこで偶然隣り合わせたのがAPEFの幹部の方だった。酔った勢いで「群馬の受験者にとっては仏検の受験料よりも東京までの往復交通費の方が高い!」と愚痴ったところ、「それなら群馬に会場を設けましょう。ただし貴方が会場責任者だ!」と返された。お互いに酔っ払っていたせいか話はすぐにまとまったのだが、爾来、私はこの日の口約束を20年近く忠実に守ることになった。

実は、APEFとお付き合いを続けてきたこの20年の間に、私自身には大きな変化があった。2005年に20年間勤めた短大を退職し、2007年には英・仏・西・独・中・韓国語を教える小さな外国語会話学校を開校したのである。このスクールに通うフランス語受講者(以下、会員と呼ぶ)の年齢層は10歳~60歳と幅広い。フランス語圏に赴任する夫に同行する主婦、パリでの修行を夢見るパティシエール、設計事務所で研修する院生、武者修行に旅立つピアニスト、JICAからアフリカに派遣されるOLなど、学習目的も様々で、もちろん習得のスピードにもかなり個人差がある。それでも、一人の例外もなく「やる気」があるのは、教える立場からすればずいぶん贅沢な話だと思っている。そして、そんな彼らのモチベーションをしっかりと支えてくれているのが仏検なのである。

フランス語を学ぶために私のスクールの門を叩く会員の80%は全くの初学者である。その全員にレッスン初日から仏検を紹介し、半年ごとにグレードを上げて受験させている。お断りしておかねばならないが、私自身は資格信奉者ではない。社会に役に立たない学問ほど純粋だという神話を未だに信じている古い人間である。ただ、30年近いフランス語教師経験を通して、仏検が学習者に多大な学習効果を与えていることは否定できない。5級から準2級まですべてストレートで合格した努力家の会員は、私の当初の予想を超えた実力を身につけたし、運良くギリギリの成績で2級に合格した会員は数ヶ月後に取得級に見合う実力になった。仏検には学力診断の他に、飛躍のためのジャンプ台としての効能もあるのである。

この方針のためか、私のスクールは開校してから数年の内に大勢の準2級ホルダーを抱えるようになったのだが、流石に2級はハードルが高く、その手前で足踏みをする者が多い。そのため現在、2級を目指す会員には一緒に過去問研究をする傍ら、時事フランス語の中級読本を使ってシャドーイングや同時通訳をさせて鍛えている。写真は2年前の夏、軽井沢で行ったフランス語合宿の一コマである。1泊2日の週末合宿ではあったが、チェックインからチェックアウトまでフランス語漬けにして計8時間のレッスンを組んだ。ここ数年、会員からはフランス研修旅行実施の希望も出ているのだが、短大教員時代に短期留学を13回企画・引率した当の私にトラウマがあるためか、未だ実現に至っていない。

語学学校を経営する一方で、月・木・金の午前中は県内の国公立大学に出講している。学生たちの所属学部は医学部、理工学部、社会情報学部、文学部、国際コミュニケーション学部とバラバラなので、初講時にはクラスによって内容を変えてフランス語を学習する意味と必要性について話をすることにしている。例えば、将来医師になる学生たちには、フランスの大学や研究所に派遣される可能性やMSF等の活動に絡めて、理工学部や社会情報学部の学生には、就職活動の際、履歴書に「仏検」を記載する意味について触れている。つまり、英検やTOEICの隣に「仏検○○級」と書いてあれば、大学時代第二外国語の単位を取るために悪戦苦闘したであろう人事のオジサマは、君たちに真面目な努力家という評価を下す。その瞬間、君たちはライバルから抜け出るのだと。学部に関係なく全ての学生に伝えているのは次の科白である。「フランス語を第二外国語で1年間勉強しても、10年も経てばフランス語を勉強したという『記憶』しか残らないだろう。でも、仏検を受けて合格すれば『記録』が残る。仏検に合格したその自信が、将来本当にフランス語が必要になった時、君たちを支えるのだ!」

