開講コース案内(2020年度)

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2020年度 開講コース一覧

・2コース5クラスと精読講座を開講します。各コースは年間30回で開講しますが、春学期と秋学期の切替時にクラスの変更や新規受講が可能です。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、秋学期もオンライン(Zoom)で開講します。
・授業日は1期15回の授業を確保します。
・短期集中講座は全4回で開講します。

クラス曜日時間定員受講期間回数
通訳者養成コース
(準備科)
10:00~12:30
(2時間30分)
15名(春)4/25~8/1
(秋)9/19~1/9
30
通訳者養成コース
(基礎科)
19:00~21:00
(2時間)
15名(春)4/17~7/24
(秋)9/18~1/8
通訳者養成コース
(本科)
19:00~21:00
(2時間)
10名(春)4/14~7/28
(秋)9/15~12/22
翻訳コース
(基礎科)
19:00~21:00
(2時間)
8名(春)4/8~7/22
(秋)9/16~12/23
翻訳コース
(本科)
19:00~21:00
(2時間)
8名(春)4/10~7/17
(秋)9/18~1/8
Le Mondeの経済記事精読10:00~12:00
(2時間)
15名12/5~3/20
2クール
4

コース・クラス紹介 

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本格的な通訳訓練を始める前の準備講座です。動画を使った通訳練習(仏→日)や、短文の翻訳練習(日→仏)を取り入れながら、関連する文法演習と派生する語彙の整理、聞き取り練習とフランス語らしい的確な表現力を養成し、通訳に必要な基礎を強化します。

【受講レベルのめやす】 仏検2級~準1級・DELF B1~B2 

クラス担当講師曜日時間受講期間受講料
(半期)
通訳者養成コース(準備科)菊地歌子
Eliane Cloose
10:00~12:30
(2時間30分)
(春)4/25~8/1
(秋)9/19~1/9
¥144,375

・上記の授業料は教材費・税込み価格です。春秋の各学期ごとに分納してください。
・受講料の他に入学金22,000円(税込み)が必要です。

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ニュースや講演などを素材に仏日と日仏の両方向で逐次通訳の訓練を行います。要約練習、ノートテーキングやサイトトランスレーション、ゲストスピーカーを招いてのライブ通訳訓練を含みます。基礎科はエスコート通訳レベルをめざし、本科は会議通訳者をめざします。

【受講レベルのめやす】 <基礎科> 仏検準1級・DELF B2以上 <本科> 仏検1級・DALF C1以上

クラス担当講師曜日時間受講期間受講料
(半期)
通訳者養成コース(基礎科)三浦信孝
Catherine Ancelot
宇都宮彰子
小林新樹
19:00~21:00
(2時間)
(春)4/17~7/24
(秋)9/18~1/8
¥115,500
通訳者養成コース(本科)19:00~21:00
(2時間)
(春)4/14~7/28
(秋)9/15~12/22
¥115,500

・上記の授業料は教材費・税込み価格です。春秋の各学期ごとに分納してください。
・受講料の他に入学金22,000円(税込み)が必要です。

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新聞・雑誌の記事などを素材に仏日と日仏の両方向で基礎的な翻訳技術の訓練を行い、本科ではさらに高度な翻訳技術を磨きます。毎週課題翻訳を提出してもらい、次回講師が添削し模範訳例をつけて返却します。翻訳には文法と語彙の知識だけでなく広い教養と専門知識、調査能力が必要です。

【受講レベルのめやす】 <基礎科> 仏検2級・DELF B1以上 <本科> 仏検準1級・DELF B2以上

クラス担当講師曜日時間受講期間受講料
(半期)
翻訳コース
(基礎科)
三浦信孝
Catherine Lemaitre
19:00~21:00
(2時間)
(春)4/8~7/15
(秋)9/16~12/23
¥115,500
翻訳コース
(本科)
永見文雄
Rodolphe Diot
19:00~21:00
(2時間)
(春)4/10~7/17
(秋)9/18~1/8
¥115,500

・上記の授業料は教材費・税込み価格です。春秋の各学期ごとに分納してください。
・受講料の他に入学金22,000円(税込み)が必要です。

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通訳者・翻訳者を志す方のための短期集中講座です。 Le Monde 紙の経済記事の精読により、仏語センテンスの趣旨を具体的につかむ意義を実感してもらい、自ら実践できるようになることをめざします。講座内容の詳しい紹介は こちら をご覧ください。
このクラスは今後常にオンライン(Zoom)で開講します。

【受講レベルのめやす】 仏検準1級・DELF B2以上 

Le Monde の経済記事精読担当講師時間受講日受講料
(全4回)
Le Monde の
経済記事精読
小林新樹10:00~12:00
(2時間)
12月5日(土)、19日(土)、
2021年1月9日(土)、23日(土)
¥20,370
Le Monde の
経済記事精読
小林新樹10:00~12:00
(2時間)
2021年2月6日(土)、20日(土)、
3月6日(土)、20日(土)
¥20,370

・上記の授業料は教材費・税込み価格です。
・受講料の他に入学金は不要です。

受講資格

【通訳者養成コース(準備科)】

・年齢制限はありません。

【通訳者養成コース(基礎科・本科)】【翻訳コース(基礎科・本科)】

・高校卒業以上または19歳以上の方に限ります。

【全コース共通】

・入学テストの合格者のみ受講が認められます。ただし一定の条件を満たす方には入学テストの免除制度があります。詳しくはお問い合わせください。
短期集中講座 には入学テストは不要です。
・学歴・職歴は問いません。
・日本語を母語としない方についても開かれていますが、入学テストで日本語能力をチェックします。
・障がいをお持ちの方や受講にあたって不安のある方は、 お申し込みの前に ご相談ください。できる限りの対応を検討いたしますが、状態によっては受講を控えていただく場合もございます。

受講に関する注意事項

<受講にあたって>
「受講上の注意」 を遵守してください。

<休講について>
・講師間の日程調整によって授業担当者を決めるので休講はありませんが、やむを得ない事情により休講があった場合は必ず補講します。
・休講・補講の連絡はメールでご案内いたします。
※補講を欠席されても、受講料の返金はいたしません。

<授業見学について>
事前連絡なく授業を見学することは認められません。ただし、前もってご相談いただければ可能な限りご対応いたします。

<個人情報の取扱について>
入学テスト出願および受講にあたって申込書に記入された個人情報は、 APEFの個人情報保護方針 に準じて取り扱います。

お問い合わせ

公益財団法人 フランス語教育振興協会
APEF青山フランス語プロフェショナルコ ース担当
〒102-0073東京都千代田区九段北1-8-1 九段101ビル6F
TEL(直通):03-6268-9680 FAX:03-3239-3157
E-mail: cours@apefdapf.org

2019年度 年末年始の休業期間についてのお知らせ

公益財団法人フランス語教育振興協会は、2019年12月28日(土)より新年1月5日(日)までを休業期間とさせていただきます。

仏検・翻訳・教育の各業務についてのご依頼・お問い合わせは1月6日(月)以降のご対応となりますことを予めご了承ください。

ご不便・ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

「学習のツボ」を更新しました(第27~30回)

学習のツボ」を更新しました。

第30回 4級のウィークポイント:代名詞(2)(初級)
大阪大学名誉教授 北村 卓

第29回 4級のウィークポイント:代名詞(1)(初級)
大阪大学名誉教授 北村 卓

第28回 大人も使える「子どもの歌」(2)(中級)
名城大学准教授 足立 和彦

第27回 大人も使える「子どもの歌」(1)(中級)
名城大学准教授 足立 和彦

 

第30回 4級のウィークポイント:代名詞(2)(初級)

大阪大学名誉教授 北村 卓 

 

前回にひき続き、4級の受験者の皆さんがもっとも苦手とする代名詞がテーマです。前回は、人称代名詞の (1) 直接目的語、(2) 間接目的語、(3) 強勢形について解説しましたが、今回は、(4) celui タイプの指示代名詞、および中性代名詞の (5) en、(6) y について扱います。それでは、さっそく最近の出題例をみてみましょう。

     

(4) celui タイプの指示代名詞

― Quelle voiture préférez-vous ?
― Je préfère (   )-ci.

    ① celle   ② celui  ③ ceux   (2019 春)

動詞 préférer「(~のほうを)好む」を用い、どちらの voiture「車」を好むのかを尋ねています。まず、voiture にかかる疑問形容詞 Quelle「どんな/どちらの」の形から、voiture が単数の女性名詞だとわかります。それを代行することのできる指示代名詞は ① celle です。② celui は単数の男性名詞、③ ceux は複数の男性名詞をうける指示代名詞です。また複数の女性名詞であれば、celles になります。このタイプの指示代名詞は、一般に単独では用いられず、本問のように -ci「こちらの」や -là「あちらの」、あるいは前置詞 de をあとにともないます。

     

(5) 中性代名詞 en

― Vous avez des amis au Japon ?
― Oui, nous (    ) avons beaucoup.

    ① en   ② lui  ③ y   (2019春)

まず、Vous avez des amis au Japon ?「あなたがたは、日本に友人がいますか」という質問に対して、代名詞を使わずに答えると、Oui, nous avons beaucoup d’amis.「たくさんの友人がいます」となります。このとき、beaucoup de …「たくさんの~」という数量表現をともなう amis は複数の不特定な友人です。

このように不特定とみなされる名詞を直接目的語としてうけることができるのは、選択肢 ① の中性代名詞 en です。特定化された名詞であれば、3人称直接目的語の人称代名詞 le、la、les でうけます。 また、en が数詞や数量表現をともなう場合には、本問のように、en+動詞+数詞/数量表現の形になります。② lui は3人称単数の間接目的語または3人称単数男性の人称代名詞強勢形です。③ y については、次項を参照してください。なお、中性代名詞も、目的語の人称代名詞と同様、つねに動詞の前に置かれます。

さらに en は〈前置詞 de +名詞(人以外のものや事がら)〉にかわることもできますが、3級からの学習内容となります。

  

(6) 中性代名詞 y

― Vous connaissez cette ville ?
― Oui, nous (    ) sommes allés l’année dernière.

    ① en   ② lui  ③ y   (2018秋)

Vous connaissez cette ville ?「あなたがたはこの町をご存じですか」に対して、Oui, nous (   ) sommes allés l’année dernière.「ええ、私たちは去年(  )行きました」と答えています。このとき、人称代名詞を使わずに答えると、Oui, nous sommes allés l’année dernière à cette ville.「はい、私たちは去年「その町に」行きました」となります。

さて、〈場所を示す前置詞(à、chez、dans、en、sur …)+名詞〉は中性代名詞のyで表わすことができます。したがってこの場合、à cette ville は ③ y でうけます。先ほどみたように、選択肢 ① en は不定冠詞や部分冠詞、数詞や数量副詞などがつく不特定の名詞を直接目的語としてうけるときに用いる中性代名詞、② lui は3人称単数の間接目的語または3人称単数男性の強勢形です。

なお、4級で問われることはあまりありませんが、y は〈前置詞 à +名詞(人以外のものや事がら)〉にかわることもできます。

              

2回にわたって代名詞をおさらいしましたが、筆記の第2問で出題される人称代名詞、指示代名詞、および中性代名詞に限りました。しかしながら、疑問代名詞(qui, qu’est-ce que など)や不定代名詞(rien, personne など)も4級の学習範囲です。さまざまな場面で出てきますので、あわせて復習しておきましょう。

新たな言語を学ぶこと

2018年秋季準1級合格・ロクシタン賞
堀内 美沙子
学生(上智大学)・千葉県

 horiuchi_001_250x414 今の私を形作るためには、フランス語という道具がなければほとんど不可能であったように思います。

大学の専攻でフランス語学科を選択したことが学びの始まりです。その頃の私は、フランス語でこれがしたい・あれになりたい、というような具体的な展望は特に持ち合わせていませんでした。とりあえず英語以外の外国語を習得したい、という軽い気持ちであったと覚えています。強いて言えば、小学生の時に観た、ルイ・マル監督の「地下鉄のザジ」で映し出されたフランスが、幼い頃からの憧れだったということくらいでしょうか。

語学をゼロから学ぶことはもちろん易しいことではありません。発音練習・文法・単語・コミュニケーションと一通りを、毎日つめつめで学ぶ日々が3年間続きました。“r”の発音を習得するのが、少し早かったことくらいはモチベーションになっていたように思います。

3年次には、多くの学科生と同じように、仏語圏への交換留学を決心していました。留学先には、フランスのお隣のベルギーを選びました。そこは、私を特徴づけるものとして、何よりも「日本人であること」が先行する世界でした。私は一年間 une fille japonaise として、異邦人としての生活を送りました。そこでは “r” の発音ができるからといって、ほめられるわけではありません。

現地の大学で私が履修したのは、性(ジェンダー、セクシュアリティ)やアイデンティティーに関する授業です。授業は内容が高度な上に、使用されるフランス語も私にとってはいじわるに感じるくらい難解だったため、一回の授業ですべて理解することは不可能でした。そこで私は授業を録音して、寮に帰ってからそれを文字に書き起こすことで復習をしました。こうして、わからなかった単語を学習し、またディクテの練習をすることもできました。おかげで、授業に関する理解を深められただけではなく、リスニング、スピーキング、ボキャブラリーのレベルも上げられたと感じます。またこの授業での学びがきっかけとなり、今までの性に対する捉え方や疑問を改めて考えることが私の目標となり、行動する上での新たな指針となりました。

 horiuchi_002_300x325語学学校では、留学生向けに開催されたショートエッセイのコンテストに参加しました。私は、留学当初に感じたベルギーと東京の違いに対する戸惑い、その中で見つけたベルギーで暮らす人々のあたたかい心をフランス語で綴りました。エッセイの中では、東京の地下鉄の様子を “être serrés comme des sardines”(イワシのようにぎゅうぎゅう詰めに)という表現を使って説明しました(私はこの表現が個人的にとても好きです。日本語だったら「寿司詰めになる」という表現を使うということに気がつき、食文化の違いを感じるとともに、両国の食へのこだわりを感じ、愛おしさを覚えます)。

