山形大学と仏検−学生が共に学べる環境づくりを目指して−
合田 陽祐(山形大学)
仏検は山形大学のフランス語教育に欠かせない重要な柱の一つです。本学では、3名のフランス語専任スタッフと1名の非常勤講師が協力して、一昨年より団体受験に取り組んでいます。そして昨年からは、仏検の受験者と合格者にそれぞれ加点する旨を、全学共通のシラバスに明記しています。クラス内でも仏検受験を盛んに呼びかけた結果、春秋合わせての受験者数が、100名の大台を突破しました。この数字は、全学での1年生のフランス語履修数140名を考慮すると、なかなかのものと言えます。じっさい受験者の大半を占めるのは、初修外国語としてフランス語を学ぶ1年生で、そこには文系だけでなく、理系の学生も含まれています。また肝心の仏検合格率は、2017年度は全体で8割5分以上と高い水準にあります。
初修外国語の1年生クラスの場合
おもに1年生を対象に週2回行う、基盤教育の授業で教えられることは限られています。そのカヴァーをしてくれるのが仏検です。年2回の仏検受験に学生が自主的に取り組めば、語彙力や聴解力の大幅なアップにつながります。また、資格の取得という具体的な目標をもって勉強できるのも、仏検の大きな魅力です。1年生のクラスでは、春季試験での5級、秋季試験での4級の取得を目指して取り組みます。
山形大学のフランス語教育では、学生が一つの課題に協力して取り組めるような環境づくりを大切にしています。たとえば定期試験では、筆記にくわえて、必ず会話のテストも課していますが、会話のダイアローグは、ペアで練習することを推奨しています。昼休みの教室からは、会話練習をするグループの笑い声がしばしば聞こえてきます。なかには家に帰ってから、スマホを使ってペアで練習しているという学生もいました。語学の学習は孤独だとしばしば言われますが、やり方次第では、集団で楽しく学ぶこともできるわけです。仏検対策も同様で、団体で受験する学生たちは、休憩時間に問題の出し合いをして、互いに協力しながら試験対策を行っています。
また仏検の時期が近づくと、1年生を対象に「仏検直前対策講座」が開かれます。講座は2週に分けて開講され、講師は専任教員が交替で務めます。仏検の試験には、まだ授業では習っていない箇所が含まれます。その部分を補い、合格率を少しでも上げるのがこの講座の目的です。受講は自由ですが、毎年約50名の1年生が、この講座に積極的に参加してくれています。
フランス語のイベント
山形大学では、同じ初修外国語の中国語やドイツ語と比べると、フランス語の履修者はさほど多くはありません。また本学は県内各地にキャンパスが分散していますが、1年生は全学部が一つのキャンパスに集まり、語学の授業を受講します。
これらの条件をいかして、学部や学年の壁を越えて参加できるイベントを、一昨年から企画しています。「パリ祭in山形大」とクリスマス会です。さらに昨年からは、フランス語暗唱コンクールも開催するようになりました。
7月14日のフランス建国記念日には、同僚の柿並良佑先生の弾くギターに合わせて、パリ祭に因んだシャンソンを大合唱したり、フランス語でビンゴゲームを行ったりします。古典的なシャンソンの歌唱は、文章と発音を一致させ、正しいフランス語のリズムを身に付けるのに適していますし、初学者がフランス語の数字を正確に聞き取るのは容易なことではありません。ですので、ビンゴといえどもみな必死です。
暗唱コンクールでは、フランスの詩や評論文の暗唱に取り組んでもらっています。個人部門のほかに団体部門も設けて、ペアで練習しやすいようにしています。昨年は21名の学生が参加し、朝日出版社、駿河台出版社、白水社各社の協賛を得て、盛会のうちにコンクールを終えることができました。コンクールには留学帰りの4年生も参加してくれ、1年生はその4年生の発音を聞き、流暢さに驚いていました。いずれは何名かの学生に、学外のフランス語コンクールや弁論大会にも挑戦して欲しいと考えています。
2・3年生のフランス語専門クラスの場合
本学でフランス語を主専攻として学ぶ学生は、人文社会科学部のグローバル・スタディーズコースを中心に、一学年に5名ほどいます。そのほとんどがフランス語圏への留学希望者です。交換留学先には、ケベックのモントリオール大学(4名)とフランスのアンジェ大学(2名)があります。そして今年度より新たに、パリ・ナンテール大学(2名)との交換留学制度がスタートします。これを機に、フランス語圏からの留学生との交流がますます活発になっていくはずです。
仏検に関しては、専門教育が始まる2年次春から、留学開始の3年次夏までに、準2級が取得できるよう呼びかけていますが、最近では、1年生からフランス語を始めて、2年生までに2級を取得する強者もいます(2016年度の実績は、3級が2名、準2級が1名、2級が1名合格。2017年度は、3級が2名、準2級が2名、2級が2名合格)。
留学希望者は、ネイティヴ講師による会話作文の授業のほかに、1年生の後期から、「留学事前学習」という授業を履修します。この週に1度の授業では、DELFの試験対策を行っています。学年別に2クラスが開講されており、留学開始までにB1の取得を目指しています。最近では語学留学にくわえて、学部専門留学に挑戦する学生が増えてきました。英語でも容易に真似できないことに、フランス語を用いて果敢にチャレンジする姿を見て、とても誇らしいとともに頼もしく感じています。
新たな言語への取り組みは、未知なる世界と自己を発見するための旅のようなものです。そしてその旅の過程を目に見える形にしてくれる仏検は、しばしば単位の取得のみで終わってしまうフランス語の学習に、明確な目的意識を与えてくれます。今後も、一人でも多くのフランス語履修者が、自信をもって「仏検○級取得」と書類に書けるよう、またそれぞれの旅がより素晴らしいものとなるよう、しっかりサポートしていきます。
最後になりますが、サークルやバイト、忙しい授業の合間を縫って仏検の勉強をし、試験日はバスで1時間かけて仙台会場まで赴いてくれる学生たちに、心から感謝したいと思います。