専門:言語・文化教育学 中村 敦子
語頭のアスタリスク(*)は、その語が誤りを含むことを表します。
フランス語を始めたけれど、冠詞でつまづいてしまった、あるいはもやもやしたまま学習を進めている方、その悩みを解決します。
フランス語を始めたばかりの学習者が最初にぶつかる壁は、女性名詞と男性名詞の区別でしょう。名詞の性は意味のイメージで判別できませんし、語尾で判断するのも危険です。少し学習してくると e で終わる名詞は女性名詞のように思われますが、musée「美術館」は男性名詞 un musée です。
ツボその1:名詞の性は不定冠詞をつけて覚える
名詞の性を覚えるとき、「この名詞は女性名詞、これは男性名詞」のように覚えても、あるとき曖昧になってしまうものです。それだけでなく、実際にフランス語で表現するとき、たとえば une maison と言いたいときに「この名詞は女性名詞だから不定冠詞は une、 だから une maison だ」と考えてしまい、伝えるのに時間がかかります。そこで、名詞は不定冠詞をつけて、un musée [ アンミュゼ ]「美術館、博物館」、une maison [ ユヌメゾン ]「家」のように、不定冠詞をつけた音で覚えていきます。こうすれば、名詞の性が記憶されるだけでなく、すぐに une maison と表現できます。
ツボその2:母音、無音の h で始まる名詞に注意
定冠詞は名詞の性を覚えるのに役立ちません。le と la はエリジヨンするからです。エリジヨンとは、母音、無音の h で始まる語の前で e、a をとってアポストロフで示し l’ にして次の母音とひとつづきの音で発音することです。un hôtel [ アンノテル ]「ホテル」、une école [ ユネコル ]「学校」に定冠詞をつけると、l’hôtel [ ロテル ]、l’école [ レコル ] となります。習い始めのころは、とくに母音あるいは h で始まる語に注意しましょう。
ツボその3:複数名詞につける冠詞 des、les に慣れる
英語を勉強してきた学習者にとって複数名詞につけるフランス語の冠詞もやっかいです。フランス語でも名詞を複数にするときは s をつけるのが原則です。ただし、この s は発音しません。フランス語のつづりの読み方では語末の子音字はふつう読みません。Paris は [ パり ] と発音することからもおわかりでしょう。単数の maison も 複数の maisons も名詞の音は同じです。そこで重要になるのが冠詞です。une [ ユヌ ] maison または la [ ラ ] maison と聞こえれば単数ですが、des [ デ ] maisons、les [ レ ] maisons と聞こえたら複数だと判断できるのです。複数名詞に用いる冠詞の存在はとても重要なのです。
5級聞き取り試験4にチャレンジしてみましょう。
フランス語の文を聞き取り、対応するイラストを選ぶ問題です。

聞こえる文は”Il y a des tomates.” (「トマトがあります」)。des [ デ ] の音を聞き取り、トマトが複数であると判断します。解答は②。

聞こえる文は”C’est une amie.”(「(女性の)友だちです」)。C’est [ セ ] の t を発音して次の une [ ユヌ ]とつづけて [ セテュヌ ]、une [ ユヌ ] は次の母音 ami [ アミ ] とつづけて [ ユナミ ]、文全体で C’est une amie. [ セテュナミ ] と聞こえます。男性の友だちであれば C’est un ami. [ セタンナミ ] ですから、文中の不定冠詞の音の違いを聞き取り、解答は①の女性。
ツボその4:数ではなく、量でとらえる部分冠詞
フランス語には英語にはない部分冠詞と呼ばれる冠詞があります。不定冠詞、定冠詞は名詞が表わすものを数でとらえますが、部分冠詞はそれを量でとらえます。数えられない、とくに数えない名詞に用いるのはそのためです。De l’eau, s’il te plaît. 「水、お願い」のように、この部分冠詞はある量の水を表わしています。ここで注意するのは、カフェに入って「コーヒーを1つください」と言うときは Un café, s’il vous plaît. です。ここではコーヒーを量ではなく数の「ひとつ、1杯」としてとらえているからです。
ツボその5:数えられる名詞にも部分冠詞は使う
「数えられない名詞に用いるのが部分冠詞」と覚えがちですが、部分冠詞は数えられる名詞にも使います。その場合、数ではなく量を表わすので、1つのもののある1部分の量を表わします。パンをまるごと1つ表わすのが un pain で、その1つを切り分けた数切れを表わすのが du pain になります。
4級筆記試験1にチャレンジしましょう。4つの文のカッコに適切な冠詞または前置詞と定冠詞の縮約形を入れる問題です。
(1) Cécile a ( ) yeux bleus.
