地域で育む国際交流の力-フランス語が繋ぐ世界への道-

安齋 有紀(島根大学)

出雲市観光パンフレット表紙私が島根大学に着任して今年で7年目。この地を通して、私自身のフランス語との関わり方が緩やかに、そして心地よいリズムで広がっているのを日々感じる。例えば、社会人に公開している授業では様々な職種の方と出会うのだが、彼らは学外でもフランス語の勉強会を開くほど学びへのモチベーションが高く、好奇心旺盛な眼差しでアドヴァイスを求めてくる。少数ではあるが、仏検受験者としてその方々を会場で迎えるのは感慨深いものである。

実は、そこで出会った方から島根県はペタンクが盛んだという話を聞き、以前からペタンクに興味があった私はついに松江で初投げの日を迎えた。練習場所に行ってみると、風情あるお寺の敷地内で60~80歳ほどの方々が元気に「bien!」と声を出し合っている。その光景に衝撃を受けると同時に、この地に不思議な縁を感じた。

また、お隣の鳥取県境港ではクルーズ船が寄港すると数時間ほど近隣を観光するのだが、乗客にフランス人がいる場合は「おもてなしフランス語」と題し、ボランティアでアテンドのお手伝いができる方を募っている。ある時、フランス語専攻の学生にボランティアをお願いできないかと地域の方から声をかけていただき、数名が参加した。後で学生から聞いたのだが、教員以外のフランス人と初めてぶっつけ本番で接したのだから、それはもう世界が変わるような日になったらしい。興奮して語る学生の姿に、こちらの方が興奮してしまった。さらに、趣味で続けている音楽活動の場でもヨーロッパの演奏家と交流する機会がこの地に来て増えた。そこで大いに活躍しているのがフランス語である。フランス語圏の音楽家はもちろんのこと、ドイツやイタリアの音楽家もフランス語を流暢に操るので、私がフランス語を話すと知ると喜び、以来彼らとはフランス語でやりとりをしている。

色々な体験をしました!地域でのこうした豊かな繋がりから、フランスを共通項として知り合った方々と地域の国際交流活動の橋渡しができればと2年前に島根県日仏友好協会を立ち上げることになった。教員の立場としても、国際交流活動に関心がある学生のために、先のおもてなしボランティアのように学外でも語学力を活かせる道をつくれないかと、協会や地域の方々と情報交換をしたところ、素晴らしいご縁に巡り会えた。出雲市観光パンフレット「フランス語版」の作成である。

このパンフレットについてここで少し紹介したい。近年、島根県内の自治体においては多言語に対応した観光案内事業が進められており、特にフランスからの観光客のジワリとした増加に伴い、フランス語版での交通案内や博物館の解説作成、通訳ガイド養成が注目されている。そこで、Evianと姉妹都市でもある出雲市の魅力をフランス人観光客に向けて紹介し、誘客を推進しようと出雲市経済環境部観光課インバウンド推進室と協働で、外国人・地元の学生の目線でフランス人観光客の心に響くような新しいタイプの観光パンフレット作成プロジェクトが始まった。

研究室の学生と協定校であるリヨン第3大学からの留学生が市および観光協会と共に現地を見学し、観光地の選定、掲載内容、コメントの仕方について協議を重ね、フランス語による紹介文の作成と現地情報の翻訳作業を経て今年の3月に完成した。ヨーロッパの観光で関心の高い「体験型」の観光案内(坐禅体験、窯元見学、ガラス細工作り、藻塩作り、機織り体験、醤油テイスティング、酒蔵見学、古い街並の散策、漁村での遊覧船体験など)を多く取り入れ、既存の観光パンフレットには掲載されていない観光スポットの紹介と学生たちによる感想・コメント(LINE風)を中心に仕上げた。藻塩作りに挑戦中!この活動は、留学生にとって地域の文化を通して日本文化に対する理解を深め、自分の国に向けてその魅力を発信する機会となり、日本人の学生にとって学んだ語学を大いに活かしつつ、地元の観光団体や企業との連携を通して観光客誘致・インバウンド推進を目指す地域の在り方について具体的に学ぶ機会となった。地域という最も身近な場で国際交流活動を実践できたのである。

出雲観光初心者の私も学生たちと一緒に観光地を巡ったのだが、学生たちが伝統工芸の体験に真剣に取り組む姿や、博物館で古代史や仏像について熱心に質問をする姿は大学では決して見ることのない姿であった。さらにその内容をフランス語で紹介するに至ったのだから、本当によく頑張ったと改めて思う。また、留学生が説明を理解していないときには、日本人の学生が自分の引き出しにあるvocabulairesを駆使して対応していた。こういう場面を黙って見守ることができたのは、教師として素直に幸せである。そして、この見学で特に印象に残った光景がある。一畑薬師での坐禅体験である。何よりも坐禅を組む日仏の若者たちの凜とした美しさに圧倒された。その若者たちの姿は、国際交流の未来を映し出しているようにさえ私には感じられたほどである。

坐禅体験

この活動以来、授業でも学生たちの学ぶ姿勢に変化があらわれている。大げさに思われるかもしれないが、明らかに学生の目の輝きが今までとは違う。そのような嬉しい変化を感じている中、パンフレット作成でお世話になった出雲市の観光課と印刷会社の方々と遅ればせながら完成打ち上げ会を開き、半年ぶりの再会を果たした。半年前は控えめに接していた学生たちが、それぞれに進路や将来の夢について力強く語り、堂々と受け答えをする、その逞しい姿に驚きと嬉しさと希望を感じたというメールを市の方からその翌日にいただいた。彼らの成長を感じたのは教員である私だけではなかったのだと思わず涙が溢れた。

最近開催したオープンキャンパスでも、高校生に大学でのフランス語の勉強や語学を活かした自分たちの国際交流活動、進路について自信をもって語る学生たちの姿があった。こうしてさらに若い世代へと彼らの力が引き継がれていくのだなと、学生たちの存在が新たな道しるべとなって次世代を世界へ繋いでいく様子を思い描いた。これからも、若い力と地域の力を合わせて国際交流の芽を育み、共にその道を開いていかれるよう、この地でフランス語と共に緩やかに歩んでいくのが楽しみである。

「しまね大交流会」でのプレゼン

 

過去問題サンプルを公開しました

過去問題サンプルを新たに公開しました。
2011年度(1級は春季、準1~5級は秋季)の実施問題をご紹介しています。
1次試験に加えて2次試験の問題もアップしました。
問題形式の確認やレベルチェックにご活用ください。

2008年問題サンプル(2015年より公開中)も継続してご覧いただけます。

仏検インターネット申込 お取り扱いの一時停止について

仏検インターネット申込は、システムメンテナンスのため、
以下の期間中、各種お取り扱いを一時停止いたします。

※期間中は申込システムへのアクセスが不通となります。
※お申込完了後のコンビニ店頭でのお支払いは可能です。
※作業の進捗状況により、終了時間は前後する可能性がございます。


仏検インターネット申込 お取り扱い一時停止期間

対象 : インターネット申込システムでのID取得・出願情報入力、
マイページでの各種操作

停止期間 : 2018年9月10日(月)AM 1:00 ~ 7:00

 

ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承のほど、お願い申し上げます。  

2018年度秋季試験 受験案内を更新しました

2018年度秋季試験 受験案内を更新しました。

dapf2018A_couv

年間実施日程・受付期間
受験票・結果通知発送予定
受験地と受験級
検定料
試験時間
パリ会場受験

  郵送申込用の願書受験要項の無料送付をご希望の方は請求フォームに必要事項をご記入ください。

なお、仏検では、前回・前々回(2017年度秋季・2018年度春季)に出願された方を対象として、予めお名前等を印字した願書・受験要項をクロネコDM便でお送りしております(8月下旬発送予定)。

「合格者の声」を更新しました

「合格者の声」を更新しました。


<8月7日更新>
第5外国語は独学で
2017年度秋季 準1級合格 在日フランス商工会議所賞
小島 圭以(学生(早稲田大学大学院)・東京都)

<8月1日更新>
Surpriseが大きなモチベーションに
2017年度秋季 準1級合格 在日スイス大使館賞
小西 和美(会社員(ピー・エム・シー株式会社)・東京都)


第5外国語は独学で

2017年度秋季3級合格・在日フランス商工会議所賞
小島 圭以
学生(早稲田大学大学院)・東京都

「趣味は語学」とまで公言する私にとって、フランス語は大学院進学と同時に着手した第5外国語で、初めて完全に独学で勉強している言語です。

中学高校時代を過ごした米国(第1外国語は英語でした)で出会ったスペイン語(第2外国語)がきっかけで語学の面白さに目覚め、そのままラテン語(第3外国語)も同時履修し、帰国して大学に入学してからはドイツ語(第4外国語)の授業を受講していました。目標としていた独検2級に学部4年の冬に合格し、新しい言語の勉強に移りたいと考えましたが、興味のある言語は多く、どれにしようかしばらく悩んでいました。そこで博識な知人に相談したところ、「フランス語がいい。習得に努力は必要となるが、社会に出てから絶対に得する」とアドバイスをいただきました。私自身、フランス語は早かれ遅かれ通ることになる道だろうと以前から感じていました。

理系ということもあり、周囲からは多言語を学ぶ楽しさを理解してもらえないことも間々あります。そのような中でも何故語学の勉強をやめられないのか、と言いますと、それぞれの言語の性格を知っていくことで、これまで知らなかった世界を垣間見る感覚がこの上なく楽しいからです。

人間同様、言語にはそれぞれの個性があります。例えば、フランス語の姉妹であるスペイン語はとても「素直」な一面があり、個人的に好感が持てます。それに対して、フランス語は綴りを「無駄遣い」しますし(beaucoupが「ボク」、qu’est-ce que c’estが「ケスクセ」にしかならないなど)、母音の読み方が「我が道を行く」が如く変化していきますし(“e”一つ取っても、[e] [ɛ] [ə]の可能性があったり、“im”や“in”が「アン」になったり)…人間に例えるなら、少し距離を置きたくなるような「ちょっと面倒な人」だと感じてしまうのが正直なところです(笑)。しかし、そんな言語だからこそ自由に操れるようになってみたいという気持ちに火を付けてくれる魅力もあります。

このような発見、フラストレーション、やる気のアップダウン、などを繰り返しながら、僅かな割合ですがフランス語は私の生活の一部となっています。ただ、語学好きとは言え、フランス語圏に行きたいなどといった強い動機がない私のような独学者にとって、常時勉強のモチベーションを維持することは簡単ではありません。そのような状況で、仏検は道を指し示してくれる友のようでもあり、油断すると怠けてしまう私の尻を叩いてくれる一方で結果を出せば褒めてくれる親のようでもあり、フランス語を独学する上で私にとってなくてはならない存在です。

私は2019年3月に大学院を修了し、4月からとある日系グローバル企業に就職する予定です。今や多くの企業で英語力が重視されていますが、それでも依然として日本人は英語を苦手とする人が多い傾向にあると感じています。ただ、これが理由で語学そのものに抵抗感を持ってしまうのはもったいないと個人的にとても思います。フランス語含め、様々な面白味のある言語が世界にはあるからです。

知人の言葉通り、フランス語は確かに習得に努力が必要な言語だと思います。けれども、語学を通して私が見る世界をさらに広げてくれたことに間違いありませんし、とても良い出会いだったと確信しています。今後も、現状に満足することなく、より上の級の合格を目指して邁進していきたいです。

 

 

Surpriseが大きなモチベーションに

2017年度秋季準1級合格・在日スイス大使館賞
小西 和美
会社員(ピー・エム・シー株式会社)・東京都

 

私がフランス語検定の存在を知ったのは2017年9月のことでした。

konishi00

 大学でフランス語を専攻し、卒業後フランスの銀行、フリーランス通訳を経て、現在は日本でビジネスを展開するフランス企業のコンサルタントを行う企業に勤めています。

フランス語を使って日仏間の交流に貢献したいと考え、今日まで仕事を続けてきました。そして年を重ねた今、現在勤めている会社を退職した後もフランス語を使って仕事をしたいと思い、そのためには自分のフランス語の能力を客観的に評価・証明してもらう必要があると考えました。そこで知ったのがフランス語検定でした。一番近い時期に受験できるのが秋季試験でした。さて、どの級を受験すればいいか。そこで2級と準1級の過去問題を解いてみたのですが、2級は容易であったために、準1級に挑戦することにしました。

まずは1次試験です。筆記試験は過去問題集をひととおり解いてみて、自分の弱点がどこにあるかを考えました。私の弱点はあきらかに形容詞・動詞を名詞化することだったので、そのための参考書を購入し勉強を始めました。そしてヒアリングの能力をアップさせるために、お昼休みにインターネットでフランスのテレビ局のニュース番組を観始めました。そんな時、知り合いのフランス人からラジオをスマホで聴いたらどうかとのアドバイスが。早速、Bluetoothイヤホンを購入し、通勤途中そして家で料理や掃除をしながら聴き始めました。

こうした試験勉強の甲斐あって、1次試験に無事合格しました。

そして、次は2次試験です。時事的なテーマと一般的なテーマの2つから1つを選んで自分の意見を述べるということですが、私は最初から時事的なテーマを選ぼうと決めていました。お正月に家族にテーマになりそうな時事的な話題を数種あげてもらい、その中から3つを選んで試験の2週間前から、論理的に自分の考えが述べられるように準備を始めました。

実際の試験では、家族が挙げていたけれど私が選択しなかったテーマが出題されたのですが、日ごろから自分の意見を論理的に述べる訓練をしていたことが功を奏し、2次試験は思っていたより高得点で合格することができました。

準1級の2次試験が終わった次の日から、さっそく1級の試験の勉強を始めました。フランス語検定のための勉強ですが、ただそれだけではなく、試験勉強を通じて明らかに私のフランス語の能力はアップしています。フランス語は語彙、表現がとても豊かな言語です。今、私はフランス語を勉強することを楽しんでいます、また周りのフランス人の人たちとのコミュニケーションの質も高まってきています。

そして忘れてはならないのは母国語です。私たち日本人にとって母国語は日本語、どんなに勉強しても外国語が母国語を上回ることはありません。そして、外国語を上達させるためには、母国語の能力をあげることが必要だと思います。日本語で表現できないことをフランス語で表現することはできないからです。

1級に合格することが今の目標ですが、試験が終わっても今後ずっとフランス語を学び続け、大学を卒業する際に望んだ「フランス語を使って日仏交流に貢献する」という道を歩み続けていきたいと思っています。

 
*   *   *

追記:
合格証書が届いた3日後のことでした。APEFから一通の書簡が。次の検定試験の日程のご案内だろうと思って開封してみると、なんと成績優秀者表彰式への招待状だったのです。

このような賞があることを全く知らなかったので、“Surprise!”でした。

各級の成績優秀者の皆さんと表彰式に出席させていただけたことは、大きな歓びでした。

また式のあとのレセプションで、様々なバックグラウンドをもちフランス語を学び続けていらっしゃる方々とお話しできたことは私に“これからもフランス語の勉強をがんばろう”という大きなモチベーションを与えてくれました。そして、「1級も成績優秀者に選出されたい」と思うのでありました。

このような素晴らしい賞を授与してくださる関係機関の皆さまに心より感謝申し上げます。

 

2019年度春学期 受講者募集のお知らせ

2018年度秋学期からの継続受講に加えて、全コースで新規受講者を若干名募集します。
受講資格をご確認のうえ、以下の要領でお手続きください。

春学期 受講申込方法

【受講申込期間】2019年2月25日(月)から3月18日(月)まで

※これからの受講をご希望の方はご相談ください。

● 継続受講の方

上記期間内に受講登録を終えてください。

● 新規受講希望の方

申込書(word)をダウンロードし、必定事項をご記入のうえ、cours@apefdapf.orgまでメール添付でお送りください。折り返し受講対象クラス、入学テスト受験の要不要などをお知らせします。

wordフォーム申込書(word) pdf申込書(pdf)

入学テストは下記の要領で実施します。

2019年度春学期 入学テスト 実施要領

●日時:2019年3月23日(土)11:00開始 16:00終了予定 ※30分前から入室可
  <筆記試験>11:00~12:00 <面接>14:00時より順次(終了後順次帰宅可)
●会場:青山学院大学 青山キャンパス
●携行品:筆記用具、身分証
●受験料:3,240円(税込み)
  ※銀行振込(下記参照)による事前支払い
  ※いったん納入された受験料は一切ご返金いたしかねます

◎ 出願期間:2019年2月25日(月)から3月18日(月)まで

<入学テスト受験料 振込先 > 
みずほ銀行  九段支店(店番号532) (普)1805436
(口座名義)公益財団法人 フランス語教育振興協会 教育口

※入学テストの免除について

  • 2008年秋季以降の仏検1級、準1級(および対応するDELF・DALF)取得者で、「上級フランス語」、「翻訳(基礎科・本科)」を希望される方は入学テスト免除になります。免除を希望される場合は、申込書をお送りいただく際に当該レベルの合格証書またはディプロムの写しを併せて提出してください。
  • 「通訳基礎科・本科」を希望する方への入学テスト免除はありません。

入学テストの結果はテスト実施後3日以内にメールでご連絡いたします。

入学テスト合格者およびテスト免除*で受講決定の知らせを受けた方は受講登録にお進みください。

お問い合わせ

公益財団法人 フランス語教育振興協会
APEF青山フランス語プロフェショナルコ ース担当 
〒102-0073東京都千代田区九段北1-8-1 九段101ビル6F
TEL(直通):03-6268-9680 FAX:03-3239-3157
E-mail:cours@apefdapf.org

公開講座「カミュ『最初の人間』をフランス語で読む」のお知らせ

当協会の元副理事長・加藤晴久氏(東京大学・恵泉女学園大学名誉教授)が、
9月27日から、恵泉女学園大学公開講座で

「カミュ『最初の人間』をフランス語で読む」

という講座を開講します。

関心のある方は恵泉女学園大学ホームページ
http://www.keisen.ac.jp/extension/
をご覧ください。あるいは下記にお電話ください。

恵泉女学園大学 公開講座担当
電話 042-376-8332(火~金 9:00-17:00)

2018年度 夏季休業期間についてのお知らせ

公益財団法人フランス語教育振興協会は、8月13日(月)より8月15日(水)までを夏季休業期間とさせていただきます。休業期間中にお寄せいただく仏検・翻訳・APEF青山フランス語プロフェショナルコースの各業務についてのご依頼・お問い合わせは8月16日(木)以降のご対応となりますことを予めご了承ください。

ご不便・ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

豪雨災害による受験票未着/来場困難の対応について

このたび西日本豪雨により被災された皆さまに心よりお見舞いを申しあげます。

今週末7月15日(日)の実用フランス語技能検定試験(仏検)2次面接試験は、全ての会場で予定通り実施いたします。

以下に該当する方はご留意ください。

【受験票(1次試験結果通知)が未着の方】

1次試験結果通知は7月5日(木)に都内郵便局より発送を完了しておりますが、郵便事故等が発生している場合もございます。未着の方は7月13日(金)17:00までに仏検事務局までお問い合わせください。

インターネット申込を利用され、マイページの結果閲覧で試験会場と集合時間をご確認いただけた方は、受験票をお持ちでなくても、会場で写真付身分証(学生証、運転免許証、パスポート等)をご提示いただければ問題なく受験できます。 

【2次試験会場への来場が困難な方】

個別のご相談は7月13日(金)17:00までに仏検事務局にお電話でお願いいたします。

試験前日・当日は、お問い合わせにはご対応いたしかねます。会場への直接のご連絡はご遠慮ください。

公共交通機関の運休や遅延等のため、ご来場いただけなかった場合は、7月17日(火)~24日(火)の間に、仏検事務局まで書面でお申し出ください(郵便/FAX/メールいずれも可)。そのさい、遅延や運休を証明する書類や画像等をできるだけ添付してください。

今後の対応につきましては、仏検実行委員会で検討のうえ、7月末を目途に書面で個別にご連絡いたします。

仏検事務局

2018春1次 パリ会場の実施について(SNCFストライキ関連)

2018年6月17日(日)に、フランス国鉄(SNCF)のストライキが予定されています。フランス国内各地で交通機関の混乱が発生する可能性がありますが、仏検1次試験パリ会場は、通常通りの実施を予定しています(遅刻入室は一切認められません)。パリ会場での受験を予定されている方は、事態の動向を注視するとともに、試験当日に余裕をもって来場できるよう、あらかじめご留意ください。

なお、不測の事態が発生した場合は、当ホームページで対応を告知いたします。

【参考】
仏検パリ会場について(2018年度春季 受験案内)
 http://apefdapf.org/dapf/info/paris
SNCFストライキ情報(外部サイト:運行状況/予定日など)
 https://www.oui.sncf/train/greve