最後に、仏検の発展を願って一つ提案をしたいと思う。受験者を安定的に確保するためには現在のメタボ型受験者構成をピラミッド型に修復しなければならない。そのために5級、4級の受験者確保が必須となる。英検の場合は全国の小・中学生がピラミッドの底辺をしっかりと支えているが、大多数が高等教育機関で学び始めるフランス語の場合は、いきおい大学1年生を取り込んでいかなければならない。ところで、仏検合格をもって単位認定する制度を整えた大学は多いが、はたしてこれまでに何件単位認定の実績があるのだろう。大学のプライドがあるのかもしれないが、単位認定基準が厳し過ぎないだろうか。平均的な学力の大学生が4月からフランス語を始めて11月に3級を取得するのはかなり難しい。学習範囲からしても春に5級、秋に4級を取得するのが妥当である。授業時間や学生の能力といった現状に即して、各大学が単位認定基準を真剣に見直し、学生が積極的に仏検を受けたくなる環境づくりをする必要があるのではないだろうか。

群馬県で2次試験(1級、準1級を除く)を受験できるようになったのは、2010年春のことである。今回は「ススキノの会談」のようなわけにはいかず1年越しのAPEFとの交渉となったが、最終的に「5分間の面接を受けるために往復4時間かかる不合理」を訴えた会員の声をお聞き届けくださったことに深く感謝している。そして、私の役割はこれからも現場の声をAPEFにお届けすることだと再認識している今日このごろである。

フランス語合宿 in 軽井沢 2011年夏

千葉会場復活

                     高橋 信良 (千葉大学 言語教育センター)

千葉会場が復活しました。今年から千葉大学が千葉会場をお引き受けすることになりました。これはもちろん千葉在住の受験生の利便性向上のためですが、そこには千葉大学のフランス語教育に仏検を積極的に取り入れたいという思いがあったことも事実です。なにを今さら、と思われるかもしれませんが、今だからこその理由があります。そこで、千葉大学教養科目としてのフランス語教育について、少しばかり事情を説明したいと思います。

千葉大学では、1994年の教養部廃止に伴い、一般教養の外国語科目を担当する組織として外国語センター(現在の言語教育センター)が設置されました。同センター設置当初、開講されていた言語は英語を除いて14言語ありましたが、現在は7言語(ドイツ語、フランス語、中国語、スペイン語、朝鮮語、ロシア語、イタリア語)に縮小されています。また、旧教養部では、既修外国語(英語)と同じく初修外国語(フランス語など)も必修科目でしたが、1997年、多くの学部で初修外国語の自由選択化、いわゆるゼロオプション化が始まり、今なお選択必修としている学部は9学部中、2学部のみです(医学部と法経学部、最低必修単位数は両学部とも4単位)。

こうした抜本的変更をうけ、初修外国語はコース別履修システムに移行しました。コースはすべてセメスター制で、週1回の2つのコース(「文化コース」「併設コース」)と週2回の「マスターコース」の計3コース。レベルは6段階に分かれます。「文化コース」は各言語の文化紹介と入門レベルの語学力習得をめざす一方、「マスターコース」は最初から実用的な語学力を習得するためのものとなります。そして、「併設コース」は「表現」(会話、作文)と「読解」(ヒヤリング、講読)に細分化され、「マスターコース」を補うかたちで開講されます。レベルに関しては、1〜2を「入門」、3〜4を「基礎」、5〜6を「中級」とみなし、フランス語の科目名を例に挙げれば、フランス語1、2が「文化コース」、フランス語1+2、3+4が「マスターコース」、フランス語3〜6が「併設コース」となります。また、各コースの特徴を生かすために工夫してきたことは、1)シラバスの見直し、2)基準の明確化、3)「文化コース」1の前・後期への二重設定です。1)については、何をどこまで学ぶか、内容と到達目標をより具体的に説明し、特に「マスターコース」は共通シラバスにもとづき、担当者ごとの特徴を説明するように心がけています。2)については、「入門」の修了レベルを統一することで、「文化コース」から「マスターコース」への移行を可能としています。そして3)については、「文化コース」を前・後期に設定することで、後期からの外国語学習を可能とするだけではなく、前期ドイツ語1・後期フランス語1のように、より多くの言語を学ぶ機会を学生に与えようとするものです。

