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立教大学と仏検 新たなステージに向けて

澤田 直(立教大学)

立教のフランス語教育

立教大学では、文学部にフランス文学専修(以前はフランス文学科でしたが、2006年改組により格下げになりました、涙)があるほか、全学部で第二言語が必修(今のところ)となっており、多角的なフランス語教育を行っています。初習言語として、フランス語を選ぶ学生は、最盛期の90年代には30パーセントを超え、900名以上いましたが、その後、中国語やスペイン語に押されて漸減し、近年では20パーセントを割り込む年もある凋落ぶりで、関係教員としてはかなりの焦燥感があります。新学部ができたこともあって、数的には、600~700人を維持しているのがまだしもの救いです。

新入生歓迎会クッキー

文学部以外のフランス語教育は、全学共通カリキュラム運営センター(通称「全カリ」)のフランス語教育研究室の担当で、文学部所属のフランス文学研究室の教員は直接にはタッチしない形ですが、年に数回の会合を開き、意見交換を行ない、状況打開に向けて、熱い議論を戦わせています。

立教全カリのフランス語教育の特徴は、初級、中級だけでなく、上級のコミュニケーション、ライティング、リスニング・リーディング、演習など、質量ともに充実しており、池袋と新座のどちらのキャンパスでも受講できることです。また、これら語学系列の他に、海外体験とフランス文化に関する授業など所定の科目から26単位を取得するとグローバル副専攻(French Language & Culture)の修了証が取得でき、ハードな条件ですが、意欲的な学生には人気のプログラムとなっています。

モチベーションをどうあげればよいのか

語学教育は教えることのスキルもさることながら、受講者のモチベーションが如実に結果に反映します。どうしたら自発的にやる気になるか? フランス文学専修でも、新入生歓迎会をはじめ、他大学ではとっくの昔から行っていたことを遅まきながら始めました。昨年と今年は、フランス大使館の大学担当官ダヴィッド=アントワーヌ・マリナスさんに、歓迎のスピーチをいただいたあと、ケーキとサンドイッチをつまみながらの歓談、お土産には特注のクッキーをプレゼントするなど、四月初めから発破をかけました。小手先の工夫ですが、実際に体験できる形で、フランスに触れることで、新入生のやる気は心もちアップした気がします。

幸いなことに、入学生の半数以上はフランスが好きな学生たちですが、不思議な二極化現象が見られます。語学がよくできる学生は文化への関心が表層的で、あまり掘り下げようという姿勢が見られず、特に文学にはほとんど惹かれません。一方、文学や文化にディープな関心を示す学生(我々はこれを勝手に「コンテンツ系学生」と呼んでいます)は、なぜか語学が極度に苦手なのです。もちろん例外はいますが、全体としてはこの傾向が顕著です。他の大学でも同じような現象が見られるのか知りたいところです。

海外研修募集のチラシそんな乖離を融合するきっかけとなるのが、海外研修です。文学部がヴィシーのカヴィラム、全カリがブルゴーニュ大学付属国際フランス学センター(CIEF)と、それぞれ3週間の海外研修を含む授業を展開しています。夏期研修は高額な費用がかかるために、すべての学生に勧めることができないのが難点ですが、やはり現地に行くことの効果は大きく、研修に参加した学生たちは、秋学期の目つきが違います。自分のフランス語が実際に役に立つことを体験した彼女ら、彼らのモチベーションは驚異的に高まっています。そして、それが協定校への留学につながることも少なくありません。立教では、まだまだ数は十分とは言えませんが、フランスのINALCO、パリ・ディドロ大学、パリ東大学、リヨン第3大学、カナダのシェルブルック大学とケベック大学モントリオール校と協定を結んでおり、毎年多数の学生が出かけます。現地で修得した単位は、卒業単位として認定されるので、応募者が定員を上回る状態が続いています。

仏検との関わり

さて、肝心の仏検との関わりですが、これまでも様々な形で利用させていただいてきました。まずは、既習者の履修免除の基準。3級以上の保持者は、全カリ必修の言語科目が免除され、成績は自動的にSがつくという特典があります(高校生のみなさんにぜひ宣伝してください)。派遣留学の出願資格では、準2級が語学要件となっています(パリ東は2級)。今後、入学試験での活用も検討されており、仏検はDELF/DALF、TCFと並んで、様々な場面で重要な指標となっています。

準会場として団体受験を始めたのは、2005年秋季からと聞いています。長年にわたって団体受験を実施してこられたのは、フランス語研究室の小倉和子先生と、兼任講師の田中成和先生、左合桜子先生。仏文専修は本来ならば、仏検に関して中核になるべきところでしたが、「学生の自主性に任せる」と言えば聞こえは良いけれど、じつは消極的でした。それでも、学生たちは積極的に受験してきましたし、「資格のためのフランス語」と副題された、仏検対策をメインにした必修選択科目も設置していました。

しかし、やはり目に見える目標を掲げることは重要だとの思いから、2017年度の秋季から、フランス文学専修1、2年の全学生に受験してもらうことになりました。検定料に関しては学生から徴取している学生研究会費を充当、学生は直接お金を払うことがないので負担感もなく、好評です。試験の結果は、成績評価に反映することはしていませんが、モチベーションや実力を知るのに役立っています。また、全カリの方でも、各種検定試験受験料の一部補助制度があるので、受験環境はかなり恵まれていると言えるでしょう。今後は、卒業までに全員が2級を取得する、準1級の合格者を増やすなど、明確な指針を立てて、授業設計をすることなども視野に入れたいと考えています。そういうわけで、立教大学にとって、仏検とのおつきあいは新たなステージに入りました。

個人的には、文法も重要だけれど、細かいことにこだわるより、使えるフランス語、使って楽しいフランス語を見据える必要があると考えます。専門課程であるにもかかわらず、4年間も学びながらほとんどフランス語が使えない学生を生み出すという悲しい現状からの脱却を真剣に考えるときが来ているように思うのです。