公益財団法人フランス語教育振興協会
仏検実行委員会

Bruxelloisとして暮らしたい

2017年度秋季3級合格・在日ベルギー大使館賞
旭 貴弘
会社員(ダイキン工業株式会社)・大阪府

私がフランス語に出会ったのはちょうど3年前のブリュッセルでのことでした。ブリュッセルに赴任して初めての海外生活を送ることになった私ですが、当初知っていたのはbonjourやmerciくらい。大学時代に友人が「フランス語は数学やで。90は4×20+10って言うねん。」と困惑気味に話していたことをうっすら記憶していた程度でした。

職場はインターナショナルな環境で、共通語は英語。フランス語を使う機会はありませんでした。当初は英語も十分と言えず、せっかくブリュッセルに暮らしながらフランス語にまでは手が回りませんでした。しかし、しばらく暮らすうちに「この町に暮らすのならやっぱりこの町の言葉を話したい」「期間限定の”腰掛け”外国人としてではなくBruxellois(ブリュッセル人)として暮らしたい」と思うようになり、現地のコミューン(区)が開設するフランス語の講座におそるおそる申し込みました。

日本人はほとんどおらずフランス語のみで学習するフランス語…先生の身振りや表情だけを頼りに少しずつフランス語を習得する過程は、ちょうど赤ちゃんが言葉を覚えていくようなものでしょうか。いつしか挨拶、自己紹介から買い物やレストランでの会話、複合過去や近接未来まで色々な表現を学んでいき、それはまるでマジックにでもかけられたようでした。

それ以降、日曜日はきまってマルシェに足を運び、オリーブ屋のおじさんにオススメのオリーブを教えてもらったり、果物屋さんに見たことのない高級イチゴ(fraise framboise)を教えてもらったり、メトロで困っているおじいさんに行先を教えたり、ベルギーで活躍するアーティストのコンサートで小さな村を訪れてみたり…言葉はまだまだおぼつかないながらもBruxelloisの一員になれたような気がします。

(左上から)Atomiumにて/高級イチゴfraise framboise/オリーブも多種多様/
Grand Placeのイルミネーション/空港にてタンタンロケットと

帰国して間もなく1年となりますが、今も日本に住む一人のBruxelloisとしてラジオはNostalgieを聞き、フランス語圏の美術展を訪れ、最近はシャンソンの魅力に惹かれ、Charles Aznavourの来日コンサートにも訪れます。フランス語がきっかけでベルギーをはじめフランス語圏の文化へと人生の楽しみが広がったことが、フランス語を学んでいることの最大の喜びだと思います。AIによる自動翻訳が発展すると言語を学ぶ意味が薄れると言う人もいます。機械的な翻訳であれば機械が人間を助けることはできるでしょう。しかし、自らフランス語を学ぶことでしか得られない文化との出会い、マルシェで挨拶を交わした時の温かい笑顔、フランス語の会話が奏でる美しい響き…これらがある限り、言語を学ぶ意味は何ら変わらないでしょう。

仏検は、そんな私の学習の伴走者として私を励まし続けてくれています。妻と二人三脚で仏検に挑戦し、これからもフランス語のレベルを向上させていきたいと思います。いつか再びBruxellesで生活できる日を夢見ながら…

テルヴューレンTervurenの紅葉

 

2017年度 文部科学大臣賞団体賞 受賞のことば

文部科学大臣賞団体賞は2013年度に創設され、その年度における出願者数とその増加率および試験結果等を勘案し、年度を通じたフランス語教育への取り組みを総合的に判断した上で、特に優秀と認められた3団体に授与されます。2017年度は、亜細亜大学、武蔵大学、聖ウルスラ学院英智高等学校が選出され、賞状と記念の楯が授与されました。表彰団体の先生方からお寄せいただいた受賞のことばをご紹介します。


亜細亜大学 小川 直之 先生

(写真左より)大島正克先生(亜細亜大学)・西澤理事長・小川直之先生(亜細亜大学)

1・2年次の必修語学として14外国語から1つを選んで学ぶ本学では、全学的に外国語学習を大切にする雰囲気があります。講師の先生がたや担当の事務職員の方がたの熱心な取り組みのおかげです。こうした環境が、多くのフランス語受講者に仏検を受験したいと思わせるのでしょう。
仏検は学生たちにとって、努力しさえすれば数ヶ月後に到達できる、目に見える目標です。努力は嘘をつかない(ことがある)ことを実感させてくれます。出願した級に合格した学生たちは、フランス語の進歩を認められるのはもちろんうれしいが、仏検で2度、3度と、成功体験を重ねられたことが大きな自信になったといってくれます。フランス語教員冥利に尽きます。
(写真左より)大島正克先生(亜細亜大学)・西澤理事長・小川直之先生(亜細亜大学)

武蔵大学 木元 豊 先生

この度は文部科学大臣団体賞を賜り、大変嬉しく、また光栄に思っております。お選びくださいましたフランス語教育振興協会の皆様に心よりお礼申し上げます。
武蔵大学では、グローバル市民育成のための教育を目指しており、外国語教育を重視しております。フランス語教育もその一環であり、全ての学部、学科においてフランス語を学ぶことができます。特に人文学部ヨーロッパ文化学科では、所属の学生の約半数がフランス語を第1外国語として学んでおります。同学科ではここ2年eラーニングを試験的に導入しております。今回の受賞は、学生が熱意を持って、自主的に努力したからこそですし、教職員の皆さんのサポートあってのことです。深く感謝しております。これを励みにフランス語教育の更なる充実を図っていきたいと存じます。
(写真左より)光野 正幸先生(武蔵大学)・西澤理事長・木元 豊先生(武蔵大学)

聖ウルスラ学院英智高等学校 フランス語担当 大槻 多惠子 先生

(西澤理事長・外国語主任 戸田茂秋先生(聖ウルスラ学院英知高等学校)

聖ウルスラ学院英智高等学校はカナダ・ケベックウルスラ会の修道女により仙台の地に創設され、1959年の高等学校設立以来、フランス語教育は途切れることなく、本年で59年目となる。現在高校総数800人ほどの学校で、毎年200人強の生徒がフランス語を履修している。今回、団体賞受賞という栄誉をいただき、今後もさらに多くの生徒がフランス語を学び、自分たちの世界を広げる機会となるよう努力していきたい。この場をお借りして今後も皆様からのご指導ご鞭撻をお願いすると同時に、さらなる仏検の発展をお祈りしたい。
(写真左より)西澤理事長・外国語主任 戸田茂秋先生(聖ウルスラ学院英知高等学校)


 

山形大学と仏検−学生が共に学べる環境づくりを目指して−

合田 陽祐(山形大学)

仏検は山形大学のフランス語教育に欠かせない重要な柱の一つです。本学では、3名のフランス語専任スタッフと1名の非常勤講師が協力して、一昨年より団体受験に取り組んでいます。そして昨年からは、仏検の受験者と合格者にそれぞれ加点する旨を、全学共通のシラバスに明記しています。クラス内でも仏検受験を盛んに呼びかけた結果、春秋合わせての受験者数が、100名の大台を突破しました。この数字は、全学での1年生のフランス語履修数140名を考慮すると、なかなかのものと言えます。じっさい受験者の大半を占めるのは、初修外国語としてフランス語を学ぶ1年生で、そこには文系だけでなく、理系の学生も含まれています。また肝心の仏検合格率は、2017年度は全体で8割5分以上と高い水準にあります。

初修外国語の1年生クラスの場合

おもに1年生を対象に週2回行う、基盤教育の授業で教えられることは限られています。そのカヴァーをしてくれるのが仏検です。年2回の仏検受験に学生が自主的に取り組めば、語彙力や聴解力の大幅なアップにつながります。また、資格の取得という具体的な目標をもって勉強できるのも、仏検の大きな魅力です。1年生のクラスでは、春季試験での5級、秋季試験での4級の取得を目指して取り組みます。

1年生の初修外国語クラスの様子山形大学のフランス語教育では、学生が一つの課題に協力して取り組めるような環境づくりを大切にしています。たとえば定期試験では、筆記にくわえて、必ず会話のテストも課していますが、会話のダイアローグは、ペアで練習することを推奨しています。昼休みの教室からは、会話練習をするグループの笑い声がしばしば聞こえてきます。なかには家に帰ってから、スマホを使ってペアで練習しているという学生もいました。語学の学習は孤独だとしばしば言われますが、やり方次第では、集団で楽しく学ぶこともできるわけです。仏検対策も同様で、団体で受験する学生たちは、休憩時間に問題の出し合いをして、互いに協力しながら試験対策を行っています。

また仏検の時期が近づくと、1年生を対象に「仏検直前対策講座」が開かれます。講座は2週に分けて開講され、講師は専任教員が交替で務めます。仏検の試験には、まだ授業では習っていない箇所が含まれます。その部分を補い、合格率を少しでも上げるのがこの講座の目的です。受講は自由ですが、毎年約50名の1年生が、この講座に積極的に参加してくれています。

フランス語のイベント

山形大学では、同じ初修外国語の中国語やドイツ語と比べると、フランス語の履修者はさほど多くはありません。また本学は県内各地にキャンパスが分散していますが、1年生は全学部が一つのキャンパスに集まり、語学の授業を受講します。

これらの条件をいかして、学部や学年の壁を越えて参加できるイベントを、一昨年から企画しています。「パリ祭in山形大」とクリスマス会です。さらに昨年からは、フランス語暗唱コンクールも開催するようになりました。

7月14日のフランス建国記念日には、同僚の柿並良佑先生の弾くギターに合わせて、パリ祭に因んだシャンソンを大合唱したり、フランス語でビンゴゲームを行ったりします。古典的なシャンソンの歌唱は、文章と発音を一致させ、正しいフランス語のリズムを身に付けるのに適していますし、初学者がフランス語の数字を正確に聞き取るのは容易なことではありません。ですので、ビンゴといえどもみな必死です。

暗唱コンクール団体部門で優勝!暗唱コンクールでは、フランスの詩や評論文の暗唱に取り組んでもらっています。個人部門のほかに団体部門も設けて、ペアで練習しやすいようにしています。昨年は21名の学生が参加し、朝日出版社、駿河台出版社、白水社各社の協賛を得て、盛会のうちにコンクールを終えることができました。コンクールには留学帰りの4年生も参加してくれ、1年生はその4年生の発音を聞き、流暢さに驚いていました。いずれは何名かの学生に、学外のフランス語コンクールや弁論大会にも挑戦して欲しいと考えています。

23年生のフランス語専門クラスの場合

本学でフランス語を主専攻として学ぶ学生は、人文社会科学部のグローバル・スタディーズコースを中心に、一学年に5名ほどいます。そのほとんどがフランス語圏への留学希望者です。交換留学先には、ケベックのモントリオール大学(4名)とフランスのアンジェ大学(2名)があります。そして今年度より新たに、パリ・ナンテール大学(2名)との交換留学制度がスタートします。これを機に、フランス語圏からの留学生との交流がますます活発になっていくはずです。

仏検に関しては、専門教育が始まる2年次春から、留学開始の3年次夏までに、準2級が取得できるよう呼びかけていますが、最近では、1年生からフランス語を始めて、2年生までに2級を取得する強者もいます(2016年度の実績は、3級が2名、準2級が1名、2級が1名合格。2017年度は、3級が2名、準2級が2名、2級が2名合格)。

専門クラスの様子

留学希望者は、ネイティヴ講師による会話作文の授業のほかに、1年生の後期から、「留学事前学習」という授業を履修します。この週に1度の授業では、DELFの試験対策を行っています。学年別に2クラスが開講されており、留学開始までにB1の取得を目指しています。最近では語学留学にくわえて、学部専門留学に挑戦する学生が増えてきました。英語でも容易に真似できないことに、フランス語を用いて果敢にチャレンジする姿を見て、とても誇らしいとともに頼もしく感じています。

新たな言語への取り組みは、未知なる世界と自己を発見するための旅のようなものです。そしてその旅の過程を目に見える形にしてくれる仏検は、しばしば単位の取得のみで終わってしまうフランス語の学習に、明確な目的意識を与えてくれます。今後も、一人でも多くのフランス語履修者が、自信をもって「仏検○級取得」と書類に書けるよう、またそれぞれの旅がより素晴らしいものとなるよう、しっかりサポートしていきます。

クリスマス会では「アナ雪」のフランス語版を合唱しました

最後になりますが、サークルやバイト、忙しい授業の合間を縫って仏検の勉強をし、試験日はバスで1時間かけて仙台会場まで赴いてくれる学生たちに、心から感謝したいと思います。


フランス語教師の習い事

竹内 京子(順天堂大学)

フランス語を学ぶことは、フランス語圏の文化も含めて学ぶこと。教授法の研究会では、いかに文化を教えるかについてのアトリエも多い。学生がフランス語やフランス文化のどのような面に関心があり、何を目標にフランス語を学ぼうと思ったかを考えると、自分の知らないことが沢山あることに気付く。それゆえ、フランス語を教え始めてから、様々な習い事をしてきた。食物調理科のフランス語担当時は、フランス料理の授業に参加させてもらい、ワインについて聞かれれば、ワイン教室に通った。服飾デザイン科では、ファッションについての本を読み、色について調べた。教師は教えることによって、学生からもいろいろなことを学ぶ。学内のソーセージ作りの公開講座に参加したり、オペラ座でミツバチを育てていることに驚いたりもした。

今回は、最近の習い事を紹介したいと思う。5年前から順天堂大学のスポーツ健康科学部の授業を担当している。学生は各自、専門とするスポーツに忙しく、年間通して様々な大会に参加している。日本学生ペタンク選手権大会プレ大会フランス語の授業は「初級フランス語会話」(通年)があり、選択科目である。ところが、オリンピックの公用語がフランス語であるからといって、スポーツといえばフランス語という発想はあまり広まっていない。フランスとスポーツ、フランス語とスポーツの関わりを模索するうちに、近年、特に高齢者のペタンク人口が急激に増え、見渡すと町内にペタンクのサークルがある地域が多いことに気が付いた。早速、練習用のボールを買い、授業でペタンクのルールを紹介すると、熱心に取り組む学生が出て来た。

ペタンクの最低限のルールは簡単であるが、細則が沢山ある。実際の試合は審判員がつきっきりではなく、両チームが納得のいくよう確認しながら進め、判定も競技者が行う。判定に困った時に初めて審判員を呼ぶことが多く、競技者もある程度の知識が必要である。まずはルールを知らなくてはと思い、2016年の春休みにC級審判員、初級指導員の講習会に参加し、知識を得た。また、東京のサークルで個人的にもペタンクを始めた。

順天堂大学さくらキャンパスのある千葉県印西市はペタンクの盛んな市でもある。年に2回、6月と11月に市民ペタンク大会が開催される(参加人数は毎回約120名)。フランス語の授業からの流れで、2年前からこの大会に学生とともに参加している。印西市市民ペタンク大会また、日本ペタンク・ブール連盟主催で、昨年、大学生の全国ペタンク大会が東京で初めて開催された。2024年のオリンピックのパリ大会でもし正式種目になった場合に備えてだそうである。2月のプレ大会に順天堂大学の学生も参加した。結果は2勝5敗で7位だったが、とても楽しい大会であった。

こう書くと、肝心のフランス語は? と思われるかもしれないが、ペタンクをやることによって学生のフランスやフランス語に対する関心が高まっているのは確かである。事実、授業中もより集中し、仏検にも沢山の学生が合格した。何のためにフランス語を学ぶかという目標ができたのがよかったのかもしれない。印西市の大会では、フランス語を全く習ったことがない高齢者の方々が、当たり前のようにペタンク用語をカタカナフランス語で使い、素晴らしい投球には「ビヤン!」の掛け声が飛ぶ。また、時には会場でフランス人に遭遇し、自己紹介や授業で覚えた表現が役立つ。こういうことがあると、またフランス語の勉強が楽しくなる。

さらに、学生たちは「フランス語の授業でペタンクを初めて知りました」と会う人ごとに答え、ペタンク大会の参加者にペタンクがフランスのスポーツであることを広めたようだ。こんなにフランス語の用語を使いながら、フランスのスポーツであるということを知らない方も多い。印西市市民ペタンク大会参加者の方々はペタンクに対する熱意のみならず、競技の実力も学生とは比べものにならないほどレベルが高い。ペタンクがフランスのスポーツだということを知って、フランス語に興味を持つということも十分に考えられる。よくペタンクは頭脳勝負のスポーツだから年齢は関係ないといわれているが、フランス語を始めるのも年齢は関係ないだろう、是非歓迎したい。

自分自身を振り返ると、今まで様々なことを雑多にしている。つまり、学生の興味がいかに広いかということの現れである。フランス語という糸でつながったこれらのことを追いかけるか追いかけないかは教師の自由である。でも、追いかけてみると新しいものが見えてくるだけでなく、思いのほか自分も楽しめる。教師の習い事、おすすめである。

忘れてしまいたくないフランス語

2017年秋季5級合格
Nishioka
主婦・大阪府枚方市

試験が終わり、解答用紙を頂いた時の感動は今でも忘れません!!!
自信のなかったヒアリングから答え合わせをしていったのですが、
えっ?えっ?え~~っ? マジで全問正解!!!
まさに、「ありえへん世界」に浸っていました。

一昨年前、挑戦したいことが多過ぎて会社を辞めました。
そして「やりたいことリスト」には当然のように外国語も並んでいました。
今まで色々手を出したんです。
当たり前の英語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ロシア語。。。。

私ってどうしてこんなに、外国語に才能がないのでしょう。
それでも又、性懲りも無く、自己満足を始めたくなるんですよね。

パラパラとめくった枚方市の広報で募集を見つけてしまったんです。
市が開催するお手頃価格の入門コース。
私が参加できる枠はフランス語しかありませんでした。
なんだか、みんなに笑われそうです。
フランス語の優雅な雰囲気は私には絶対合わない!?
(私はノリのいい音楽に合わせて、ラテンダンスを踊る人なんです)

20175001tn01

なんて、思っていたのに
それなのに、ま、格好つけるように始めてしまいました。

そしたら、何と、完全にハマったんです!!
フランス語の音の響きが心地よく、学習することが楽しくなってきました。
外国語はひたすら暗記するだけ、という認識が変わりました。
忘れてしまいたくない外国語になっていったのです。
聞きたい歌も英語からフランス語に変わって行きました♪

今度は絶対脱落したくなかったので、目標を定めたかった。
そんな時にフランス語検定を知ったのです。

最初は5級、とあったので、な~んだ5級やん!
英検3級でも中学生が受けるもんな、と軽く見ていたのですが、
公式ガイドブックを見てビックリ、何もわかりません。
大好きなダンス以上に時間を割いての勉強。周囲も驚いていたことでしょう。

そして、今年の年賀状には「何十年ぶりや~~!! 100点取ったで~」と書いたんです。

 

 

フランス語で広がる世界

2017年秋季2級合格・文部科学大臣賞/ケベック州政府在日事務所賞
伊藤 優莉奈
学生(上智大学)・東京都

20172001yi_01
約2年前、フランス語学科に入学し私のフランス語生活は始まりました。高校では英検準1級やTOEICで925点を取ったり、短期で語学研修に参加したりと、語学が好きでした。もちろんまだまだ英語もレベルアップしなければならないとはいえ、大学では英語に加えて他の言語を専門的に学びたいと思い、なんとなく始めたのがフランス語。こんなに熱中するとは思っていませんでした。しかし勉強すればするほどもっと理解できるようになりたい、もっと話せるようになりたいと思うようになりました。


20172001yi_022017年の夏には1か月間、初めてフランスでホームステイをしました。フランス語漬けの日々を送り、フランスの文化や習慣に直接触れながらの学習は、日本での学習とは違った面白さを感じさせてくれ、意識せずとも自然とフランス語が身についていく感覚を覚えました。フランスにおいてフランス語でのコミュニケーションが成立する嬉しさが、私のモチベーションをさらに高めてくれました。帰国後に自分のフランス語の能力を試したいと思い、仏検2級を受け、無事合格することができました。

フランスで通っていた学校ではフランス語を通してメキシコやドイツ、ロシアなど様々な国の友人ができました。特にアルジェリア出身の友人はフランス語を使ってアラビア語を教えてくれ、私も日本語での名前の言い方や挨拶を教えるというような仲になり、今でもよく連絡を取り合っています。神社や初詣の習慣など、日本の伝統をフランス語で説明することもあるのですが、友人もアルジェリアにおける宗教行事の様子の写真を送ってくれ、宗教の信仰などについて教えてもらううちに、アフリカに対する興味が強くなっていきました。

日本の大学ではフランス語圏のアフリカに関する授業を取っていたということもあり、いつかはアフリカ大陸へ行ってみたいと漠然と思っていたのですが、フランスで仲良くなった友人の話を聞くうちに早くアフリカを直接自分の目で見たいと思うようになりました。20172001yi_03そして大学で募集していた2018年の春に行われるアフリカでのスタディーツアーへの参加を決めました。

そのプログラムは約2週間南アフリカ共和国に滞在するというものでしたが、日本大使館やJICAで職員の方々の現地でのお仕事に関するお話を直接聞き、職場の雰囲気を感じることができて、将来のことを考える上で良い経験となりました。また貧困地区と言われている地域の保育園を訪ねて子供たちと交流し、南アフリカにおける格差を目の当たりにしました。

帰国後は、アフリカの良さを発信したいと思い、共にそのプログラムに参加していたメンバーとアフリカの文化のサークルを立ち上げようとしているところです。また滞在中、現地の大学で南アフリカの経済や政治に関する講義を受けているともっと日本のことも知らなければならないと感じ、福島県へ復興の現状を見に行き種蒔きのお手伝いをしたり、路上生活者におにぎりを配るボランティアに参加したりしています。

20172001yi_04次はフランス語圏のアフリカに行ってフランスとはまた違った雰囲気の中でフランス語でのコミュニケーションに挑戦したいと思っています。今回仏検を受けて2つの賞をいただけたことは、またさらにフランス語の勉強への意欲を掻き立ててくれています。フランス語という枠を超えて様々な体験ができているのはフランス語と出会えたからです。このようにフランス語は私の視野を広げてくれる存在であり続けると思います。


Service Traduction de l’APEF

L’APEF est l’une des premières agences de traduction reconnues par l’Ambassade de France au Japon. Fort de notre grande expérience, nous sommes prêts à satisfaire vos besoins.