このエッセイには、他の国からの留学生たちからも、たくさんの共感のコメントが集まりました。母語以外の言語で、自分の思いを、異なるルーツを持つ人々とシェアする…これが言語を学ぶことの意義の一つではないでしょうか。結果的に、出場した部門で、私の文章は優勝を勝ち取ることができました。

帰国してから約4ヶ月後、仏検を受験しました。口頭試験では、ジェンダーに関するテーマが出題され、運命のようなものを感じました。 horiuchi_bruxelles_cielbleuベルギーでこのテーマについて友人と語り合ったことを思い出しながら自分の意見を話すうちに、7分間あっという間に過ぎていきました。

私にとっての仏検の合格は、大学・留学での学びを証明するものです。最初から具体的な目的があったわけではありませんでしたが、フランス語という舟に乗って、様々な経験ができたおかげで、私が大切にしてきたもの・これからも大切にしていきたいことに気がつくことができました。言語を学ぶ楽しさはそこにあるような気がします。




第29回 4級のウィークポイント:代名詞(1)(初級)

大阪大学名誉教授 北村 卓 

 

文のなかで名詞の機能を代行するものが一般に代名詞と呼ばれ、人称代名詞、指示代名詞、中性代名詞、疑問代名詞、関係代名詞、不定代名詞などがあります。主語を表わす人称代名詞(je, tu, il, elle, nous, vous, ils, elles)や「あれ、これ、それ」という意味を表わす指示代名詞(ce, çaなど)は、すでに5級でも出てきますが、代名詞がトピックとして出題されるのは4級以上の級になります。ここでは、4級に焦点をしぼって解説します。

              

さて、4級で代名詞が問われるのは筆記問題の[2]です。4級のレベルでは、人称代名詞の直接目的語、間接目的語、強勢形、celui タイプの指示代名詞、および中性代名詞の en、y などが出題されます。この問題の得点率は、ほとんど毎回、筆記問題のなかでもっとも低く、受験者の皆さんが苦労していることがわかります。逆に、この代名詞をしっかり理解することが、4級合格へのステップだともいえます。まず、人称代名詞の直接目的語、間接目的語、および強勢形について、最近の出題例から検討してみましょう。

     

(1) 人称代名詞の直接目的語

― Tu as la clé ?
― Je ne (   ) trouve pas.

    ① elle   ② la  ③ lui   (2019 春)

Tu as la clé ? は「主語+動詞+直接目的語」の構文で、「(君は)鍵を持った?」の意味です。ここでは、直接目的語の la clé「鍵を」を適当な代名詞でうけて、「それが見つからない。(←私は「それを」見つけていない)」という受け答えの文を完成させます。clé「鍵」は、1人称(自分)でも2人称(相手)でもない3人称(それ)です。また clé は、それにつく定冠詞 la からもわかるように単数の女性名詞です。それに対応する直接目的語3人称の人称代名詞は ② la になります。このとき、単数の男性名詞ならば le で、男性女性にかかわらず複数の名詞ならば les でうけます。形は定冠詞と同じです。

① elle は単数の女性名詞をうける人称代名詞ですが、3人称の主語または強勢形の形です。③ lui は人称代名詞の間接目的語(3人称単数)、あるいは強勢形(3人称単数男性)の形です。なお、目的語の代名詞はかならず関係する動詞の直前に置かれますので注意してください。

     

(2) 人称代名詞の間接目的語

― Notre grand-mère aura bientôt 80 ans.
― Qu’est-ce que tu vas (    ) offrir ?

    ① l’   ② leur  ③ lui   (2018秋)

Notre grand-mère aura bientôt 80 ans.「私たちの祖母はもうすぐ80歳になる」に対し、Qu’est-ce que tu vas (   ) offrir ?「君は何を(  )プレゼントするつもり?」と聞き返しています。空欄には、「君の祖母に」つまり「彼女に」という間接目的語の人称代名詞が入りますので、正解は ③ luiになります。

① l’ は3人称単数の直接目的語 le「彼を、それを」か la「彼女を、それを」が母音または無音のhで始まる語の前に置かれるときの形です。ここでは、Notre grand-mère をうける l’(=la) ともとれそうですが、そうすると「彼女をプレゼントする」となってしまいます。そもそもこの文の直接目的語は疑問代名詞の Qu’est-ce que「何を」なのですから、空欄に入れるべきものは間接目的語しかありません。また、② leur は間接目的語ですが、「彼らに、彼女らに」という3人称複数の形です。

  

(3) 人称代名詞の強勢形

― Où vas-tu ?
― À la piscine. Tu viens avec (    ) ?

    ① je   ② me  ③ moi   (2018春)

Où vas-tu ?「どこに行くの」ときかれて、À la piscine.「プールに」と答えたあとに、Tu viens avec (    )?「(   )といっしょに来る?」と付け足しています。選択肢をみると、すべて1人称単数の人称代名詞です。① je は主語で「私は」、② me は直接目的語あるいは間接目的語で「私を、私に」となります。 ③ moi は強勢形です。

強勢形は、(1) 主語の強調、(2) 前置詞のあと、(3) C’est の表現のあと、(4) 比較の queのあと、(5)「~もまた」(たとえば、Moi aussi.「私も」)の表現などで用いられます。本問では、前置詞 avec のあとですから、強勢形の ③ moi が正解になります。

              

ここでは、人称代名詞のみを扱いましたが、次回では、celui タイプの指示代名詞、および中性代名詞の en と y について解説します。

第28回 大人も使える「子どもの歌」(2)(中級)

名城大学准教授 足立 和彦 

 

『小さなフランス人のためのフランスの歌』前回は、「子ども向けの歌は大人の学習者にも有効!」という理由をいろいろ挙げた上で、「でも文法確認も怠らずに」という話をしました。そこで今回は、1つの歌の歌詞全体をていねいに見てゆこうと思います。

                

取り上げるのは、« Une souris verte »「緑色のネズミ」です。(これも一例で、ヴァリエーションが存在します)。

 

Une souris verte                        緑色のネズミ
Qui courait dans l’herbe,            草の中を走っていた。
Je l’attrape par la queue,            尻尾を持って捕まえて、
Je la montre à ces messieurs.     おじさんたちに見せた。
Ces messieurs me disent,           おじさんたちは言う
Trempez-la dans l’huile,             油につけなさい、
Trempez-la dans l’eau,               お湯につけなさい、
Ça fera un escargot tout chaud.  熱々のエスカルゴになるよ。

単語のレベルで言えば、souris, attraper, tremper, escargot は、準2級以上です。2行目の qui は分かりますか?……主語を受ける関係代名詞(3級)。動詞 courait の不定詞は courir、半過去は「継続、状態」を表しています。では3行目の l’、4行目の la は?……une souris を受ける直接目的語人称代名詞(4級)ですね。6, 7行目の la も同じですが、こちらは命令文で、動詞の後ろにトレデュニオンで結ばれています。この辺りは、もう十分に習得済みでしょうか?

では、3行目の前置詞 par、自分でもこのような使い方ができますか?……これはある部分を「~の所を」と指す用法です。準2級の前置詞の問題で問われるレベル。最近の試験でも、« Elle m’a saisi ( par ) le bras. »「彼女は私の腕をつかんだ」(18年度春季) が出題されています。なお、こういう時にフランス語は、所有形容詞 sa queue ではなく、定冠詞 la queue を用いる決まりです。

次に、8行目の fera はどうでしょう。faire の単純未来ですが、この用法は説明できますか?「作る」や使役の用法から、なんとなく「分かった」ことにしていませんか?辞書をよく調べてみましょう。プチ・ロワイヤル仏和辞典では「(経験などを積んで)~になる」という用法として、« Il veut faire (un) artiste. »「彼は芸術家になりたがっている」という例文が挙がっています。faire 本来の意味から派生した、自動詞的な用法です(これは何級レベルでしょうか?もしかしたら1級かもしれません)。

「アヴィニョン橋」最後に冠詞についても見ましょう。冒頭の « Une souris » の不定冠詞は、「ネズミ」が聞き手にとって初出の情報であることを示しています。これは理解しやすいでしょう(最後の « un escargot » も同様ですね)。では « dans l’herbe » の l’ (=la) はどうでしょうか? そもそも herbe はなぜ単数?そして不定冠詞 une や部分冠詞 de l’ ではなく、定冠詞が使われているのはどうしてでしょうか?

まず、herbe はよく集合名詞として「草、草原」を表し、この場合は単数形を使います。次に定冠詞ですが、ここで定冠詞が用いられるのは、話題のネズミが走っていた草原は「特定」の草原に限定されるからでしょうか?では、6行目の l’huile、7行目の l’eau の la はどうでしょう?こちらは、まったく「特定」されていませんね。この場合、いわゆる「総称」の定冠詞の一種と考えられます。

「総称」というと、« Émilie aime ( le ) cinéma italien. »「エミリーはイタリア映画が好きです」(17年度秋季5級)のような使い方を最初に習いますが、そこまで抽象的でなくても、「油」や「水(湯)」といった種別だけを問題にしている時には、定冠詞が使われます。そうすると、翻って「草の中で」« dans l’herbe » も、同じように「種」として捉える定冠詞と考えるほうがよいかもしれません。たとえば「水」の中でも、「砂」の中でもなく、「草」の中である、ということを示しているという訳です。

すでにご存じのように、不定冠詞、部分冠詞と定冠詞の区別は(それ自体は5級レベルでも)、実際に自分で使う場合には判別が難しいものです。ですから、子どもの歌のような身近な例を通して、ニュアンスの違いを少しずつ実感してゆくことが大切だと思います。

文法に関する細かい話は苦手な方もいらっしゃるでしょうが、ネイティブ話者ならば感覚的に把握できる微妙なニュアンスを、私たち学習者は「頭で理解する」ことが、どうしても必要なのではないでしょうか。だからこそ、子どもの歌を歌って、まずは気楽に生きたフランス語に親しみながら、時には改めて一つ一つの用法を確認してみる。いささか地味ではありますが、そこに「学習のツボ」があると思うのです。その時には丁寧に辞書を引いて、十分に納得できるまで考えてみましょう。身近に頼れる先生がいると心強いですね。皆さんの学習が楽しく、かつ効果的なものであることを願っています。

                

「緑色のネズミ」について、あと一つ、大きな問いが残っていました。そもそも、緑色のネズミって何なのでしょう?そして、なぜネズミは油につけられるのでしょうか?

一説では、この歌の内容は歴史と関係があるといいます。「アヴィニョン橋」フランス革命時代、ヴァンデ地方で反乱 (la guerre de Vendée) が起こりました。反乱軍の兵士は緑色の軍服を着ていて、「ネズミ」と呼ばれていました。彼らは革命政府の軍に捕まると、厳しい拷問によって処刑されました。その拷問の方法が、熱した湯や油に投げ込むというものだったのです……。

どこまで本当か分かりませんが、一見無害な「子どもの歌」の背後に、大人の世界が透けて見えることもあるでしょう。大人だからこそ分かる面白さが、そこにあるかもしれません。

大人の学習者の皆さん、ぜひ子どもの歌を活用して、学習に役立ててください。

 

挿絵をご紹介した Vieilles Chansons et rondes pour les petits enfants『幼い子どものための古い歌とロンド』(Boutet de Monvel 挿絵、1884年)は、今でも広く親しまれている絵本です。Source gallica.bnf.fr / BnF

高校生フランス語プレゼンテーションコンクール開催のご案内

全日本高校生フランス語プレゼンテーションコンクール開催のご案内

この度、当協会は国際交流基金パリ日本文化会館より依頼を受け、2020年3月14日にパリ日本文化会館にて開催される第4回全仏高校生日本語プレゼンテーション発表会に日本から招待される高校生の選考コンクールを開催することとなりました。

パリ日本文化会館においては、フランスにおける中等日本語教育を支援すべく2017年3月より全仏高校生日本語プレゼンテーション発表会が毎年開催されております。昨年度は、日仏外交関係樹立160周年を祝う祭典「ジャポニスム2018」の一環として日本から高校生が特別に当行事に招待され、日仏の高校生たちの交流が図られましたが、好評を博したため、今後も交流の継続を希望する声が多数あがりました。

こうした背景のもと、当協会は別紙の募集要項のとおり本コンクールを主催いたしますので、フランス語教育に熱心に取り組まれ、国際社会で活躍する優秀な生徒を輩出されている高校の先生、生徒さまには、奮ってご応募いただきますようお願い申し上げます。

公益財団法人フランス語教育振興協会

第27回 大人も使える「子どもの歌」(1)(中級)

名城大学准教授 足立 和彦 

 

『小さなフランス人のためのフランスの歌』初級文法を一通り学習したら、いよいよ「本物」のフランス語に触れてゆきたいですね。「読み」に関してなら、どんな分野であれ、自分の関心のある話題についての文章を、辞書を引き引き読んでいけばいいのですが、言うは易し、初めは分からない単語も多く、なかなか思うようにいかないかもしれません。

そんな時、まずは簡単なところからと、子ども向きの本を手に取られる方も多いでしょう。手頃なのは絵本ですね。日本でも人気の Gaspard et Lisa『リサとガスパール』(なぜか日本語は語順が逆)や、同じ作者の Pénélope tête en l’air『うっかりペネロペ』(3歳のコアラの女の子)のシリーズは、繰り返しの表現が多く、とても読みやすいです。

古いところでは Barbapapa『バーバパパ』(barbe à papa「パパのあごひげ」すなわち「綿菓子」からの造語ってご存知でした?)や Babar『ぞうのババール』(だいぶ文章が長くなります)は、定番中の定番です。絵本を卒業したら、今度は小学生向けの読み物 Le Petit Nicolas『プチ・ニコラ』シリーズでしょうか(日本でいえば『ドラえもん』のような、1960年代ののどかなフランスの子どもたちの生活が垣間見られます)。こうした子ども向けの作品をさくさく読んで自信をつけてから、改めて大人向けのものに挑戦されてはいかがでしょうか。

