ファッションと映画と仏検と
2018年春季準2級合格・全国検定振興機構理事長賞
2018年秋季2級合格
土谷 脩一
会社員・東京都
私にはフランス語を学ぶきっかけとなった2つの大きな出来事があります。
1つは1998年フランスW杯決勝直前に、スタッド・ドゥ・フランスで行われたイヴ・サンローランのショー(*)です。ボレロのリズムに乗せて300人ものモデルが艶やかに歩く姿は、当時10歳のサッカー少年だった私に鮮明な印象を残しました。
2つめは、大学の授業で観た『シェルブールの雨傘』です。ミシェル・ルグランとジャック・ドゥミが次から次へと繰り出すメロディと色彩に心を奪われ、私はフランス語学習を始めました。そして気付いた時には専攻科目を放り出し、南仏の大学へ留学していました。現地でDVDを買い漁り、毎晩音声と字幕を照らし合わせながら学習したことを今でも覚えています。帰国後は仏映画に携わる仕事を希望していましたが、縁あって現在は仏アパレルブランドの広報をしています。初めてフランスを意識したあのファッションの世界が今の職業につながっています。
私は仕事でフランス語を使用する機会に恵まれています。しかし働き始めると様々な業務に追われ、フランス語に費やす時間は徐々に減っていきました。学生時代に培った語学力は貯金を切り崩すように乏しくなり、次第に自己表現する事を苦手に感じるようになっていきました。この状況に危機感を抱いた私は、約10年ぶりに仏検を受験しました。
正直、留学前に準2級を不合格になった経験から、仏検に対する苦手意識と“仏検なんて受験しなくても”という気持ちがありました。ところが仏検対策をはじめると語彙や表現方法の幅が広がり、ビジネスでのコミュニケーションも円滑になっていきました。仏検が仕事に好循環をもたらし、今では自信をもって仕事に取り組めるようになりました。
さらにある時、担当ブランドのショーにカトリーヌ・ドヌーヴが招待客として現れました。『シェルブールの雨傘』の主人公ジュヌヴィエーヴに、フランス語で挨拶を交わした時はとても幸せな瞬間でした。語学の勉強は困難ですが、継続していけばきっと良いことがあります。
私はファッションと映画を通じてフランス語に出会いました。もちろん言語を学ばなくても洋服や作品を楽しめます。しかし言葉を学ぶことにより、デザイナーや映画監督の考えを直接理解できるようになります。また芸術の世界ではフランス語の専門用語が多く、フランス語が出来ることは大きなメリットです。フランス語は私に豊かな知識を与え、仕事の幅を拡げてくれました。
もし仏検を受けるか迷っている人がいたら、是非勇気を出して受験して欲しいと思っています。私は合格を目指していく過程でフランス語との距離が縮まり、より生活に身近なものへ変化していきました。仏検はフランス語と私を、再び結びつけてくれた3つめの大きな出来事です。これからも大好きなファッションと映画に関わりながら、準1級と1級にチャレンジしていきたいと思っています。
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(*) 参考:サンローランのショーを伝えるニュース(1998年7月12日)
フランス国立視聴覚研究所アーカイヴより
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