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福岡大学のフランス語教育と団体受験の利点

山本 大地(福岡大学人文学部フランス語学科)

福岡大学のフランス語教育

フランス語を話せるランゲージプラザ

福岡大学人文学部フランス語学科は1学年45〜50名程度に対して、教員は11名という体制を維持しており、各地の大学でフランス語専攻の縮小化が進む中、我々は恵まれた環境にあります。第二外国語への全学的な取り組みも盛んで、一例を挙げると学習言語を気軽に実践できる “ランゲージプラザ” があります。月曜はフランス語、火曜はドイツ語と、毎日各言語の母語話者が待機しており、そこに来ればおしゃべりすることができます。また正課外教育を担うエクステンションセンターでは、仏検対策講座を開講しています。本学の学生がほとんどですが、社会人の方もしばしば受講されており、仏検は大学と地域をつなぐかけ橋にもなっています。

語学研修の様子フランス語学科では総合的なフランス語学習およびフラン文学・言語学の授業が充実しており、希望者はフランス語と英語の教員免許も取得できます。2016年度からフランス人のフランス語教育の専門家も一人増えるので、今後FLEを専門にしたい学生にも対応できる体制を作れるかもしれません。2年次にはベルギーのルーヴァンカトリック大学で3週間の語学研修が実施されています。ベルギーの後パリにも1週間滞在しますが、学生の声を聞くとベルギーの滞在のほうが現地の学生との交流が盛んなため、充実感があるようです。

授業資料私は主に初級・中級文法の授業を担当しています。本来検定試験は普段の学力の腕試しであるべきですが、中級レベルではどうしても仏検を意識してしまいます。3級以降は動詞を活用させる問題があり、学生はこの問題が大変苦手です。そこで3・4年の文法の授業では、授業時間の半分を動詞の活用の体系的な習得に費やすことにしました。éteindre, recevoirのような、日常語なのに初級では教える余裕がない動詞を選んで取り上げています。綴りと発音を教え少し時間をとった後、パワーポイントを利用してランダムに動詞を表示し、学生は指示された時制・法で答えるという活動を行います。40分も動詞の活用のみをやり続けるのは学生にとって容易ではありません。「先生の授業ゴリゴリっすよー」とも言われました。しかし何が出てくるかわからない緊張感とゲーム感覚もあって、学生は能動的に参加してくれています。



団体受験の利点

福岡大学では以前から毎年福岡全体の仏検会場を担当していますが、本学学生のための団体受験制度を始めたのは、2014年秋からです。きっかけは少しでも受験料を安くできるようにということでしたが、実際にやってみると団体受験には様々な利点があることがわかり、今ではそちらのほうに重要性を感じています。最大の利点の一つは、仏検事務局が送付してくれる一覧表のおかげで、受験した学生とその点数を把握できることです。しかもこの一覧には筆記、書き取り、聞き取りの内訳まで記載されており、個別に適切な対策をする上で大変役に立ちます。授業でよくできる学生が合格していなかったので内訳をみてみると、書き取りの点数が低かったという事例がありました。確かに授業では書き取りの練習を行っていなかったと、普段の授業を振り返るきっかけにもなりました。

長期的に見ると、今後団体受験を続けていくことで年度ごとの点数の変化を把握でき、学科にとって貴重なデータとなります。文部科学省は大学に自己点検を課していて、その項目の一つに「教育成果について定期的な検証を行い、その結果を教育課程や教育内容・方法の改善に結びつけているか」というものがあります。フランス語学科におけるフランス語学習の「教育成果について定期的な検証を行」う上で、仏検の結果ほどふさわしいものはありません。

学生にとっては、郵便局や書店に行くより馴染みの教員にお金を払って願書を提出するほうが心理的に楽なようです。中には財布片手に研究室にきて、ペンを借りその場で願書を記入、一万円札で受験料を払い、お釣りをもらって帰ってゆく、というつわものもいます。教員としても受験する学生と顔を合わせることになるので、ついでに励ましたり、勉強のコツを教えたり、過去問のコピーを渡したりすることができて、隠れた効果があると考えています。

2015年度の結果を見てみると、3年生の時点で2級合格者が5名いました。4年生になると就職活動で忙しくなりますが、うまくいけば卒業までに準1級を取得することができるかもしれません。このうちの一人は春に2級に合格していたので、秋に準1級に挑戦しました。結果は惜しかったものの、授業の予習・復習に一切手を抜くことはなく、無遅刻・無欠席のこの学生は、大学の勉強をきちんとこなせば、高いレベルに到達できるということを証明してくれました。

もうひとつエピソードがあります。熱心な非常勤講師の先生が、ご自身の第二外国語のクラスの願書と受験料を取りまとめるという大変な労を執ってくださいました。そして偶然にも、そのクラスは前年に私が担当したクラスで、多くが4級に合格していることがわかりました。第二外国語の場合、担当した後は学生と接する機会がなくなってしまうのですが、その学生達の成長を知ることができたのも団体受験のおかげです。

2016年度からフランス語学科はドイツ語学科とともに新しいコースを開始します。少人数のクラス、学部と修士を5年で卒業できる制度、留学生が参加する授業など、これまで以上に充実した教育内容になっています。団体受験でわかる結果は、新しいコースの教育効果をはかる指標として不可欠なものとなるでしょう。

最後になりますが、事務局をはじめ仏検の運営に携わるすべての方々に、この場をお借りしてお礼申し上げます。