それに加えて、今回とくにお勧めしたいのが、子どもの歌(chansons pour (les) enfants, comptines)です。すでにこの連載の第2回に、麻田美晴先生が「『わらべうた』でフランス語」という記事を書かれていますが、改めて、「子ども向けの歌は大人の学習者にも有効!」とお伝えしたいと思います。

                

まずは、なんといっても歌ですから、歌詞を覚えれば誰でも歌えて、楽しみながらフランス語に親しめます。子どもの歌は短いものが多いので、覚えるのも難しくありません(何番も歌詞が続くものもありますが)。今はインターネットで検索すれば、歌詞はもちろん、たいていの歌には動画が見つかります。字幕つきのものも少なくないので、見ながら一緒に歌うことができるでしょう。手軽に簡単に始められるのが、歌のよいところです。

「ギユリ大将」もちろん、言葉をメロディーに乗せますので、自然な会話のイントネーションとは異なりますが、正確な発音の確認と練習にはもってこいです。また、一音に一音節を乗せるのが基本ですから、単語の分節を意識するのにも役立ちます。noir や trop は1音節、entrez や vraiment は2音節。繰り返し歌っているうちに、カタカナ発音をきっぱり卒業できること、間違いありません。

子どもの歌で面白いのは、時々、意味はないけれど調子のいい言葉が挟まるところ。« Et ron et ron, petit patapon »( « Il était une bergère »「羊飼いの娘がいました」)とか、« Titi carabi, toto carabo »( « Compère Guilleri »「ギユリ大将」)など、口に出すだけで楽しい気分になれますね。

(ただ、音の数を合わせるために、母音の省略がよく起こります。たとえば「ギユリ大将」の出だしは、 « Il était un p’tit homme / Qui s’app’lait Guilleri »。p’tit (petit) は1音節、s’app’lait (s’appelait) は2音節になります。)

ねぼすけのお坊さん « Frère Jacques »「修道士ジャック」(英語の “Are you sleeping, brother John” のほうが有名でしょうか)や、こちらも居眠りしている « Meunier, tu dors »「粉引きおじさん、寝ているの」は、最も短い歌です。メロディーが有名なのは、ピエロとのおかしなやり取り « Au clair de la lune »「月明かりの下で」や、自分で振った恋人が忘れられない(?)« À la claire fontaine »「澄んだ泉へ」でしょう。まさしく「フランス人なら誰でも知っている」有名な歌がいくつもありますから、いろいろ探して、ぜひお気に入りを見つけてください(なお、歌詞にはヴァリエーションが存在するので、注意が必要です)。

時に童心に帰って歌を口ずさめば、気分転換やストレス解消にもなるでしょう。もしかしたら宴会の余興にも使えるかもですね。受けるかどうかは分かりませんが……。

                

というわけで、子どもの歌はとっても役に立ちますが、ただし油断は禁物です。必ずしも文法的にも「簡単」だとは限らないのです。そこでお勧めしたいのは、歌の意味が分かっただけで安心せず、言葉の文法的用法を「自分で説明できるか」、一つ一つ確認してみることです。

たとえば、日本語の歌にもなっている « Sur le pont d’Avignon »「アヴィニョンの橋の上で」の歌詞は、« Sur le pont d’Avignon, / (L’)On y danse, (l’)on y danse. / 「羊飼いの娘がいました」Sur le pont d’Avignon, / (L’)On y danse tous en rond. »「アヴィニョンの橋で/踊るよ、踊るよ。/アヴィニョンの橋で/輪になって踊るよ」です。では、この y は何でしょうか?……そう、副詞(または中性代名詞)で、« sur le pont d’Avignon » の言い換えですね(4級レベル)。ちなみに、on の前に l’ が付くこともありますが、この l’ は何だか、説明できますか? これは、母音の連続を避けるための le で、本来は定冠詞ですが、特別な意味は持っていません。et, ou, si などの後に on が続く時によく用いられます。

では「澄んだ泉へ」のルフラン(繰り返し)« Il y a longtemps que je t’aime, jamais je ne t’oublierai. »「ずっと前からあなたが好き、決してあなたを忘れない」の il y a は問題ないでしょうか? 非人称構文の il y a は、もちろん「~がある」(5級レベル)のほかに、時間表現「~前に」(4級相当)があります。« Et il y a six ans, j’ai créé ma propre société de taxi. »「そして6年前、私は自分のタクシー会社を起こしました」(17年度春季準2級、聞き取り問題)のような使い方ですね。けれど、ここでの用法はそれとも違い、il y a + 時間 que + 直接法「~前から…している」です。« Il y a une heure que je l’attends. »「もう1時間も彼(女)を待っている。」この使い方、ご存じでしたか?

なお、同じルフランの後半部分は ne と jamais で「絶対~しない」の表現(5級)ですが、« Jamais je n’accepterai. » 「断じて承服できません」のように、強調する時に jamais を文頭に置くことがあります。倒置によって、話者の強い気持ちを表しているのですね。

今回はひとまずここまで。次回はより実践的に、1つの歌を詳しく調べてみることにしましょう。

 

挿絵をご紹介した Chansons de France pour les petits Français 『小さなフランス人のためのフランスの歌』(Boutet de Monvel 挿絵、1886年)は、今でも広く親しまれている絵本です。Source gallica.bnf.fr / BnF

特派員の私の仕事

古山 彰子(NHKヨーロッパ総局)

私は今、パリにあるNHKヨーロッパ総局で特派員をしています。記者になって9年目。2011年に記者職でNHKに入局し、広島で5年間、警察や司法、行政、原爆の取材などをし、その後2年間は渋谷の報道局国際部でヨーロッパを担当し、2018年夏から特派員になりました。フランス語との出会いは高校1年生の春。静岡県の私立高校で、毎週土曜日に希望者のみが中国語、スペイン語、フランス語を学べる授業がありました。英語が好きだった私は、2つめの外国語も学んでみたい、スペイン語が楽しそうかななどと考えていたら、英語の補修の授業と重なってしまい受講できません。中国語は、漢字が苦手だし・・・(笑)、などと消去法をし、最後に残ったのがフランス語でした。フランスがどこにあってどんな国なのかを想像することもなく、何の憧れも抱くことなく学び始めましたが、すぐにその美しい響きに魅了され、フランス語を自分の言葉にしたいと強く思うようになりました。

仏検を受けたのは高校1年生の冬が初めてで、5級に合格した時はすごく嬉しかったのを今でも鮮明に覚えています。その後、大学では文学部英文学科に進学したものの、どうしても諦めきれず、4年生から1年間、大学の交換留学制度でパリ政治学院で学びました。特派員になってからは、ニュースで使われる単語や表現が分からず苦戦し、例え分かっても、さあどうやって日本語に訳そうか、意義づけしようかと、日々試行錯誤しています。この1年間、私が向き合ってきたフランスの国政について、振り返ります。

マクロン政権を窮地に!?半年あまり続いた黄色いベスト運動

この1年間、日本のメディアで最も報じられたフランスのニュースは、間違いなく「黄色いベスト運動」だったと思います。きっかけは、マクロン政権が打ち出した2019年1月からの燃料税の引き上げ。2018年11月17日に行われた初回のデモには、全国で24万人あまりが参加しました。年の瀬が近づき寒さもいっそう厳しくなる中、デモはその後も毎週土曜日に呼びかけられます。私も毎週のように早朝のシャンゼリゼ通りに取材に出かけ、デモの様子を撮影したり参加者にインタビューしたりして、夜の「ニュース7」や朝の「おはよう日本」に向けて原稿を書きました。

たくさんの人にインタビューしましたが、私が出会った人たちは全員、地方からパリまでデモをしに来ている人たちでした。中には、金曜日に仕事が終わったあと、夜通し運転してパリまで来て、早朝からデモに参加しているという人も。マクロン大統領は、燃料税を引き上げることで、なるべく車を使わない社会を実現し、電気自動車などにシフトすることで地球温暖化対策を強化したいという考えでした。しかし、地方で暮らす多くの人たちにとって車は必要不可欠で、電気自動車に買い替える金銭的余裕もなく、大統領が掲げる温暖化という崇高な理想にはついていけないというのが現実なのです。

「エリートで、地方の人たちの気持ちが分からない」とたびたび批判されるマクロン大統領は、時折「私も地方出身だ」などと発言し、こうした批判をかわそうとしています。しかし、車、そして燃料税という地方の人たちの生命線とも言える部分にメスを入れようとした姿勢は猛反発を買い、結局12月には燃料税の引き上げの 見合わせを発表。しかし、年が明けてもデモは収まりません。そこでマクロン大統領は、地方の人たちの声に耳を傾けようと、1月から地方都市に出向いて自治体の代表などと対話する国民対話(débat national)を始めます。私は初回の北西部ウール県、パリ近郊、コートダルモール県での集会を取材しました。 「国民対話」と聞いた時、きっと日本でも多くの政治家がするように、地方を訪れ、数分間地元の代表と面会し、「対話した」ことにするのだと考えていました。しかしふたを開けてみると、初回は600人近くの自治体のトップと7時間近くにわたって対話。その後、別の集会もテレビの中継を見ていると、1回の集会は6時間〜7時間は当たり前に続き、集会が終わったのがちょうど深夜0時という時もありました。

集会中、休憩時間はありません。どれだけ長時間であっても、マクロン大統領は市民と肩を並べて座り、1人1人の発言をメモを取りながら聞き、質問者の目を見て回答します。発言がヒートアップして、真冬にもかかわらず途中上着を脱いでシャツを腕まくりする姿も何度も見られました。こうした姿を、「マクロンが得意なパフォーマンスだ」という日仏関係者もいます。ただ、日本で生まれ育った私は、国のトップが地方自治体を訪れ、市民と何時間も対話する、市民がぶつけてくる医療福祉や公共サービス、中には携帯電話の電波が悪いなどという政府とは関係のない問題にまで1つ1つ耳を傾ける、という姿はこれまで一度も見たことがありません。自分が選んだ、もしくは選ばなかった けれど多数決で選ばれた国民の代表に直接意見をぶつけたい人たち、それを受けて立つマクロン大統領。集会の中で、どれだけ不満をぶつけた参加者であっても、終了後にインタビューすると「意見の違いはあるけれど、これだけ聞いてもらえてよかった」と笑顔で話し、民主主義とはこういうことなのではないかと感じた瞬間でした。

4月上旬にすべての地域を回り終えたマクロン大統領は、4月25日、大統領府で異例の記者会見を開き、「私の政策は、市民に十分に寄り添ってこなかった」と述べ、所得税の減税や2000ユーロ未満の年金受給者については2020年1月から物価上昇率に応じて支給額を増やすなどの新たな対策を打ち出します。一方で、高額所得者への富裕税の廃止といった2017年の就任当初からの政策の方針には大幅な修正は加えない考えを示しました。この発表を、マクロン大統領が譲歩したと伝えるメディアもあれば、何も変わらなかったと伝えるメディアもあり、評価は分かれています。それでも、一時20%台前半まで落ち込んだマクロン大統領の支持率は、7月には30%台半ばまで回復。「黄色いベスト運動」の規模も大幅に縮小しました。「パリが燃えている」と、一時は毎週騒がれたデモを、マクロン大統領は抑えるのに成功したといえると思います。

3年後の大統領選挙の前哨戦となった欧州議会選挙

今年5月に行われたEU=ヨーロッパ連合の議会選挙。普段は日本ではまったく注目されることのない選挙ですが、今年はひと味違いました。イタリアやハンガリーなど、ヨーロッパ各国でEUに懐疑的な政党が支持を伸ばす中、ヨーロッパ議会でもこうした勢力が議席を増やせばEUの重要な政策の審議に影響を及ぼしかねないという見方が広がったからです。フランスでも、マクロン大統領の中道政党「共和国前進」とルペン党首率いる極右政党「国民連合」の支持率は当初からきっ抗していました。4月、「共和国前進」のパリのメンバーがカフェに集まって選挙活動について話し合うと聞き、私も参加してみました。集まったのは老若男女10人ほど。選挙対策会議と言っても、カフェで、赤ワイン片手にチーズやハムをつまみながら話すという、一見かなり楽しそうな会です。しかし、皆口をそろえて示すのは、極右政党の躍進に対する危機感。「国民連合」は、今回の選挙で23歳のバルデラ候補を筆頭候補に指名して「反マクロン」を鮮明に打ち出し、若さと勢いで「共和国前進」の筆頭候補・ロワゾー氏は押され気味だとメディアも繰り返し伝えていました。

会議に参加していた1人が、ピエール・ロメさん(37)。パリの経営コンサルタント会社で働いています。学校では、EUこそがヨーロッパを一体的に発展させる理想の集合体だと学び、通貨統合や単一市場は生活に欠かせないものだと信じてきました。平日の仕事が終わったあとや、休日は、仲間とともにビラ配りをします。2017年の大統領選挙の決選投票で、マクロン大統領がルペン氏に圧勝したパリ。しかし、路上でロメさんに不満をぶつけてくる人も少なくありませんでした。マクロン大統領が就任直後に導入した、高額所得者への減税措置などは、いまだに「金持ちを優遇している」などと、強い反発があるのです。「黄色いベスト運動」を受けて、今年4月に所得税の減税などを打ち出したものの、就任後の2年間でマクロン大統領への風当たりが厳しくなっていることが伺えました。

 今回のヨーロッパ議会選挙は、フランスでは結果的に、2022年の大統領選挙の前哨戦となったという見方もあります。なぜでしょうか。第1党となったのは「国民連合」(23.33%)、第2党は「共和国前進」(22.42%)、第3党は「ヨーロッパエコロジー・緑の党」(13.48%)、そして第4党が「共和党」など(8.48%)。つまり、与党「共和国前進」が、2年前の大統領選挙の決選投票で打倒したはずの「国民連合」に第1党を譲っています。選挙戦が始まった早い時期から、「共和国前進が負けるのではないか」という世論調査は多くあり、私自身も結果に驚きませんでした。しかし、開票日に「共和国前進」の集会場で取材していてどうしても腑に落ちなかったのが、候補者と支援者の反応でした。「『国民連合』に負けた」と分かった時点で、記者の私は「残念です」とか「悔しいです」といった反応がほしくなります。しかし実際に話を聞くと、「私たちは2016年にできたばかりの政党で、3年という短い期間で、ヨーロッパ議会選挙でもフランスで第2党になれて光栄です」など、好意的な声しか聞こえてこないのです。その反応は、筆頭候補のロワゾー氏の表情からも読み取れました。

