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語学と言語学の間で右往左往する

2019年秋季準2級合格
宮腰 駿
学生(筑波大学)・千葉県

私は大学で言語学 (仏語学) を専攻している。高校時代にフランスのアルザスで話されているアルザス語という地域言語に興味を持ち、大学では言語学を学ぶことにした。最初から「諸言語の中のフランス語」という認識だったため、割と「遠回り」してフランス語に出会った。そして大学に入ってからフランス語とドイツ語を勉強し始めた。

大雑把にいえば私とフランス語の関わりは2種類に分けることができる。

1つ目は勉強や研究を行うための言語としての関わりである。仏語学やフランスの地域言語のことを勉強・研究しようとすれば、フランス語を学ぶ必要がある。まず大学のフランス語の授業で真面目に勉強するようにした。特に毎週課されるディクテには力を入れていた。また専門の勉強の中でもフランス語に頻繁に触れてきた。今から思えば無茶なことだが、1年生の後半にはフランス語で書かれた論文 (単純未来と近接未来に関する論文だったと記憶している) を頭に「???」を浮かべながら読んでいた。とにかく私の勉強の大半は辞書・文法書を「ひきまくり」ながらフランス語の文献を読んでいくことであり、それは今も変わっていない。このよう勉強法は遠回りなのかもしれないが、私の語学的なフランス語の力のほとんどはこのような地味な勉強で身についたと思っている。2年次の仏検受験も上述のような関わりの1つである。

2つ目は言語学の研究対象としての関わりである。言語学的な視線をフランス語に向けると、例えば「フランス語の動詞にはいろいろ時制とか叙法があるけどこれをまとめて説明する方法はないかな?」や「多義語の色々な意味の背後にはどういうシステムが働いているのかな?」というような問題がすぐに思い浮かぶ。また「日本語の『も』や『だけ』ってフランス語にするとなんだ?こういう表現はどうやったら特定できるんだ?」のような言語をまたいだ問題もあるだろう。語学とは違い、言語学では辞書・文法書・論文のなかでこれまで言われてきたことを自明視せずに徹底的に疑うことが必要になる。しかし、語学と言語学の間にはもちろん結びつきがある。語学を学ぶ中で学習者は日常的に様々な謎に出会う。私は作文をしていて「ここは定冠詞じゃダメよ!」と言われてきょとんとしてしまったことがある。そしてこういうことは人に理由を聞いてもよくわからないことが多い。こういう謎を解決するために言語学の知恵 (例えば、冠詞論の研究) を借りてくるのは、遠回りのようで案外、最短距離なのかもしれないと私は考えている。自分が予想していたよりもはやくフランス語学習がすすんだのも、言語学的な知識のおかげだと思っている。だから、おすすめの学習法を問われれば、私は無責任に「語学と言語学の間で右往左往することだ!」と答えるだろう。

私の関心のあるテーマは①フランス語副詞論と②フランスの言語政策と地域言語で、2020年の9月から予定していた初めてのフランス留学では専門的にこのテーマに関しての学びと語学学習を深める予定だった。しかし、コロナウイルスの影響で留学はできなくなった。だが、こういうときだからこそ地道に勉強して力をたくわえることが必要だと気持ちを切り替えている。最近はほとんど経験のなかったフランス語での会話にも関心を持つようにしている。まだまだフランス語についてわからないことの方が多い。そして、毎日のように「この文がうまく解釈できんな...あ、これはそういうことか!いや違うんじゃないか。うーん」と悩んでいる。仏検の合格と賞の受賞はゴールではないのでこれからもフランス語の海に溺れながら努力したいと思う。