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千葉会場復活

                     高橋 信良 (千葉大学 言語教育センター)

千葉会場が復活しました。今年から千葉大学が千葉会場をお引き受けすることになりました。これはもちろん千葉在住の受験生の利便性向上のためですが、そこには千葉大学のフランス語教育に仏検を積極的に取り入れたいという思いがあったことも事実です。なにを今さら、と思われるかもしれませんが、今だからこその理由があります。そこで、千葉大学教養科目としてのフランス語教育について、少しばかり事情を説明したいと思います。

千葉大学では、1994年の教養部廃止に伴い、一般教養の外国語科目を担当する組織として外国語センター(現在の言語教育センター)が設置されました。同センター設置当初、開講されていた言語は英語を除いて14言語ありましたが、現在は7言語(ドイツ語、フランス語、中国語、スペイン語、朝鮮語、ロシア語、イタリア語)に縮小されています。また、旧教養部では、既修外国語(英語)と同じく初修外国語(フランス語など)も必修科目でしたが、1997年、多くの学部で初修外国語の自由選択化、いわゆるゼロオプション化が始まり、今なお選択必修としている学部は9学部中、2学部のみです(医学部と法経学部、最低必修単位数は両学部とも4単位)。

こうした抜本的変更をうけ、初修外国語はコース別履修システムに移行しました。コースはすべてセメスター制で、週1回の2つのコース(「文化コース」「併設コース」)と週2回の「マスターコース」の計3コース。レベルは6段階に分かれます。「文化コース」は各言語の文化紹介と入門レベルの語学力習得をめざす一方、「マスターコース」は最初から実用的な語学力を習得するためのものとなります。そして、「併設コース」は「表現」(会話、作文)と「読解」(ヒヤリング、講読)に細分化され、「マスターコース」を補うかたちで開講されます。レベルに関しては、1〜2を「入門」、3〜4を「基礎」、5〜6を「中級」とみなし、フランス語の科目名を例に挙げれば、フランス語1、2が「文化コース」、フランス語1+2、3+4が「マスターコース」、フランス語3〜6が「併設コース」となります。また、各コースの特徴を生かすために工夫してきたことは、1)シラバスの見直し、2)基準の明確化、3)「文化コース」1の前・後期への二重設定です。1)については、何をどこまで学ぶか、内容と到達目標をより具体的に説明し、特に「マスターコース」は共通シラバスにもとづき、担当者ごとの特徴を説明するように心がけています。2)については、「入門」の修了レベルを統一することで、「文化コース」から「マスターコース」への移行を可能としています。そして3)については、「文化コース」を前・後期に設定することで、後期からの外国語学習を可能とするだけではなく、前期ドイツ語1・後期フランス語1のように、より多くの言語を学ぶ機会を学生に与えようとするものです。

以上のようなコース制へ変更した結果、初修外国語の受講者数は、ここ数年、増加傾向を示しています。レベル1と1+2を例に挙げると、7言語全体で、2006年に2354人だった履修者数は、2011年には4087人に増えています。しかし、喜んでばかりはいられません。その内訳をみると、レベル1が1111人から2501人に増えているのに対し、レベル1+2では1243人から1586人とほぼ横ばいなのです(フランス語もまったく同じ傾向で、1が150人から327人、1+2が277人から277人です)。つまり、最初から学習意欲の高い学生(週2回の「マスターコース」履修者)が毎年一定数いる一方、多くの学生は未知の言語に関心があっても、まずは様子をみてみたいのです。そういった学生は履修言語が少しでも難しいと感じると、直ちに別の言語に鞍替えします。そして最近、「入門」レベルで複数言語を履修するものの、「基礎」レベルは履修しないまま卒業してしまう学生が多くみられるようになってきました。つまり、多くの言語を学ぶ機会は学生に与えられましたが、一つの言語を「中級」レベルまで学習する動機づけは与えられてはいないのです。

初修外国語の自由選択化が始まったのと同じころ、一般教養のフランス語では仏検の単位認定(過去2年以内に修得した検定資格が対象)を開始しました。その内訳は、4級を2単位、3級を4単位、2級以上を6単位とするもので、現在準2級は3級と同じく4単位認定となっています。最初から高い学習意欲のある学生にとっては、この単位認定制度は励みとなり、今まで一定の効果を上げてきましたが、選択必修ゆえに単位を取らざるをえない学生にとっては授業を履修しないで単位を取る一手段でしかなくなっています。また、マスターコース(1+2)修了者は力試しとして4級から受験しますし、そもそも5級が単位認定の対象外ですから、千葉大学では5級の受験者は4級よりもかなり少ないのが現状です。現在、文化コースで様子をみるだけの学生の学習意欲を高めるきっかけとして、この5級を受験させるシステムが構築できないかと考えているところです。

初修外国語の自由選択化がここまで進んだ現在、検定資格に単位を認定することの是非については改めて検討する必要があるでしょう。しかし、単位云々以前に、仏検はフランス語学習の明確な動機づけとなり、到達目標を具体的に設定してくれます。そこで、検定日を学期末に変更できないか、到達度試験としての仏検の再利用(TOEIC-IP的な団体特別受験制度)は可能か、といった疑問が思い浮かびますが、まずは千葉会場をきちんと運営し、千葉のフランス語教育と仏検のあり方を模索していきたいと思います。