公共放送France2の開票速報が大画面に映された会場で結果予測が流れる瞬間、私はロワゾー氏の目の前で取材していました。まず、「国民連合」が第1党だという情報が流れた時、ほかの支援者と同様、落胆した様子を見せました。しかしその後、他の政党も含めた結果予測を目で追い、一瞬、ニコリと笑顔を見せたのです。翌日以降、専門家や日仏の政府関係者に取材をしていく中で、ようやくその意味が分かってきました。今回の選挙では一時、2017年の大統領選挙で大敗した「共和党」が再び支持を集めるのではないかという見方が広がったものの、ふたを開けてみれば10%にも満たず惨敗。つまり、現段階では、「国民連合」と「共和国前進」が他の政党を大きく引き離して絶大な支持を得ており、「共和党」が大幅な立て直しをはからない限り、 2022年の大統領選挙も「国民連合」と「共和国前進」が決選投票に残る見通しがきわめて大きい、そして、2017年に「国民連合」(33.9%)にほぼダブルスコアで勝利した「共和国前進」(66.1%)は、よほどの地殻変動が起きない限り、「国民連合」に逆転を許す事態にはならないだろうということなのです。なるほどと思いました。とは言っても、2017年の大統領選挙では、前の年に発足した「共和国前進」が一気に支持を伸ばし、マクロン大統領が誕生したのがフランスです。何が起きるか予測不可能なことも多く、そこがフランスの国政の面白さだと思います。

終わりに

 パリに来て1年あまりが経ち、特派員としての自分の役割は何だろう?とふと考えることがあります。今の私は、原稿を書き、特派員の同僚や東京の上司と日本語でやりとりする以外は、フランスのメディアを読み、現地のスタッフとやりとりし、取材に出かけ、私生活ではパリで暮らし、スーパーで食料を買い、時には現地の友人たちとフランス社会について語り合うというフランスにどっぷりつかった生活をしています。ここで暮らしている人たちが日々何を感じているのか、どうすれば日本から遠く離れたフランスを身近に感じてもらえるか、フランスの人たちからそのヒントをもらいながら仕事をしています。きっと私自身、16歳でフランス語に出会わなければ、こんなにフランスを身近に感じることも特派員を目指すこともありませんでした。そして、フランス人以外の、フランス語を外国語として話す人たちと友人同士になれることもなかったと思います。私の書いたニュース原稿やリポート、関わった番組を見て、「フランスを身近に感じた、もっと知りたくなった」と思う人が少しでも増えれば、特派員としてこれ以上嬉しいことはありません。これからも現地の人々の思いに寄り添い、取材には妥協せず、仕事を続けていきたいと思います。私に世界を開いてくれたフランス語を使って。

『APEF通信』(2019/9/20発行)掲載

仏検インターネット申込 お取り扱いの一時停止について

仏検インターネット申込は、システムメンテナンスのため、
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※期間中は申込システムへのアクセスが不通となります。
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仏検インターネット申込 お取り扱い一時停止期間

対象 : インターネット申込システムでのID取得・出願情報入力、
マイページでの各種操作

停止期間 : 2019年10月7日(月)AM 1:00 ~ 7:00

 

ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承のほど、お願い申し上げます。  

2019年度秋季試験 受験案内を更新しました

2019年度秋季試験 受験案内を更新しました。

brochure2019A

年間実施日程・受付期間
受験票・結果通知発送予定
受験地と受験級
検定料
試験時間
パリ会場受験

  郵送申込用の願書受験要項の無料送付をご希望の方は請求フォームに必要事項をご記入ください。

なお、仏検では、前回・前々回(2019年度春季・2018年度秋季)に出願された方を対象として、予めお名前等を印字した願書・受験要項をクロネコDM便でお送りしております(8月26日発送)。

ファッションと映画と仏検と

2018年春季準2級合格・全国検定振興機構理事長賞
2018年秋季2級合格
土谷 脩一
会社員・東京都

私にはフランス語を学ぶきっかけとなった2つの大きな出来事があります。

1つは1998年フランスW杯決勝直前に、スタッド・ドゥ・フランスで行われたイヴ・サンローランのショー(*)です。ボレロのリズムに乗せて300人ものモデルが艶やかに歩く姿は、当時10歳のサッカー少年だった私に鮮明な印象を残しました。

2つめは、大学の授業で観た『シェルブールの雨傘』です。ミシェル・ルグランとジャック・ドゥミが次から次へと繰り出すメロディと色彩に心を奪われ、私はフランス語学習を始めました。そして気付いた時には専攻科目を放り出し、南仏の大学へ留学していました。現地でDVDを買い漁り、毎晩音声と字幕を照らし合わせながら学習したことを今でも覚えています。帰国後は仏映画に携わる仕事を希望していましたが、縁あって現在は仏アパレルブランドの広報をしています。初めてフランスを意識したあのファッションの世界が今の職業につながっています。

私は仕事でフランス語を使用する機会に恵まれています。しかし働き始めると様々な業務に追われ、フランス語に費やす時間は徐々に減っていきました。学生時代に培った語学力は貯金を切り崩すように乏しくなり、次第に自己表現する事を苦手に感じるようになっていきました。この状況に危機感を抱いた私は、約10年ぶりに仏検を受験しました。

正直、留学前に準2級を不合格になった経験から、仏検に対する苦手意識と“仏検なんて受験しなくても”という気持ちがありました。ところが仏検対策をはじめると語彙や表現方法の幅が広がり、ビジネスでのコミュニケーションも円滑になっていきました。仏検が仕事に好循環をもたらし、今では自信をもって仕事に取り組めるようになりました。

さらにある時、担当ブランドのショーにカトリーヌ・ドヌーヴが招待客として現れました。『シェルブールの雨傘』の主人公ジュヌヴィエーヴに、フランス語で挨拶を交わした時はとても幸せな瞬間でした。語学の勉強は困難ですが、継続していけばきっと良いことがあります。

私はファッションと映画を通じてフランス語に出会いました。もちろん言語を学ばなくても洋服や作品を楽しめます。しかし言葉を学ぶことにより、デザイナーや映画監督の考えを直接理解できるようになります。また芸術の世界ではフランス語の専門用語が多く、フランス語が出来ることは大きなメリットです。フランス語は私に豊かな知識を与え、仕事の幅を拡げてくれました。

もし仏検を受けるか迷っている人がいたら、是非勇気を出して受験して欲しいと思っています。私は合格を目指していく過程でフランス語との距離が縮まり、より生活に身近なものへ変化していきました。仏検はフランス語と私を、再び結びつけてくれた3つめの大きな出来事です。これからも大好きなファッションと映画に関わりながら、準1級と1級にチャレンジしていきたいと思っています。

 

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(*) 参考:サンローランのショーを伝えるニュース(1998年7月12日)

フランス国立視聴覚研究所アーカイヴより

 

 

2019年度 夏季休業期間についてのお知らせ

公益財団法人フランス語教育振興協会は、8月13日(火)より8月16日(金)までを夏季休業期間とさせていただきます。休業期間中にお寄せいただく仏検・翻訳・APEF青山フランス語プロフェショナルコースの各業務についてのご依頼・お問い合わせは8月19日(月)以降のご対応となりますことを予めご了承ください。

ご不便・ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

仏検1次試験大阪会場に係わる代替措置について

2019年度春季仏検1次試験で一部中止となった大阪会場の1次試験に関し、以下の措置を決定いたしましたのでお知らせいたします。

  • 中止となった1級、2級、3級の試験に出願された皆さま、ならびに同会場で実施された準2級、4級、5級の試験を欠席された方々に2019年度秋季試験または2020年度春季試験への振替受験をご案内いたします。詳細につきましては、該当する全ての方に7月9日付でご案内を郵送しております。万一未着の場合は仏検事務局までご連絡ください。
  • 大学の推薦入試や留学等の要件として仏検に出願されながら、今回の事件により受験がかなわなかったことについて公的な証明を必要とされる方々には、「中止証明書」の発行を承ります。ご希望の方は仏検事務局までご連絡ください。

一部の方からご要望をお寄せいただいた今季中の再試験につきましては、試験準備に要する物質的・時間的困難により、実施を断念せざるをえませんでした。ご希望に沿うことができないのは誠に心苦しい限りですが、上記の措置につきまして皆さまのご寛恕ならびにご理解を賜りますよう伏してお願い申しあげます。

仏検実行委員会

2019年度春季仏検1次試験 大阪会場について

さる6月16日、大阪会場である関西大学千里山キャンパスにて実施を予定しておりました春季1次試験は、同日早朝に千里山駅前交番で発生した事件を受け、午後の1級、2級、3級の試験を中止といたしました。午前開催の準2級、5級、4級の試験につきましては、予定どおり実施いたしました。

仏検は公的な性格の試験であり、実施には社会的な使命がともないます。午前の試験にあたっては、多数の受験者の皆さまが早朝から会場に到着されておりましたので、現地の当協会試験実施責任者が、会場および周辺の状況、試験の中止にともなう混乱の可能性等、様々な条件を考慮した上で試験の実施を判断いたしました。実施に際しては、受験者の方々の誘導や出入口における不審者のチェックなど、安全の確保に最大限努めたことは申しあげるまでもありません。その後、事件のすみやかな解決が見込めない状況下で、午後の試験は中止との判断に至りました。受験に向けて準備を重ねて来られた学習者の方々のご心中は察するに余りあり、多くの方々が受験の機会を奪われた今回の事態は、当協会にとって痛恨の極みと申しあげるほかはありません。

前代未聞の不測の事態であったとはいえ、午前実施・午後中止の決定につきまして、受験者の皆さまが必要とされる情報をすみやかに提供することができず、来場を断念された方々、ならびに混乱のなかで会場へと足を運ばれた皆さまには、多大のご心配とご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申しあげます。また、関西大学の関係各位には、現地での対応と来場された方々の安全の確保のために多大のご協力をたまわりました。あつく御礼を申しあげますとともに、ご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申しあげます。

今回の反省を心に刻み、当協会では、緊急時における危機管理体制の整備を急務と捉え、今後の試験運営の改善をはかってまいります。日本のフランス語学習者を対象とした国内唯一の検定試験として、仏検が皆さまの信頼にこたえられるよう、協会一丸となって努めてまいる所存です。

 なお、中止となった1級、2級、3級に出願された皆さま、ならびに準2級、4級、5級の試験を欠席された方々への代替措置の詳細につきましては、現在も検討を続けております。最終的なご案内まで今しばらくの猶予をたまわりますようお願い申しあげます。

公益財団法人フランス語教育振興協会

仏検1次試験大阪会場の実施について(6月18日更新)

(6月16日11時45分公開)
関西大学千里山キャンパス近辺で発生した事件を受け、第1学舎で本日午後実施予定の仏検1級、2級、3級の試験は、安全上の理由により中止いたします。なお受験できなかった場合の再受験等の代替措置は協議の上後日ご案内いたします。

仏検実行委員会

(6月16日19時30分追記)
関西大学千里山キャンパス近辺での事件の影響で、同会場にて実施を予定しておりました春季仏検1級・2級・3級の試験を受験できなかった方々へは、2019年度秋季試験、2020年度春季試験への振替受験をご案内さしあげたく、検討を進めております。
詳細につきましては、2019年度春季1次試験結果公表日(7月10日)までにお知らせいたします。
なにとぞご理解を賜りますようお願い申しあげます。

(6月18日19時00分追記)
お問い合わせをいただいております準2級・4級・5級に欠席された方への代替措置につきましては、中止となった午後の級と同様のご対応を検討しております。

仏検実行委員会

サンティアゴ巡礼とフランス語

2018年春季4級合格・在日フランス大使館賞
坂原 三郎
無職・千葉県

 Stjacquescompostelle_300x269私がフランス語を学習するきっかけとなったのはサンティアゴ巡礼であった。サンティアゴ巡礼とはキリスト教の三大聖地であるスペイン北西部の都市サンティアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago de Compostela、仏語ではSaint-Jacques-de-Compostelle、以下SCという)の大聖堂に眠る聖ヤコブの墓を詣でること。この巡礼路はヨーロッパ中を網の目のようにつなぎ約1200年の歴史がある。スペインとフランスの“道”は世界遺産に登録されている。

この巡礼路を歩きたいとずっと思い続けてきた私は60歳で定年退職になった2010年秋、サンティアゴ巡礼に旅立った。初めての海外長期一人旅は不安だらけ。まずは言葉の壁、日常会話程度は話せるようにと2009年からスペイン語学校に通い学習を開始した。

数ある巡礼路から選んだ“道”は最もポピュラーな「フランス人の道」。スペインとフランスの国境バスク地方のフランス側にある小さな町サン・ジャン・ピエ・ド・ポー(Saint-Jean-Pied-de-Port、以下SJPPという)からSCまで850 km、34日間の旅。 20184001ss_01重さ約10 kgのリュックを背負い、1日平均25 km歩くため、足のマメ、肩の痛みは毎日続いた。しかし世界中からやってくる多くの人々との楽しい交流は心と体の疲れを忘れさせてくれた。

こんな冒険は一生で一度きりと思っていたが、これが病みつきになり毎年のように巡礼路を歩くようになった。まずスペイン国内の幹線ルート4本を5年で歩いた。スペイン語も徐々に会話の幅が広がり、年々旅を楽しめるようになった。このころはフランス語がまったくわからず、フランス人との会話はしたくてもできず、その結果友人はスペイン語圏、英語圏の人に偏っていた。

その後、巡礼の旅への興味が深まり、次はフランス国内の“道”を歩くことを計画。そのためにフランス語学校に通い2016年1月から学習を開始した。フランス語は « pie », « tranquilo », « comenzar » などスペイン語と似ているところもあるが、発音がとても難しかった。