以上のようなコース制へ変更した結果、初修外国語の受講者数は、ここ数年、増加傾向を示しています。レベル1と1+2を例に挙げると、7言語全体で、2006年に2354人だった履修者数は、2011年には4087人に増えています。しかし、喜んでばかりはいられません。その内訳をみると、レベル1が1111人から2501人に増えているのに対し、レベル1+2では1243人から1586人とほぼ横ばいなのです(フランス語もまったく同じ傾向で、1が150人から327人、1+2が277人から277人です)。つまり、最初から学習意欲の高い学生(週2回の「マスターコース」履修者)が毎年一定数いる一方、多くの学生は未知の言語に関心があっても、まずは様子をみてみたいのです。そういった学生は履修言語が少しでも難しいと感じると、直ちに別の言語に鞍替えします。そして最近、「入門」レベルで複数言語を履修するものの、「基礎」レベルは履修しないまま卒業してしまう学生が多くみられるようになってきました。つまり、多くの言語を学ぶ機会は学生に与えられましたが、一つの言語を「中級」レベルまで学習する動機づけは与えられてはいないのです。

初修外国語の自由選択化が始まったのと同じころ、一般教養のフランス語では仏検の単位認定(過去2年以内に修得した検定資格が対象)を開始しました。その内訳は、4級を2単位、3級を4単位、2級以上を6単位とするもので、現在準2級は3級と同じく4単位認定となっています。最初から高い学習意欲のある学生にとっては、この単位認定制度は励みとなり、今まで一定の効果を上げてきましたが、選択必修ゆえに単位を取らざるをえない学生にとっては授業を履修しないで単位を取る一手段でしかなくなっています。また、マスターコース(1+2)修了者は力試しとして4級から受験しますし、そもそも5級が単位認定の対象外ですから、千葉大学では5級の受験者は4級よりもかなり少ないのが現状です。現在、文化コースで様子をみるだけの学生の学習意欲を高めるきっかけとして、この5級を受験させるシステムが構築できないかと考えているところです。

初修外国語の自由選択化がここまで進んだ現在、検定資格に単位を認定することの是非については改めて検討する必要があるでしょう。しかし、単位云々以前に、仏検はフランス語学習の明確な動機づけとなり、到達目標を具体的に設定してくれます。そこで、検定日を学期末に変更できないか、到達度試験としての仏検の再利用(TOEIC-IP的な団体特別受験制度)は可能か、といった疑問が思い浮かびますが、まずは千葉会場をきちんと運営し、千葉のフランス語教育と仏検のあり方を模索していきたいと思います。 

ずっと友達とおしゃべりをしていたいから

2012年秋季準1級合格
杉本 花野
カフェ勤務・静岡県

わたしは、2000年に1年間パリで、2004年から11年までの7年間を南仏のマルセイユで過ごしました。元々日本でパティシエとして働いていたこともあり、一度本場の生活が見てみたいと思ったのが最初の渡仏で、その時に語学学校に通ったり、製菓のスタージュを経験したりして、「フランスできちんと仕事をして生活してみたい」と思うようになりました。

2004年に再びフランスに渡ってから、語学学校に行く傍ら、アルバイトをしていましたが、その時に「フランスできちんと働くためには資格を取った方がいい」と当時のパトロンから進言され、CAPという職業能力試験を受けることにしました。

通常は職業訓練校のような所に通っているフランス人の若者が受けるテストなのですが、わたしは自由参加枠に願書を出しました。科目は、衛生や労働法、実技といったものがメインですが、初めての受験ということで、国語(フランス語)、算数、歴史などの一般教養もありました。

まだ当時はフランス語もそれほど上達していなかったのですが、たまたま通っていた語学学校が、私立の普通の学校と提携をしていたことから、フランス人の中学校3年生のクラスを聴講させてもらえることになりました。30歳を過ぎてから、15歳くらいの生徒に混じって勉強をした体験は、大変でしたが楽しくもありました。フランス語も、外国人が語学学校で習うものとはやはり違って、いろんな文学の抜粋を読んだり、自分で文章を考えたりというものが多く、とても勉強になりました。周りの生徒達や先生方も応援をしてくれて、無事試験に合格、翌年にはパンのCAPも取得しました。

その後、2011年に結婚を機に帰国するまでの間に、現地でも多くの人と知り合い、親友と呼べる友達も出来ました。

日本に戻ってから、一番心配だったのが、また友達と会った時に普通におしゃべりが出来ないくらいフランス語を忘れてしまったらどうしよう…ということでした。実際、1ヶ月話さないだけでも、言葉に詰まったりすることもあったので、帰ってきてからどうやったら忘れずにいられるのか、と考えた時に、仏検の受験を思いつきました。