L’APEF vous propose des traductions sur différents supports de communication dans divers domaines : non seulement pour les documents habituels pour obtenir des visas*, mais aussi pour la sphère privée ou celle des affaires. N’hésitez-pas à nous contacter pour plus de détails. L’établissement d’un devis est gratuit.

Nos offres de traduction (extrait)

Nos tarifs sont toutes taxes comprises (de 10 %, à partir du 1er avril 2024).

Du japonais vers le français

Copie de registre de l’Etat civil, Acte de naissance,

Fiche d’enregistrement de domicile

Etat civil avant l’informatisation (+1 100 yens)

à partir de 4 400 yens pour 1 personne
(+2 200 yens/pers à partir de la 2e personne)

Attestation de fin d’études

Attestation scolaire

à partir de 4 400 yens

Bulletin, Relevés de notes (jusqu’à 15 disciplines)

à partir de 11 000 yens
(+110 yens/discipline à partir de la 16e discipline)

Attestation bancaire

à partir de 4 400 yens

Certificat d’identité (permis de conduire, passeport etc.)

6 600 yens

Attestation fiscale

à partir de 7 700 yens

Carnet de santé

à partir de 8 800 yens

C.V.

à partir de 7 700 yens

Déclaration de mariage/divorce (format A3)

(+110 yens /mentions supplémentaires)

à partir de 9 900 yens

Certificat de réception de déclaration de mariage/divorce
(format A4)

4 400 yens

Déclaration de naissance / décès (format A3)

11 000 yens

Du français vers le japonais

Diplôme, Attestation

à partir de 6 600 yens

Etat civil (Acte de naissance etc.)

à partir de 6 600 yens

Bulletin, Relevé de notes

à partir de 11 000 yens

● Demande simultanée de plusieurs exemplaires : 550 yens/feuille à partir de 2e exemplaire

● Réduction possible pour la reprise de demande du même document

La procédure de demande

    1. Merci de nous envoyer le document à traduire* par télécopie, par courrier ou par courriel en pièce attachée. Veuillez nous indiquer vos coordonnées (adresse postale, téléphone, courriel etc.) en remplissant notre formulaire de demande ou en nous envoyant un courriel.

      version word Formulaire de demande (Word)   pdf Formulaire de demande (PDF)

      Faites nous parvenir la transcription des noms propres présents sur votre passeport ou votre carte d’identité. Si les noms propres sont en katanaka, indiquez-nous la transcription en alphabet latin, ou s’ils sont en alphabet, merci de nous communiquer la transcription en katakana officiellement enregistrée auprès des autorités japonaises.


      *Pour une traduction assermentée, nous vous prions de nous envoyer l’original.

      N.B. Merci de nous confier les documents préalablement apostillés si besoin.

      Cf) « What is an Authentication (of official seals) / Apostille? » (Informations par le Ministère des Affaires étrangères du Japon, page en anglais)

    2. Nous vous communiquerons le tarif (y compris le frai d’envoi) et le délai par retour de courriel.
      Merci d’effectuer le virement sur l’un de nos comptes suivants :

Sumitomo Mitsui Banking Corporation

Agence : Iidabashi

Numéro de compte : futsu 5061932

Titulaire : Koekizaidanhojin Furansugo Kyoiku Shinko Kyokai

Mizuho Bank, Ltd.

Agence : Kudan

Numéro de compte : futsu 8034171

Titulaire : Koekizaidanhojin Furansugo Kyoiku Shinko Kyokai

  1. Le délai de remise est approx. 5 jours ouvrables après le règlement.
    (5 à 8 jours ouvrables pour les bulletins de notes, lettre de motivation etc.)
  2. La traduction sera envoyée par le Letter pack light ou le Letter pack plus. Gratuit pour la remise en main propres.

    [Attention]Nouveaux tarifs postaux en vigueur à partir du 1er octobre 2024
     En raison d’une hausse des tarifs postaux de la Poste Japonaise, nous vous 
     demandons de verser les tarifs suivants à partir du 1er octobre 2024.
      Le letter pack light : 430 yens      Le letter pack plus : 600 yens

Contact : Miyuki AWANO Section traduction

Association pour la Promotion de l’Enseignement du Français au Japon

Kudan 101 bldg., 1-8-1, Kudan-kita, Chiyoda-ku, 102-0073 Tokyo, Japon

TEL : 03-6268-9534 FAX : 03-3239-3157

E-mail: honyaku@apefdapf.org

5月の大型連休期間の休業についてのお知らせ

 公益財団法人フランス語教育振興協会・仏検受付センターは、大型連休に伴い、5月2日(水)を休業とさせていただきます。5月1日(火)は平常どおり営業し、4月28日(土)~4月30日(月)および5月2日(水)~5月6日(日)を休業期間とします。つきましては、休業期間中にお寄せいただく仏検・翻訳・APEF青山フランス語プロフェショナルコースの各業務についてのご依頼・お問い合わせが5月7日(月)以降のご対応となる可能性がございますことを予めご了承ください。

 ご不便・ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

自分を成長させてくれるフランス語

2017年春季準2級合格
青木 智哉
大学生/高知大学・高知県

私は現在大学3年生です。

フランス語に出会ったきっかけは大学1年生のころ。

高知大学では初年次に第2外国語を1つ選択するのですが、その時に選んだのがフランス語でした。

先生は社会文化面も紹介しながら、フランス語をわかりやすく教えてくれました。これをきっかけに、私はフランス語を自主的に勉強したいと思い、自分に合うフランス語教材を探し、購入。例えば当時使っていた教材『キクタン フランス語』(アルク)では、音楽のリズムでフランス語単語を楽しく覚えることができます。そのため、自身の語彙力が成長し、よりフランス語の授業が楽しくなりました。

私はさらに「フランス語をもっと使えるようになりたい!」と思うようになり、仏検準2級を受験することを決意。準2級に合格するためには、書き取り試験が重要になります。

ライティング力の乏しかった私は、対策として2か月前から『フランス語で日記をつけよう』(白水社)を使って日々の日記をつけ始めました。フランス語の書き言葉は話し言葉とかなり違っており(例えば単純過去)、何も参考にせずに書けるようになるまで2か月程かかりました。しかし、今思えばこのような地道な努力が、自分にとってよい結果をもたらしてくれていました。

結果は見事、仏検準2級合格。また、近い時期に受けたDELF A2試験にも合格しました。 

さらにその2か月後、私は念願の目標であった「仏語圏に行き、生のフランス語に触れる」経験をカナダのモントリオールで実現しました。カナダ、特にモントリオールは、フランス語と英語が公用語となっている都市で、町の皆さんほとんどがフランス語もしくは英語を話せます。フランス語を現地で学びたいけれどコミュニケーションできるかどうか不安という方には特におすすめの場所です。私はホストファミリー、語学学校の友達、ショップの店員、バスの運転手など多くの人々と主にフランス語で交流し、刺激的な毎日を送ることができました。この場所は、私にとって「第2のふるさと」です。街並みの美しさ、人の温かさ、治安の良さ、多文化性、エンターテインメント。私にとっていつか必ずまた訪れたい思い出の場所となりました。

最後に、私にとってフランス語は「自己成長の機会をたくさん与えてくれるもの」。仏検やDELFの試験など、フランス語を通して、たくさんの新たな人々との交流が生まれました。日々の学習の継続が、私のスキルを上げ、そして恐れず自分の目標に向かって行動できる人に変えてくれたのです。



受講登録

受講登録方法

[1] 前学期から継続受講の方は個別にご案内いたします。新規受講を希望される方は 2024年度秋学期  受講者募集のお知らせ をご覧ください。また、 短期集中講座の受講についてはこちら をご覧ください。

[2] お申し込み受付後、ご登録メールアドレスに確認のメールをお送りします。受講クラスや入学金・受講料のお支払い等についてご案内いたします。

[3] メールでのご案内にしたがって受講料を銀行振込にてお支払いください。お支払い期限は原則として初回開講日の10日前です。

< 振込先 >

 みずほ銀行  九段支店(店番号532) (普)1805436

(口座名義)公益財団法人 フランス語教育振興協会 教育口

[4] ご入金確認の後、開講5日前を目処に、受講票を発送いたします。

受講登録に関する注意事項

・いったん納入された入学金はご返金いたしかねます。

・休学をはさんで次年度以降に受講を再開する場合、あらためて入学金をお納めいただきます。

・受講料は所定の期日までに納入してください。入金が確認できない場合、申込が取り消しとなります。

・学期途中で退学される場合、残りの授業回数分の受講料は返金しますが、手数料として1万円を申し受けます。

個人情報の取扱について

入学テスト出願および受講にあたって申込書に記入された個人情報は、 APEFの個人情報保護方針 に準じて取り扱います。

お問い合わせ

公益財団法人 フランス語教育振興協会

APEF青山フランス語プロフェショナルコース担当

〒102-0073東京都千代田区九段北1-8-1 九段101ビル6F

TEL(直通):03-6268-9680 FAX:03-3239-3157

E-mail: cours@apefdapf.org

 
APEF青山フランス語プロフェショナルコースTOP | 講師紹介 | コース・料金 | 受講登録

APEF青山フランス語プロフェショナルコースのご案内

2024年度も「通訳者養成コース(本科)」は、青山学院大学の施設とオンラインシステムZoomを使用し、フレキシブルな授業形態を目指す「*ハイブリッド授業(ハイフレックス型授業)」の形式で開講します。「通訳者養成コース(準備科・基礎科)」「翻訳コース」についてはZoomによるオンライン授業のみの開講となります。

*ハイブリッド授業(ハイフレックス型授業)とは? 1つの授業を、対面方式とオンライン方式で同時に行う授業方法です。講師は対面で授業を行い、受講生は教室で授業に参加するか、リアルタイムで遠隔からオンライン授業に参加するかを選ぶことができます。教室で参加する方とオンラインで参加する方が、同じ授業を同じタイミングで受講し、相互にコミュニケーションが取れるシステムです。

aogaku001 フランス語は世界で30か国以上において公用語として認められており、話者の数は2億人を超えています。とりわけアフリカ諸国における顕著なフランス語使用状況からみて、高度なフランス語を使用することのできる日本人を養成することは、フランス語教育の振興だけでなく、フランス語文化圏との交流をさらに高いレベルで進めるうえで必要なことです。

公益財団法人フランス語教育振興協会(APEF)は、1981年の創設以来、実用フランス語技能検定試験(仏検)を実施し、受験者は95万人を超えています。そのうち仏検1級受験者は29,534名、合格者は2,935名、準1級受験者は43,680名、合格者は8,646名(2023年度まで)を数えています。この数字は10,000人を超える方がフランス語の実用技能においてきわめて高いレベルに達したことを示しています。APEFは、1級・準1級合格者がさらにその先のレベルを目指し、広くフランス語文化圏で活躍するためのフランス語のスキル獲得の機会を得るために、2018年4月より青山学院大学と協定を締結して、「APEF青山フランス語プロフェショナルコース」という教育事業を発足させました。

青山学院大学のご理解のもと、APEFが目指した高度なフランス語使用者養成の機会を確保することができました。経験豊かな講師陣と熱心な受講者そしてAPEFスタッフの共同作業の結果、これまで優れた実績を上げることができました。さらに、2021年4月からは青山学院大学文学部フランス文学科との協定に切換えて本コースを継続することが決まり、大学と大学院のカリキュラムとつながる新しい試みができるものと期待しています。

aogaku002 青山学院大学青山キャンパスは渋谷駅と表参道駅から近く、きわめて利便性の高い場所にあります。また、本コースの「通訳者養成コース」は、同大学の同時通訳者養成に対応した最新のシステムを備えて教室で行われます。

このコースは、通訳者養成コース(準備科・基礎科・本科の3クラス)、翻訳コース(基礎科・本科の2クラス)からなり、フランス語を日本語に、日本語をフランス語に通訳あるいは翻訳する能力をプロフェショナルレベルに高めることを目的としています。そのために、現在フランス語会議通訳者として第一線で活躍している講師陣を招きました。

コースの概要と受講レベルのめやす

2コース5クラスと短期集中講座を開講します。

通訳者養成コース準備科 *オンライン授業

レベルの

めやす

仏検2級・準1級/ DELF B1・B2 定員 15名 講師

菊地歌子、Eliane Cloose

寺嶋美穂

本格的な通訳訓練を始める前の準備講座です。動画を使った通訳練習(仏→日)や、短文の翻訳練習(日→仏)を取り入れながら、関連する文法演習と派生する語彙の整理、聞き取り練習とフランス語らしい的確な表現力を養成し、通訳に必要な基礎を強化します。
通訳者養成コース基礎科*オンライン授業

レベルの

めやす

仏検準1級/ DELF B2以上 定員 15名 講師 三浦信孝、Catherine Ancelot 宇都宮彰子、小林新樹
通訳者養成コース本科*ハイブリッド授業8回、オンライン授業7回の予定 

レベルの

めやす

仏検1級/ DALF C1以上 定員 10名 講師 三浦信孝、Catherine Ancelot 宇都宮彰子、小林新樹
ニュースや講演などを素材に仏日と日仏の両方向で逐次通訳の訓練を行います。要約練習、ノートテーキングやサイトトランスレーション、ゲストスピーカーを招いてのライブ通訳訓練を含みます。基礎科はエスコート通訳レベルをめざし、本科は会議通訳者をめざします。
翻訳コース基礎科 *オンライン授業 

レベルの

めやす

仏検2級/ DELF B1以上 定員 8名 講師 小野潮、Catherine Lemaitre
翻訳コース本科 *オンライン授業 

レベルの

めやす

仏検準1級/ DELF B2以上 定員 8名 講師 三浦信孝、Rodolphe Diot
新聞・雑誌の記事などを素材に仏日と日仏の両方向で基礎的な翻訳技術の訓練を行い、本科ではさらに高度な翻訳技術を磨きます。毎週課題翻訳を提出してもらい、次回講師が添削し模範訳例をつけて返却します。翻訳には文法と語彙の知識だけでなく広い教養と専門知識、調査能力が必要です。
「Le Mondeの経済記事精読」 *オンライン授業

レベルの

めやす

仏検準1級/ DELF B2以上 定員 15名 講師 小林新樹
精読により、仏語センテンスの趣旨を具体的につかむ意義を実感してもらい、自ら実践できるようになることをめざします。
 

講師紹介

主任講師 三浦 信孝  MIURA Nobutaka

profil_miura 担当クラス:通訳基礎科・本科/翻訳本科

1945年盛岡市生まれ、東京大学教養学科フランス科卒、同大学院仏文科博士課程満期退学、現在は中央大学名誉教授、日仏会館顧問。1970年代6年半のパリ大学留学時代にフランス語通訳を始め、帰国後は大学教師を本業としながらフランス語会議通訳の第一線で活躍。1980年から東京日仏学院でフランス語通訳の授業を担当、1990年から最近までサイマル・アカデミーでフランス語コース主任講師を務めた。 著書に『現代フランスを読む:共和国・多文化主義・クレオール』、編著に『日仏翻訳交流の過去と未来』など。フランス語論文多数。APEF青山フランス語プロフェショナルコースでは、通訳と翻訳の授業を担当する。通訳はoralからoral, 翻訳はécritからécritへの転換作業だが、両方を学ぶことで相乗効果が出ると信じている。

 

カトリーヌ・アンスロー ANCELOT Catherine

profil_ancelot 担当クラス:通訳基礎科・本科

1983年パリのINALCO(国立東洋言語文化研究大学)修士卒、東京在住30年、日仏会議通訳の第一線で活躍し、井上靖や遠藤周作、円地文子などの文芸翻訳も手がける。1998年丸谷才一『たった一人の反乱』の仏訳で野間文芸翻訳賞を、2015年芥川龍之介の短編集『馬の脚』の仏訳で小西財団の日仏文学翻訳賞を受賞した。1994年から外務省のキャリア外交官のためのフランス語通訳研修にて講師を担当、現在に至る。授業では日本のニュース解説やトピックスを取り上げフランス語に通訳する。フランス語の正確さと分かりやすさにこだわりながら、基本的な語彙、専門用語、時事問題の基礎知識を身に着けていくことに焦点を当てる。授業で扱うテーマに関して事前に授業案内でお知らせしたうえで関連の新聞記事やリンク等で予習をしてもらい、クラスで録音音声や受講生による日本語の発表を使いながら日本語からフランス語への通訳の訓練を行う。

 

小林 新樹 KOBAYASHI Shinju

profil_kobayashi 担当クラス:通訳基礎科・本科/Le Mondeの経済記事精読

理学博士(数学)。第二外国語に選んだ仏語に強く惹かれ、某大学在職中に念願のフランス留学を果した際には、数学より仏語学習に没頭。不惑の年を以て通訳に転身し、改めてパリ第三大学に留学後、同時通訳者として活動(詳細は こちら )。仏語の発言を聞いた際、その趣旨が明確につかめれば分かり易い日本語にできます。しかし実際には、既知の単語が並んでいると何となく理解した気になり、具体的に何を言いたいのか把握しないまま訳してしまうことがあります。その時、訳文はメモした単語の訳語を組み合わせただけになり、聞き手の頭にすんなり入るものとは言えなくなります。授業では、 Le Monde 紙の経済記事を精読し、「趣旨を具体的に把握する」とはどういうことか、実例によって体験していただきます。それをヒントに、日頃の学習でも具体的な趣旨を把握するよう心掛け、聞き手に分かり易い訳をアウトプットできる通訳になってください。

 

宇都宮 彰子 UTSUNOMIYA Akiko

profil_utsunomiya 担当クラス:通訳基礎科・本科

サイマル・アカデミー フランス語コース受講をきっかけに通訳への関心が高まりパリに留学。パリ政治学院Certificat d’Etudes Politiques取得後、パリ第三大学の通訳翻訳高等学院Ecole Supérieure d’Interprètes et de Traducteurs (ESIT) で学ぶ。1999年同校卒業と同時に通訳業に従事し、フランス語会議通訳の第一線で活躍。大学等で通訳教育にも携わる。本コースでは、主にフランス語から日本語への通訳演習を担当。的確な要点把握と迅速で簡潔明瞭な訳出を目指し、そのために必要なプロセス解説と実践練習を行う。フランス語の聴解と並んで重要となる日本語の語彙や表現力強化にも取り組みたい。本科では、同時通訳練習も取り入れる。

 

菊地 歌子 KIKUCHI Utako

profil_kikuchi 担当クラス:通訳準備科

1974年朝日新聞主催フランス語弁論大会で優勝し、1975年からモンペリエ大学で教師養成コース及び学部、ストラスブール大学で修士課程まで、4年間留学。帰国後、1986年にストラスブール大学で音声学の博士号を取得。同時期にフランス語通訳業を始め、日仏会議通訳の第一線で活躍を続けている。フランス語教育では、2009年4月から2016年3月まで関西大学外国語学部教授。現在、同名誉教授。アテネ・フランセ講師として、初級の基本から上級の通訳・翻訳および教授法を担当している。授業では、ある程度長い期間話題になりそうなテーマを中心に、文字資料で構文把握の確認、語彙や背景知識を準備する。次に同じテーマで、France 2 のニュースを日本語に訳す練習をする。この過程ではメモの取り方を練習しながら、特に文脈に合った語彙の選択や日本語の明瞭さなどに注意して訳す。並行して、基本的な表現を素早く正しく日仏双方向で訳す練習や、間違いやすいフランス語の表現や基本動詞の使いかたなどの確認をする。

 

永見 文雄 NAGAMI Fumio

image_en_attente 担当クラス:翻訳本科

1947年生まれ。東京大学教養学科卒、同仏文大学院博士課程中退。フランス政府給費留学。東京大学文学部助手などを経て、1990年4月から2018年3月まで中央大学文学部教授。現在、同名誉教授。2006年4月から2年間パリ国際大学都市日本館館長。 専門は18世紀フランス文学・思想史。著書に『ジャン=ジャック・ルソー-自己充足の哲学』、『菩提樹の香り-パリ日本館の15カ月』ほか、共編著に『ルソーと近代』、訳書にJ=J・ルソー『ポーランド統治論』、同『フランキエール氏への手紙』を初め、シャップ、プレヴォー、リュスタン・ド・サンジョリ、テラソン、コワイエほか、共訳書にP・ゲイ『自由の科学』、J・ドリュモー『恐怖心の歴史』、B・ベルナルディ『ジャン=ジャック・ルソーの政治哲学』。

 

小野 潮 ONO Ushio

担当クラス:翻訳基礎科

1955年生まれ。東北大学仏文学専攻卒、東北大学大学院仏文専攻博士課程満期退学。石巻専修大学、北海道大学助教授を経て1999年より中央大学文学部教授。NHKまいにちフランス語講師(2009~2011年)。パリ国際大学都市日本館館長(2015~2017年)を務める。専門はフランス文学、とくにスタンダール。著書に『知っておきたいフランス文学』(明治書院)、『対訳《赤と黒》』(白水社)など。訳書にトドロフ『善のはかなさ』『屈服しない人々』(新評論)、『越境者の思想』『バンジャマン・コンスタン』『異郷に生きる者』『文学が脅かされている』(法政大学出版局)、ドリュモー『地上の楽園』『千年の幸福』(共訳、新評論)、マルク・フェロー『戦争を指導した七人の男たち』など多数。授業では翻訳基礎科を担当し、多彩な文章を読み解いていきます。とくに多様な用法を持った言葉をどのように区別しながら文章を読み進めるかに力点を置いて、解説を進めていきます。

 

エリアーヌ・クローズ CLOOSE Eliane

担当クラス:通訳準備科

Née à Paris, titulaire d’un master de Français Langue Étrangère et de gestion. Professeur de français au Japon dans plusieurs universités depuis 1989, spécialiste des affaires, en charge de cours de traduction depuis 1996, et jury d’examen de Delf et Dalf. Auteure du Français du Monde du travail, manuel de français des affaires. Mon enseignement repose sur les techniques d’écoute du français (phonétique), et la coordination de tous les outils (l’écoute, les connaissances grammaticales, le vocabulaire mais aussi la logique et l’imagination) pour pouvoir réussir à comprendre même ce qu’on n’a pas appris !