(2) Il a mal ( ) dents.
(3) Nous avons ( ) gros chien.
(4) Tu veux encore ( ) viande ?
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① aux ② de ③ de la
④ les ⑤ un ⑥ une
まず選択肢を見ていきましょう。①は前置詞 à と定冠詞複数 les の縮約形です。*à les ではなく、aux になります。②は否定の冠詞 de 、③は女性名詞に用いる部分冠詞、④は定冠詞複数形、⑤は不定冠詞男性単数形、⑥は不定冠詞女性単数形です。
(1) 形容詞 bleus に s がついていますから yeux は複数名詞です。これは un œil「目」の複数形です。④の定冠詞複数形を入れて Cécile a ( les ) yeux bleus. 「セシルは青い目をしている」となります。セシルの目のことを述べていますから、特定されたものを表わす定冠詞が使われます。
(2) avoir mal à ~ で「〜が痛い」の意味になります。この前置詞 à のあとに les dents「歯」の定冠詞複数形がつづきますから à と les の縮約形を用いて Il a mal ( aux ) dents. 「彼は歯が痛い」となります。実際に歯が痛いとき、痛い歯は一本かもしれませんが、設問文では定冠詞複数形 les を用いています。これは具体的に痛い歯を伝えているのではありません。「お腹」や「頭」ではなく、歯という体の部分が痛いことを伝えているだけです。歯は複数で成り立っていますから、「歯」というものを表わすときは複数形の定冠詞を用います。(J’ai mal à la tête.「頭が痛い」や、J’ai mal au ventre.「お腹が痛い」もいっしょに覚えておきましょう。)
(3) chien は単数名詞です。男性形の形容詞 gros から chien が男性名詞単数であることがわかります。男性単数に用いる冠詞は⑤の un しかありません。Nous avons ( un ) gros chien. 「私たちは大きな犬を飼っています」となります。不定冠詞は、話し手が聞き手に周知されていないものを伝える時に用います。聞き手は話し手が飼っている「大きな犬」のことを初めて聞いたことになります。話し手と聞き手の両者に周知されているものが話題になっているときは定冠詞を用います。
(4) viande は「肉」ですから、数ではなく量としてとらえるので部分冠詞を使います。Tu veux encore ( de la ) viande? 「お肉をもう少しいる?」と尋ねています。塊のロースト肉のある量を問題にして、もう少し欲しいかどうかを尋ねています。
4級では冠詞を使い分ける基礎知識が問われますが、難しそうだと思いこまないことです。まず6つの選択肢をしっかり見ること、次に設問文の名詞に注目し、性と数を確認します。その際、形容詞の形がポイントです。また数と量のどちらを表わしているのか。さらに aimer「好きである」のような動詞は総称を表わす定冠詞を用いることなどをおさえておけばもう大丈夫です!