最初は2級を受けたのですが、それまでもう何年も読み書きの練習や文法から遠ざかっていたので、問題集を解きながら、いかに自分が忘れていたかを思い知りました。それでも2級の際に表彰をして頂いて、準1級の問題集を送って頂いたので、これは続けなくてはと思い、また準1級の勉強をしました。

前述したように、わたしのフランス語は、基本的には中学校3年生程度かそれ以下、日常会話程度というレベルなので、準1級に出てくる単語も、普段使っていなくて知らないものもあり、苦戦しました。

この度、また準1級で表彰をして頂いたことで、また次の1級に向けて頑張らなくてはと思っています。今度友達に会った時には、「日本に帰ってからさらにフランス語が上手になってる!」って思ってもらえるくらいになれたらいいなと思います。

 






 

2024年度秋季 受験要項・願書PDF版について

2024年度秋季試験 受験要項・願書PDF版は8月下旬にアップいたします。
公開までもうしばらくお待ちください。

印刷版の発送(無料)をご希望の方は
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全国の取扱書店・生協での仏検要項・願書のお取り扱いは3月下旬を予定しています。
書店・取扱店リスト

<参考:アーカイブ>
2019年度春季 受験要項
2019年度秋季 受験要項
2020年度秋季 受験要項
2021年度春季 受験要項
2021年度秋季 受験要項
2022年度春季 受験要項
2022年度秋季 受験要項
2023年度春季 受験要項
2023年度秋季 受験要項
2024年度春季 受験要項

語学はスポーツだ!

2012年春季準2級合格
沼澤 絵璃香
大学生・宮城県
 

私は現在大学4年生です。大学では主にフランス語を学んでいます。小学生だった頃、パティシエに憧れてフランスに興味を持ったと同時に、偶然にも同じクラスにフランス人の女の子が転校してきてその子と友達になり、簡単なフランス語を教えてもらい、それがきっかけでフランス語を勉強したいと思うようになりました。

私が半分本格的にフランス語を学び始めたのは高校2年生の夏です。私が在学していた高校は、普通科と宮城県内では珍しい英語科の二つの科から構成されています。英語科に進むと2年次に選択でフランス語を勉強することができます。私は少しでも早くフランス語を学びたかったのでその高校の英語科に進学したかったのですが、父の仕事の都合のために転入試験という形でその高校を受験したので、英語科に進むことができませんでした。
 

高校2年生の夏、学校の廊下でフランス語検定のポスターを見てこの検定を知り、英語科でフランス語を勉強していたら挑戦できたのにと思った時、問題集を使って独学して挑戦してみれば良いのではないかという考えが頭に浮かびました。
そこで、大学進学までに3級まで取得することを目標に勉強を開始しました。大学受験勉強開始時期と重なったり、高校の授業や部活もあって、あまり時間が無かったのですが、それらを両立させながらこの検定に関わる様々な問題集を使って独学を始めました。

フランス語は動詞の活用が複雑だったり、形容詞も置く場所が語によって違ったり、修飾する語と性・数一致させなければならなかったりと、文法が英語よりも複雑で覚えるのが大変そうでしたが、練習問題が豊富な様々な問題集を繰り返し解いて、動詞の活用や形容詞の性・数一致などの練習をし、習得することができました。

学校で授業を聞き教科書に載っている少量の練習問題を解いて頭で理解するよりも、様々な問題集を使って繰り返し練習してスポーツのように体で覚えたほうがより文法を習得しやすいと思いました。高校2年生の秋に5級を、3年生の春に4級と3級を併願で受験し、目標を達成することができました。このステップのおかげで大学進学後、第2外国語としてフランス語を選択し、スムーズに学習することができました。

大学2年生の夏、幼いころから夢だったフランス留学を実現し生きたフランス語に触れ、帰国後は力試しで準2級を受験し、合格。そして成績優秀者として表彰いただいて、嬉しい限りです。今後もさらに上の級の取得、語学力向上を目指してフランス語に磨きをかけたいと思っています。

”Le français m’ouvre le monde ~フランス語は私に世界を開いてくれる~”。まさしくフランス語は私に世界を開いてくれました。


 

必要なのは 原動力

2012年秋季準1級合格
関根 淑子
東京都

2010年に定年退職後、これからは趣味のテニス三昧と思っていましたが、日本の高齢化社会についての情報を見るにつけ、体だけ丈夫なおばあちゃんじゃまずい!何か脳を刺激することをやらなくては!と思うようになりました。一生楽しく続けられて、脳全体を活性化するもの、そして新しい人生の小窓を開けてくれるもの、色々探してその条件にぴったりなフランス語の勉強を再開することにしました。

