フランス語カリキュラムと仏検への取り組み
近藤 由佳(武庫川女子大学)
私が勤務している武庫川女子大学ではフランス語はドイツ語、イタリア語、スペイン語、中国語、ハングルと並んで共通教育科目の中の語学の1つとして選択することができます。また文学部英語文化学科では1、2年次はフランス語かドイツ語のいずれかを選択必修科目として、3年次では自由選択科目としてフランス語を第2外国語として学ぶことができます。
今回は私が担当している、英語文化学科のフランス語カリキュラムと仏検への取り組みについてお話しさせていただきます。
1. 1年次
週2回の開講で、文法の授業を行います。使用しているテキストが仏検をターゲットにしたものであるため、効率よく仏検と連動した授業ができていると思います。文法力を徹底して強化するために、テキストの練習問題だけにとどまらず、補助的にテキストに準拠しない問題ばかりを集めたプリントを配布するなどして、とにかく数多くの問題に当たらせることで、応用力をつけさせています。もちろん、検定日が近づいてくる頃には本番さながらに時間を計り、過去問を解いていきます。
解説をする際には「ここは整序問題としてよく出題される」であるとか、「このイディオムは毎年のように出ている」など、常に仏検の情報を織り込むようにしています。そうすることで、学生たちもおのずと仏検を意識して受講するようになります。
また英語が好きな学生たちばかりであることを利用して、仏英比較をしながら解説をすることも多々あります。同じ意味のフランス語と英語の文を板書して、相違点や類似点を視覚的に明確にしていくのです。授業アンケートには「相乗効果でフランス語と英語の両方において理解が深まった」、「語学は暗記科目ではなく、理論を理解しなければいけないと実感した」といったコメントがかなり多く見られます。1年生でフランス語初心者である学生たちに対してはこのやり方が功を奏し、私の担当するクラスでは5級はほぼ全員が合格、4級は合格率8割以上となっています。
2. 2年次
英語文化学科の学生たちは原則として全員が1年次の2月初めから2年次の5月末までの約4か月間、ワシントン州スポケーン市にあるアメリカ分校に留学することになっています。したがって、フランス語の授業は後期のみ、週2回の開講となります。
留学して、“生きた英語” に触れて刺激を受けて来た学生たちが、それと同様の経験をフランス語でもできるように、コミュニケーション中心の授業を行っています。
1年次では手薄になってしまっていた “話す” “聞く” に力点を置き、留学と夏休みによる約半年間のブランクを取り戻すために文法の復習も交えつつ、自分たちの日常生活に必要な表現を身につけて、フレーズを作り、それを伝えることができるようにすることを授業目的としています。“読む” “書く” “話す” “聞く” の4技能をバランスよく向上させることで、次の目標である仏検3級合格ラインが見えてきます。とは言え、やはりほとんどフランス語に触れていない半年間のブランクは大きく、2年次での3級合格者は少ないのが実情です。
3. 3年次
自由選択科目で、週1回のみの開講となります。各実習や就職活動の時期と重なってしまうにもかかわらず、毎年履修者は35人以上を下回ることはなく、多い時には50人を超えることもあります。仏検3級以上の受験者をターゲットとし、仏検に特化した授業内容ということもあり、学生たちのモチベーションはかなり高いです。出題傾向に応じた対策授業を望む声がほとんどなので、過去問を授業中に解くのは2、3回にとどめ、冠詞、代名詞、動詞、応答文…というように項目別に問題を集め、重要ポイントを簡潔にまとめたプリントをメインに進めています。
まずはある程度の時間を与えてひととおり問題を解き、その後にかなり細かいところまで丁寧に解説をしていきます。積極的に質問をしてくる学生がとても多く、その質問内容も具体的かつ高度なものが多いです。
近年は準2級に挑戦する者も出てきて、仏検を取得したいという強い意欲を持った学生が増加しているのを実感します。
4. 仏検受験のメリット
英語文化学科では担当者が願書を取りまとめ、団体受験という形を10年以上前から取っています。仏検受験は強制でないにもかかわらず、毎年ほぼ全員が受験するのはこの団体受験というシステムの効力が大きいと言わざるを得ません。数人が仏検に興味を持ち、受験を希望すると、それに感化されるかのように自然とクラス全体が同じ方向を向き始めます。自分1人だけではなく、仲間と一緒だから頑張れると思えるのでしょう。また就職の際の履歴書に書けるということを考えてのことなのかもしれません。いずれにせよ、検定取得という具体的な目標ができることで、前向きにフランス語学習に取り組む姿勢がより顕著になっていくのを感じます。
そうなれば授業にも積極的に参加してくれるので、理想の授業形態である双方向の授業が成立し、質問や発言をしやすい環境が生まれ、とても活気のある空気を作り出すことができるのです。
仏検を含め、フランス語の学習を通して、フランス語を好きになってほしいという思いはもちろんあります。でも、もしどうしても好きになることができなかったとしても、新しい何かを学ぶことの楽しさ、一生懸命物事を考えることのおもしろさ、目標に向かってチャレンジすることの大切さを体得し、それをフランス語以外の勉強や、今後の人生にぜひ生かしていってほしいと切に願っています。
最後になりましたが、仏検に携わってくださるすべての方々に、この場をお借りして心から感謝申し上げます。
ツイート