 

カトリーヌ・ルメートル LEMAITRE Catherine

担当クラス:翻訳基礎科

Au Japon depuis une vingtaine d’années, Catherine Lemaître est éditrice, traductrice et enseignante de FLE. Elle a traduit plusieurs livres sur la culture japonaise en français dont 「和食宝典」(Le grand livre de la cuisine japonaise, Ed. du Chêne et 「日本の庭と盆栽」(Jardins et bonzaïs japonais, Ed. de Paris). Elle est également l’auteur de「教室の中のアート」(Art en cours, 集英社・日仏学院) et de Japon (Ed. du Chêne, coll. Grands Voyageurs). Elle enseigne l’art de traduire depuis 2009 ans. Sa devise est “Traduire c’est écrire.”

 

ロドルフ・ディオ DIOT Rodolphe

image_en_attente 担当クラス:翻訳本科

2016年、日本語の1級教員資格(アグレガシオン)を取得後、日本における書写・書道教育に関する研究論文を母校のパリ国立東洋言語文化研究所(INALCO)に提出し、博士号を取得。 また、お茶の水女子大学や立教大学を始めとして、20年以上大学のフランス語教育に従事しています。 翻訳歴も長く、これまで手がけた文章は岡倉天心や辻井喬のエッセイからアイヌ民謡などまで多岐にわたっており、目下、辺見じゅんの『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』のフランス語訳に取組中です。 授業ではニュース記事を中心に和文仏訳の練習を重ねていきます。

 

寺嶋 美穂  TERASHIMA Miho

寺嶋美穂先生担当クラス:通訳準備科

フランス生まれ。幼稚園から大学院までフランスで教育を受ける。2007年パリのINALCO (国立東洋言語文化研究大学) 日本語学科及び国際関係学士卒。パリ第三大学の通訳養成高等専門職課程 Ecole Supérieure d’Interprètes et de Traducteurs (ESIT) で通訳を学び、2012年に翻訳科修士卒。2017年より日仏会議通訳・翻訳業を始める。

   
APEF青山フランス語プロフェショナルコースTOP | 講師紹介 | コース・料金 | 受講登録

2019年度春季試験 パリ会場での受験について

2019年度春季試験 パリ会場での受験について

cyclistes
仏検はフランス・パリ会場でも実施されています。
春季に1級・2級・3級秋季に準1級・準2級を受験できます。
1次試験、2次試験のいずれかのみをパリ会場で受験することも可能です。
ただし、検定料や1次試験開始時刻が日本国内とは異なります。
お申し込みの前に十分ご注意ください。

実施級

 1級 2級 3級 ※2019年度秋季試験では準1級・準2級が実施される予定です。

試験日程・会場

1次試験

2019年6月16日(日)

1級 8:30 〜 11:302級 8:30 〜 10:553級 9:00 〜 10:15

会場(予定) : パリ・デカルト大学
       
Université Paris Descartes (Site COCHIN)
        24, rue du Faubourg Saint-Jacques 75014 PARIS

※注意 パリ・デカルト大学には複数の校舎があります。住所・番地をよく確認のうえご来場ください。

2次試験

2019年7月21日(日)
集合時間は受験票(1次試験結果通知)に個別に記載します。

会場(予定)
: パリ国際大学都市 日本館
        7C, Boulevard Jourdan 75014 PARIS

検定料

1級 13,000円2級 9,000円3級 7,000円

※上記価格は2019年度春季時点でのものです。2019年度秋季から検定料は改定されています。
* 1次試験、2次試験のいずれかのみをパリ会場で受験する場合でも、上記検定料が必要です。
* ユーロ建て小切手・為替等でのお支払いは受けつけられません。
* インターネット申込で日本国外のカードをご利用の場合、引き落とし金額は各国通貨に換算されます。

出願方法・受付期間

願書でのお申し込みは仏検受付センターへの郵送のみ受けつけます。
出願方法と受験の流れで大まかな流れをご確認のうえ、お申し込みの際は以下の点にご注意ください。

注意事項

  インターネット申込 願書郵送申込
検定料
納入方法
クレジットカード

※決済方法選択画面で「クレジットカード」を選択
※日本国外のカードをご利用の場合、各国通過に換算された金額が引き落とされます
郵便振替または銀行振込

※書店・生協ではお支払いいただけません
出願締切 5月22日(水) 日本時間23:59 5月15日(水) 日本国内の消印有効
※願書提出先:仏検受付センター
※国外からの投函時は5月15日(水)必着

各種案内・通知の発送予定日

パリ市内から発送いたします。未着のお問い合わせは仏検事務局までお寄せください。
合格証書は最終合格者にのみ発行されます。
インターネット申込ご利用時の合否結果閲覧期間は日本国内と同じです。

案内・通知発送予定未着問い合わせ期間
1級 2級 3級受験票 6月7日(金) 6月10日(月)〜 6月14日(金)
1級 2級1次試験結果通知 7月15日(月) 7月17日(水)〜 7月19日(金)
3級最終結果通知
合格証書
7月22日(月) 7月29日(月)〜 8月2日(金)
1級 2級最終結果通知
合格証書
8月12日(月) 8月19月(月)〜8月23日(金)

お問い合わせ

公益財団法人フランス語教育振興協会 仏検事務局 
      ※在仏日本人会へのお問い合わせはご遠慮ください。
TEL : +81-(0)3-3230-1603 MAIL : paris@apefdapf.org
受付時間 : 月〜金(祝祭日を除く) 日本時間 9:00 〜 17:00

第24回 時制を「視点」で整理してみよう(2) (中級からその先へ)

大阪大学准教授 林 千宏

前回は「視点」を中心に、現在時制、過去時制を整理してみましたが、今回は「未来」も含めて整理してみます。まずは、前回の図をもう一度見ておきましょう。

fig05_pc&pqp500x150

この「過去」に対し、今回は「未来」も含めて整理してみます。

                

「未来」は現在の視点から、これから起こるであろう出来事に思いをはせます。

フランス語の単純未来形の語幹は、多くの動詞では不定詞の語末 -r(ただし -re の場合 e を省く)と形が同じですが、一部の動詞については特有の語幹がありますね。これは覚えておきましょう(未来以外でも使えるからです)。

例えば finir は

je finirainous finirons
tu finirasvous finirez
il finirails finiront
elle finiraelles finiront


そして活用語尾(特にの部分)ですが、一見して何かに似ていますね。そう、avoir の直説法現在形です。もちろん、nous, vous の語尾は違いますが、他は全く同じです。次の問題を試しに解いてみましょうか。


(1)   – Tu resteras longtemps ici ?
        – Je ( partir ) quand la pluie s’arrêtera. (17春)

(2)   – Il pleuvra demain ?
        – Non, il ( faire ) beau. (15秋)
 

(1) 答えは partirai。「君は長いことここにとどまるの?―雨が止んだら出発します。」ですね。現在の視点から見て「雨がやむ」「出発する」の両方とも未来です。ここは難しく考える必要はありません。

そして、
(2) は fera です。「明日雨がふるかな?―いや、晴れるよ。」というやり取りです。この文章でも「雨が降る」「晴れる」両方とも現在から未来に思いをはせるわけで、未来形が正解となります。faire などの不規則な未来形語幹は覚えなくてはなりません!

                

さらに未来のある時点にすでに完了した出来事を述べるときには?

このあたりから記憶があやしくなる方も多いかと思います。そして実際のところ、仏検の3級で問題となることもめったにありません。「じゃあ私には必要ないか」と、読むのをやめようと思ったあなた!ちょっと待ってください!!フランス語の時制で混乱してしまう、という原因の多くは、「中途半端に知識を持っている」ことに由来します。初級の授業で、最後の方にとりあえず習った、というその「とりあえずの知識」が腑に落ちないまま他の知識と混ざることが、混乱の原因のひとつです。ですから、この機会に、ぜひ視点を中心としたフランス語の時制の大まかな「見取り図」を頭に入れておくことをお勧めします!それにここまでついて来られたあなたには、まったく難しくないはずです。

では気を取り直して、「未来のある時点にすでに完了した出来事を述べるときには?」

初級の授業でも聞いたことがあるかもしれませんね。これは「前未来」という時制です。活用形は?そう、

avoir, être 直説法単純未来形+過去分詞

です。

ここで、視点を中心に据えた現在と半過去の図に戻ってみましょう。
未来形、前未来形を書き込むと次のようにあらわせます。

fig07_futur&futuranterieur500x100

例文としては次を見てみてください。

Tu sortiras quand tu auras fini tes devoirs.
「宿題を終えたら、出かけてもいいよ」 

「出かける」という時点までに、「宿題を終えてたらね」という話ですね。2つの行為の時間関係はこの場合、分かりやすいのではないでしょうか。

Pourras-tu venir me voir quand tu auras fini ton travail ? 
「仕事を終えたら、会いに来てくれる?」 

こちらも「仕事を終える」と「会いに来る」の時間関係は分かりやすいですね。

では、ここで質問です。過去のある時点から未来のことを述べるとき(過去における未来)、どんな時制を使うのだったか覚えていますか?
答えは、「条件法現在」です。では、条件法現在の活用形は?

正解は

直説法単純未来の語幹+直説法半過去の活用語尾

です。

なんでこんな組み合わせなんだ!と思われた方も多いでしょうが、この半過去の視点を中心に据えた時間軸を参照すると、理由もわかるような気がしませんか?

fig08_conditionnelpresent500x150

例文を見くらべてみましょう。
まずは現在の視点の文章から、

Je suis sûr que tu finiras ton travail ce soir.
「君が今晩仕事を終えることを僕は確信してるんだ」

こんなことを言われるとすごいプレッシャーですが、内容はさておき、今晩という未来に、君が仕事を終えることを、「僕」が現在の視点から確信しているということです。

それが次の文章では時制が変わり、意味も変わってきます。

J’étais sûr que tu finirais ton travail ce soir-là.
「君がその晩に仕事を終えるだろうって僕は確信してたよ」

こう言われると、「で、どうなったの?」と続きが気になりますが、それは自由に想像してもらうとして、私が確信していた、という過去の状態があり、その過去の視点からの「未来」が「その晩」ce soir-là ですね。この2つの文章、特に下線部を見くらべてみてください。現在の視点、半過去の視点が実感できませんか?!

つまり、直説法単純未来は、

単純未来の語幹+未来の活用語尾(≒ avoir の直説法現在形)

過去における未来は、

単純未来の語幹+半過去の活用語尾

なのです。

では、「過去のある時点からみた未来にすでに完了していること」(過去における前未来)は?これまでは答えが出るまで数秒かかった人も、上の図を見れば一目瞭然ですね。そう、「条件法過去」です。形は、

avoir, être 条件法現在+過去分詞

です。

fig09_conditionnelpresent&passe500x100bis

例えば、 

Il m’a dit qu’elle viendrait quand elle aurait fini son travail.
「彼女は仕事を終えたら来るだろうって彼が僕に言ったんだ」

それで彼女は来たんでしょうか?来なかったんでしょうか?なんだか複雑な状況ですが、注目していただきたいのは3箇所の下線部です。主節の動詞 dire には複合過去、従属節の1つ目の動詞 venir は条件法現在(過去における未来)、2つ目の動詞 finir には条件法過去(過去における前未来)が用いられていますね。

この文では過去のある時点、すなわち「彼が僕に~と言った」時点は複合過去で設定されていますが、過去における未来・前未来という時制の性質を考えると分かりやすいように、一旦過去のある時点が設定・提示された後は、従属節中ではやはり話し手の視点は過去のある時点に移動し、そこから未来に思いをはせているというわけです。

                

いかがでしょうか。ここで、これまでの時制をまとめてみましょう。視点を中心にすえたパラレルな時間軸を並べると次のようになります。

fig10_revision_560x200ter

こうしてみると、フランス語の時制8つが、活用形も含め、ひとまず整理できたような気になりませんか?!

「それでも、直説法現在の活用や、過去分詞や、半過去の活用語尾、未来形の語幹は覚えないとダメなんですよね?」

その通り!あなたが整理して挙げてくれたその4つは結局のところ、絶対に覚えなくてはなりません。でもその4つを使ってこれだけの時制をつくれるのです!そして覚えるポイントがこの4つだとわかっていれば、存在しないつづりを書いてしまう確率も減るはずです。

あとは、ペンを持ちひたすら書いて覚えましょう。そしてペンよりスマホ、キーボードを触るほうが好きな人は、フランス語活用暗記サイト「活用虎の穴」(http://www.lang.osaka-u.ac.jp/~iwane/katsuyo/index.html)で!

 

*ここまで読んでくださった方々の中には、上の見取り図でもうまくイメージしにくい例文に出会ったことがあるという方や、「じゃあ単純過去はどうなるの?」という疑問を持った方がいるかもしれません。そうした方はぜひ以下の本を読んでみてください。いうまでもなく上に挙げた説明も、あくまで1つの捉え方ですから、他の観点からの説明をあわせて読むことでより一層時制の理解が深められます。また単純過去などは仏検で直接活用を問われることはありませんが、フランス語の時制すべてを総合的に理解することは、個別の時制の理解にも役立ちます。こうして時制を勉強した後は、ぜひフランス語のテクストを読んでみてください。きっとこれまでよりも奥行きを持って情景が目に浮かぶはずです!

東郷雄二『中級フランス語 あらわす文法』白水社、2011.
曽我祐典『中級フランス語 つたえる文法』白水社、2011.
西村牧夫『中級フランス語 よみとく文法』白水社、2011.
井元秀剛『中級フランス語 時制の謎を解く』白水社、2017.

第23回 時制を「視点」で整理してみよう(1) (中級)

大阪大学准教授 林 千宏

仏検3級の筆記試験 [2] は、設問文の内容に適した形に動詞を活用させる問題です。
きわめて基本的なテスト形式といえますが、毎回正答率は高くありません。
3級受験ということは、ひととおりフランス語の法と時制は学習したものの、まだ整理できていない。語幹と活用語尾の組み合わせも頭の中でごちゃごちゃ。そんな感じではないでしょうか。その結果フランス語に存在しないつづりの活用を書いてしまっている人も見かけます。これを最低限の努力で覚えられないか?はだれもが考えることですが、なかなかこれ!といった方法はありません。結局はコツコツと地道に覚えるのが一番です。でもそんなことを言ってしまうと身も蓋もありませんね。そこで、たくさんある時制を少し整理してみましょう。そうすればちょっとぐらい覚えるのが楽になるかもしれません。

                

フランス語の時制を初めて学ぶ多くの方が最初に戸惑うのが過去時制、特に半過去でしょう。半過去の形はさすがにもう覚えているでしょうか。直説法現在 nous の語幹に半過去の活用語尾をつけるのでしたね。例えば finir「終える」は

finir → nous finissons

je finissaisnous finissions
tu finissaisvous finissiez
il finissaitils finissaient
elle finissaitelles finissaient


そして用法は、一般的に教科書では次のように説明されています。

「過去のある時点、時期における状態や、過去のある時点、時期において進行中の出来事を表す」(『新・フランス語文法 三訂版』、朝日出版社、2017)

また「反復」「過去の習慣」といったキーワードも加えて説明されます。おそらく多くの方はこのような説明を聞いたのではないでしょうか。

こんな説明を聞いた後でも、複合過去とどう違うのかわからない、実際に過去の文章ではどちらの時制を使えばよいかわからない、という方も多いようです。

そんな方に紹介したいのが、「視点」を中心とした時制のとらえ方です。

たとえばあなたが直接法現在という時制を用いて語るとき、あなたの視点は現在(A)にあります。目の前で展開されるように語る。それが現在の視点です。

fig01_present500x100

それに対して、半過去はあなたの視点を過去のある時点(B)に移動させ、そこで目の前で展開される事態を語る、そんな時制なのです。つまり「過去における現在」のような感じですね。

fig02_A&B_imparfait500x100

現在目の前のことがらを述べる、というのは、それまでにどうであったか、あるいはこれからどうなるのか、にはとりあえず注目はせず、目の前の事態を述べるということですよね。
半過去もそれと同じです。過去のある時点に視点を持っていく。そして目の前の事態がいつから始まったのか、あるいはいつまで続くのかについてはとりあえず注目せず、進行中の事態を目の当たりにしているような時制なのです。例えば次のような状況が目に浮かぶでしょうか。

Quand je suis sorti de l’église, il neigeait.
「私が教会から出ると、雪が降っていた」

ふと街角で目にとまった教会に入ってみると、薄暗い中に思いもかけずきれいなステンドグラスが浮かんでいた、なんて状況がフランスを旅行しているとよくあります。しばらく見とれた後、小さな扉をふたたび開けて暗い教会から出ると外は雪がふっていた、という状況ですね。雪がいつから降っていたのか、それがいつまで降り続けるのか、には触れず、教会から出てきた時点の情景を切り取ったような文章です。こんな感じで半過去が使われます。

このような2つの時制、現在と半過去を、「視点」を真ん中に置き、上下に並べてパラレルに考えてみましょう。

fig03_parallelesAB500x150

ともに「目の前」の出来事を述べるのですが、一方は現在(A)であり、もう一方は「過去のある時点」(B)です。

では複合過去は?これは現在の視点から、過去を振り返った時制です。つまりあなたの視点はあくまで現在にありつつも、現在から過去を振り返って過去のことを述べています。図示するなら以下の通りです。

fig04_passecompose500x150

ちなみに複合過去の形は

avoir, être 直説法現在形+過去分詞

です。この avoir, être の活用形が現在形ですので、その人の視点の位置(時点)が現在というのも覚えやすいですよね。

このように、現在と複合過去は同じ現在の視点を中心とした時制です。それに対して、半過去という時制は、過去の出来事ではあるものの目の前で行われている、進行中・継続中の出来事を見ているような状態です。だから、いつから始まったのか、あるいはいつまで続くのか(完了するのか)は見ていないのです。

この半過去の視点を中心とすると、この視点からさらに過去を振り返るのが、大過去時制ということになります。

fig05_pc&pqp500x150

こうしてみると、複合過去と大過去がパラレルにとらえられますね。ここで大過去の形を思い出しておきましょう。大過去時制は

avoir, être 直説法半過去形+過去分詞

です。この時制でも avoir, être の活用形が視点の位置(時点)と一致しており、覚えやすいですね。いかがでしょうか?過去時制について少しは頭が整理されたでしょうか?