再開といっても学んだのは35年前、留学する夫についてパリに行き、生活するのに必要なこともあり、アリアンス・フランセーズで2年半ほどの勉強でした。帰国後は全くフランス語を話すチャンスはなく、時々NHKラジオ講座のテキストを買っても2ヶ月と続きませんでした。

今回私のモチベーションを大きくしてくれたのは、勉強再開時に自分のniveauを知るために受験した仏検2級へのチャレンジでした。

1次試験にギリギリ合格し、2次試験前に2時間フランス語会話のプライベートレッスンを受けましたが完全に準備不足。その上当日は緊張しすぎ、試験官の先生に「昨日の夕飯に何を食べましたか?」と聞かれ、フランス語はおろか何を食べたかさえ思い出せない始末。先生に「取り調べじゃないのだから…」と言われ笑った瞬間TVを見ながら家族で焼肉を食べたことを思い出しました。その時en regardant la téléと言えたので頭が回転し始め、「何のTV?」という質問でエンジンがかかりました。見ていたのは全豪オープンテニスで、1次試験に合格するとは思わず計画していたメルボルン観戦旅行から2次試験の前々日に帰国したばかりでした。旅行の話や大好きなAmélie Mauresmoの話題で、テニス好きらしいフランス人試験官の先生と会話が成立し、何とか2級に合格できました。

この受験で一番感じたのは、フランス語で誰かに言いたいことを伝えられる楽しさでした。この楽しさこそが、私をフランス語の勉強にかき立て、今回準1級に合格できた原動力です。そして、去年見た映画『最強の二人』、去年買ったZazのCD…私の新しい人生の小窓も開かれつつあります。

今回の表彰式で出会った1級合格者の方々のフランス語学習歴と1級の問題の難しさに圧倒されたので、1級へのチャレンジは来年です。今年はフランス語通訳案内士試験を受験しようと思っています。2020年東京オリンピックが開催されるなら、何かの形で参加したい!その準備です。

それに加え、私の準1級合格を知ったテニス仲間との2014フレンチオープン観戦旅行計画が進行中です。旅行に必要なフランス語の上達が私に課せられています。そうは言っても、3月は完全オフ状態でした。4月にもう一度気合いを入れ直して、勉強再開します!

フランス、努力、そして楽しみ

2012年春季1級合格
杉浦 恵里
大学生(東京大学)・東京都

私が初めてフランス語に触れたのは、中学三年生の頃でした。父の赴任でパリの現地校に通う事になったものの、当初はフランス語は全く話せませんでした。授業についていけず友人もできなかったため、劣等感を抱いていた私は「早く日本に帰りたい」と強く願っていました。

しかしある日、授業で日本の生活文化について説明を求められたことがありました。その時、「私だからこそできることもある。現状から逃げるのではなく、できることから始めてみよう!」と心に決め、それ以降は毎晩辞書を片手に深夜まで授業の復習をしました。徐々にフランス語力も向上し授業にも参加できる様になると、周囲との意思疎通もできる様になり、友人と共に溌剌とした毎日を過ごす中で劣等感も解消していきました。高校卒業までパリに滞在しましたが、この四年間を明るく前向きな気持ちで過ごせたのも日々の努力の積み重ねのおかげだと思います。

帰国してからはフランス語により一層接していたいと思い、仏検に挑戦しました。この時も、コツコツした地道な努力を惜しみませんでした。1級の対策をしようと問題集を開いた当初は分からない単語ばかりで不安でしたが、小さなノートに片っ端から単語・意味・例文を書き込み、頻繁に読み返すよう心掛けました。また時事用語の対策として、フランス語の新鮮なニュースに触れようとインターネットラジオを聞いたり、フランスの新聞社のスマートフォン用のアプリをダウンロードして毎朝の通学電車で記事を読んだりしました。

こうした取り組みも、一つひとつを「楽しい!」と思う気持ちがあったから続けられたのだと思います。語彙を覚える事で仏検にも役立ちましたし、自分の研究(フランス地域研究)で読む学術論文の理解も深まりました。またフランスのニュースを通して現地でのホットな話題を知れたのは非常に興味深く、気付いたら降車駅を通り過ぎていた事もありました。