いかかでしたか。冠詞のツボをおさえることができたら、次は実戦です!『仏検公式ガイドブック』に過去の問題と解説・解答が掲載されていますから、これを利用して検定試験の準備につなげていきましょう。





無事に合格し、成績優秀者として賞もいただけたことは、本当に嬉しくこれから勉強を続けていくための励みになりました。
アフリカを中心にフランス語圏(Francophone)と呼ばれる国が多数あります。私は、国際協力の仕事を始める前は旧フランス植民地の国だからフランス語を教養として理解する人が多いのだろうと漠然と思っていました。
Francophoneの知識層は、自分のフランス語に自信と誇りを持っています。私が交渉に際して提示した文書を見た相手がう〜んと首を傾げるので、何かお気に召さないことがあるのかとひやひやするのですが、熟考の末「ここは単数形ではなく、複数形のほうがフランス語として正確」と指摘されて、安堵と同時に拍子抜けしたこともたびたびあります。
このたびは、2015年度特別賞受賞の栄誉に浴し、嬉しくそして誇りに思います。今日までフランス語の勉強を続けることができましたのは、私の努力だけではなく、様々な方々との幸運な巡り会わせや支えがあってのことだと実感しております。
Tout d’abord, je voudrais vous exprimer ma joie d’avoir été sélectionnée en tant que lauréate du prix spécial du DAPF de l’année de 2015. J’en suis heureuse et fière. Mais je dois avant tout dire aussi que si j’ai pu continuer mon étude de la langue française jusqu’ici, ce n’est pas dû uniquement à mes efforts, mais également à des chances que la vie m’a données et notamment au soutien chaleureux de nombreuses personnes.
Pourtant cette démarche est inévitable, comme faire des gammes pour un pianiste ou s’échauffer pour un athlète. Le travail pour mémoriser machinalement des mots et des expressions autant que possible demande de la peine. Pourtant, cela porte de grands fruits au niveau de l’expression de nos pensées vastes et profondes. Plus nous faisons des exercices, plus ce que nous désirons exprimer devient clair.
こうして突如始まった私のフランス語教室通いは、幸い気の合う学友や素晴らしい先生達にめぐまれ、楽しく過ごしながらゆるゆると学び続けていつしか約4年という歳月が流れました。そんななか、だんだんと自分の上達に行き詰まりを感じはじめ、このままでいいのかな…と思ったのが仏検を受験したきっかけです。
フランスの文化にさしたる興味も無いまま、私が某大学のフランス語科に入学したのは、1970年のことでした。30~40名程度の少人数クラスで、実技科目として毎日のように試験はあるし、1分でも遅刻すれば「教室から出て行きなさい!」と言われるし、ひどい所に来てしまったと後悔したものです。
現在は翻訳の仕事をしていますが、それまでの道のりは容易いものではなく、どうやってたどり着けるか分からない模索の日々が続いた時期もありました。そんな状況の中でも夢を諦めなかったのは、フランス語への愛着と、フランス語を使う仕事をしたいという強い願いを持っていたからだと思います。