 20184001ss_02フランス国内の幹線ルートは4本。主な出発地はル・ピュイ、アルル、ヴェズレー、パリで、いずれもSJPP付近で「フランス人の道」に合流され、距離は約900 kmある。フランス語は全くの付け焼刃だったが、2016年7月ル・ピュイからフランス国内の“道”に最初の一歩を踏み出した。SJPPまで900 km、40日間をかけて歩き通した。その後2017年はアルルからプエンテ・ラ・レイナまで、2018年にはヴェズレーからSJPPまでを歩いた。

フランス国内の“道”を歩く巡礼者の8割はフランス人で、当然フランス語が飛び交う。最初の年は私のフランス語はとても通じるものでなく、結局はスペイン語ないしは英語で対応していただき何とかコミュニケーションをとることができた。その後フランス語の勉強に力を入れる。仏検は学校の友人に刺激を受けたのと自分の力を確認するために2018年に受験した。

フランス南西部は田園地帯で自然が豊かだ。宿の多くは個人の家(ジット)で5~10人程度の宿泊者を受け入れている。夕食はこの家の家庭料理をゆっくりと2時間かけて共にする楽しいものだ。食事の時の « Bon appétit » の掛け声は今もよみがえる。 20184001ss_03年毎にフランス語にも慣れ、今ではフランス人の友人ができメールの交換ができるようになった。

今年2019年夏にはパリ(ノートル・ダム大聖堂)からSJPPまで歩く計画だ。サンティアゴ巡礼は世界中の人との交流を通して多くの出会いと発見があり、これからも続けていきたいと思う。そしてフランス語、スペイン語の学習はまだまだ続く。




芸術の国フランスへの旅立ち

2018年春季4級・5級併願合格
K.K.
画家・京都府

きっかけは2018年の春頃、フランスへ旅行したいと思いたったことでした。私は絵を学んでおりますが、日本の美術館ですと、海外の限られた名品がまとめてみられる機会が少ないのを感じており、フランスで美術をみることが必要と考えるようになりました。

フランスへ行くならまずはフランス語を多少は話せるようになりたいと思いました。

フランス語教室へ通い始めたのが4月からでした。フランス語は知らないことだらけで、戸惑いながら、発音の美しさや、フランス語を勉強することで相手の国の文化をも知ること、そして、フランス語文法の特殊なルールがなにやら謎解きのようで、それらすべてが楽しく、とても意欲的に学べたことを思い出します。徐々に単語や文法を覚えていきながら、フランス人講師となんとなくではあっても会話が通じつつあることがうれしくありました。

フランスに旅立ったのは、5月末でした。なにもかもが新鮮の連続で、勉強したフランス語が、街中のあちこちに溢れているのが楽しかったのを思い出します。

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美術館はルーブル、オルセー、オランジュリー、ポンピドゥーセンター、ドラクロワ美術館、マルモッタン・モネ美術館を見ることができました。そのどれもが日本の美術館にない充実度で、ルーブルでは古典の作品、ダ・ヴィンチやすぐれた彫刻群たちをみることができ、オルセーでは近代の作品、オランジュリーではモネの睡蓮の大作、ポンピドゥーでは数多くの現代美術を楽しむことができました。

 美術館に行くためにパリのメトロを活用しました。学んだフランス語を活用する機会は残念ながらさほどなく、ちょっと街角で立ち寄ったチェーン店系カフェなどでは店員さんに「観光客だな」と思われたのでしょう、英語で話しかけられてしまったのには笑ってしまった覚えがあります。

また、美術館の入場券売り場で « Un ticket, s’il vous plaît ! » など間違えたフランス語を使ってしまったのも、恥ずかしいがいい勉強となりました。そんなことがありながら、楽しい7日間のフランス滞在も過ぎていきました。滞在中に感じたことは、これだけ美術館の充実ぶりをみても、素晴らしく美術の理解が深い国なのだから、今後もフランスを訪れるような機会を作りたいし、そのためにはなにより今回の滞在で話せなかったフランス語をいつかは話せるようになり、フランス人と意思疎通をしていつかはフランス人と芸術の話ができるくらいになれれば、と思いました。

帰国してから、フランス語教室に戻り、レッスンの際土産話をしまして、たいして話せない自分でも、少しずつ少しずつ話せるようになっていったことが楽しくてしょうがなく、フランス語の勉強がなんて楽しいことなんだろうと感じていました時に、フランス語教室で、仏検受験申込案内書をふと目にしました。それまでは仏検なんて、私には無理だろうと考えていたのですが、こんなに楽しいことなら、自分の実力はどれだけのものか、試すつもりで、駄目でもいいじゃないかと、挑戦することにしました。

4001kk03受験対策は公式ガイドブックを繰り返し頭のなかで解いていくのを繰り返しました。仏検の勉強をすることは、フランス語教室でテキストに沿って会話していったり、フランス現地で生でフランス語に触れることに加えて、さらに原点にもどって文法的なことを学ぶことが大事だと感じました。あらためて文法書籍を読んだり、公式ガイドブックを読みながら、いままで気づかなかったことを新たに発見していって、そういった発見の喜びが楽しかったように思います。

そうして、6月に仏検4級・5級を併願受験しました。あまり自信がなかったのですが、試験終了時に配られた正答で自己採点すると、5級がまさかの100点。まさかとはおもいましたが、学んで2ヶ月でこの結果を出せたことが嬉しかったです。4級も、90点で合格できました。

今度は、3級の合格を目指してフランス語の勉強を楽しみながら頑張っています。そして、2019年10月に再度フランスに行くことにいたしました。いままではツアー会社のツアーに頼っていただけでしたが、今度は完全に自己責任での旅行のため自分のフランス語力も問われると思います。今度こそはきちんとしたフランス語を現地で話せるようにと、今から楽しみです。

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最後の灯台を背に

2018年春季1級合格・在日フランス大使館賞
志村 響
フランス語教師・東京都

20181101hs_01pol 仏検との出会いは2012年の秋、僕が大学一年生の時でした。ふとしたきっかけで翌年春にフランスでの短期滞在が決まり、大学で履修していたドイツ語の傍ら、独学でフランス語の勉強をスタートしました。

始めたばかりの頃はひとり寄る辺なく、先生もクラスメイトもいなかったので、自分のフランス語がどの程度なのか、いくら勉強しても計りかねていました。何か目印になるものが欲しかった。そんな自然な流れで、仏検を受けることに決めたんだと思います。最初に受けたのは4級。無事、合格でした。

そして2013年3月、二週間ほどフランスに渡りました。海外に行くのもこれがはじめて。何かが開けるような感覚があったものの、当たり前のように、半年独学で勉強しただけのフランス語などほとんど何の役にも立ちませんでした。でも、参考書で見たことのある単語や耳にしたことのある表現に出会う度、それを使いこなせるとは言えないまでも、フランス語にじかに触れる嬉しさがあったことも見逃しませんでした。

「なんだか自分の言葉にできそうな気がする」

あえて言語化するならこんな頼りない直観だけで、僕はフランスへの語学留学を決心しました。出発は同年秋。それまでにできることをやろうと、今度は仏検準2級を受けることにしました。出国前に文法の勉強をしっかりやっていたことは、今振り返ってもよい選択だったと思います。準2級も合格でした。

20181101hs_02それからの一年をフランス、ブルターニュ地方にあるレンヌという街で過ごし、2014年の夏に帰国しました。この一年間、フランス語のことしか考えていなかったように思います。おかげで帰るころにはそこそこ話せるようになっていました。

20181101hs_03 しかし、せっかく「自分の言葉」になりかけていたフランス語も、8月の日本の猛烈な湿気とともに押し寄せた日本語の波に洗い流されそうになりました。なんとかこれを守らなくては…。その時も、仏検が僕の灯台になってくれました。あれを目指して進めばいいんだ。帰国後間もなく秋の準1級を受け、合格。フランス語は逃げませんでした。

残すは1級です。正直、ここまで来るともう「仏検はいいかな?」という気分でした。より“実用的”とも言われるDELF/DALFのC2を先に取り、仏検の存在もやや霞んでしまっていました。ただ、この時、僕はもうただの学習者ではありませんでした。フランス語を学ぶだけでなく、教える立場にあったのです。

僕は教師として、フランス語を勉強している人に「試験は、受けなくてもいいなら受けなくていい」と伝えています。それはもちろん、試験だけを目標にしてほしくないからです。ことばの深さは灯台ではなく、海の方にあります。試験に受かることはもちろん素晴らしいことですが、それだけが語学のゴールになるのは少し寂しい…。

とはいえ僕自身、それまでの道のりを、仏検の合格証書がもたらしてくれた達成感と安心感、そして誇りに支えられながら歩んできたのです。それに当時の僕にとっても、仏検1級の灯台はやはり大きく壮麗で、とても目立っていました。教師として、学習者として、立ち往生しているくらいなら行ってみよう。そう思い去年、受験を決めました。

そして2018年春、いよいよ1級を取り、フランス語の資格試験という意味では(通訳案内士などを別にすれば)目標になるものはなくなりました。もう、僕の視界に灯台はありません。けれどある意味では、ここがスタートとも言えます。灯台はそこに辿り着くためではなく、海を照らし、海を渡るためにあるのです。これからも、僕の航海は続くでしょう。

初めてのフランス滞在、最終日に見た空

 

一部コンビニ決済におけるお取り扱いの一時停止について

仏検インターネット申込は、システムメンテナンスのため、以下の期間中、一部のコンビニエンスストアでの検定料納入のお取り扱いを停止いたします。なお、作業の進捗状況により、終了時間は前後する可能性がございます。


仏検インターネット申込 コンビニエンスストア決済 不通期間

2019年5月20日(月) 午前0:00~午前8:00
対象コンビニ : ローソン/ミニストップ/セイコーマート

内容:仏検インターネット申込「出願情報選択」画面操作中、対象コンビニを
 コンビニ決済でのお支払い店舗として選択することができません。
また、対象コンビニ店頭で検定料をお支払いいただくことができません。
 

ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承のほど、お願い申し上げます。  

公益財団法人 フランス語教育振興協会

 

2018年度 文部科学大臣賞団体賞 受賞のことば

文部科学大臣賞団体賞は2013年度に創設され、その年度における出願者数とその増加率および試験結果等を勘案し、年度を通じたフランス語教育への取り組みを総合的に判断した上で、特に優秀と認められた3団体に授与されます。2018年度は、山形大学、金城学院大学文学部コミュニケーション学科、大妻中野中学校・高等学校が選出され、賞状と記念の楯が授与されました。表彰団体の先生方からお寄せいただいた受賞のことばをご紹介します。


山形大学 合田 陽祐 先生

(写真左より)大久保清朗先生・合田陽祐先生・個人受賞された山形大学のおふたり・西澤理事長

この度は栄誉ある賞を賜り幸甚の至りに存じます。フランス語教育振興協会の皆様に篤く御礼申し上げます。
2018年度の秋季試験より本学が準会場となり、試験監督を務めました。真剣に取り組む学生たちの姿を見て、その熱意に心を打たれました。この受賞を本学のフランス語履修者の皆さんに報告できることを、大変嬉しく思っております。昨今、第二外国語の履修に関して厳しい状況が続いております。これを励みに、同僚の柿並良佑先生、大久保清朗先生とさらに協力し、フランス語教育の存続と発展に貢献できるよう、努力を続ける所存です。
今後も本学は仏検と歩みを共にして参ります。ご指導賜りますよう皆様にお願い申し上げます。
(写真左より)大久保清朗先生・合田陽祐先生・個人受賞された山形大学のおふたり・西澤理事長

金城学院大学 文学部 外国語コミュニケーション学科 北原 ルミ 先生

(写真左より)北原ルミ先生・西澤理事長

この度は文部科学大臣賞団体賞を賜り、フランス語教育振興協会の皆様、仏検事務局の皆様に深く感謝申し上げます。本学科のフランス語選択者は、1〜2年では各35名前後、3年以上の選択では各15名前後と例年小さい母数ながら、学生たちが精力的に受験し、結果を出してきてくれたゆえの受賞と喜ばしく存じます。フランスへ渡航する学生が増える傍ら、渡航できなくとも検定で力を測ろうと頑張る学生もいます。数日前の卒業パーティでは「仏検でさらに上を目指します!」という声が聞こえ、働きながらの学習の励みになることを実感しました。フランス語を通して世界の多様な窓口を知る学生が育つよう、今後も力を尽くしてまいります。
(写真左より)北原ルミ先生・西澤理事長

大妻中野中学校・高等学校 島田 幸子 先生

((写真左より)外国語課主任教諭 片岡孝治先生・西澤理事長

このたびは栄誉ある賞をいただき、教職員一同、心より感謝申し上げます。大妻中野中学校・高等学校では、平成11年度から選択でのフランス語が始まり、平成28年度にはGLCクラスも新設されました。中学1年生からフランス語が必修となるクラスもできたことで、現在では320名以上の履修者をかかえます。第2外国語ですので進度はゆっくりしたものですが、生徒のモチベーション維持として、仏検は今まで以上になくてはならないものになってきていると感じます。グローバル教育の一環としてフランス語を学ぶ意義を伝えるべく、担当者としましても真摯に取り組んでいきたいと思っております。仏検の更なるご発展をお祈りいたします。
(写真左より)外国語課主任教諭 片岡孝治先生・西澤理事長


 

「仏検だより」を更新しました

「仏検だより」を更新しました。

2018年度 文部科学大臣賞団体賞 受賞のことば
山形大学・金城学院大学・大妻中野中学校高等学校

フランス語を学ぶ環境づくり―大東文化大学でフランス語を学ぶ
野澤 督(大東文化大学外国語学部英語学科)

第2外国語として、あるいはお試しで――都立高校でのフランス語
大熊 陽子(都立高校フランス語準常勤講師)

フランス語を学ぶ環境づくり―大東文化大学でフランス語を学ぶ

野澤 督(大東文化大学外国語学部英語学科)

「フランス語の先生なのに英語学科にいるんですね」。私が自己紹介をすると、よくこのように言われます。たしかにフランス語の先生が英語学科に所属していることは不思議なことなのかもしれません。しかし、ここにはフランス語を教える上で大切なことが含まれていると私は考えています。