1級取得は、私にフランス語の更なる学習意欲を与えてくれました。これからもフランス語、そしてフランスとの関わりをもっと深くしていきたいと思っています。




 

60代は学習適齢期

2012年度春季5級合格
石原三枝子
無職・京都府 

もう、30年以上も前から、姉は教育テレビのフランス語講座をよく見ていました。一緒に暮らす私も時々横から覗いていましたが、なにしろ基本を全く知らないので、「今日のスキットは面白かった」って言っても、ただそれだけです。そんな形のフランス語との付き合いが長く続いていたのですが、ついに決断したのです。心を入れ替えて本気で勉強しよう!!と。

2011年の春、ふと、目にとまった「京都外国語大学・生涯学習講座」のパンフレットにフランス語クラスがあり、アルファベの読み方から始まる入門クラスから受講しました。62歳にして初めてフランス語を一から順序立てて習うことになったのです。

年齢を重ねる間に身についた雑学が、授業で得た知識と結びついて、それらが体系化され理解が深まるのを実感できました。私の雑学フランス篇の始まりは、私が中学生の頃、大学生の従姉が「フランス語で『彼女』のこと『エル』って言うのえー」と教えてくれた事、そして高校生の時、フランス語で「どういたしまして」は「ドッヒャーン」だと誰かが言って、その音の印象が「言葉」とは思えなかった事(それが“De rien”だと気づいたのは最近です)など、他愛ないものでした。あれからン十年、書物や映画、それに何でもない日常生活からも、教わることが、たくさんあります。

受講して初めての冬休みに、問題集を探しに行った書店で手にしたのが仏検5級の問題集で、「仏検」の存在を認識した最初でもあります。はじめは、受験は念頭になかったのですが、問題を解くのが面白く、じゃあ試験も受けてみようと一念発起し、1冊の問題集を何度も繰り返して、確信をもって解答を導き出せるようにしました。その時、受験勉強という学習法が、自己の弱点を容易に気づかせてくれるものだと知りました。何を解決すれば前に進めるかが見えてくるのです。そうすることで試験のためだけではなく実力アップにも役立ちました。

私のフランス語学習まだ、スタート地点に立ったばかりです。この先、山あり谷ありの険しい道が待っていることでしょう。でも、60代は学習適齢期だと思っています。自分の時間がたっぷり持てるし、それに、気力、知力ともに充実して、やる気満々ですから。巷には、勉強大好きな60代が溢れています。私もこの貴重な時期に、様々な知識を吸収し、学び続けることが、先々の習慣になるようにと願っています。 
 

 

「グローバル時代」にフランス語を学ぶとは…

                      鈴木 正道(法政大学 国際文化学部教授)

 フランス語学習者が減っている。最近様々な機会で聞く言葉である。実際フランス語検定試験の受験生も減っている。私の勤める法政大学でもフランス語履修者はじりじりと減っている。実は大規模校でありながらフランス語を専攻とする学科はない。多くの学部では選択必修として一年次と二年次で諸語(本学では英語以外の言語をいかにもその他もろもろと言ったふうにこう呼ぶ)を学ぶことになっている。学部によっては一年次のみの履修となっている。国際文化学部ではSA(Study Abroad)と称して二年生の秋学期に外国の協定大学に留学することが卒業要件になっているが、三年次以降、SA言語を軸にした履修上の縛りはない。

 アンケートや雑談を通して気づいたことがある。英語以外に外国語をやりたいと思っている学生はかなり多いということ。フランス語履修者の学生の中には、負担感を抱く者がいること。特に動詞の活用や文法の複雑さ、発音の難しさを訴える学生が目立つ。他方フランス語の勉強を課さないフランス文化に関する授業は人気を保っている。もっとも単位が取りやすいからという理由もあろうが…また三年生以上を対象とした派遣留学制度(出願資格として仏検、DELF/DALF、TCFの成績を設けている)に関してはフランスの大学志望者の数は安定している。さらに国際文化学部のSAの行き先別特別入試では、フランス志望の応募者が他の諸語に比べて毎年多い。どうやらフランス 語の学習は、一部の思い入れの強い学生が熱心にやる反面、外国語の学習に特に興味のない学生にとっては大きな負担になっているようである。