フランス語学科では総合的なフランス語学習およびフラン文学・言語学の授業が充実しており、希望者はフランス語と英語の教員免許も取得できます。2016年度からフランス人のフランス語教育の専門家も一人増えるので、今後FLEを専門にしたい学生にも対応できる体制を作れるかもしれません。2年次にはベルギーのルーヴァンカトリック大学で3週間の語学研修が実施されています。ベルギーの後パリにも1週間滞在しますが、学生の声を聞くとベルギーの滞在のほうが現地の学生との交流が盛んなため、充実感があるようです。
私は主に初級・中級文法の授業を担当しています。本来検定試験は普段の学力の腕試しであるべきですが、中級レベルではどうしても仏検を意識してしまいます。3級以降は動詞を活用させる問題があり、学生はこの問題が大変苦手です。そこで3・4年の文法の授業では、授業時間の半分を動詞の活用の体系的な習得に費やすことにしました。éteindre, recevoirのような、日常語なのに初級では教える余裕がない動詞を選んで取り上げています。綴りと発音を教え少し時間をとった後、パワーポイントを利用してランダムに動詞を表示し、学生は指示された時制・法で答えるという活動を行います。40分も動詞の活用のみをやり続けるのは学生にとって容易ではありません。「先生の授業ゴリゴリっすよー」とも言われました。しかし何が出てくるかわからない緊張感とゲーム感覚もあって、学生は能動的に参加してくれています。
昨年度は7月にはブルキナファソ大使夫人のフランス語によるお話、2月にはケベックからの留学生を迎えての文化交流をフランス語・英語で行いました。その他の国際交流行事として、中2から高1までが一堂にそろっての外国語発表会(フランス語・英語)、早稲田大学留学生との交流セッション(文化祭)や帰国小学生英語教室(英語保持教室)、模擬国連やタイの提携校へのフィールドワークなども行っています。フランスとの交流としては、コリブリネットワーク(短期留学)に加盟し、2009度からはほぼ毎年数名程度参加させ、同様にフランス本土やニューカレドニアからの留学生を受け入れています。受け入れ形態としては完全交換留学となり、3週間ずつ日本とフランスで過ごします。本校に在籍中は、バディーである日本人生徒のHRクラスに参加しながら、留学生にはフランス語の授業だけでなく、学校行事・部活にも参加してもらいます。高校の普通授業は1日に3時間程度とし、他学年の授業(中学生の理科や英語、高校の芸術・家庭科の授業等)にも参加させて、学校全体でフランスの風を感じてもらえるようにしています。
ブルキナアファソ大使夫人とともに
当会の活動としては、在日フランス人・フランコフォン協会(AFJ)との共催で日本の伝統文化に関するワークショップや鑑賞会を行っています。様々な分野のプロフェッショナルを招いた講演会「ALFIアカデミア」や、フランス語を生かしたキャリア実践やそれぞれの専門分野について語る会員間の交流「ジョブトークス」をリモート/対面で定期的に開催しています。また、フランス人講師を招いた翻訳塾やアート・サロンなどの活動も会員有志で積極的に行われています。
フランス・フランコフォンに関するイベント情報を案内する当会
それから小学校でフランス語の思い出としてとてもよく残っているのがたくさんのフランス人が通うリセに一日入学したことです。自分が外国人の立場になる経験をした事は今までなかったので、コミュニケーションのとり方に苦労したけれど、日本とは違う文化を肌で感じる事ができてうれしかったです。私のクラスは、教室がだまりこんでしまう事もあるけれど、リセではみんなが元気よく手を上げてとても積極的だったので、私も見習いたいと思いました。私も含めて、日本人は、自分の意見をはっきりと言えない人が多いので、もっと外国語を勉強して、外国人と意見を交わせるようになりたいです。フランス語は私にとって幼稚園から学んできたとても身近な言語です。
フランス語との出会いは大学1年の春。鉛筆を転がして適当に選んだ第2外国語、それがフランス語でした。出会いは全くの偶然でしたが、フランス語の美しさにあっという間に魅了されました。その後仏文科に進み、大学を卒業する頃にはフランス語通訳の職に就きたいと考えるようになっていました。しかし通訳を目指すにあたって、フランス語圏滞在歴が短いことが私にとって最大のコンプレックスでした。そこでフランス語力の向上と自信を得るために掲げた目標が仏検1級でした。
派遣期間中は様々な国・地域のフランス語話者と出会い、フランス語でプレゼンを行うなど、それぞれの文化や価値観を共有しながら、貴重な時間を過ごすことができました。また海外メディアのインタビューやフランス、ベルギー各地の日本語学習者、両国の政府関係者の方々との交流を通じて、フランス語力も向上したと思いますし、世界のフランス語圏を相手に仕事をする上でも、今後の課題や改善点を体得することができました。