「英語学科所属のフランス語教員」のからくりを簡単に説明しましょう。英語学科1・2年生が学ぶ大東文化大学東松山キャンパス大東文化大学外国語学部には日本語学科、中国語学科、英語学科があり、私は英語学科に所属しています。英語学科には2つのコースが設置されています。様々な分野から英語をしっかりと学べる英語コースと、英語とともにフランス語またはドイツ語をしっかりと学べるヨーロッパ2言語コースになります。私はこのコースの英語とフランス語を学ぶ「英仏系」で主に仕事をしており、この特性を活かしたフランス語の学びを提供しようと心がけています。

大東文化大学では1学年でおよそ25名の学生が英仏系に登録し、日本人の先生とフランス語を母語とする先生とともに4年間フランス語を学んでいます。また、英仏系に所属していなくても、大東文化大学の学生は、学部を問わず、週1回から週3回のペースでフランス語科目を選択できるようになっています。さらには第三外国語として3年次からフランス語科目を履修し始めることも可能です。様々な形でフランス語を学び始めたり、学び続けたりできる学習環境を整えることで、複数の言語を学んでほしいという大学からのメッセージを発信しています。

複数の言語を学べる環境は大東文化大学の外国語教育の根幹をなしていると言えるでしょう。ここで大事な点は、英語の代わりにフランス語が学べるのではなく、英語とともにフランス語が学べるという点です。どちらかを選択するのではなく、英語もフランス語も学ぶことであらたに見えてくるものがあるのではないでしょうか。複数の言語を学ぶことは、言語を道具ではなく、文化として見ることに通じています。外国語を学ぶ目的の一つはコミュニケーションの手段を増やすことだとよく言われます。私もそう思います。運用能力を高めれば高めるほど人との交流の機会が増えるでしょう。しかし、それは単なる意味の交換にとどまらず、考え方やものの見方の変化へとつながっています。言語はその言語を使用する人や、その言語が使用されている社会がもつ文化や価値観と切っても切れないものです。外国語を学び、使うことは、自己とは異なる文化や価値観と接触することになりますから、その分だけ世界が広がると言えます。

実際、グローバル社会と呼ばれる現代社会ではもはや英語では対処しきれない問題を抱えています。問題に向き合うためには英語以外の言語を駆使して情報収集するだけではなく、その言語が使われている社会の習慣や文化、歴史的背景などにも通じていなくてはなりません。また、複数の言語を学ぶことは多角的に社会を観察する目をもつことと同義です。例えば、フランス語で発信されている情報へアクセスできれば、英語圏が発信する情報とは異なる視点を得ることができます。そこに母語を加えれば3つの視点がもてることになりますから、より相対的にひとつの事象を分析することができるようになります。大東文化大学のヨーロッパ2言語コースでは「読む」「書く」「聞く」「話す」という4技能の向上だけでなく、異文化との向き合い方も含めた外国語教育の実践を目指しています。

こうしたフランス語学習のあり方はなにも高等教育機関に限られるわけではありません。近年でも200校を超える中学や高校でフランス語科目が設置されていると言われていますし、実用フランス語技能検定試験に挑戦する高校生以下の年齢層も少なくありません。国境や言語による区分が意味を持たない現代社会、――こうした社会はどこか遠い国の話ではなく、日本でもすでに見受けられます――、で生きる力を培い、異なるものや人への寛容さをもつためにも、中等教育レベルで複数の外国語を学べる環境を整えることは非常に意味があることです。さらに言えば、学びは一生ですから、世代にとらわれることなく、こうした視点からの外国語の学びがあってもよいのではないでしょうか。

語学学校では老若男女を問わずフランス語を学んでいます。学校へ行かずとも、多くの方がラジオやテレビの講座で複数の言語を学んでいますし、独学でフランス語を勉強し、フランス語で書かれた本を読んだり、フランス映画を鑑賞したり、インターネット上でフランス語のニュースを聴いたりしているでしょう。そこから世界が広がっていきます。だから私たちの身近にフランス語に触れられる機会があり、学びたいと思ったときに学べる環境があることがとても大事なのです。仏検などの検定試験もその一翼を担っています。学びの到達度を確認するために仏検を活用している人は多いですし、検定合格が次の学びのステップへと後押ししてくれます。学び続けることでますます世界は広がり、様々な人と出会えるわけですから。

「まいにちフランス語入門編Sautez le pas !」の講師陣

フランス語の学びを介して人と人とがつながっていく環境を作ることはフランス語教育に携わる者の使命です。つながりを生み出す力こそがことばがもっている力だと伝えたいと思っています。私が担当したNHKラジオ講座「まいにちフランス語」では、入門編ではありますが、話し相手を意識してフランス語を使うことを目標に掲げました。相手がいてこそのことばであり、ことばは他者とともに行動するためにあるというメッセージを届けたかったからです。

教室、ラジオ、検定試験など、フランス語の学びの形は様々で、学びの目的も人それぞれです。しかし、一つ確かなことがあります。それは、フランス語を学んでいる人たちは色々な人と出会い、交流し、ともに生きていく、ということです。大仰なことかもしれませんが、他者とともに生きていることをイメージできるようなフランス語の学びの場を学生たちと築いていきたいと考えています。

 

第2外国語として、あるいはお試しで――都立高校でのフランス語

大熊 陽子(都立高校フランス語準常勤講師)

東京都立高校で、フランス語を教える。

私は、東京都・準常勤講師。フランス語を教えに、朝から夜まで東京都内方々の高校に赴いています。まずは、私の仕事の概要について、みなさんにご紹介します。

東京都の非常勤講師はふつう時間講師と呼ばれますが、通年で12コマ以上担当すると準常勤という区分になります(待遇が良くなります)。フランス語の授業は、他の英語以外の言語と同様に、全日制(普通科・総合学科)・定時制・中高一貫校といった様々な高等学校で開講されていて、大体週1回で2コマ連続です。しかし、学校によって設置のされ方は異なります。自由選択科目として(いくつかの科目の中から選ぶか、追加で履修する)だったり、必修選択科目としてだったりします。2018年度は8校・16コマ。受講希望者が毎年増減を繰り返し、年度ごとに実施時間・曜日が変更することもあって、毎年コマ数も場所も何かしら変わります。他の方の産休や研修で、年度中でも臨時に授業を持つこともあります。また、学校行事によって授業がない週も(短縮になることも!)ありますから、スケジュール管理には注意を払います。

授業そのものも、それぞれの学校によって様々です。スタイルが大きく変わるのは、ALT・外国語指導助手がつくか否かです。それも、毎時間・年間で数回・全くつかないなどいろいろです。他にも、受講学年(単一学年か、複数学年混合か)や、実際の授業回数(月曜と水曜では年間で2桁もの差が)、成績のつけ方(絶対評価か相対評価か)など、学校による違いは枚挙に暇がありません。特に留意すべき違いは、それぞれの学校・それぞれの学年でそれぞれの雰囲気があること、そして、生徒たちのポテンシャルやモチベーションもまたそれぞれだということです。前者は授業の進め方に直結するポイントです。授業中、指示を出さなくても発音するのがふつうの学校もあれば、促しても発音を繰り返さない生徒が多い学校もあります。これは経験上、大学や専門学校の授業でもありえますから、最善を尽くすだけです。悩ましいのは、後者です。高校選択の決め手がフランス語を学べることだったという生徒、将来希望する進路のために学ぶ生徒、空きコマに出来ないので仕方なく受ける生徒、友人が取るので合わせた生徒などが混在しています。ここから共通項として導いた目標が、とにかくフランス語を楽しんでもらうこと。そこから欲を出して、いくつかの学校で「フランス語を1年学んだ証」として「秋季で仏検5級を取得すること」を勧めています。受検を強制することは出来ませんが、学校によっては検定に合格することで卒業単位に互換してもらえるところもありますし、何より明快な設定だと思っています。

仏検 5 級を目指して

ここからは、仏検5級取得に向けた授業について具体的にお話しします。教材は、11月半ばまで仏検一直線の内容のプリントです。余白をたっぷり取ってあるので、自分だけのノートを作るよう促しています。焼き鳥屋さんのタレのような、私のプリント 週に1度あるかないかの授業の中で、詰め込みにならないよう、急に難しくならないよう、いかにして定着させるかが課題です。ですから、生徒ひとりずつの作業として、発音や問題の回答をひとりずつやってもらったり、文法的な規則を出来る限り生徒自身で考え見つけるようにさせたり、私だけが発信する授業ではなく、皆を巻き込む授業を心がけています。定着のためには、アウトプットが肝要です。そして、実際に出来た!の積み重ねが、フランス語と親しくなる確かな方法だと考えます。

毎年変わらざるをえないのは、進度です。これは、授業実施数や生徒たちの定着具合によるので、仕方のないところです。とはいえ、夏季休暇までに冠詞類とêtre, avoir, 第1群規則動詞の活用は扱います。単語集も渡しておけば、休暇中の課題として仏検5級の筆記[1]・[2]・[5]番の練習が出来るからです。折角の今までの学習をリセットさせたくないので、この課題にはきちんと取り組んでもらいます。9月以降に5級の範囲を進めていって、10月末には受検希望者を中心に過去問に取り組んでもらいます。本当は授業中全員に過去問にトライしてもらいたいところですが、近年は授業実施数が減少傾向です。そして、受検者の数は増減を繰り返し続けていますが、殆どの受検者は合格出来ています。12月の試験では5級に準じて出題していますので、受検しない生徒でも5級相当の力はついている筈です。

ちなみに、その後は旅行会話の練習を中心にしています。日常会話ができるようになりたい、旅行に行ったときに困らないようにしたいという声はやはり多いです(日常会話とは何ぞやとは思いつつ)。

約1年間フランス語を学んでみて、生徒たちの感想もいろいろです。「初めてフランス語を教えてくれたのが、先生でよかった。いろいろなことに興味を持てるようになった」と言った生徒がいます。事実、フランス語を続けたい生徒も、フランス語を続けない生徒もいます。どちらにしても、フランス語そのものだけでなく、私が授業で伝えるあらゆることから、生徒たちは学び、刺激を受け、自分の力に変えていきます。だから、私は自分の仕事の本質は「種を蒔くこと」だと思っています。フランス語を続ける生徒も、続けない生徒も、皆まとめて私の大切な子どもたち。フランス語や私の授業を通して得た何かが、いつか素敵な実を結んでくれたらと願っています。

毎年100人以上の生徒と出会い、彼らの多感な時期に寄り添えて、ほんとうに尊い仕事をしていると実感しています。何が誰の琴線に触れることになるかわかりませんから、私自身がまずは成長し続ける存在でありたいです。最後の授業 実を言うと、フランス語の講師になることは、私の長年の夢でした。中学生の時にフランス語と出会ってから、苦しんで楽しんで、時に本気を出し、時にサボって、それでもずっとフランス語と一緒でしたし、フランス語を通して得た経験は語り尽くせません。こんな私だからこそできる授業があるのだと信じています。新しい生徒たちとの出逢いを心待ちにしながら。

大型連休期間の休業についてのお知らせ

公益財団法人フランス語教育振興協会・仏検受付センターは、大型連休に伴い、4月27日(土)~5月6日(月)を休業期間とします。つきましては、休業期間中にお寄せいただく仏検・翻訳・APEF青山フランス語プロフェショナルコースの各業務についてのご依頼・お問い合わせが5月7日(火)以降のご対応となりますことをご了承ください。

また、翻訳サービスにつきましては、連休直後に複数のご依頼が重なり、通常よりも翻訳工程に日数を要する場合が想定されます。

ご不便・ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

2019年度春季試験 受験案内を更新しました

2019年度春季試験 受験案内を更新しました。

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年間実施日程・受付期間
受験票・結果通知発送予定
受験地と受験級
検定料
試験時間
パリ会場受験

  郵送申込用の願書受験要項の無料送付をご希望の方は請求フォームに必要事項をご記入ください。

なお、仏検では、前回・前々回(2018年度春季・秋季)に出願された方を対象として、予めお名前等を印字した願書・受験要項をクロネコDM便でお送りしております(3月22日発送済)。

3月22日(金)表彰式による通常業務の休業について

公益財団法人フランス語教育振興協会は、文部科学省後援実用フランス語技能検定試験(仏検)2018年度成績優秀者表彰式のため、3月22日(金)の通常業務を休業とさせていただきます。

仏検・翻訳・APEF青山フランス語プロフェショナルコースの各業務についてのご依頼・お問い合わせは3月25日(月)以降のご対応となりますことを予めご了承ください。ご不便・ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

2018年度 年末年始の休業期間についてのお知らせ

公益財団法人フランス語教育振興協会は、2018年12月29日(土)より新年1月6日(日)までを休業期間とさせていただきます。

仏検・翻訳・教育の各業務についてのご依頼・お問い合わせは1月7日(月)以降のご対応となりますことを予めご了承ください。

ご不便・ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

2018年度秋季仏検 準1級 配点に関する誤植について

2018年11月18日(日)に実施された仏検秋季1次試験・準1級筆記試験におきまして、問題冊子に記載された配点に誤りがありましたので下記の通り訂正いたします。

 準1級 筆記試験問題冊子6ページ 大問[5]

【誤】 配点 10  ⇒  【正】 配点 5

本件による採点処理や合否判定の手続きに変更はありません。

仏検実行委員会 

Le Mondeの経済記事精読@ZOOM短期集中講座

リンク

Le Mondeの経済記事精読 

講師:小林 新樹 (プロフィールはこちら

本講座では「和訳する際、原文の趣旨が明確に掴めれば分り易い日本語にできる」という考え方に立ち、『ル・モンド』紙の経済記事をできるだけ具体的に理解することを目指します。ZOOMを使用した、全4回のオンライン短期集中講座(入学金不要)です。

▶ 多くの文脈において industriel を産業的、social を社会的、santé を健康などと訳したのでは、趣旨を誤ります。詳しくは私のHPの項目を参照下さい:

industriel, social, santé, numérisation

 

▶ また、最近扱った教材にこんな一節がありました:

Sur Internet aussi, les Français s’en donnent à coeur joie : l’an dernier, ils ont dépensé 129 milliards d’euros, soit 15% de plus qu’en 2020.