                

では、ここでちょっと練習です。たとえば以下4問はいかがでしょうか。


(1)   – Je ne retrouve pas mes stylos.
        – Ta mère les ( mettre ) sur la table tout à l’heure. (16春)

(2)   – Il dort encore ?
        – Oui, il ( se coucher ) très tard hier soir. (17春)

(3)   – Il est parti pour Tokyo.
        – Ah bon ? Je ( croire ) qu’il était à Paris. (16秋)

(4)   – Hier midi, vous étiez fatigués, n’est-ce pas ?
        – Oui, nous ( marcher ) toute la matinée. (15秋)
 

まず(1)。答えは a mis ですね。「僕のペンがみつからないんだ。―君のお母さんがさっきテーブルの上に置いたよ。」tout à l’heure「さっき」という言葉がポイントですね。これは現在の視点から見ての「さっき」です。そんなわけで複合過去が正解です。

(2) s’est couché です。「彼、まだ眠ってるの?―うん、昨日の晩遅く寝たからね。」これも très tard hier soir「昨日の晩遅く」という現在の視点から見ての語がありますね。さらに「寝る」という動作が始まる点をはっきりと示す必要がありますので、複合過去が正解になります。半過去だといつから寝始めたのかが不明です。

(3) 正答は croyais。「彼は東京に出発したんだよ。―ああそうなの?パリにいるんだと思ってた。」ここで最初から示されている動詞の時制は2つ。Il est parti pour Tokyo「彼は東京に出発した」と、il était à Paris「彼はパリにいた」です。問われているのは Je ( croire )「私は思う」ですから、「彼は東京に出発したんだよ。―ああそうなの?彼はパリにいたんだと(私は)思う」ではなくて「―ああ、そうなの?彼はパリにいるんだと(私は)思ってた」が自然に成立するやり取りですね。つまり、「あなたにそのことを聞くまでの状態」を私は伝えるわけですから、半過去となります。ちなみにこの文のように主節も従属節もともに半過去時制の場合、従属節中の半過去はやはり「過去における現在」の意味です。

(4) 正答は avions marché です。「昨日のお昼、君たち疲れてたよね?―うん、午前中ずっと歩いてたんだ。」という意味です。話されているのは、昨日の正午の時点での「君たち」の様子(半過去)で、その理由として「午前中ずっと歩いてたんだ」ですから、それよりも前の出来事を語ることになり、大過去という訳です。ちなみに marcher は助動詞として avoir を用いることも確認しておきましょう。

ちょっと長くなりましたので今回はここまで。次回は未来について考えます。

フランス語は自分を発見させてくれる言葉

2017年春季準2級合格
久保 結子
中学生/カリタス女子中学校・神奈川県


私は小さい頃、どちらかというと恥ずかしがり屋でしたが、唯一歌ったり踊ったりすることが好きでした。

とりわけ、フランス語の本や歌が大好きでした。
フランス語の歌は、そのなんだかふしぎな発音や繰り返しがおもしろくて、母とよくふざけながら歌っていたことを覚えています。

「イレテ タン プーティナビーエ 〜」が、
《 Il était un petit navire… 》だったり、
「ソーンネレ マティーヌ 〜」が、
《 Sonnez les matines… 》のことだったと知ったのは、つい最近のことです。

「フランス語をしゃべれるようになりたいなあ」とはじめて思ったのは、9歳のとき、ルルドへ行ったときのことでした。
世界中の言語で、一日中祈りの言葉が流れる村で、私は唯一知っていたフランス語の「あめのきさき」を歌いながら、たいまつ行列に参加しました。

Ô Vierge Marie
Le peuple chrétien
À Lourdes vous prie
Chez vous il revient.
Ave, ave, ave Maria…

スペインとの国境、ピレネーの山々にこだまするハーモニーの美しさと、村中にあふれる清らかな雰囲気に、心が震えるような感動を覚えました。

私のフランス語の原点は、ここにあるような気がします。

20172101yk0001

その後、仏検やDELFに少しずつ挑戦しはじめた頃、私の家にリヨンから高校生がやってきました。

彼女はお姉さんのように接してくれ、数学を教えてくれたり、ヴェルレーヌの “Chanson d’automne” やアポリネールの “Le Pont Mirabeau” などの詩を暗唱してくれたりしました。

私は彼女と過ごすうちに、小さい頃に感じたフランス語の魅力を思い出しました。
フランス語にはなぜ、発音しない文字がたくさんあるのだろう?などとふしぎに思っていましたが、それがまさに独特の情感を表しているのではないかと、彼女の静かな、流れるような話し方を聴いていて気が付きました。

とはいえ、フランス語の勉強はどんどん難しくなり、複雑な文法や時制にうんざりしてしまうこともあります。
そんなとき、私は好きなフランスの歌手の歌を聴いたり、ポッドキャスト(「Chocolat」や「1jour1actu」など)でファッションや映画の話を聴いたりするのですが、そうすると気分が変わり、また違った角度からフランス語の素敵さが見えてきたりします。

「英語でさえ、まだこれからだというのにフランス語だなんて…」と思ったり、今は将来のことをいろいろ悩んでいます。
この時代、世界のコミュニケーションはほぼ英語ですし、フランス語は急いで身につけなければならないわけでもないからです。

でも、はじめにフランス語から入ったことは、英語の学習の理解を助けてくれるところがあるのかなという気もしています。
なによりも、フランス語は、また違う自分を発見させてくれる言葉のような気がするのです。

そんな意味で、まるで遊びのように楽しくフランス語に触れさせてくださった幼稚園、小学校の先生や、もっと本格的に教えてくださる中学の先生方には感謝しています。

今はやっと入り口に立ったばかり、これからが本番だと思います。

できるなら将来、私は、ルルドで見たたくさんのボランティアの方たちのような、また、テロや紛争で傷つく人々の助けになれるような、フランス語を活かしてなにかに貢献できる人になれたらと思っています。



福山市立大学におけるフランス語学習−フランス語を使って行動するために−

大庭 三枝(福山市立大学)

福山市立大学は広島県東部に位置する公立大学で、保育者養成の伝統を誇る福山市立女子短期大学を前身とし、2011年に開学しました。教育学部(教育コース・保育コース)と都市経営学部からなり、大学院(教育学研究科・都市経営学研究科)を合わせても学生数1,000人強の小さな大学です。

教育学部は、1年次に必修の英語(週2コマ、通年)に加え、第2外国語としてフランス語・中国語・ポルトガル語の中から一つ選択必修(週1コマ、通年)となっています。都市経営学部は1年次に英語(週2コマ、通年)と中国語(週1コマ、通年)が必修で、2年次以降に選択科目としてフランス語・ポルトガル語を勉強することができます。大学全体では毎年約40人程度の学生がフランス語を履修しています。

La carte de Noel(授業で作成し交換)本学のフランス語学習の特徴は、「フランス語を日常的に使う」ところにあります。フランス語履修者は(既修者も)、私と学内で会うと必ずフランス語で挨拶し会話をします。地方都市の福山でフランス語会話の機会は限られていますので、私をフランス人(練習相手)として最大限に「利用」する、フランス語で気軽に話せる環境がキャンパスの中にはあります。

担当教員の私はというと、日本の大学・大学院時代に第2外国語としてフランス語を学習しましたが、在外教育施設(日本人学校)教員としてフランスに赴任した時、聞き取りと会話ができなかったために悔しい思いをしました。地歴公民(当時は社会)科と保健体育科の教員免許を有し両教科を教えていましたが、社会見学に引率するにも、市の体育館・プールを使用するにも、フランス語で交渉ができなくては仕事になりませんでした。

しかし、現地バレーボールチームに所属して国内を転戦、大学院でも学ぶうち、公私ともにフランス語で議論する豊富な経験が、赴任時にほとんどしゃべれなかった私をフランス人と渡り合える日本人教員へと育ててくれたのです。フランスで一番美しいフランス語が話されるという「フランスの庭園」Touraine地方で鍛えられたことも幸いしました。そこで、当時の校長先生からFLE(Francais Langue Etrangere)教員研修とフランス語科へのコンバートを提案され、「現地で苦労しながら習得した過程を経験しているからこそ、日本人が苦手な部分を教えられる」という言葉に、教育のあり方と教員としての姿勢を教えられたような気がしました。

以来、フランスでも日本でもフランス語を教える時は、頭も目も耳も(時には舌も鼻も)口も手も体全身を使い、五感を総動員して学ぶ環境を創出しています。現在は週に1回90分どっぷりとフランス語・フランス文化に浸かります。フランス語の音とリズムに慣れ、フランス語の指示で体を動かしながら、フランスの食べ物等を実際に味わい、フランス文化を体験し、実物に触れ体感しながら学習します。わずか週1回の授業ですが、フランス語運用能力の4つの要素(聴解力、会話力、読解力、文書表現力)を偏りなく育てることを目標としています。

定期試験では筆記(仏問仏答:Comprehension Ecrite, Expression Ecrite)、聞き取り(Comprehension Orale)、口頭(Expression Orale)の3種類の試験いずれも基準を満たすまで指導します。そのために、生活の中で見聞きするフランス語に敏感でいるよう呼びかけていると、「CMの曲が聞き取れた」、「ケーキの名前が理解できた」など、学生たちはプチ成功体験を報告してくれます。あらゆる感覚を駆使して感受した小さなフランス語体験をできるだけ多く積み重ねること、そのためのアンテナを鋭敏にしておくことを推奨しています。また、時計・カレンダーや天気予報を見た時、「フランス語を頭によぎらせる(思い浮かべる)、よぎった数だけ頭に残る」、と即時的かつ日常的に想起することをすすめています。フランス語で感受する力と表現する力をいかにして伸ばすか、担当教員として常に模索しています。

UPEC学生が福山市立大学学生と共に活動:二上りおどり、ふくやま子どもフェスティバル、仏語授業

その中で、Francophoneとの直接接触は何よりも大きな動機づけとなります。フランス時代からの研究協力者が勤務するパリ・エスト・クレテイユ大学(L’UNIVERSITE PARIS EST CRETEIL以下UPEC、旧パリ第12大学)と2014年に大学間交流協定を締結、同年春には本学学生がUPEC訪問、秋には研修下見に先方教員が本学訪問、遂に2015年秋にはUPEC学生5人の福山市立大学研修が実現したのです。彼らは教育学部学生でしたから、フランス語授業だけでなく、私が担当する教育学部専門科目(表現指導法等)や学外実践に日本人学生とともに参加しました。日仏両国の学生たちは豊かな体験を共有し、教育・保育職を目指して学習意欲が一段と増したようです。

また、私がOMEP(Organisation Mondiale pour l’Education Prescolaire:世界幼児教育・保育機構)でフランス語圏諸国とともに共同研究する関係から、2016年7月 OMEPフランス・カナダ代表をお迎えして2016年にはOMEPフランス代表・カナダ(ケベック)代表ら3人が来学してくれました。このように2014年以来毎年、フランス語を母語とする人たちに授業参加してもらい、ゲストを囲む小グループで直接「フランス語を理解する、伝える」機会を設けています。学生たち曰く「生フランス人との遭遇」体験が、異文化理解と学習意欲の向上に寄与していると思います。

実用フランス語技能検定レベルと単純には比較できませんが、本学のフランス語授業(年間30コマ)を学習すると「4.5級」レベル、すなわち5級は確実、もう少し頑張れば4級合格というところまで鍛えます。身に付けたフランス語運用能力を証明するために、希望者は実用フランス語技能検定(4級、5級)に挑戦してきました。2012年に準会場として実施して以来、受験者数は毎年20人前後(のべ)で推移し、4級、5級ともに平均合格率90%を上回る好成績を収めています。本学受験者の特徴は、聞き取り試験の得点率が高く(4級78%、5級86%)、筆記試験得点率を常に上回っている点にあります。

合格証書を手にニッコリ毎年開催する仏検受験報告会は、受験者だけでなく受験を考えている下級生や仏検実施を応援してきた教職員など誰でも参加OKです。現地で調達してきたフランス各地のお菓子を囲みながら受験者の努力を労い、さらなる学習・交流や次の受験に向けての構えを形成します。仏検を媒介として異学年交流と学内における理解を促進することで、本学におけるフランス語学習とフランスとの交流がさらに進んできたと思います。

2016年度までは、「フランス語I」・「フランス語II」を終えさらに学びたい学生たちに対し、自主講座を開き対応してきましたが、継続学習の要望に応え2017年度より「フランス語III」(1単位)を開講しました。フランス語運用能力の基礎を固め、さらに発展させるこの授業には、1年・2年でUPEC学生と交流した経験を持ちながら保育実習等で受験できなかった仏検に3年・4年になってから挑戦しようとする学生が受講するなど、UPECとの交流がフランス語学習に功を奏しているといえます。

教育学部既修者の中には、青年海外協力隊で赴任中の卒業生もいます。フランス語学習がきっかけとなって、異文化への窓を開き相互理解を深めることのできる人材として成長し、日本でも世界でも活躍してもらいたいと願っています。

慶應義塾大学理工学部のフランス語教育

小林 拓也(慶應義塾大学)

基本データ

慶應義塾大学理工学部は11の学科から形成され、1学年は約1,000人、1~2年生は横浜の日吉キャンパス、3~4年生は隣接する矢上キャンパスで学んでいます。2年進級時に学科、4年進級時に研究室を選択し、卒業後は約7割が大学院へ進学します。 

1年時に英語以外の1言語(週2回)が必修となっており、入学前にドイツ語、フランス語、ロシア語、中国語、朝鮮語の中から選択、それによりクラス編成も行われます。2017年度の内訳は、順に36.2%、30.8%、3.1%、26.1%、3.8%です。「ドイツ語が最大派閥」、「スペイン語がない」、「ロシア語の専任教員がいる」などが、他学部や他校の方から驚かれる事項です。

そんな中、フランス語では15名の教員(内、語学担当専任は3名)により、1年生の10クラスや2つの既修者クラス、主に2年生を対象とした週3回のインテンシヴコースなど、各学期およそ25の授業が提供されています。特徴的なこととしては、「1年生各クラスは、1人の教員が週2回を受持つ」、「3~4年生や大学院生対象の授業も開講されている」、「フランス語のみで数学や物理を学ぶ授業がある」、「夏にはIMT-Atlantique、春にはCentrale Nantesでの短期語学研修プログラムが用意されている」などがあり、学生たちのフランス語熱は一般に想像されているよりも遥かに高く、高度で実践的な教育が行われています。その決定的要因となっているのが、理工系3大グランゼコールの1つ、Écoles Centralesとのダブルディグリープログラムです。

Écoles Centralesとのダブルディグリープログラム

本プログラムは、3年時の6月に渡仏、2年間を過ごした後、帰国して修士課程を修めると両校から学位が授与されるというものです。パリ、リヨン、マルセイユ、リール、そしてナントに校舎がありますが、学生の所属先はフランス側の判断に委ねられます。いずれにせよ、一般教養や語学も含まれる多くの必修科目は全てフランス語、企業や国際機関などでのインターンも行わなければならないという、おそらくは文系の博士課程留学と同等かそれ以上に過酷なものです。

2006年以降、平均して毎年6.4名が派遣されていますが、それ以外にも選考で落とされたり、出願を思いとどまる学生もいます。また、「交換」留学制度ですから、フランス側からも平均して毎年12.5名が2年間を矢上で過ごすためにやって来ます。こうした人々と日々触れ合うことで、「フランス」やフランス語学習はキャンパス内で身近なものとなっています。カフェテリアや喫煙所がフランス人に占拠されていることはよくありますし、彼らをTAとして雇用する制度もあります。また、OFJという日仏学生交流団体も、エシャンジュやピクニックなど、学内外で様々な活動を行っています。

プログラム参加希望者には、フランス政府給費留学生試験を受験することを強く勧めています。2015年度は2名、2016年度は5名が合格、今年度も数名がチャレンジする予定です。文系の方によく驚かれる数字ですが、派遣先がG. エッフェルやA. ミシュラン、A. プジョーなどを輩出した名門であること、プログラムの理念が、「現代社会に必要とされる国際的な視野、そして深い専門知識とを併せ持つ国際エンジニアを育成する」ことであること、そして修了者たちが、実際に日仏の懸け橋となるべく様々な分野で活躍していることなどを考えれば、決して偶然によるものではないはずです。

仏検の活用

2016年度からは、仏検受験も積極的に教室運営に取り入れています。学生たちのさらなるモチベーションアップと、修士課程までを含めた6年間の学習の指標とするためです。同時に団体コードを取得し、様々なデータの提供も受けるようになりました。既にその絶大な効果を実感しているところですが、事務局へのお礼を兼ねたささやかな情報提供として、いくつかの数字を示してみたいと思います。

まず、これまで3回(16春・秋、17春)の結果ですが、総計で2級7名、準2級30名、3級61名、4級23名、5級6名の合格者を出すことができました。受験はあくまで任意で補助金や単位認定はなし、長時間に及ぶ実験演習などの合間を縫ってのやりくりとなりますので、既修者以外の1年生や3~4年生の受験は少なく、短・長期の留学を考えている2年生が中心となっています。

また、今年度より、「学部卒業までに準1級、大学院修了までに1級」という目標を立てています。上記のダブルディグリーの修了者も考慮に入れれば、十分実現可能なものと考えています。そのためには、初修者の場合、「1年秋に4級、2年春に3級、秋に準2級、春の研修に参加し、3年春に2級、4年秋に準1級、M2春までに1級」、既修者の場合、「1年春に3級、秋に準2級、2年春に2級、夏の研修に参加し、秋に準1級、M1春までに1級」、そしてダブルディグリーに参加する場合は、「出発までに2級以上、帰国後の春に1級」という目安を設定しました。そのためのカリキュラムは軌道に乗り始めていますし、団体コードや上記ステップも浸透しつつあるので、合否一覧表にその結果が現れる日も、そう遠くはないと信じています。

おわりに:理系こそフランス語!