 ここでフランス語の学習者が減ってきた理由について考えてみたい。まずは大学のカリキュラムで第二外国語の位置づけが低くなったこと。フランス語そのものが科目として廃止された大学もあると聞いた。これはいわゆるキャリア教育重視と関連している。何か開講科目を増やせば何かを減らさなくてはならない。減らさなくても関心が集まらなければ登録学生も減る。就職支援関連の科目が重視されれば就職に直接かかわらないとされる科目は脇へやられる。とりわけ重視されるのが「日本語力」である。いかに「社会人」、「ビジネスパーソン」としてきちんとした日本語で話し、書くかを学ぶ必要があるという。

 第二には英語重視(偏重?)。日本語は必須だが今の「グローバル」な時代では英語も大事ということになる。英語だけでも身につかないのになぜもう一つ、とは昔から言われてきたが、今はそれが実際のカリキュラム編成や学生の動向に表れてきている。巷でも英語は強迫観念の様相を見せている。電車の中でTOEFLや TOEICの対策本、ビジネス英会話の参考書などを読んでいる人が多い。 

 第三に、英語以外の外国語として中国語などが人気を伸ばしていること。電車の中で人が読んでいるのも学校の教科書、旅行会話から労務法規の中国語まで、趣味から仕事の必要まであらゆるレヴェルだ。また朝鮮語(法政大学や東京外国語大学などではこのように呼んでいる)やスペイン語、イタリア語などもかつてに比べて相対的に学習者が増えている。 

 四つ目として、上でも触れたがフランス語は動詞の活用や発音が難しいというイメージがあること。もちろん、このことに対してフランス語の教員はいろいろ工夫を凝らしている。動詞の活用を六つの人称すべてについて一度におぼえさせるようなことはしない。細かい規則にはこだわらず、まず何か言ってみるよう促す。そのために「大人でも遊べるゲーム」を考えるなど。 

 その上でやはり、フランス語が相対的に学習者を減らすのも当然かなとも思ってしまう。中国語学習者が増えている、それも当然でしょ。何しろ十億を超える人口、急激な成長、なんといっても日本のすぐお隣の国で、ここ出身の人が身の回りに大勢いる…韓国ドラマは大人気、それにやはりすぐお隣。むしろ今まで学習者が少なすぎたのだ…西洋語として英語をやったのだからもう一つは東洋語を。英語と張り合ってみても仕方がない?学生の中にはともかくフランス語に夢中と言う人もいるがやはり少数。フランス語を熱心にやってきたが英語抜きでは不安という学生も多そうだ。理科系の学生にとって英語は共通言語として極めて重要になっている。以前は数ヶ国語が様々な分野で世界の共通語として使われていたが、今は英語に収斂しつつある。でもこれはある意味では当然だろう。特に自然科学など対象の普遍認識を追究する分野で媒介言語がいくつもあったのでは不便なのだ。

 簿記、行政書士、会計士、司法試験など日本語を媒介とした資格をとろうとしている学生にとって外国語の履修はそもそも大きな負担になっている。どう結果が出るかわからない(はずの)実験などに没頭している学生はとにかく時間がない。英語だけで精一杯。となると、フランス語がその本領を発揮できるのは、広い意味での「文化」ということになろうか。上述の法政大学の派遣留学制度において、フランスへの希望者の多くはブランドなどのマーケティング、政治や歴史などに関心を持っている。もちろん自然科学などの領域でもフランスが大きな成果を上げていることはよく知られているし、昨今はフランスでも自然科学の授業を英語で行なう大学が増えている。留学するにはフランス語を生活言語として学んで行く必要がある。しかしそれだからこそ敬遠される傾向があるのも事実だ。フランスで学ぶ、ヨーロッパやアフリカ出身の理系学生は多い。日本でもこうした学生が増えるような日仏双方の努力が必要だとも思う。

 法政大学では日本学術振興会の提供するグローバル人材育成推進事業が採択された。国際文化学部では「諸語」に関して高度で専門的な技能を身に付けさせる授業を開講し、国際インターンシップも実施する予定である。フランス語でも仏検やDELF、TCF、TEFの目標値を定めている。これはいわゆる「エリート」養成のための講座である。それと同時に「一般の」学生、さらには学外の一般の人や中学生、高校生に向けた戦略を模索しつつある。e-learningの導入、英語と並行して効率よく学べる方法の開発、「キャリア」に有利になるレヴェルの達成など…