以上から、よく使われる不規則動詞の活用や、複合過去の性・数一致について確認し、時制に注意することがいかに重要であるかが、お分かりいただけたと思います。また動詞を用いた基本的な表現について、しっかりおさえておきましょう。
体育学部、観光学部(1年次生のみ)の9学部43学科があり、現在19,644名の学生が在籍しています。しかし、フランス語を主専攻とする学科はなく、第二外国語として選択必修を課しているのは、2学科1専攻のみです。私が所属している外国語教育センターは、湘南校舎の外国語教育全般を担当する部署で、英語、中国語、コリア語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語、フランス語の7言語が副専攻科目として開講されています。

実力をつけた学生たちが、さらに力試しをしてみたいということで、近年東海大学は、京都外国語大学が主催する「全日本学生フランス語弁論大会」と日仏会館主催の「フランス語コンクール」に参加するようになりました。しばしば決勝に進むようになりましたが、そこで我が校の学生は質疑応答に極端に弱いという欠点が暴露されてしまいました。深井君がこの弱点を大いに補強し、「全日本学生フランス語弁論大会」では、2013年優勝



1988年4月にNHKラジオフランス語講座入門編の門を叩いた一高校生が、2015年4月でフランス語学習28年生となりました。お蔭様で、昨年8月、2013年度エールフランス特別賞の航空券を片手に一路フランスへ。家内と共に、最高のパリ旅行を満喫いたしました。 


















仏検では、上級レベルの準1級、1級に達すると、和文仏訳の問題が登場します。特に、1級では和文仏訳の配点は20点と、書き取り、聞き取り 1 番とならんで1次試験の中で最も配点が高い設問ですから、この問題を制することなくして仏検最上位級合格はあり得ないと言ってもいいでしょう。

















この度は文部科学大臣賞団体賞に選出して頂き、誠にありがとうございます。生徒、教員一同大変喜んでおります。本校では、学習2年目にフランス語検定4級から挑戦しています。部活動も盛んな中、学業との両立は容易なことではありませんが、年に二回の検定合格を目標にすることで、メリハリのある学習や生徒同士が切磋琢磨する環境ができているのだと思います。近年、本校のフランス語学習者は増加傾向にあります。それに伴い、検定準備にも時間を要しますが、今後とも当検定を学習と教育に有効利用させていただきたいと思っております。また検定実施に当たり、ご尽力を頂いておりますフランス語教育振興協会に心より感謝申し上げます。
また、長年、公立や他の私立高校で1年間または2年間選択科目として教えてきた私としては、数年前本校で仕事を始める際、3年間続けて教えられるということで今までとは違う様々な可能性を感じていた。しかし、実際にはクラス全員、30数名の生徒を相手に語学を教えることは簡単なことではなく、3年生ともなると仏検3級取得者から、動詞の現在形もおぼつかない生徒が同じ教室におり、上位層の生徒を伸ばし切ってやれていないということが悩みだった。それを解決するには、必修でなくとも選択で興味のある生徒との小人数クラスにしてもいいのではないかという思いも少し持ち始めていた。
そして、2013年度の秋は、高1も今まで以上に多くの生徒が5級にチャレンジし、高2高3で、4級、3級を受験する生徒達も少しずつ増えてきている。また、3年間学ぶとはいえ、前述したとおり3級を取得するのは授業外での生徒本人の相当の努力が必要なのが現状だが、たとえ5級であっても、日本のほとんどの高校生が英語のみを学んでいる中、他言語の資格を取得したということは高校生にとっては優越感や自信という意味を見出し、その後の学習へのモチベーションアップへつながっていくのだ。
大学の3年生になるまで、つまりは去年の春の時点まで、私はフランス語を学習したことがありませんでした。
フランスが主催している国際大会であり、レースの特徴としては