(ネット通販、動画配信サービスなどの消費額)

Et nos sociétés ultraconnectées ne sont pas sans incidence sur le changement climatique : le numérique est responsable de 3,5% des émissions mondiales de gaz à effet de serre.

 

文脈から le numérique はインターネット利用を指していることが分かります。

 

▶ 更に別の記事にこんな一文がありました:

TF1, M6 の合併話 p.3、第二パラグラフ)

La télé est en voie de numérisation.

 

フランスでも、15年以上前に地上波デジタル放送が始まっています。従って、この文が「テレビはデジタル化の途上にある」を意味していることはあり得ないのです。上にあるように le numérique がインターネット利用を指す例を考慮すると、正しくは次のように訳すべきと思われます:

「ネット接続可能なテレビが普及しつつある」

このように一文全体となるとなおさら、その具体的な趣旨を把握しなければ分りやすい訳は作れません。授業では、 Le Monde の経済記事を精読することにより、趣旨を具体的につかむ意義を実感してもらい、様々なテキストにあたった時に、趣旨が明確に掴めているのかどうか、自分で判断できるようになって頂きたいと考えています。

授業では順に数行ずつ訳して頂きます。オラルでの通訳を想定して、事前に準備した訳文を読み上げるのではなく、その場で訳してもらいます。 表面的な訳に感じられる場合は、具体的な意味を考えるよう促す、という形で、趣旨を明確に理解するお手伝いをします。必要に応じて、フランスの社会的文脈や経済の基本用語の解説もします。

時間内で説明し切れないこともありますので、授業終了後に以下の点をメモとして配布します:

・より正確に趣旨を伝えるのに望ましい表現

・特定の語について、Petit Robert には何と書いてあるか

・経済用語や記事の背景に関する詳しい解説

● 過去に扱ったテーマ・教材一覧は こちら で覧いただけます。
※ これまでの講座から(資料見本)

フランス原発の将来(2017年8月)

ドルの覇権に異議申立て(2019年3月)

第8回 その二 配布教材(2022年2月)地球を救うために誰がカネを出すのか

第8回 その二 メモ

「Le Mondeの経済記事精読」授業見学受付中!

講座概要

・対象レベル:仏検準1級以上/DELF B2以上

・定員:15名・授業料:20,370円(税込み) ※入学金不要

 

第14回 開講日程

【開講日程】2025年2月8日 (土) , 22日 (土) , 3月8日 (土) , 22日 (土)   ※全4回

【開講時間】10:00~12:00(2時間)

【会場】オンライン(ZOOM)

【申込受付期間】11月1日 (金) ~ 2025年2月5日 (水)

【授業料納入期限】2025年2月7日 (金)

 

● 申込方法:下記申込書に必要事項をご記入のうえ、メール添付でお送りください。

wordフォーム 申込書(word)   pdf 申込書(pdf)

お問い合わせ

公益財団法人 フランス語教育振興協会

APEF青山フランス語プロフェショナルコ ース担当

〒102-0073東京都千代田区九段北1-8-1 九段101ビル6F

TEL(直通):03-6268-9680 FAX:03-3239-3157

E-mail:cours@apefdapf.org

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第26回 動詞に強くなるには?(中級)

慶應義塾大学准教授 川村 文重 

 

今回のコラムは、中級レベルの動詞問題の試験対策をテーマに取り上げます。

Quel beau temps ! (なんていい天気だろう!)のような感嘆表現を除けば、どんな文にもかならず動詞がひとつ以上含まれます。 従属節や関係節をともなえば、それらの節にも動詞が入っています。通常、抽象性の高い論理的な文章では、動詞よりも名詞表現に情報量の比重が多くかかります。それに対して、日常の平易な文章では、使われる動詞がバリエーションに富み、動詞が何を言おうとしているのかがわからなくては、全体の意味やニュアンスがつかめなくなります。動詞が文章全体の基礎を作っていると言ってもよいでしょう。

ところが、この動詞の理解が初級・中級レベルのつまずきの石となるのも事実です。ご存じのとおり、フランス語の動詞には、①意味②時制③叙法(直説法・条件法・接続法・命令法)といった情報が含まれています。②と③は語尾変化で示されます(時制については第23回第24回の林先生の解説に詳しいですから、読み返してください)。往々にして、初級・中級学習者は②と③をおろそかにしがちです。

その証拠に、中級レベルに相当する仏検3級と準2級試験の過去のデータを見てみましょう。長文問題は選択問題ということもありますが、つねに高い正答率をマークしているのに対して、記述式の動詞問題の正答率は軒並み低調です。たしかに、動詞問題の配点がそれほど高くはありませんので、実際の試験で長文問題を得点源にすれば、動詞問題がたとえ全問不正解だとしても、合格が可能かもしれません。しかし、より長く、より複雑な内容の文章が正しく読めるようになるには、②と③をおろそかにし、活用がマスターできていないと、そのツケがあとになって響いてきます。なかなか上の級に進めないという受験者は、ここでつまずいている可能性が高いと思われます。

                

3級と準2級の動詞関連の問題は、やはり、その意味を問うためだけに出題されてはいません。動詞の①意味を当然知った上で、 ②時制③叙法を判別して、正しく活用できるかどうかが試されています。①、②、③の3つのポイントをすべてクリアしなければ正解にいたれないわけですから、かなり手ごわいですね。しかも、記述式ですから、活用がうろ覚えでは対処できません。つづりを正しく書く力が問われるようになるのが、初級レベルに相当する5級と4級との大きな相違のひとつです。では、最近出題された、正答率の低かった問いを実際に解いてみましょう。 2018年度春季3級問題[2]番からの抜粋です。(   ) 内の動詞を必要な形にします。

— Alain, on est où ? C’est encore loin ?
— Désolé, je (se tromper) de route.

Alain に質問している人は、Alain といっしょにある目的地に向けて進んでいるはずが、どれほど進んだのか、本当に進んでいるのかわからなくなっています。それを受けて、Alain は désolé と謝り、代名動詞 se tromper が続きます。どうやら、Alain は質問者を乗せて車を運転しているか、あるいは、質問者を先導して道を誤ってしまったようです。

先にあげた①、②、③の3つのポイントを順に確認していきましょう。まず、①意味は、 他動詞 tromper (〜を誤らせる)に再帰代名詞 se がついて、〈自分自身を誤らせる〉、すなわち、〈誤る〉。〈〜を誤る〉は se tromper de+無冠詞名詞です。

次に、②時制はどうでしょうか。この会話の時点で、Alain は道を誤るという行為を継続している(現在時制)でしょうか。それとも、Alain が道を誤るという行為をしてしまったために(過去時制)、その結果、本来のルートからはずれた状態にあるということでしょうか。これは後者の複合過去を選ぶのが妥当です。それに、Alain が謝っているのは、謝らなければならない原因である〈道を誤る〉という行為がすでになされてしまったからです。

最後に③叙法ですが、Alain は事実だと判断して述べているか、あるいは、断定を避けた推測(=道を誤ったかもしれない)によって述べているかのいずれかですから、前者なら直説法、後者であれば条件法です。

というわけで、代名動詞が複合時制になると、助動詞は avoir ではなく être を用い、再帰代名詞 se は主語の人称と一致させますから、正解は me suis trompé(直説法)、あるいは me serais trompé(条件法)です。もし Alain ではなく Marie が語っているなら、過去分詞が女性形になりますから、 me suis trompée あるいは me serais trompée になります。ちなみに、最も多かった誤答は、me trompe でした。

    

次は、2018年度春季準2級筆記問題[3]番からの抜粋です。ただし、実際の問題では小問5つに対して8つの動詞が選択肢として提示されますが、ここでは、ひとつの小問に対して動詞の選択肢を3つにしました。AとBの文がほぼ同じ意味になるように、単語を語群から選んで、必要な形に直します。

A  Il n’y a plus de vent.
B  Le vent (   ).
————————————————
   cesser   être   plaire    

正解は a cessé です。最も多かった誤答は cesse でした。現在形にした誤答が多かったのは、Bの時制をAと同じ時制にしておけばいいと安易に処理した結果でしょうか。いずれにせよ、多くの受験者は動詞 cesser を選ぶことはできていました。①意味の段階は一見クリアしたかのように見えます。では順に見ていきましょう。

Aの文は ne… plus 〈もはや〜ない〉という否定表現ですから、〈(それまでは風があったが、)今ではもう風が止まっている〉ということです。現在形の文ですが、過去の状態に関する情報が暗に含まれていて、その過去と現在との違いが浮き彫りになっています。とすると、Bの文も同様に、過去(風が吹いていた)と現在(今は風は吹いていない)の違いが示されていなければなりません。Bの動詞 cesser を現在形にすると、現在の状態(風が止んでいる/凪状態だ)のみの情報を伝えることになり、不適当です。この点が、②時制の見極めポイントです。つまり、過去と現在の情報を同時に示す表現の理解です。

ここで、複合過去の用法を確認しておきましょう。複合過去は何らかの出来事や行為が起こり、終わったことを述べたり、〈〜したことがある/ない〉といった過去の経験を述べたりする時に用いられます。ですが、それだけではありません。過去に完了した行為を現在との関連で表しもします。例えば、Paul est parti は〈ポールは出発した〉と訳せますが、この文には〈(出発したから)もうここにはいない〉という現在の状態を暗に示しています。

これを踏まえると、自己紹介で出身国を言う表現が、je viens du Japon であって、je suis venu(e) du Japon が誤っているのはなぜか分かりますか。毎年11月第3木曜日にボージョレー地区の新酒が解禁されますが――仏検秋季1次試験の直前ですね。受験者のみなさん、飲みすぎないように!――、その宣伝文が le Beaujolais nouveau est arrivé ! であって、le Beaujolais nouveau est venu ! ではないこともお分かりですね。ここで用いられる動詞 venir の意味〈来ている〉は行為の開始と終結が同時になされる完了を表す動詞ではありません。一方、arriver は到着という行為が行われた時には到着は完了していますから、継続を表す venir とタイプの異なる、完了を表す動詞です。このあたりの動詞の理解は、①意味②時制の両方の深い理解に関わっていることがお分かりになると思います。

では上の問題に戻りますと、その正解が cesser の複合過去になるのは、もっと言えば、複合過去でなければならないのはなぜか、もうお分かりですね。動詞 cesser は完了タイプの動詞であり、その複合過去は、〈それまでは吹いていた風が止んだので、もう風は吹いていない〉、つまり、過去と現在が暗に対比されています。これは、先に解説した複合過去の用法の最後に挙げた、過去の行為が完了することによって現在に影響を及ぼしていることを表す用法です。AとBの文を比較すると明らかなように、同一内容のフランス語の文は必ずしも、同一の時制をとるとは限らないことに注意しましょう。

    

さて、何段階にもおよぶチェックポイントをクリアして、危なげなく正解にたどり着けましたか。現在形か複合過去か迷いはしたけれど、この解説を読んで納得できたというレベルにある人は要注意です。解説が〈わかる〉と実際に〈解ける〉との間には相当の隔たりがあります。これを埋めるにはどうすればいいでしょうか。たくさんの問題を解いていれば、おのずと身につけられるようになるでしょうか。それもひとつの方法ですが、筆者はあまりお勧めしません。筋道を立てて正解にいたることができ、それを自力で解説ができるようになるまで辛抱強く、ひとつひとつの問題にじっくり取り組みましょう。また、文章を読む際には、文中に出てきた動詞がなぜこの時制で、この叙法なのかすらすらと説明できるようになるまで、文法書を読み返したり、先生に尋ねたりして疑問を氷解させましょう。

                

最後に、聞き取り・書き取り問題の対策にふれます。この問題では動詞を正しく聞き取り、書き取れるかも重要なポイントのひとつです。動詞は多くの場合、文のなかほどに位置しています。また、たった一音節で発音されたり、メリハリなく発音される動詞も多く、それに、主語の人称代名詞などとリエゾンやエリジオンすることもあります。一生懸命耳を澄ましても、検定試験という緊張状態にあっては、動詞が耳からすり抜けてしまう――動詞は実に受験者泣かせの単語です。

どうすれば、動詞を聞き逃さないようにすることができるでしょうか。とにかくひたすらフランス語を聞いて、耳を慣らすことに努めるべきでしょうか。たしかに耳を慣らすことは重要ですが、まずは動詞を確実に捕まえることをめざして聞くようにしてみてください。動詞部分を意識的に集中して聞くことで、早口言葉のように怒涛に流れる錯綜した音の束のようなフランス語の文が、徐々にほぐれて聞こえてくるようになるでしょう。聞き逃しやすいケースには一定のパターンがあるはずです。どういった時に動詞を聞きもらしやすいか、自分の弱点を把握しましょう。そうして、①意味②時制③叙法の段階をクリアして、瞬時に正しく活用できるようになれば、しめたものです。

結局は、フランス語学習に王道なし、ということに尽きます。ただし、やみくもに取り組むのではなく、〈量より質〉を重視する地道な学習が上級への確実な橋渡しになるはずです。

 

『仏検公式ガイドブック』 誤植のお詫びと訂正 (準1級)

『2018年度版仏検公式ガイドブック 準1級』および『2017年度版仏検公式ガイドブック 準1級』に誤りがございました。謹んでお詫びし、訂正いたします。

■2018年度版 準1級
31頁 解説2行目
【誤】(2)(4)(5)が動詞だということがわかります。
【正】(2)(4)(5)が名詞だということがわかります。

■2017年度版 準1級
27頁 解説2行目
【誤】(2)(4)(5)が動詞だということがわかります。
【正】(2)(4)(5)が名詞だということがわかります。

美しいコミュニケーションを極める

2015年度秋季2級合格
小出 智子
会社員・東京都

私がフランス語を学ぼうと決意したのは、12歳のときにミュージカル「レ・ミゼラブル」を観て、フランス文学の面白さに目覚めたことがきっかけです。中高時代は、図書室にある『レ・ミゼラブル』に関する日本語書籍や、その他の邦訳された19世紀フランス文学を読みふけりながら、早く大学で本格的にフランス語を学びたいと胸を高鳴らせていました。