以上、慶應義塾大学理工学部のフランス語教育を手短に紹介させて頂きましたが、考えてみれば、実は理系こそフランス語を学ぶべきであり、教室外で活用することのできる機会は文系よりも遥かに多いのかもしれません。事実、フランスはCERN(欧州原子核研究機構)やパストゥール研究所などの研究機関、また、EVで先行するルノー、航空機のエアバス、鉄道車両のアルストムといった企業を抱え、歴史的にもフェルマーやフーリエ、ラヴォワジェなどの科学者を輩出した理系大国です。さらに、理工学とも強い繋がりのある農業や金融といった分野でも参照されることが多いのは周知の事実です。また、国連やWHO、ITUなどのフランス語が公用語である機関や、今後発展の見込まれるフランス語圏のアフリカ諸国などでは、理系の人材やその知識は一層求められることになるでしょう。

実際の研究や仕事は英語が中心とはいえ、街の中や同僚との会話はフランス語となるケースは多いはずです。事実、理系の教員や学生の方が海外出張や国際会議への参加には慣れており、「現地でフランス語を使ってきた!」という話をよくききます。

このように、理系こそ、実はフランス語を活かす機会に恵まれているのです。数年前の本欄で紹介された韓国のフランス語事情(2014年9月号、p. 1-3)のように、悲観的な文系とは裏腹に、理系や職業的な領域では、実はフランス語、そしてフランス語教育の未来は明るいのかもしれません。 

日本とフランス語圏の架け橋に

2015年度春季1級合格
渡邊 暁洋
会社員(三菱商事株式会社)・東京都


父親の仕事の関係で2度フランスへ引越し、合計約9年間パリに住んでいました。
フランス語は、フランス滞在中現地校に通っていたお蔭で身に付きました。

現地校での日々は、今振り返ると非常に貴重な体験ばかりでした。

ビュッフェ形式の給食、ルーヴル美術館での模写授業、表現力と感性を養う目的で行われるthéâtre 試験(有名な演劇等の一部を家で暗記し、後日クラスの前でジェスチャー等を織り交ぜつつ暗唱するもの)、異性の友達と交わす bise(右・左と2~4回互いの頬を合わせる挨拶)etc… 他にも沢山ありますが、現地校に通って一番良かったのは、「自分が日本人である」ということに誇りを持つようになったことだと思います。

いくら “人種の坩堝” と呼ばれるパリでも、外国人は異なる扱いを受けることがあります。しかし、最先端テクノロジーやMANGA等といった切り口で日本に興味を持ってくれる人も多く、そのお蔭で私はそういった扱いを受けても、日本という国や自分が日本人であることに対して嫌悪感を抱かずにいられました。

また、遠足の際に敢えておにぎりを持参したり、学校のプリントで折り紙を作って友人にプレゼントしたりといった自分の行動をきっかけに、日本文化に興味を持ち始めてくれた友人が沢山いたことも強く印象に残っています。

このような経験があって、私は自分のルーツに誇りを持つことができ、将来は日本人として世界を相手にできるような仕事がしたいと思うようになりました。

  *

私が仏検を意識し始めたのは大学2年生頃。就職活動を意識し始めたことがきっかけです。

語学はあくまでツールでしかないということは承知の上で、それでもフランス語を自分の一つのアピールポイントにしたいという気持ちがあり、それを企業に客観的に伝える最も確実な指標は仏検1級であると考えました。

正直、最初は自信に満ち溢れていましたが、試しに購入した参考書を開いた途端、強い焦燥感に駆られたのを覚えています。仏検1級は、名詞化の設問や多義語の設問をはじめとして、非常に高度な語彙力が求められますが、まさに当時の私にはこの語彙力が決定的に欠けていました。

そこで、私が合格に向けて実践した勉強法は主に以下の3つです。

・入手可能な参考書や過去問を全て解く。
・フランス語の類語辞典(dictionnaire des synonymes)を一通り読み、知らない単語があればその都度ネット上で例文を探す。
・大学が購読していたLe Monde紙を読み、気になった記事をノートに書き写す(同じ内容が日本の新聞にも載っている場合は、内容を見比べて両者の着眼点の違いを考察することも興味深かったです)。

とはいえ、正直、”仏検1級” を持っているだけでは就職活動は上手く行かないと感じました。これは他の語学でも言えることだと思いますが、前述の通り、語学はあくまでツールでしかなく、肝心なのは「そのツールを使って今後自分は何がしたいのか」ということだと思います。

しかしながら、仏検1級という目標に向かって自分なりに試行錯誤した経験は、就職活動に於いて大きな糧となり、選考に挑む際の“自信”に繋がったと思います。そういった意味で、就職活動に備えて仏検を目指すことは、個人的に非常にオススメです。なにより、仏検1級に向って勉強する中で出会った単語や言い回しが沢山あり、以前よりもフランス語を好きになりました。

今後の展望としては、仕事でフランス語圏へ行き、日本とその国の架け橋になること。

正直フランスに戻りたい気持ちはありますが、それよりも今は、西アフリカ諸国に魅力を感じます。未だ日本という国があまり浸透していないような場所で、日本のプレゼンスを高められるような存在になりたいと思っています。それが、かつて私が現地校で感じた“日本ブランド”を確立してこられた先人達や、私にフランス語を教えて下さった先生方や友人への恩返しに繋がると考えているからです。


再びアフリカへ

2016年度春季1級合格
井上 龍
国連難民高等弁務官事務所・ ケニア

青年海外協力隊として、当時まだ準仏語圏であったルワンダ共和国へ派遣されたのをきっかけに、フランス語を勉強するようになりました。当初、フランス語のリエゾンや数の数え方(80のことを4×20と表す等)に触れた頃は、「不思議なコトバだなぁ」と感じたことを、今でもよく覚えています。

RI

ルワンダから帰国した後も、会社員として勤めるかたわら、国際機関に入り込むことを念頭にフランス語の学習はコツコツ続けていました。そんな中、学習のペースメーカーとして、仏検は恰好の試験制度でした。そしてこの度、仏検1級合格とほぼ同時期に国際機関への転職も叶い、現在はケニアでIT技術者として勤務しています。

私が地道に続けた勉強法は、インターネットでニュースを視聴、要点を5W1Hでメモし、関連記事を読んで答え合わせをするというものです。最初はスピードが速すぎて着いていけなかったニュースも、1年、2年と経つにつれ、聞き取れるようになっていっただけでなく、時事用語にも慣れることができました。

またとにかく語彙数を増やすため、フランス語の問題集をゲーム感覚で解けるスマホのアプリを自作し、通勤電車の中や、ちょっとした待ち時間にひたすら解くといったことも続けていました。

ただ、私は仕事の関係上、教室に通う時間的余裕がなかったため、フランス語を喋る機会がほとんどないのが大きな課題でした。もちろん、普段の仕事でフランス語を使用する機会は皆無。そこで喋る練習として、視聴したニュースの要点メモを基に、ニュースの内容を口頭で説明する訓練を繰り返しました(自宅の一室で1人フランス語を話している姿は、傍から見るとかなり滑稽でしたが)。

語学の学習は、楽器の練習と非常に似ていると感じます。ある日を境に飛躍的に力が伸びることはなく、毎日ちょっとずつしか上達しません。成果がなかなか見えない中、フランス語学習のモチベーションを保つのは本当に大変です。特に私のように、普段の仕事や生活において、フランス語がまったく不要な環境にいる場合は尚更です。

それでも私が地道に学習を続けることができたのは、仏検が目標達成に向けたマイルストーンの役割を果たしてくれたからです。着実に前進していることを、少しでも実感できた仏検の存在には、とても感謝しています。

2016年度 文部科学大臣賞団体賞 受賞のことば

文部科学大臣賞団体賞は2013年度に創設され、その年度における出願者数とその増加率および試験結果等を勘案し、年度を通じたフランス語教育への取り組みを総合的に判断した上で、特に優秀と認められた3団体に授与されます。2016年度は、武庫川女子大学、慶應義塾大学商学部、カリタス女子中学高等学校が選出され、今年3月に実施された成績優秀者表彰式において、賞状と記念の楯が授与されました。表彰団体の先生方からお寄せいただいた受賞のことばをご紹介します。


武庫川女子大学 近藤 由佳 先生

(写真左より)西澤文昭APEF理事長・近藤由佳先生(武庫川女子大学)

この度は文部科学大臣賞団体賞に選出いただきましたことを大変嬉しく、光栄に思っております。
武庫川女子大学にはフランス語専攻科はありませんが、英語文化学科の第2外国語と共通教育科目として学習する環境が整っています。学生たちは新しい言語を学ぶことの難しさと楽しさを同時に感じながら、仏検にもとても前向きに、熱意を持って取り組んでいます。 この栄誉ある団体賞受賞を励みに、今後も学生たちと力を合わせ、フランス語教育と仏検の発展に尽力できますよう、より一層努力していく所存です。
最後になりましたが、フランス語教育振興協会および仏検関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。
(写真左より)西澤文昭APEF理事長・近藤由佳先生(武庫川女子大学)

慶應義塾大学 商学部 御園 敬介 先生

(写真より)西澤理事長・御園敬介先生(慶應義塾大学)

2016年度文部科学大臣賞団体賞を賜りました。ご選出いただきましたフランス語教育振興協会の皆様に心より御礼申し上げます。この度の受賞は、日頃より慶應義塾大学商学部のフランス語教育にご尽力いただいております皆様のお陰と存じております。入念な準備のもと質の高い授業を展開されている先生方、およびそれを多方面から細やかに支援してくださる教職員の皆様に、この場をお借りしまして、改めて感謝申し上げます。この栄誉を励みに、一人でも多くの学生にフランス語やフランス文化に関心を持ってもらえるよう努力を続ける所存です。今後とも皆様のご指導をいただければ幸いに存じます。
(写真左より)西澤理事長・御園敬介先生(慶應義塾大学)

カリタス女子中学高等学校 鷲頭 弘子先生

((写真左より)西澤理事長・鷲頭弘子先生(カリタス女子中学高等学校)

この度は文部科学大臣賞団体賞という名誉な賞を頂戴し、大変光栄に思っております。校長はじめ生徒たちも喜んでおります。カナダのケベック州にある修道女会を母体とするカリタスでは創立当初より、生徒全員が英語とフランス語を学び、併設の小学校からフランス語で大学受験をする高校生まで5級から準1級と幅広い級を受検させていただいております。小中高生がフランス語の学習を続けていく中で、仏検は生徒達の目標となり、普段の学習やカナダ研修、フランス留学の成果を確かめ、さらに学習意欲を高めるきっかけとなっています。今後、大学入試における外部検定試験に認められることを願っております。これからも大いに仏検を活用させていただきながら、フランス語学習者のサポートに努めてまいりたいと思います。末筆ながら、仏検のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。
(写真左より)西澤理事長・鷲頭弘子先生(カリタス女子中学高等学校)


 

福島県立福島南高等学校でのフランス語指導

南條 かおる(福島県立福島南高等学校)

福島県立福島南高等学校は、文理科(大学進学を目指す普通科)・国際文化科(語学に重点を置いた主に私大文系への進学を目指す科)・情報会計科(商業系・情報系の資格取得と進学・公務員を目指す科)の3学科から成り立っている高校です。1学年5クラス(文理2+国文1+情会2)で、フランス語はこのうち国際文化科の選択教科として、2学年と3学年で開講されています。2学年国際文化科40名のうち、フランス語を選択する生徒は、例年35〜38名、つまり殆どの生徒が履修します。3学年では、さらにその生徒の中でのフランス語選択者となり、10〜30名と少ない人数での授業となります。

授業は週2回、ALT(外国語指導助手、母国語は英語)とのTT(複数の教師が協力して教育指導にあたる方式)で行います。授業中の使用言語はフランス語、英語、日本語です。授業で心掛けていることは、生徒がフランス語を使う活動をできるだけ多くすることで、会話を中心にペアワーク、グループワークを取り入れながら、まずはフランス語に親しませることを目標としています。例えば、「買い物・注文をする」ことを学習する課では、手作りのメニューやユーロ紙幣やコインを使って、店員役と客役をロールプレイしました。また年に何度かは、フランス映画を観たり、フランスの歌を学習したり、テーマを決めてフランス文化について紹介したりする機会を作り、フランスに対する興味を引き出すことを心掛けています。今年度は、3年生の最後のテーマとして「フランコフォン」を取り上げました。生徒たちはインターネット等を使って情報を集め、それぞれグループ毎にケベック、仏領ギニア、マルティニーク、ベルギーについてフランス語でプレゼンテーションを行いました。

44-2_recadree仏検の指導は、主に放課後、自主的に集まってくる生徒に対して行っています。今年度は春季で5級に10名が合格し、そのうちの3名が秋季で4級に合格しました。これは全員3年生で、またなんと合格率は100パーセントでした。仏検への準備を行いながら、生徒は授業で使ってきた表現が、きちんと文法的に整理され、良く理解できるようになったと感想を述べます。

授業そのものとは分けて仏検指導をすることは、放課後の時間をかなり割かれ、指導する側としては少々大変なこともありますが、成績とは直接関係のない課外活動とすることで、生徒のモチベーションもあげることができていると思います。実際こうした生徒の中から、毎年フランス語学科に進学する生徒が出ていることも指導者としては嬉しいことです。

高校でのフランス語指導は、(少なくとも本校では)直接大学受験には関係のないものですが、英語偏重になりがちな外国語教育の中で、文化の多様性に気付く機会を提供し、生徒の視野を広げ、幅広い教養を培っていくきっかけのひとつになることを期待しながら、これからも指導を続けていきたいと思っています。

富山大学の仏検一般会場化への軌跡

中島 淑恵(富山大学)

2015年3月北陸新幹線が開通し、東京・富山間は2時間余りで移動可能となった。富山人にとって東京とこのように短時間で結ばれることは戦前からの悲願であり、東京出張は日帰りがデフォルトになってしまったというあまり嬉しくない副産物はあるものの、その便利さは否定するべくもない。いきおい外国人観光客が増え(その最終目的地は多くの場合金沢で、富山は単なる通過点に過ぎない場合も多いが)、かつてのような、「街角で西洋人を見たらロシア人」という状況は一変したように思われる。

201609-1

私が富山大学に赴任したのはもう20年以上前、ふた昔も前のことになる。当時はちょうど第3セクターのほくほく線が開通したばかりで、東京に出るのに米原周りで東海道新幹線という迂回経路を取らずとも(この場合ゆうに5時間以上かかっていたらしい)、越後湯沢乗り換えで上越新幹線、それでも4時間以上はかかるという時代であった。また、東京出張の行き帰りの途上、ほくほく線の車中で雪や突風のために何度も缶詰めになり、雪や風に強い新幹線の開通を一日千秋の思いで待ったものである。

 富山大学の前身は旧制高等学校で、もともと理科系が強いこともあり、第2外国語としてはドイツ語の勢力が強く、次いで近隣諸国の言語である中国語・ロシア語・朝鮮語の学習者も相当数いたため、他の地域と比べフランス語の履修者が相対的に少なく、また質実剛健な土地柄から、「ちゃらちゃらしたおフランス」への反発のようなものも少なからずあったようにも思う。というわけで私の赴任当時富山大学における仏検受験者はたぶんゼロであった。無理もない。受験しようと思えば検定料以上の交通費を払い、ほぼ一日仕事になる時間をかけて直近の一般会場である金沢まで行かなければならないのである。これでは受験者がいないはずで、何とかして準会場受験に漕ぎつけたのが赴任後1年目であった。以来自分自身も会場責任者と監督者を兼ねながら、非常勤講師の方や町中でフランス語教室を主宰している方にお手伝い願って、準会場受験を18年間実施してきた。そうこうするうちに、初めはこわごわ5級や4級を受験していた学生たちが、やがて3級に合格、2級の1次試験に受かる者も出てきた。また、長く富山に暮らしているうちに、一般市民の方の中にも意外にフランス語学習者の方がいらして、上位級にトライする方もいらっしゃるという事情が、だんだんと分かるようになってきた。

実は当時、金沢で2次試験は実施されておらず、2次となると東京か京都、あるいは名古屋まで出なければならないのが常であった。当然新幹線のない時代である。2次を受けるのに泊りがけ、お金のない学生たちは夜行で移動するのが常だったが、ここに季節の壁が立ちはだかる。秋季試験の2次は1月末。都会の方には想像もできないことかも知れないが、雪で交通機関が止まってしまい、泣く泣く受験をあきらめたというケースもあった。春季ならば大丈夫かというと、実はこれがまた大風や台風の時期にあたり、交通機関の混乱で、出発したものの指定時刻に会場にたどり着けなかった、という事態も発生したのである。10年ほど前から金沢で2次受験が可能になり、今では多くの富山大生が金沢会場での2次受験に臨んでいる。

準会場受験は、初めは富山大生限定で大掛かりな宣伝はせず、自分の声の届く範囲で専攻の学生を中心に受験させていたが、受験者数が少ないときに、フランス語教室に通う一般の方にもお声掛けすることになった。その頃にさる富山の名家の大奥様に言われたことが今でも忘れられない。その方は現在80代、東京の女子大の英文科を卒業されている(富山の名門のお嬢様は今でも大体このような経歴を辿るのが常である)。大奥様曰く、「もう大昔のこと、私がまだ若いお嫁さんだったころに、大学の第2外国語で勉強したフランス語をものにしたくて、一人で勉強を続けていたの。そして金沢に仏検を受けに行ったのだけれど、もちろん婚家には内緒で出かけなければならなかったので、実家のおつかいとかなんとか取り繕って一日がかりで出かけたものよ」。当時は大卒というだけで婚期を逃すと言われた時代である。お嫁に行った先で仏検を受けに行くなどと言ったら、「なんと生意気な嫁、だから大学出は…と言われかねなかったことだろう。この大奥様の一言が富山会場を一般会場化する原動力になった。

いろいろあって少し時間がかかってしまったけれど、2016年度秋季仏検から富山会場を一般会場化させていただいた。始めは受験者がそれなりに集まるか心配で、学内だけでなく地元の外国語専門学校や取次の書店に私自ら営業活動に行ったが、ふたを開けてみるとまずまずの受験者数、しかも準2級以上の受験者が私の学生だけでなくかなり大きな割合を占めていることが分かった。当日は会場責任者を務めながらこっそり目頭が熱くなることが何度もあった。スタッフが集合して準備を始めたばかりの時間に会場にいらした年配の男性、卒中の後遺症かお体が不自由そうである。「富山会場なら障がい者用のタクシー券を使って来られるので…」と遠慮がちに言われたときは、本当に富山会場を一般にオープンしてよかったと思った。それから、見るからに上品そうなお母さまが車で連れて来られた小学生の姉妹、雰囲気からしてバレエか何かをやっている感じである。その日はとても寒く、受験者用に控えの教室を用意しているのでそちらでお待ちいただくようお母さまにお勧めしても、「私は受験者ではないので結構です」と譲らず、姉妹の受験が終わるまでロビーでひざ掛けをしてお待ちになっていた姿にも頭が下がった。

201609-1

私は富山出身ではないけれど、こんな風に遠慮がちで真面目、着実に努力する富山の方々が大好きである。そして、富山大学を一般会場化することで、「旅の人」である私を不器用に、けれど暖かく迎え入れてくださった富山の皆様に何がしかの恩返しができたとしたら、それは望外の喜びに他ならないのである。

(写真2点は雪の日の五福キャンパス)



65歳の手習い

2015年秋季準2級合格
和地 一則
無職・兵庫県

今年2016年3月末に会社を定年退職、現在2級試験受験準備中の66歳。

フランス語歴は1977-78年度のフランス政府給費留学生だが、その後フランス語は錆びついた。2012年久しぶりのパリ旅行でそのことを実感し(あるレストランで注文したのとは違うデザートが出てきた)、ショックを受けてフランス語の学習を再スタートすることにした。

仏検受験を決めたのは昨年1月。それまでの思いつきフランス語勉強ではらちが明かん、と一念発起した。仏検については何も知らず、仏検を目指す仲間も周りにいなかった。使える時間は、平日の通勤時間と帰宅夕食後のせいぜい2~3時間、それに休日。

受験する級は2級にするか3級にするかで迷ったが、過去の問題集などを見て、準2級が当時の実力相応と自覚し、10月1日に申し込んだ。筆記試験11月15日、面接試験1月24日を経て2月18日に合格メールが届いた。

文法の基礎事項の復習には『シェーマ式フランス語文法』を繰り返し読んだ。

問題集は過去問題集のほかに、世評名高い『完全予想仏検2級筆記問題編』を3回繰り返した。これは問題数が多く、一回解き終わるまで一か月もかかった。繰り返しの効果をみるために、各エクササイズの正答数を問題種ごとにまとめ、繰り返しの効果が上がらない問題種や同じ問題種の中でも正答率が低いエクササイズを見つけやすいようにした。

NHKラジオ『まいにちフランス語』は録音して今も聴く。

初級編は『百合のFranceウォッチング』再放送。たった15分間の番組だったが、最後の1~2分間のPause-caféで講師のシルヴィさんが語るフランス情報は興味深く、ディクテの教材にした。  « papillonner »(ネットサーフィンすること、« pianoter »(携帯のキーをたたくこと)、などの表現はこの時に覚えた。

応用編は『ニュースで学ぶフランス語』と『ニュースで知りたいフランス文化』が、まさにこんな番組を聴きたいと思ったときに放送され、講師が区切って読んでくれるフランス語ニュースでディクテの練習をした。人種差別の文脈で現れる « xénophobie »(外国人嫌い)という語はこの時に覚えた。

独習に潜む危険は間違いに気付かないことだ。あるとき出合った一行 : « Je suis un régime. »「私はun régimeである」とは何のことだろうと思い辞書を繰り頭をひねった。suisが動詞êtreではなくsuivreであることに気付いたのはしばらく経ってからのことだ。

面接試験が終わった1月24日の日記に「仏検準2級試験終了。明日2級に向けて再出発」と書いた。

 (2016年9月15日投稿)

【仏検事務局より】 このエッセイは2016年9月にお寄せいただいたものです。掲載が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。和地様はその後2016年度秋季試験で2級に見事合格されました。おめでとうございました!


