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第2外国語として、あるいはお試しで――都立高校でのフランス語

大熊 陽子(都立高校フランス語準常勤講師)

東京都立高校で、フランス語を教える。

私は、東京都・準常勤講師。フランス語を教えに、朝から夜まで東京都内方々の高校に赴いています。まずは、私の仕事の概要について、みなさんにご紹介します。

東京都の非常勤講師はふつう時間講師と呼ばれますが、通年で12コマ以上担当すると準常勤という区分になります(待遇が良くなります)。フランス語の授業は、他の英語以外の言語と同様に、全日制(普通科・総合学科)・定時制・中高一貫校といった様々な高等学校で開講されていて、大体週1回で2コマ連続です。しかし、学校によって設置のされ方は異なります。自由選択科目として(いくつかの科目の中から選ぶか、追加で履修する)だったり、必修選択科目としてだったりします。2018年度は8校・16コマ。受講希望者が毎年増減を繰り返し、年度ごとに実施時間・曜日が変更することもあって、毎年コマ数も場所も何かしら変わります。他の方の産休や研修で、年度中でも臨時に授業を持つこともあります。また、学校行事によって授業がない週も(短縮になることも!)ありますから、スケジュール管理には注意を払います。

授業そのものも、それぞれの学校によって様々です。スタイルが大きく変わるのは、ALT・外国語指導助手がつくか否かです。それも、毎時間・年間で数回・全くつかないなどいろいろです。他にも、受講学年(単一学年か、複数学年混合か)や、実際の授業回数(月曜と水曜では年間で2桁もの差が)、成績のつけ方(絶対評価か相対評価か)など、学校による違いは枚挙に暇がありません。特に留意すべき違いは、それぞれの学校・それぞれの学年でそれぞれの雰囲気があること、そして、生徒たちのポテンシャルやモチベーションもまたそれぞれだということです。前者は授業の進め方に直結するポイントです。授業中、指示を出さなくても発音するのがふつうの学校もあれば、促しても発音を繰り返さない生徒が多い学校もあります。これは経験上、大学や専門学校の授業でもありえますから、最善を尽くすだけです。悩ましいのは、後者です。高校選択の決め手がフランス語を学べることだったという生徒、将来希望する進路のために学ぶ生徒、空きコマに出来ないので仕方なく受ける生徒、友人が取るので合わせた生徒などが混在しています。ここから共通項として導いた目標が、とにかくフランス語を楽しんでもらうこと。そこから欲を出して、いくつかの学校で「フランス語を1年学んだ証」として「秋季で仏検5級を取得すること」を勧めています。受検を強制することは出来ませんが、学校によっては検定に合格することで卒業単位に互換してもらえるところもありますし、何より明快な設定だと思っています。

仏検 5 級を目指して

ここからは、仏検5級取得に向けた授業について具体的にお話しします。教材は、11月半ばまで仏検一直線の内容のプリントです。余白をたっぷり取ってあるので、自分だけのノートを作るよう促しています。焼き鳥屋さんのタレのような、私のプリント 週に1度あるかないかの授業の中で、詰め込みにならないよう、急に難しくならないよう、いかにして定着させるかが課題です。ですから、生徒ひとりずつの作業として、発音や問題の回答をひとりずつやってもらったり、文法的な規則を出来る限り生徒自身で考え見つけるようにさせたり、私だけが発信する授業ではなく、皆を巻き込む授業を心がけています。定着のためには、アウトプットが肝要です。そして、実際に出来た!の積み重ねが、フランス語と親しくなる確かな方法だと考えます。

毎年変わらざるをえないのは、進度です。これは、授業実施数や生徒たちの定着具合によるので、仕方のないところです。とはいえ、夏季休暇までに冠詞類とêtre, avoir, 第1群規則動詞の活用は扱います。単語集も渡しておけば、休暇中の課題として仏検5級の筆記[1]・[2]・[5]番の練習が出来るからです。折角の今までの学習をリセットさせたくないので、この課題にはきちんと取り組んでもらいます。9月以降に5級の範囲を進めていって、10月末には受検希望者を中心に過去問に取り組んでもらいます。本当は授業中全員に過去問にトライしてもらいたいところですが、近年は授業実施数が減少傾向です。そして、受検者の数は増減を繰り返し続けていますが、殆どの受検者は合格出来ています。12月の試験では5級に準じて出題していますので、受検しない生徒でも5級相当の力はついている筈です。

ちなみに、その後は旅行会話の練習を中心にしています。日常会話ができるようになりたい、旅行に行ったときに困らないようにしたいという声はやはり多いです(日常会話とは何ぞやとは思いつつ)。

約1年間フランス語を学んでみて、生徒たちの感想もいろいろです。「初めてフランス語を教えてくれたのが、先生でよかった。いろいろなことに興味を持てるようになった」と言った生徒がいます。事実、フランス語を続けたい生徒も、フランス語を続けない生徒もいます。どちらにしても、フランス語そのものだけでなく、私が授業で伝えるあらゆることから、生徒たちは学び、刺激を受け、自分の力に変えていきます。だから、私は自分の仕事の本質は「種を蒔くこと」だと思っています。フランス語を続ける生徒も、続けない生徒も、皆まとめて私の大切な子どもたち。フランス語や私の授業を通して得た何かが、いつか素敵な実を結んでくれたらと願っています。

毎年100人以上の生徒と出会い、彼らの多感な時期に寄り添えて、ほんとうに尊い仕事をしていると実感しています。何が誰の琴線に触れることになるかわかりませんから、私自身がまずは成長し続ける存在でありたいです。最後の授業 実を言うと、フランス語の講師になることは、私の長年の夢でした。中学生の時にフランス語と出会ってから、苦しんで楽しんで、時に本気を出し、時にサボって、それでもずっとフランス語と一緒でしたし、フランス語を通して得た経験は語り尽くせません。こんな私だからこそできる授業があるのだと信じています。新しい生徒たちとの出逢いを心待ちにしながら。