とはいうものの、走ってみるとやはりレースは過酷で、一日目から脱水症状に陥ってしまいました。暑さで内臓がやられ、体内の水分も尽きて汗すらかけず、いくら水を飲んでも、いくら塩のタブレットを飲んでも頭痛と吐き気が止まりませんでした。しかしそんな時、一人のランナーが私に声をかけてくれたのです。その人は初老の、紳士然とした男性で、ゼッケンの国籍欄にはFRANCEの文字がありました。声をかけてくれたといっても、その時の私には彼の話すフランス語が理解できなかったのですが、彼はどうやら「水を飲め、一緒に走ろう。」と言っているようでした。彼に励まされ、私は再び走りだすことができました。そうして結局、彼はその日のゴールまで私のことを気遣いながら併走してくれたのです。道中、初めてのフランス語に触れた私はなんとか片言の英語で彼との会話を試みたのですが、あまり上手くいきませんでした。その時、フランス語の簡単な挨拶だけでも勉強しておけばよかったと激しく後悔したのですが、ただ、彼の方は終始鼻歌を歌っていて、そんなことはちっとも気にしていないようでした。サハラマラソンのランナー達は、どこか通じるものがあります。日本から参加していたメンバーとは話が合い、直ぐに仲良くなれました。ならば、あの陽気なフランスの男性とも、もしも私があの時彼が話す言葉を話せていれば、何事かを語りえたはずです。そしてそのように考えると、せっかくのかけがえのない、大切な機会を取り逃してしまったように感じたのでした。
そして今まで、フランス語を短い期間ながらも学習してきた現在になって思うことは、語学を始めるのに「遅い」ということはないということです。私は、物事の「縁」というものを信じています。なにかに強く心惹かれるのなら、それは必然的な文脈の上でそうなっているのだと感じますし、そしてそういった「縁」を感じて何かに夢中になるタイミングというものは、「遅い」とか「早い」とかといった言葉でくくることはできないようにも思うのです。それはあたかも、人間の意図というものとは無関係に、向こうの方からある時突然やってくるかのようです。あの砂漠のレースでの出会いに「縁」を感じた私は、フランス語の世界にどんどん夢中になっていきました。そうして情熱を持って学習していくにつれて、見える世界がどんどん変わっていくのを実感していったのです。例えば、街中には思いがけないほど多くのお店がフランス語の店名を掲げています。聞き覚えのある数々の曲が、実はフランスの歌手が歌うシャンソンであることに気付いた時は、驚きもしました。そして理性的な言語によって紡がれる、フランス哲学の精緻な論理の美しさには目もくらむほどです。フランス語を学び始めて出会った多くの本や音楽、フランスに特有の「理性」の精神は、間違いなく私の生活を豊かにしてくれました。
私は、思い切ってフランス語の世界に飛び込んで、本当に良かったと断言できます。そして、それは例え私が50歳からフランス語を始めようが、70歳から始めようが同じように満足したとも思うのです。それは、「知る喜び」というものはそれを求める人間の年齢に関係なく、誰の前にも開かれているということを常々感じるからです。
仏検では、準2級以上のレベルになると書き取り問題が登場します。一次試験において最も配点の高い設問ですから、この問題で高得点を獲得するのが合格への鍵だといえるでしょう。しかし、ただ漫然とフランス語の「音」を聴いているだけでは、書き取りの力は身に付きません。それではどのような点に気をつけながら学習すればよいのでしょうか。

社会人になって新しいことを学ぶということは、時間の面でもいろいろと制約があり難しいことではありますが、心の中にひとつ新しい芽が生えたような、フレッシュな気持ちになれます。現在は3級取得に向けて勉強中ですが、目下の目標は2級を取得し、フランスに短期留学をすることです。最終的には大好きなフランス文学を、原文で楽しめるようになれれば・・・と夢見ています。
電車の中で分厚い紙の辞書の例文を頭の中で音読しながら頭に叩き込むのも効果的であるように感じます。紙の辞書特有の「芳醇な香り」を愉しみつつ…そう、やはり外国語学習は五感を総動員して味わうものですね。特に「文化」の香りが豊かなこの言語は、自分の生活に彩りを加えてくれます。
あるいは、ルイ・マル監督『地下鉄のザジ (Zazie dans le Métro) 』に登場するガブリエル叔父さんの暮らすアパートの前で写真を撮ったり…Bonne Nouvelle界隈も50年前の雰囲気をそのまま残し、映画の舞台にタイムスリップしてきました。






