 

フランス語の旅への第一歩

2015年秋季5級
橋井 美和子
会社員・愛知県

「じゃ、フランス語を習えばいいじゃない!」

私がフランス語を学ぶきっかけになったのは、友人のこの一言からでした。

実は私には3人の親友がおり、偶然にも全員が外国語(イギリス英語・イタリア語・スペイン語)を学んでいます。この4人のメンバーで欧州旅行をしたら楽しいだろうな~。でもフランス語が足りないか…なんて言ってしまったばかりに、友人が上記の言葉を発したのです。

恥ずかしながら語学は苦手でした。心の中でとんでもない失言をしてしまったと後悔しましたが、まずはフランスへ足を踏み入れてからと、早速パリ行きのチケットを手配しました。mh01これが丁度2年前のことです。初めての欧州そしてパリ、それは想像を超えた素晴らしさでした。子供の頃、社会の教科書で見たあの建造物や絵画を目の前にした時、自分が歴史の1ページに参加したような感動を覚え、その場に座り込んでしまったほどです。

「フランス人は冷たい」なんて言葉を何度か耳にしたことがありますが、あれは真っ赤な嘘です。手動扉のメトロを知らなかった私に、笑顔で扉を開けてくれた男性、迷子になった時に親切に声を掛けてくれた女性。そして何より私にフランス語習得の決断をさせてくれたのは、偶然入ったワインショップの店員さんでした。付け焼刃で覚えたフランス語にも丁寧に耳を傾けてくれ、そんな私の必死さに売り物のワインの栓を抜きご馳走してくださったのです。私がもっとフランス語を理解出来ていればきちんとお礼が言えたのですが、しどろもどろで上手い対応が出来ずじまいでした。mh02

帰国後すぐ名古屋市にあるアリアンス・フランセーズ愛知フランス協会という語学学校の門を叩きました。スケジュールが合わず継続して通うことが出来ない中、毎日テキストの付属CDを聞いて暗唱し、覚えた動詞の活用を一覧表にして部屋中に貼りました。また、数行でも日記を書き、先生に見て頂くようにもしました。

出来るだけ自然な形で日常生活にフランス語を取り入れたくて、自宅で聴くCDはフランス音楽にしています。最近までご縁がなかったフランス映画も今ではすっかり趣味の1つになっています。

フランス語を学び概算で1年経った時、ふと仏検のホームページを拝見しました。するとその日が2015年秋季の仏検申し込み締め切り日だったのです。これも何かのご縁と信じ、その場で申し込みをしました。試験日までは過去問題集と付属のCDを何度も確認しました。合格の通知を頂いた時は本当に嬉しかったです。

その後、自分へのご褒美として今年1月、2度目のパリ旅行をしました。mh03あの時全く聞き取れなかったフランス語もほんの少し聞き取れるようになり、暗記するほど聞き込んだフランス語CDのフレーズが口から自然に出て伝わった時は思わずガッツポーズが出ました。

次回は勿論4級を受けるつもりです。合格したら自分へのご褒美第2弾として、フランス語を学ぶ決定打になったあのワインショップへ行くつもりです。その日を楽しみに、フランス語の学習に励んでいます。

余談ですが、冒頭の親友たちが集まると話題は専ら自身が学ぶ言語の紹介大会となっています。勿論私はフランス語。親友4人で開催する小さな小さなEU会議は回を重ねるごとに白熱しています。

そう、私のフランス語の旅は始まったばかりです!

 

【仏検事務局より】 このエッセイは2016年9月にお寄せいただいたものです。掲載が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。橋井様はその後2016年度秋季試験で4級に見事合格されました。おめでとうございました!そして、Bon voyage !


 

ついにお話ができた心の恋人

2016年春季2級・準2級合格
山口 淳
会社役員・東京都

70年代後半の大学時代に法学を専攻し、それに役立つドイツ語を第2外国語として選択した。卒業後は国際的な仕事に従事したいと総合商社に就職した。欧州で英語・ドイツ語と並ぶ有力言語たるフランス語の素養がないことが当時の私の心の片隅でたいへん気がかりだった。

入社当初は鉄鋼製品の輸出を担当し貿易言語の英語の勉強を続ける傍ら、中南米への輸出案件でスペイン語の必要性が出てきたことより、その勉強を独学(基本書+NHKラジオ講座)で始めた。入社6年目に米国留学の機会を得、その後90年代と2000年代の2回のニューヨーク駐在を経験し計12年間の米国生活を送った。この間、北米のみならず中南米諸国の仕事もあった関係よりニューヨークで夜間にメキシコ人の先生にスペイン語会話を鍛えてもらった。

2010年、商社マン人生の終盤にさしかかり、今まで仕事で使った外国語を資格の形で残したいと思い、将来利用できる国家資格の通訳案内士試験の受験を決意。11年に英語、13年にスペイン語の資格を無事取得した。その翌年春に京都・奈良で開催された通訳案内士の新人研修を受講した際に仏語で合格された方が数名おられ、その方々の話をお伺いして心の片隅でずっと気がかりだった仏語への思いに火がついてしまった。気になり始めてから既に30数年の年月が経過していた。

ネット上で良い評価を得ている入門書、文法書と仏検対策本を直ぐに買い込み、仏検受験とNHKラジオ講座を進捗管理手段とすることを決意して独学で勉強を始めた。私は既に56歳となっていた。

英語・ドイツ語・スペイン語の基礎があった関係で、フランス語の文構造は非常に理解しやすかったが、それら文法や語彙使用に微妙な違いもあり、勘だけに頼らず必ず文法書と辞書を参照して確認した。辞書は紙の辞書を使い前後に記載されている語彙も例文を含め極力読むようにした。jy01フランス語の発音は他の言語とは全く異なり一番苦労した。NHKラジオ講座のネイティブの発音を注意して聞くことや仏検対策本附属のCDの聞き取りに専念した。

その甲斐あって仏検は15年春季に3級(成績優秀者として表彰頂いた)、16年春季に2級・準2級のダブル合格もできた。この合格通知が届いた時には私は既に59歳になっていた。35年以上の間、心の片隅で思い続けたフランス語という片思いの恋人についにお話しできたような嬉しさだった。今後も研鑽を続け、現在の仕事を離れた後には外国人に複数の言語で日本の歴史・文化・生活などを伝えられる民間外交官的な仕事をしたく思っている。




フランス語に救われた旅

2015年度秋季4級合格
E.I.
(会社員・東京都)

30年の長きに渡り、下手の横好きながらもドイツ語とは相性良く付き合って来ました。合唱音楽好きが高じ、現地で活躍する演奏家たちと交流する手段として独学で勉強し始めたドイツ語は、今では我流ではあれど、日常会話ではさほど苦にならないレベルとなりました。

photosdevoyages2そんなドイツ語一辺倒のわたしですが、過去にたった一度、フランス語を勉強してみようと思ったことがあります。20年前にフランスの合唱団が来日した時です。テキストや辞書を買い込んで、よしやるぞ、とページを繰った瞬間、早くもわたしの決心はあえなく崩れ去りました。書かれた文字を全て音にするドイツ語と違いすぎる。何があろうと定動詞は文の2番目に置かなくてはならないドイツ語と違いすぎる…等々。すべてがすべて、ドイツ語とは対極に位置する言語、それがフランス語だったのです。

それから19年、わたしの歴史とフランス語とが交差することはなく、これからもフランス語とは無縁だろうなと思っていた矢先のことでした。昨年(2015年)5月、公私ともに橋梁設計に高いウェイトを置く主人が言い出したのです。「長年憧れていたフランスのミヨー高架橋を生で見たい。来年(2016年)のGWに行こう!」と。

物理や数学においては優れた思考成果を発揮する彼の脳は、残念ながら言語分野においては記憶蓄積回路を持たず、ゆえに海外では常にわたしが現地の言語を担当してきました。しかし今回はフランス。過去に数回訪れた首都パリですら英語でのコミュニケーションが難しい かの国において、南仏ラングドック=ルシヨン地方の田舎(失礼!)で英語が通用しないことは容易に推測されます。実際に現地に行かれた方々のブログ等を拝読すると、やはりホテルですら英語が通じず、ジェスチャーで意思疎通を図った、という内容が多く見られました。

ついに重たい腰を上げる時が来ました。フランス語と向き合うことを決心したのです。20年前のようなゆるい気持ちではなく、本気で。上手くフランス語を吸収し、自分のものにするにはどうしたらよいか?そう考えた時に浮かんだのが「仏検受験」でした。

旅行用フランス語会話集を買ってみても、文法が理解できていない限り、それを応用することもできなければスムーズな暗記もできません。というわけで、11月の仏検で5級にトライすることを決意したわたしでした。

参考書と仏検公式ガイドブックを並行して進めていくうちに、自分の中の「フランス語アレルギー反応」が徐々に緩和されてゆく心地よさを覚えるようになりました。これは自分でも意外でした。ドイツ語との違いが出てくる都度「面白い!フランス語ではこうなのか!」という新鮮な感動が湧き出てきたのも驚きです。かくして、欲張りなわたしは出願の際には4級にも手を出し、11月の試験を迎えました。

ダブル受験の結果は周囲も沸かせた「両方とも満点」。これで完全に自信が付いたわたしは、5月までは旅行会話集丸暗記に没頭しました。暗記とはいっても表面的にそのまま文字列を覚えるのではなく、文法を理解しながら「どうしてこのシーンではこの単語が使われて、この助動詞がこのように変化するのか」等々、都度納得しながらの暗記です。

そして今年のGW到来。南仏モンペリエ、その名も「Méditerranée空港」に降り立ち、そこからはレンタカーです。早速空港のレンタカー事務所でフランス語を使う場面が。aeroport

「既に車を予約して、支払いも済ませている○○です」
「免許証を見せて下さい」

言えた!聞き取れた!この「通じた」感動は何年ぶりでしょうか。続くミヨーでも、宿泊地として選んだニームでも、どんどん自分の口をついて出てくるフランス語が自分たちの旅を導いてくれます。

スリリングなアクシデントは旅に付き物ですが、今回一番心臓が凍った出来事をひとつ。

5月5日(木)が今年はフランスでも祝日に当たることを知らなかった我々が予約していたのは、祝日はフロントクローズが18:00という格安アパートホテルでした。しかし到着したのが19:00。平日なら21:00までフロントが開いているので余裕でホテルに入ろうとしたら、まずドアが施錠されていて開かない。中に居たフランス人宿泊客が気づいてドアを開けてくれるも「…today… closed… tomorrow… again !… today… is… 」とたどたどしい英語で言われ、完全に意気消沈モードです。でもその宿泊客が「today… is… 」の後につなげたい言葉が気になります。そこで、もしかして…と思いながら「Fête ?」と発すると、彼女の表情が変わり、「Oui, oui !」とフランス語で何故今日はもうフロントが閉まっているのかを説明してくれます。arene_nimes「明日またいらっしゃい」と気の毒そうな顔で言われたその時、わたしが諦念も込めて「予約していて支払いも終えているんです…。」とため息をつくと、彼女の顔がぱっと輝き、「予約している?それなら、鍵の入った封筒がポストに入っているはず」とロビーに設置されているポストを教えてくれました。中を覗くと、自分たちの名字と部屋番号が書かれ、鍵の入った封筒がありました…。先ほどとは違う大きなため息が体を脱力させます。

もしもこのときフランス語がまったくできなかったら、1泊分の宿代を捨て、近くのホテルに空き部屋がないか、半泣き状態で尋ねに行っていたことでしょう。語学は身を助く。このときほどこれを実感したことはありません。目は口ほどにものを言う、ですとか、以心伝心ですとか、そういった格言は多々あれど、やはり実際生きていく上で必要になるのは「言葉」です。

主人は「眼前に屹立するミヨー高架橋」にいたく感激しておりましたが、わたしは「言語のなせる業の大きさと重さ」にあらためて感じ入った次第です。もちろん実際のミヨー高架橋は、極めて人工的であるはずなのに、周りの自然と見事な調和を成し遂げていて、その美しさと壮大さは生で見てこそ、の価値がありました。
viaducdemillau

ここまでお世話になったフランス語ですから、今後もお付き合いを続けていきたいと願っている今の自分は、1年前「GWの旅行が終わったら、フランス語とはまた無縁の生活に戻ろう」と、いやいや参考書を手に取った自分には想像できなかった姿です。

ドイツ語もそうですが、言語に触れてゆくと世界がどんどん広がります。横(相手との会話)にも縦(自分を内観)にも広がります。フランス語と出会えて、その広がりを更に増やすことができ、本当に良かったです。次回フランスを訪れた際には今回よりも多くの語彙や言い回しを使えるよう、日々楽しみながら亀の歩みを続けていきたいと思います。



第22回 冠詞に慣れよう(初級)

 専門:言語・文化教育学 中村 敦子  


語頭のアスタリスク(*)は、その語が誤りを含むことを表します。

22フランス語を始めたけれど、冠詞でつまづいてしまった、あるいはもやもやしたまま学習を進めている方、その悩みを解決します。

フランス語を始めたばかりの学習者が最初にぶつかる壁は、女性名詞と男性名詞の区別でしょう。名詞の性は意味のイメージで判別できませんし、語尾で判断するのも危険です。少し学習してくると e で終わる名詞は女性名詞のように思われますが、musée「美術館」は男性名詞 un musée です。

                


ツボその1:名詞の性は不定冠詞をつけて覚える

名詞の性を覚えるとき、「この名詞は女性名詞、これは男性名詞」のように覚えても、あるとき曖昧になってしまうものです。それだけでなく、実際にフランス語で表現するとき、たとえば une maison と言いたいときに「この名詞は女性名詞だから不定冠詞は une、 だから une maison だ」と考えてしまい、伝えるのに時間がかかります。そこで、名詞は不定冠詞をつけて、un musée [ アンミュゼ ]「美術館、博物館」、une maison [ ユヌメゾン ]「家」のように、不定冠詞をつけた音で覚えていきます。こうすれば、名詞の性が記憶されるだけでなく、すぐに une maison と表現できます。

ツボその2:母音、無音の h で始まる名詞に注意

定冠詞は名詞の性を覚えるのに役立ちません。le と la はエリジヨンするからです。エリジヨンとは、母音、無音の h で始まる語の前で e、a をとってアポストロフで示し l’ にして次の母音とひとつづきの音で発音することです。un hôtel [ アンノテル ]「ホテル」、une école [ ユネコル ]「学校」に定冠詞をつけると、l’hôtel [ ロテル ]、l’école [ レコル ] となります。習い始めのころは、とくに母音あるいは h で始まる語に注意しましょう。

ツボその3:複数名詞につける冠詞 desles に慣れる

英語を勉強してきた学習者にとって複数名詞につけるフランス語の冠詞もやっかいです。フランス語でも名詞を複数にするときは s をつけるのが原則です。ただし、この s は発音しません。フランス語のつづりの読み方では語末の子音字はふつう読みません。Paris は [ パり ] と発音することからもおわかりでしょう。単数の maison も 複数の maisons も名詞の音は同じです。そこで重要になるのが冠詞です。une [ ユヌ ] maison または la [ ラ ] maison と聞こえれば単数ですが、des [ デ ] maisons、les [ レ ] maisons と聞こえたら複数だと判断できるのです。複数名詞に用いる冠詞の存在はとても重要なのです。

  

5級聞き取り試験4にチャレンジしてみましょう。
フランス語の文を聞き取り、対応するイラストを選ぶ問題です。

5q16p4-4


聞こえる文は”Il y a des tomates.” (「トマトがあります」)。des [ デ ] の音を聞き取り、トマトが複数であると判断します。解答は②。

 


聞こえる文は”C’est une amie.”(「(女性の)友だちです」)。C’est [ セ ] の t を発音して次の une [ ユヌ ]とつづけて [ セテュヌ ]、une [ ユヌ ] は次の母音 ami [ アミ ] とつづけて [ ユナミ ]、文全体で C’est une amie. [ セテュナミ ] と聞こえます。男性の友だちであれば C’est un ami. [ セミ ] ですから、文中の不定冠詞の音の違いを聞き取り、解答は①の女性。

  

ツボその4:数ではなく、量でとらえる部分冠詞

フランス語には英語にはない部分冠詞と呼ばれる冠詞があります。不定冠詞、定冠詞は名詞が表わすものを数でとらえますが、部分冠詞はそれを量でとらえます。数えられない、とくに数えない名詞に用いるのはそのためです。De l’eau, s’il te plaît. 「水、お願い」のように、この部分冠詞はある量の水を表わしています。ここで注意するのは、カフェに入って「コーヒーを1つください」と言うときは Un café, s’il vous plaît. です。ここではコーヒーを量ではなく数の「ひとつ、1杯」としてとらえているからです。

ツボその5:数えられる名詞にも部分冠詞は使う

「数えられない名詞に用いるのが部分冠詞」と覚えがちですが、部分冠詞は数えられる名詞にも使います。その場合、数ではなく量を表わすので、1つのもののある1部分の量を表わします。パンをまるごと1つ表わすのが un pain で、その1つを切り分けた数切れを表わすのが du pain になります。

  

4級筆記試験1にチャレンジしましょう。4つの文のカッコに適切な冠詞または前置詞と定冠詞の縮約形を入れる問題です。


(1) Cécile a (  ) yeux bleus.

(2) Il a mal (  ) dents.

(3) Nous avons (  ) gros chien.

(4) Tu veux encore (  ) viande ?

—————————————————————–
① aux  ② de  ③ de la
④ les   ⑤ un  ⑥ une
 

まず選択肢を見ていきましょう。①は前置詞 à と定冠詞複数 les の縮約形です。*à les ではなく、aux になります。②は否定の冠詞 de 、③は女性名詞に用いる部分冠詞、④は定冠詞複数形、⑤は不定冠詞男性単数形、⑥は不定冠詞女性単数形です。

(1) 形容詞 bleus に s がついていますから yeux は複数名詞です。これは un œil「目」の複数形です。④の定冠詞複数形を入れて Cécile a ( les ) yeux bleus. 「セシルは青い目をしている」となります。セシルの目のことを述べていますから、特定されたものを表わす定冠詞が使われます。

(2) avoir mal à ~ で「〜が痛い」の意味になります。この前置詞 à のあとに les dents「歯」の定冠詞複数形がつづきますから à と les の縮約形を用いて Il a mal ( aux ) dents. 「彼は歯が痛い」となります。実際に歯が痛いとき、痛い歯は一本かもしれませんが、設問文では定冠詞複数形 les を用いています。これは具体的に痛い歯を伝えているのではありません。「お腹」や「頭」ではなく、歯という体の部分が痛いことを伝えているだけです。歯は複数で成り立っていますから、「歯」というものを表わすときは複数形の定冠詞を用います。(J’ai mal à la tête.「頭が痛い」や、J’ai mal au ventre.「お腹が痛い」もいっしょに覚えておきましょう。)

(3) chien は単数名詞です。男性形の形容詞 gros から chien が男性名詞単数であることがわかります。男性単数に用いる冠詞は⑤の un しかありません。Nous avons ( un ) gros chien. 「私たちは大きな犬を飼っています」となります。不定冠詞は、話し手が聞き手に周知されていないものを伝える時に用います。聞き手は話し手が飼っている「大きな犬」のことを初めて聞いたことになります。話し手と聞き手の両者に周知されているものが話題になっているときは定冠詞を用います。

(4) viande は「肉」ですから、数ではなく量としてとらえるので部分冠詞を使います。Tu veux encore ( de la ) viande? 「お肉をもう少しいる?」と尋ねています。塊のロースト肉のある量を問題にして、もう少し欲しいかどうかを尋ねています。

4級では冠詞を使い分ける基礎知識が問われますが、難しそうだと思いこまないことです。まず6つの選択肢をしっかり見ること、次に設問文の名詞に注目し、性と数を確認します。その際、形容詞の形がポイントです。また数と量のどちらを表わしているのか。さらに aimer「好きである」のような動詞は総称を表わす定冠詞を用いることなどをおさえておけばもう大丈夫です!

