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第21回 準2級からはじまる「言い換え問題」(中級)

 専門:スイス・ロマンド文学 正田 靖子  


語頭のアステリスク(*)は、その語が誤りを含むことを表します。 


「同じ表現の繰り返しを嫌う」


これはフランス語の特徴のひとつと言えるでしょう。同じ語を避けるために、代名詞をよく使い、名詞のほか動詞や形容詞なども言い換えます。人物の名前さえも、たとえば政治家ならば、肩書、前歴、口癖といったように、その人物に関する情報を積み重ねていきます。 

仏検では、準2級から動詞を使った「言い換え問題」がはじまります。提示されたフランス語文とほぼ同じ意味になるフランス語文を完成させる問題です。今回は2014年度秋季準2級の問題 [3] を使って、ポイントを見ていきましょう。完成させるべき文の空欄に、下にあたえられた7つの動詞から適合するものをひとつ選び、法・時制などを考慮して、適切な形に変化させます。

                

さあチャレンジしてください!各問2ポイント、全問正解で10ポイントです。


(1)   A  Chaque matin, Émilie se réveille à 7 heures.
        B  Chaque matin, Émilie (      ) jusqu’à 7 heures.

(2)   A  Christine arrêtera de travailler dans un mois.
        B  Christine (      ) son travail dans un mois.

(3)   A  Isabelle a fait le ménage dans sa chambre.
        B  Isabelle (      ) sa chambre.

(4)   A  Laisse Luc tranquille !
        B  Ne (      ) pas Luc !

(5)   A  Nous devions rentrer le plus tôt possible.
        B  Nous (      ) besoin de rentrer le plus tôt possible.

      —————————————————————–
           avoir       déranger       dormir       mettre     
                  nettoyer       prendre       quitter
 

それでは、正答にたどりつくためのツボを探っていきましょう。

        

ツボその1:活用は正確に覚える

(1)   A  Chaque matin, Émilie se réveille à 7 heures.
        B  Chaque matin, Émilie (      ) jusqu’à 7 heures.

設問 (1) A Chaque matin, Émilie se réveille à 7 heures. 「Émilie は毎朝7時に目を覚ます」。の文では動詞のあとが à ではなく、jusqu’à になっていますが、それ以外の部分は も も同じ文です。「目が覚める」までの行為、すなわち動詞 dormir 「眠る」を選び、現在形に正しく活用させれば正解です。

Oh là là ! *dormit ですか?dormir の活用変化は finir と同型ではなく、partir と同型ですから、正解は、Chaque matin, Émilie ( dort ) jusqu’à 7 heures. となります。正しい動詞が選べても、活用でまちがえてしまってはもったいない。活用変化は発音しながら、実際になんども書いて覚えるようにしましょう。

        

ツボその2:時制を合わせる

(5)   A  Nous devions rentrer le plus tôt possible.
        B  Nous (      ) besoin de rentrer le plus tôt possible.

設問 (5) A Nous devions rentrer le plus tôt possible. 「私たちは、できるだけ早く帰らなければならなかった」。の文では devoir が用いられているのに対して、の文では besoin de が動詞の直後にきています。これらの情報から、〈 avoir besoin de+不定詞 〉「~することが必要である」という表現であることがわかります。

Oh là là ! *avons ですか?の文と時制が合っていません。avoir を半過去に正しく活用させて、正解はNous ( avions ) besoin de rentrer le plus tôt possible. となります。

        

ツボその3:慣用表現に強くなる

(2)   A  Christine arrêtera de travailler dans un mois.
        B  Christine (      ) son travail dans un mois. 

設問 (2) A Christine arrêtera de travailler dans un mois.「Christine は1ヵ月後に仕事をやめる」。〈 arrêter de + 不定詞 〉で、「~するのをやめる」という意味になります。の文では動詞のあとに son travail がありますから、「(仕事を)やめる」という意味になる動詞を選びます。quitter が思い浮かびましたか?もし思い浮かんでいたなら、すばらしい。動詞を単純未来形に活用させれば2ポイントゲットです。正解はChristine ( quittera ) son travail dans un mois. となります。

設問 (2) のように動詞1語を同義の動詞1語で書き換える問題は得意だけれども、設問 (3) や (4) のように複数の語からできた慣用表現を動詞1語にする問題は、苦手という人もあるでしょう。問題に答えながら、語彙力をアップさせましょう。

(3)   A  Isabelle a fait le ménage dans sa chambre.
        B  Isabelle (      ) sa chambre. 

設問 (3) A Isabelle a fait le ménage dans sa chambre. 「Isabelle は自分の部屋を掃除した」。の文では動詞のあとに sa chambre が続きますから、nettoyer 「~を掃除する」を選び、複合過去形に正しく活用させれば正解です。つまり、Isabelle ( a nettoyé ) sa chambre. となります。〈 faire le ménage 〉「掃除をする」という表現はだいじょうぶでしたか?このほかにも faire を使った表現はいろいろありますから、まとめて復習しておきましょう。

(4)   A  Laisse Luc tranquille !
        B  Ne (      ) pas Luc ! 

設問 (4) A Laisse Luc tranquille ! 「 Luc にかまわないで!」。肯定命令を否定命令で言い換えるために、反意語を選ぶ問題です。ここでは、〈 laisser + 〔人〕 + tranquille 〉「〔人〕をそっとしておく」から、déranger 「~を邪魔する」を使った命令文に書き換えます。2人称単数の命令法現在に正しく活用させれば正解です。つまり、Ne ( dérange ) pas Luc ! となります。

                



以上から、よく使われる不規則動詞の活用や、複合過去の性・数一致について確認し、時制に注意することがいかに重要であるかが、お分かりいただけたと思います。また動詞を用いた基本的な表現について、しっかりおさえておきましょう。

準2級で出題される表現は、頻繁に用いられるもののようですから、過去問題を復習すれば十分かもしれません。しかしそれだけではなく、日ごろから、辞書をひくときには、同意語・反意語・派生語にも目を通す習慣をつけるようにするとよいでしょう。そうすることによって、表現の幅は確実に広がっていくはずです。