大学受験の際、迷わずフランス文学が専攻できる学部を選びました。英語よりはるかに複雑な文法や発音に圧倒されましたが、だからこそやりがいを感じ、毎日フランス語の授業が楽しみでなりませんでした。そして、更に主体的な学習がしたい、本場フランスにも足を運びたいと考え、大学2年の春にパリの語学学校に短期留学をしました。仏検5級取得直後のことでした。

paysage現地の方とのコミュニケーションに苦労しましたが、初めて自らの目で見るフランスは実に刺激的で、私はますます勉強の虜となりました。その後は日本でもコミュニケーション能力を培うべく、フランス人の家庭教師についたり専門学校へ通ったりして、大学4年生の夏に2級を取得しました。その年はブルゴーニュ大学の夏季講座に留学し、多くの留学生の方と交流をしました。相変わらずフランス文学への情熱は衰えず、この時は観光もせずに寮の自室で卒業論文の対象となる原書を読み耽る日々でしたが、こうした短期留学の経験を通し、文学内だけではない、フランス語の魅力をより感じることができたと思います。

将来を考える時になり、私が真っ先に考えたのは、大好きな語学を使う仕事がしたい、ということでした。フランス文学への情熱があまりにも大きすぎた私は、語学自体に対する学習意欲を理解されなかったこともあります。しかし、自身のフランス語との向き合い方を考え直してみたときに、フランス語は文学を読解するためのツールではなく、より深いコミュニケーションの根幹となっているもの、文学を介さずとも、積極的に学び、極めていきたいものであると再確認しました。

就職活動では、グローバルな環境に身を置ける仕事に狙いを絞って活動を行いました。英語は話せて当たり前、という厳しい条件が課されていましたが、その中でも第2外国語が話せるということは大きな武器になりました。特にフランス語は文法が難しいことは未修者にもよく知られているため、大学生から本格的に始めて英語と同等のスキルを身につけたという根性が、一番のアピールポイントになったと思います。

これからはビジネスの現場でもフランス語を使っていくことになります。大学での学びを活かせる仕事に就けることは、大変恵まれたことであると思います。どれだけ海外とのやり取りが円滑に進んだとしても、自分が一学習者であることも忘れず、驕り高ぶらず真摯にコミュニケーションを学び続けていきたいです。言葉は、使い方次第では人を不愉快にさせることもあり、またはいつまでも心に残る、豊かな言葉を投げかけることもできます。だからこそ私は、常に相手と良い関係が築ける、美しいフランス語を使い続ける人間になるために、今後もフランス語という学問に向き合い続けたいと思います。

L’homme ne doit être gouverné que par la science. 
                    ― Victor Hugo, Les Misérables
人は学問によってのみ支配されるべきである。
                    ― ヴィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』より

 

第25回 2級語彙問題の攻略法(中級)

慶應義塾大学准教授 井上 櫻子 

 

筆者の勤務先の大学では、仏検2級取得を目指す学生がかなりいます。学内の交換留学制度への応募資格が仏検2級以上となっているという事情もあるのですが、2級であれば履歴書の資格欄に記載できるからと考える学生も少なくないようです。しかし、いざ受験対策を始めてみると多くの学生が2級の語彙問題を取り組みくいと感じるようです。そして実際、試験実施結果をみると、全般的に語彙問題の正答率があまりかんばしくありません。ここでは特に、2018年度春季2級1次試験筆記問題2番を例に、どういったところにつまずきやすいのか、みていくことにしましょう。


                  

あたえられた日本語の文が表わす意味になるよう、(   ) 内にもっとも適切な語を1語入れるという問題です。

(1) Ce n’est un secret pour (   ).
  みんな知ってるよ。

(2) Cette région ne (   ) pas de charme.
  この地方はなかなか魅力がある。

(3) Il ne faut pas prendre au (   ) tout ce qu’il dit.
  彼の言うことを本気にしちゃだめだ。

(4) Les effets du médicament se sont fait (   ) tout de suite.
  薬の効果はすぐに現れた。

(5) Tiens-toi (   ) !
  背筋をぴんと伸ばして!


                  

(1) Ce n’est un secret pour (   ).
  みんな知ってるよ。

正解は Ce n’est un secret pour ( personne ). 「それは誰にとっても秘密ではない」、こなれた日本語にすると「それはみんなが知っていることだ」となります。他の否定語とともに用いられて否定を表わす ne に着目し、文意を考えれば ne…personne「誰も……ない」という表現が思い浮かんだでしょう。「みんな」という表現につられて tous, tout とした答案が多く見うけられましたが、ne に対応する否定表現の欠落した不完全な文になります。

(2) Cette région ne (   ) pas de charme.
  この地方はなかなか魅力がある。

正解は Cette région ne ( manque ) pas de charme. ne pas manquer de +無冠詞名詞「……に事欠かない」、すなわち「……を十分に備えている」という意味の表現の理解を試す問題です。(1) とも関連しますが、否定表現をともなう文の含意するところをとらえるのが苦手な受験者は少なくないようです。rien とした答案がかなりありましたが、これでは動詞のない文になってしまいます。また、a を入れた受験者もいましたが、それでは「魅力がない」という意味になります。ne とのエリジオンが必要でもあることからも、ここには当てはまらないと気づくようにしましょう。

(3) Il ne faut pas prendre au (   ) tout ce qu’il dit.
  彼の言うことを本気にしちゃだめだ。

正解は Il ne faut pas prendre au ( sérieux ) tout ce qu’il dit.  ここでは前置詞 à と定冠詞 le の縮約形が直前に置かれていることからもわかるように、sérieux は名詞で用いられており、prendre A au sérieux で「Aを真に受ける」という熟語表現になります。apprendre A par cœur「Aを暗記する」という表現と混同したか、あるいは「本気」というのを気持ちの問題ととらえたのか、cœur という誤答が数多く確認されました。prendre A au sérieux という熟語表現は、ほとんどの仏和辞典に載っているものです。辞書を引くときには、単語の意味だけでなく、項目末尾に記された熟語表現にも目を向けるようにしましょう。

(4) Les effets du médicament se sont fait (   ) tout de suite.
  薬の効果はすぐに現れた。

正解は Les effets du médicament se sont fait ( sentir ) tout de suite. sentirの代わりに voir としてもかまいません。A se faire sentir「Aを感知させる」、転じて「Aが現れる」という表現は受験者になじみのないものだったのか、今回の試験でもっともできの悪かった問題です。se faire で動詞の形としては完結しているように映るためか、bien と解答した受験者がかなりいました。また apparaître とした答案も多数ありましたが、この語だけで「現れる」という意味を持ちますから、se faire「(……を)させる」という表現と組み合わせるのはおかしいと判断すべきでしょう。

(5) Tiens-toi (   ) !
  背筋をぴんと伸ばして!

正解は Tiens-toi ( droit ) !  se tenir+様態で「……の姿勢を保つ」という意味になりますが、Tiens-toi droit「しゃんとしていなさい」という表現は、子どもをたしなめる場面などで慣用的に用いられるものです。設問文に「背筋を」とあるからか、dos とした答案が相当数ありました。


                  

こうした問題を多くの学習者が難しいと感じる理由は、設問文の日本語と正答となるフランス語の表現が一対一対応になっていないことにあります。もっともできの悪かった (4) などはその好例で、「現れる」という日本語と、「感じる」という意味を第一義とするフランス語の動詞 sentir はなかなか結びつかないのでしょう。

大学で2級取得を目指す学生から、しばしば「2級レベルの単語帳を教えて欲しい」との要望を受けます。しかし、2級レベルで求められるのは、フランス語と日本語が本来全く異なる体系の言語であることを意識しながら学習を進めることです。そのためには、日頃から辞書に示された定義や熟語表現を丁寧に確認し、「フランス語ではこう言うのだな」という表現に出会ったら、自分自身で手を動かして単語帳、表現集を作っていくようにお勧めします。ただぼんやりフランス語の文章を読んだり、聞いたりするのではなく、意識的にフランス語を書く習慣を身につければ、正確な綴りも早く覚えることができ、動詞問題や、書きとり・聞き取り問題など他の筆記式問題でも高得点を獲得できるようになるでしょう。

立教大学と仏検 新たなステージに向けて

澤田 直(立教大学)

立教のフランス語教育

立教大学では、文学部にフランス文学専修(以前はフランス文学科でしたが、2006年改組により格下げになりました、涙)があるほか、全学部で第二言語が必修(今のところ)となっており、多角的なフランス語教育を行っています。初習言語として、フランス語を選ぶ学生は、最盛期の90年代には30パーセントを超え、900名以上いましたが、その後、中国語やスペイン語に押されて漸減し、近年では20パーセントを割り込む年もある凋落ぶりで、関係教員としてはかなりの焦燥感があります。新学部ができたこともあって、数的には、600~700人を維持しているのがまだしもの救いです。

新入生歓迎会クッキー

文学部以外のフランス語教育は、全学共通カリキュラム運営センター(通称「全カリ」)のフランス語教育研究室の担当で、文学部所属のフランス文学研究室の教員は直接にはタッチしない形ですが、年に数回の会合を開き、意見交換を行ない、状況打開に向けて、熱い議論を戦わせています。

立教全カリのフランス語教育の特徴は、初級、中級だけでなく、上級のコミュニケーション、ライティング、リスニング・リーディング、演習など、質量ともに充実しており、池袋と新座のどちらのキャンパスでも受講できることです。また、これら語学系列の他に、海外体験とフランス文化に関する授業など所定の科目から26単位を取得するとグローバル副専攻(French Language & Culture)の修了証が取得でき、ハードな条件ですが、意欲的な学生には人気のプログラムとなっています。

モチベーションをどうあげればよいのか

語学教育は教えることのスキルもさることながら、受講者のモチベーションが如実に結果に反映します。どうしたら自発的にやる気になるか? フランス文学専修でも、新入生歓迎会をはじめ、他大学ではとっくの昔から行っていたことを遅まきながら始めました。昨年と今年は、フランス大使館の大学担当官ダヴィッド=アントワーヌ・マリナスさんに、歓迎のスピーチをいただいたあと、ケーキとサンドイッチをつまみながらの歓談、お土産には特注のクッキーをプレゼントするなど、四月初めから発破をかけました。小手先の工夫ですが、実際に体験できる形で、フランスに触れることで、新入生のやる気は心もちアップした気がします。

幸いなことに、入学生の半数以上はフランスが好きな学生たちですが、不思議な二極化現象が見られます。語学がよくできる学生は文化への関心が表層的で、あまり掘り下げようという姿勢が見られず、特に文学にはほとんど惹かれません。一方、文学や文化にディープな関心を示す学生(我々はこれを勝手に「コンテンツ系学生」と呼んでいます)は、なぜか語学が極度に苦手なのです。もちろん例外はいますが、全体としてはこの傾向が顕著です。他の大学でも同じような現象が見られるのか知りたいところです。

海外研修募集のチラシそんな乖離を融合するきっかけとなるのが、海外研修です。文学部がヴィシーのカヴィラム、全カリがブルゴーニュ大学付属国際フランス学センター(CIEF)と、それぞれ3週間の海外研修を含む授業を展開しています。夏期研修は高額な費用がかかるために、すべての学生に勧めることができないのが難点ですが、やはり現地に行くことの効果は大きく、研修に参加した学生たちは、秋学期の目つきが違います。自分のフランス語が実際に役に立つことを体験した彼女ら、彼らのモチベーションは驚異的に高まっています。そして、それが協定校への留学につながることも少なくありません。立教では、まだまだ数は十分とは言えませんが、フランスのINALCO、パリ・ディドロ大学、パリ東大学、リヨン第3大学、カナダのシェルブルック大学とケベック大学モントリオール校と協定を結んでおり、毎年多数の学生が出かけます。現地で修得した単位は、卒業単位として認定されるので、応募者が定員を上回る状態が続いています。

仏検との関わり

さて、肝心の仏検との関わりですが、これまでも様々な形で利用させていただいてきました。まずは、既習者の履修免除の基準。3級以上の保持者は、全カリ必修の言語科目が免除され、成績は自動的にSがつくという特典があります(高校生のみなさんにぜひ宣伝してください)。派遣留学の出願資格では、準2級が語学要件となっています(パリ東は2級)。今後、入学試験での活用も検討されており、仏検はDELF/DALF、TCFと並んで、様々な場面で重要な指標となっています。

準会場として団体受験を始めたのは、2005年秋季からと聞いています。長年にわたって団体受験を実施してこられたのは、フランス語研究室の小倉和子先生と、兼任講師の田中成和先生、左合桜子先生。仏文専修は本来ならば、仏検に関して中核になるべきところでしたが、「学生の自主性に任せる」と言えば聞こえは良いけれど、じつは消極的でした。それでも、学生たちは積極的に受験してきましたし、「資格のためのフランス語」と副題された、仏検対策をメインにした必修選択科目も設置していました。

しかし、やはり目に見える目標を掲げることは重要だとの思いから、2017年度の秋季から、フランス文学専修1、2年の全学生に受験してもらうことになりました。検定料に関しては学生から徴取している学生研究会費を充当、学生は直接お金を払うことがないので負担感もなく、好評です。試験の結果は、成績評価に反映することはしていませんが、モチベーションや実力を知るのに役立っています。また、全カリの方でも、各種検定試験受験料の一部補助制度があるので、受験環境はかなり恵まれていると言えるでしょう。今後は、卒業までに全員が2級を取得する、準1級の合格者を増やすなど、明確な指針を立てて、授業設計をすることなども視野に入れたいと考えています。そういうわけで、立教大学にとって、仏検とのおつきあいは新たなステージに入りました。

個人的には、文法も重要だけれど、細かいことにこだわるより、使えるフランス語、使って楽しいフランス語を見据える必要があると考えます。専門課程であるにもかかわらず、4年間も学びながらほとんどフランス語が使えない学生を生み出すという悲しい現状からの脱却を真剣に考えるときが来ているように思うのです。