              

いかかでしたか。冠詞のツボをおさえることができたら、次は実戦です!『仏検公式ガイドブック』に過去の問題と解説・解答が掲載されていますから、これを利用して検定試験の準備につなげていきましょう。 

東京大学教養学部におけるフランス語教育

寺田 寅彦(東京大学)

大学に入るときに皆さんは何を自分の専門とするか、ひいては何学部に入るかということを考えることでしょう。東京大学では入学した学生はいわゆる科類ごとのクラスに所属することでそれぞれのおおまかな将来の専門性を持ちながらも、全員がまず駒場キャンパスにある教養学部前期課程に入学し、リベラル・アーツの理念に基づく教養教育を受けることになっています。これは東京大学の学びにおいて、専門課程に進むために必要な知識や知的技能を身につけることも大切ではあるものの、特定の専門分野に偏らない総合的な視野を獲得させることで専門的なものの見方や考え方の基本を学び取ることが必要であると考えられているからです。

このリベラル・アーツ教育の根幹をなす科目の一つが外国語科目です。文科生と理科生とでは取得すべき単位数は異なるものの、両者とも必ず二つ以上の外国語を履修することが必要です。多くの学生は既修外国語、すなわちすでに学んだことのある外国語として英語を履修し、初修外国語として初めて学ぶ外国語を一つ選択します(既修外国語を二つ選択することも可能です)。基礎科目とよばれるいわゆる必修の初修外国語として開講されている外国語はドイツ語、フランス語、中国語、ロシア語、スペイン語、韓国朝鮮語、イタリア語の七つですが、この他に自由に選択できる総合科目として現用語から古語にいたるまでのさまざまな外国語が履修できるようにカリキュラムが設計されています。

201609-1

基礎科目のフランス語では主に文法を勉強します。また選択自由な総合科目では、初級、中級、上級の各レベルで、会話や作文、読解、演習、表現練習といったさまざまな授業が展開されています。フランス語を集中的に学びたいという意欲的な学生に向けて、週2コマのペースで行われるインテンシヴ・コースの授業も初級と中級で開講されています。ネイティヴスピーカーの教員の指導による運用能力向上を図るインテンシヴ・コースは、学生の間でも人気の高い科目の一つです。

2016年度からは、履修すべき単位数と総合科目週3コマを合わせて初修外国語でありながら高い運用能力の修得を目指すトライリンガル・プログラム(TLP)フランス語がスタートしました。このトライリンガル・プログラムとは、その名のとおり三か国語をマスターした学生の育成を図るプログラムで、グローバルリーダー育成プログラム(GLP)の一環として発足しました。グローバル化が急速に進んだ現代の世界において、国際的に活躍する人材には高度な英語力はもとより、それに加えて少なくとももう一つの外国語の運用能力を有することがひろく要請されるようになりましたが、そのような要請に応えるべく一定レベルの英語力を有すると認められる学生(上位一割程度)のうち希望者を対象として、日本語と英語に加え、もう一つの外国語の運用能力を集中的に鍛えるために開設されたのです。トライリンガル・プログラムの履修期間は前期課程在学中の1年半で、修了要件を満たした履修生には修了証が授与されます。

2013年度に始まった当初は中国語のみのプログラムでしたが、この2016年度からドイツ語、ロシア語と共にフランス語でもこのトライリンガル・プログラムが始まっています。フランス語では前期日程入試、推薦入試、外国学校卒業学生特別選考のすべての合格者を対象としており、履修者数は最大で40人までであるため、履修希望者が定員を超える場合には成績上位者から履修を許可するシステムをとっています。各セメスター(学期)終了時に期末評価がなされて、英語の成績やフランス語の成績からレベルに達していないと判断された履修者は次のセメスターでトライリンガル・プログラム向けの開講科目を履修できない設計になっています。厳しい制度ですが、2クラスに分かれた学習者はレベルの高い授業を楽しく学んでいます。言語運用能力向上を図る目的から、AV機材の充実した教室や、アクティヴラーニングに対応した「21 Komaba Center for Education Excellence(21 KOMCEE)」(写真参照)という最新の建物の教室を主に使いながら授業が行われていることも魅力の一つです。

トライリンガル・プログラムフランス語はその修了時に「ヨーロッパ言語共通参照枠(CECR)」A2レベルに十分達し、特に優秀な履修者がB1レベルを狙いうる能力に達していることを目指します。履修者は自身のレベルを知るために、さまざまなフランス語資格試験の一つとして仏検で運用能力のレベルをはかることが考えられます。仏検は準2級がおおよそCECRのA2レベル、仏検2級がおおよそCECRのB1レベルです。準2級からは筆記試験の一次試験と個人面接の二次試験があり、文法の知識はもとより、読む、書く、聞く、話すというフランス語の運用能力を試すことができます。一つの具体的な目標として仏検合格を目指すことは有意義なことです。

フランス語は当然のことながらさまざまな専門に開かれた言語です。文学や哲学といった人文科学分野のみならず、政治や歴史・地理といった社会科学分野、数学や化学・物理学・生物学といった自然科学分野、さらに芸術などの分野で偉大な業績を挙げた人物を多く輩出しています。東京大学の学生もその将来の専門性の違いをこえて、基礎科目からトライリンガル・プログラムまで、さまざまなレベルでのフランス語の勉強を楽しんでいます。

東京大学提供

21 KOMCEE

 

フランス語カリキュラムと仏検への取り組み

近藤 由佳(武庫川女子大学)

私が勤務している武庫川女子大学ではフランス語はドイツ語、イタリア語、スペイン語、中国語、ハングルと並んで共通教育科目の中の語学の1つとして選択することができます。また文学部英語文化学科では1、2年次はフランス語かドイツ語のいずれかを選択必修科目として、3年次では自由選択科目としてフランス語を第2外国語として学ぶことができます。

今回は私が担当している、英語文化学科のフランス語カリキュラムと仏検への取り組みについてお話しさせていただきます。

1. 1年次

週2回の開講で、文法の授業を行います。使用しているテキストが仏検をターゲットにしたものであるため、効率よく仏検と連動した授業ができていると思います。文法力を徹底して強化するために、テキストの練習問題だけにとどまらず、補助的にテキストに準拠しない問題ばかりを集めたプリントを配布するなどして、とにかく数多くの問題に当たらせることで、応用力をつけさせています。もちろん、検定日が近づいてくる頃には本番さながらに時間を計り、過去問を解いていきます。

解説をする際には「ここは整序問題としてよく出題される」であるとか、「このイディオムは毎年のように出ている」など、常に仏検の情報を織り込むようにしています。そうすることで、学生たちもおのずと仏検を意識して受講するようになります。

また英語が好きな学生たちばかりであることを利用して、仏英比較をしながら解説をすることも多々あります。同じ意味のフランス語と英語の文を板書して、相違点や類似点を視覚的に明確にしていくのです。授業アンケートには「相乗効果でフランス語と英語の両方において理解が深まった」、「語学は暗記科目ではなく、理論を理解しなければいけないと実感した」といったコメントがかなり多く見られます。1年生でフランス語初心者である学生たちに対してはこのやり方が功を奏し、私の担当するクラスでは5級はほぼ全員が合格、4級は合格率8割以上となっています。

2. 2年次

英語文化学科の学生たちは原則として全員が1年次の2月初めから2年次の5月末までの約4か月間、ワシントン州スポケーン市にあるアメリカ分校に留学することになっています。したがって、フランス語の授業は後期のみ、週2回の開講となります。

留学して、“生きた英語” に触れて刺激を受けて来た学生たちが、それと同様の経験をフランス語でもできるように、コミュニケーション中心の授業を行っています。

1年次では手薄になってしまっていた “話す” “聞く” に力点を置き、留学と夏休みによる約半年間のブランクを取り戻すために文法の復習も交えつつ、自分たちの日常生活に必要な表現を身につけて、フレーズを作り、それを伝えることができるようにすることを授業目的としています。“読む” “書く” “話す” “聞く” の4技能をバランスよく向上させることで、次の目標である仏検3級合格ラインが見えてきます。とは言え、やはりほとんどフランス語に触れていない半年間のブランクは大きく、2年次での3級合格者は少ないのが実情です。

3. 3年次

自由選択科目で、週1回のみの開講となります。各実習や就職活動の時期と重なってしまうにもかかわらず、毎年履修者は35人以上を下回ることはなく、多い時には50人を超えることもあります。仏検3級以上の受験者をターゲットとし、仏検に特化した授業内容ということもあり、学生たちのモチベーションはかなり高いです。出題傾向に応じた対策授業を望む声がほとんどなので、過去問を授業中に解くのは2、3回にとどめ、冠詞、代名詞、動詞、応答文…というように項目別に問題を集め、重要ポイントを簡潔にまとめたプリントをメインに進めています。

まずはある程度の時間を与えてひととおり問題を解き、その後にかなり細かいところまで丁寧に解説をしていきます。積極的に質問をしてくる学生がとても多く、その質問内容も具体的かつ高度なものが多いです。

近年は準2級に挑戦する者も出てきて、仏検を取得したいという強い意欲を持った学生が増加しているのを実感します。

4. 仏検受験のメリット

英語文化学科では担当者が願書を取りまとめ、団体受験という形を10年以上前から取っています。仏検受験は強制でないにもかかわらず、毎年ほぼ全員が受験するのはこの団体受験というシステムの効力が大きいと言わざるを得ません。数人が仏検に興味を持ち、受験を希望すると、それに感化されるかのように自然とクラス全体が同じ方向を向き始めます。自分1人だけではなく、仲間と一緒だから頑張れると思えるのでしょう。また就職の際の履歴書に書けるということを考えてのことなのかもしれません。いずれにせよ、検定取得という具体的な目標ができることで、前向きにフランス語学習に取り組む姿勢がより顕著になっていくのを感じます。

そうなれば授業にも積極的に参加してくれるので、理想の授業形態である双方向の授業が成立し、質問や発言をしやすい環境が生まれ、とても活気のある空気を作り出すことができるのです。

仏検を含め、フランス語の学習を通して、フランス語を好きになってほしいという思いはもちろんあります。でも、もしどうしても好きになることができなかったとしても、新しい何かを学ぶことの楽しさ、一生懸命物事を考えることのおもしろさ、目標に向かってチャレンジすることの大切さを体得し、それをフランス語以外の勉強や、今後の人生にぜひ生かしていってほしいと切に願っています。

最後になりましたが、仏検に携わってくださるすべての方々に、この場をお借りして心から感謝申し上げます。

『シェリーとフランス語』(三修社)仏検を意識して作成、使用しているテキスト

『シェリーとフランス語』(三修社) 仏検を意識して作成、使用しているテキスト

 

 

高校3年の春、フランス語はじめました

2015年度秋季5級合格
藤澤 優香
学生(聖心女子大学)・大阪府

私がフランス語の勉強を始めたのは、高校3年生の4月です。選択科目でフランス語の授業を選び、初めて英語以外の外国語を勉強することになりました。

一番に好きになったのは、フランス語の発音です。独特なRの発音や、リエゾンやエリジオンから作られる流れるような文の読み方に魅せられて、どんどんフランス語を好きになりました。これまで好きな英語ばかり勉強してきたので、別の言語にも挑戦してみようと気軽な気持ちで決めたフランス語ですが、授業のある金曜日が毎週の楽しみになりました。

仏検5級の試験範囲にはまだ授業で習っていない文法事項も含まれていたので、秋の仏検前は対策本や過去の試験問題を使って毎日フランス語の勉強をしていました。フランス語に触れてから日は浅いですが、5級合格という目標を決めることで集中して力をつけることができたのだと思います。放課後に先生とクラスメイトと集まって勉強会をしたり、毎日フランス語で挨拶してみたり、楽しみながら一緒に勉強できる仲間がいてとても幸せでした。

無事に合格し、成績優秀者として賞もいただけたことは、本当に嬉しくこれから勉強を続けていくための励みになりました。

この春からは大学に進学し、第2外国語でフランス語を学んでいます。勉強を進めていくにつれて、伸び悩む苦しい時期もこれから経験するのだと思いますが、新しいことを学べる楽しさをいつも思い出してフランス語とのご縁を大切にしていきたいと思います。



国際協力とフランス語

2015年春季1級合格
清水 修司
一般財団法人日本国際協力システム(JICS)・神奈川県

1. 仏検受検のきっかけ

私は、国際協力(ODA)実施を支援する団体に勤務しており、日常業務で世界各地の被援助国とやりとりを行っております。大学時代にフランス語を専攻していた関係上、フランス語圏の国とやりとりをしたり、そこに出張したりする機会も多く、業務を通じてフランス語を研鑽できるというありがたい環境におります。このため、フランス語についてはある程度の自信を持っていたのですが、昨年、独立行政法人国際協力機構(JICA)が、国際協力分野で活躍する人材の語学力判定にあたり語学試験の免状に10年間の「賞味期限」を設けたことから、20数年ぶりにフランス語検定試験を受けることとなりました。

20151004ss-03

JICSが建設に協力したセネガルの小学校。校舎の壁に小さく日章旗プレートが埋め込まれている

 

2. 勉強方法

赤ちゃんが母語を覚える過程を鑑みるに、外国語の習得はいかに長く言葉のシャワーを浴びるかにつきると思います。私の場合幸いなことに、日常業務にてフランス語圏の国から寄せられる上質なフランス語で書かれたレターやペーパーを精読する機会が多々あります。それらを読み込むことで、和仏辞書では見つけられない多様な表現やボキャブラリーを習得することができました。また、出張や電話などを通して被援助国の人と様々な協議を行い、彼らのフランス語を直接耳にすることで微妙なニュアンスの伝え方や議論の進め方を皮膚感覚で知ることができました。インターネットでフランス語のニュース番組を視聴したりもしました。様々な機会を通してフランス語のシャワーを浴び続けることがきっと仏検合格への近道なのであろうと、思います。

3. 国際協力

20151004ss-04アフリカを中心にフランス語圏(Francophone)と呼ばれる国が多数あります。私は、国際協力の仕事を始める前は旧フランス植民地の国だからフランス語を教養として理解する人が多いのだろうと漠然と思っていました。
しかしながら実際にFrancophoneの国に行くと、行政や教育、あるいは、ビジネスが現地語ではなくフランス語でなされている実態を垣間見ました。極論すればフランス語がFrancophoneの国においては生きるための必要手段であるのだと感じました。これらの国々の人々は、自国の発展のため日夜がんばっていますが、まだまだ日本がこれらの国の発展のためにお手伝いできる分野がたくさん残っています。このことを思うと、フランス語を勉強した我々日本人の進む道として国際協力という選択肢もあるのではないでしょうか?

4. 最後に

Francophoneの知識層は、自分のフランス語に自信と誇りを持っています。私が交渉に際して提示した文書を見た相手がう〜んと首を傾げるので、何かお気に召さないことがあるのかとひやひやするのですが、熟考の末「ここは単数形ではなく、複数形のほうがフランス語として正確」と指摘されて、安堵と同時に拍子抜けしたこともたびたびあります。

美しいフランス語を習得していることはそういった方々からの尊敬と信頼を勝ち得ることにつながります。その意味でアカデミックなフランス語を学習する機会を与えていただける仏検に大いに感謝する次第です。

 

フランス語と共に、フランス語に浸り、フランス語を通じて

2015年春季1級合格・APEF特別賞
国津 洋子
大学職員(関西大学 社会学部 社会システムデザイン実習室勤務)・大阪府


yk_01このたびは、2015年度特別賞受賞の栄誉に浴し、嬉しくそして誇りに思います。今日までフランス語の勉強を続けることができましたのは、私の努力だけではなく、様々な方々との幸運な巡り会わせや支えがあってのことだと実感しております。

ご承知の通り、日本にいながらのフランス語学習はそんなに簡単ではありません。参考書の数も英語に比べて少なく、話す機会、場所も限られています。にもかかわらず、今日まで勉強を続けることができた、私の道のりをご参考までにご紹介いたします。

幼いころから、私は西洋の芸術に憧れを抱いていました。とりわけ、私はフランス文化のとりこになりました。大学は迷わず仏文学科に進学しましたが、最初は、複雑な文法と難解な発音に音を上げたものです。フランスへの短期語学研修は、実りあるものでしたし、フランス総領事館DATARでの勤務も、語学力アップにはうってつけでした。こうした体験は、当然フランス語力の向上に役に立ち、有益でした。

しかしながら、ふり返ってみると、このように恵まれた環境にもかかわらず、当時の私は語学力を向上させるのにさほど熱心ではありませんでした。私の場合、フランス語学習に火をつけたのは、与えられた理想的な環境ではなく、本を読もうという内部からの欲求でした。このフランス文学探究への欲求を満たしてくれたのは、関西学院大学の同窓会講座“ふらまど”です。家事育児に忙しいながらも、進むべき道を見つけることができました。この場をかりてお礼申し上げます。

フランス文学にふれることによって、偉大な作家、パスカル、モリエール、ヴォルテール、バルザック、フロベール、モディアノの作品から、よりよく生きる人生のヒントをもらいました。いろいろな作品を読むことで、時を超え、国を超え、文化や宗教を超えて、作中のあらゆる人物像やあらゆる思想と共に、生きることができるのです。まさにそこに、人間のリアリティーを実感できるのです。読書はもちろん楽しいものなのですが、既成概念への挑戦でもあります。思考が解き放たれる絶好の機会ですし、新たな視点で私たちの人生そのものを、もう一度、考え直さざるをえなくなるのです。このような文学の探求を通して、翻訳という新たな分野の可能性を感じています。

仏検合格への道ですが、粘り強さと子細にこだわる細かさが大切だと思います。フランス語に限らず外国語上達への道はひたすらくりかえすことだといえるでしょう。時には単調すぎてつらく感じることもあります。
しかし、この道のりは避けて通れないもので、さながらピアニストの音階練習や、運動選手のウォーミングアップみたいなものです。単語や語句を機械的にできるだけたくさん暗記する作業は大変ですが、より深く、より広く思いを伝える段階になると、その努力は花開くのです。訓練すればするほど、伝えたいことが鮮明になるのです。

仏検に挑戦されるにあたり、ご自分に合った勉強法で試験勉強を進めていかれるのが一番だと思います。勉強のやり方も人の数だけ方法があります。各々が、独自のものを生み出していくのだと思います。そこで肝心なのは、直観と、成長したいという、内から湧き上がる己の情熱を信じることだと思います。

 

Avec, dans et à travers la langue française

Yoko Kunitsu

yk_02Tout d’abord, je voudrais vous exprimer ma joie d’avoir été sélectionnée en tant que lauréate du prix spécial du DAPF de l’année de 2015. J’en suis heureuse et fière. Mais je dois avant tout dire aussi que si j’ai pu continuer mon étude de la langue française jusqu’ici, ce n’est pas dû uniquement à mes efforts, mais également à des chances que la vie m’a données et notamment au soutien chaleureux de nombreuses personnes.

Comme vous le savez, apprendre la langue française tout en vivant au Japon, est loin d’être facile. Par rapport à l’anglais le nombre de manuels de langue française est limité, les occasions de la parler sont elles aussi limitées. J’ai néanmoins eu la chance de pouvoir poursuivre mon étude de cette langue. Je vous présenterai ici le chemin qui a été le mien.

Depuis toujours, j’ai une grande admiration pour l’Occident et en particulier pour l’art occidental. Ainsi suis-je assez tôt devenue une amatrice de la culture française. Quand je suis arrivée au moment du concours d’entrée à l’université, j’ai choisi sans hésitation le département de littérature et de langue françaises d’une faculté des lettres. Au début, la complexité de la grammaire et les difficultés de la prononciation m’ont tracassée. Deux séjours linguistiques en France m’ont par ailleurs beaucoup aidée et enrichie. Mon travail comme assistante à l’antenne de DATAR, au Consulat Général de France, m’a permis de développer mes capacités linguistiques. Cette expérience professionnelle m’a été évidemment utile et s’est montrée efficace pour améliorer mon niveau en français.

Cependant ce milieu favorable n’a pas vraiment éveillé mon intérêt. Dans mon cas, ce n’est pas un environnement si favorable soit-il, mais la lecture, qui relève d’une volonté spontanée, qui m’a conduite à reprendre mon étude du français. Mon deuxième élan a consisté à retrouver une motivation pour reprendre mon exploration de la littérature française. Grâce aux cours de Kwansei-Gakuin destinés aux anciens étudiants qui veulent continuer ou reprendre leurs études de français, j’ai pu, malgré mes tâches familiales, retrouver un chemin à suivre. Je voudrais exprimer à cette occasion toute ma reconnaissance envers « Furamado » (« Une fenêtre ouverte sur la France »).

De grands écrivains français comme Pascal, Molière, Voltaire, Balzac, Flaubert ou Modiano m’inspirent des réflexions et m’aident à mieux vivre. Ceci dit à mon humble niveau bien sûr. En lisant leurs livres, j’ai vécu avec toutes sortes de personnages, toutes sortes de pensées, en passant par-delà les barrières du temps, des nations, des cultures, des religions. La réalité humaine, le réel de la vie est là. Bien là. La lecture est évidemment un plaisir, mais c’est surtout un défi contre les préjugés. Une formidable chance pour la pensée de s’ouvrir au dehors, en nous forçant à penser notre vie – et la vie – d’une nouvelle manière. Explorer le monde de la littérature m’a amenée de plus à m’intéresser à d’autres domaines comme celui de la traduction.

À propos de la préparation pour réussir à un examen, je pense que la ténacité et la minutie sont indispensables. Le progrès dans l’apprentissage d’une langue étrangère vient avec la répétition. Cela peut être senti comme monotone et dur. Avec parfois l’envie d’abandonner. yk_03Pourtant cette démarche est inévitable, comme faire des gammes pour un pianiste ou s’échauffer pour un athlète. Le travail pour mémoriser machinalement des mots et des expressions autant que possible demande de la peine. Pourtant, cela porte de grands fruits au niveau de l’expression de nos pensées vastes et profondes. Plus nous faisons des exercices, plus ce que nous désirons exprimer devient clair.

Pour clore ce petit essai, je dirai que le mieux est de suivre avec confiance son propre chemin. Il est évident que la manière de travailler varie selon chacun. Et chacun invente. L’essentiel étant, me semble-t-il, d’avoir confiance en son intuition et en ses désirs.