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第17回 日本語表現をフランス語の発想に移しかえる(中級)

                               中央大学教授 小野 潮  

語頭のアスタリスク(*)は、その語が誤りを含むことを表します。
 

どのような言語でも、日常的によく用いられ、それを理解することで会話の流れの把握が容易になり、また自分で用いることができれば、発話を滑らかにできる言い回し、しかし、文法学習をしているだけではなかなか身につかず、それ自体を学習しないと覚えられない言い回しが存在します。

実用フランス語技能検定試験(仏検)では、そうした言い回しは5級のレベルから既にテキストには頻繁に用いられていますが、とくに3級、準2級、2級では、日本語の表現に対応させる形で、あるいはフランス語を書き取る形式で、こうした言い回しを問う文章が出題されています。なぜなら、こうした言い回しを、読んで、聞いて理解しインプットした上で、さらに、自分が発話し積極的に書くというアウトプットにも応用できるようになることが、フランス語をなるべく自然に話すためにおおいに役立つものだからです。この問題に出題される言い回しを自分で使えるようになれば、フランス語を話す際の滑らかさが格段に増すはずです。

                

今回は、2013年度春季3級 [1] の問題を検討してみましょう。

それぞれの設問について日本語が与えられ、それに対応するフランス語の表現がその下に記されていますが、その1語が空欄になっており、解答すべき語の冒頭の文字が与えられています。

 (1)  今日は何日ですか。
   Nous ( s       ) le combien, aujourd’hui ?
 (2)  たぶんね。
   Sans ( d       ) .
 (3)  はい、もう二度としません。
   Non, je ne ferais plus ( j       ) ça !
 (4)  まさか!
   Ce n’est pas ( v       ) !

この問題を解くには手がかりが3つあります。

  • 1つ目は、与えられた日本語です。これを読んで、すぐフランス語の表現を思いつけ、それがフランス語で与えられた表現そのものであるならば、既にこの問題は解けているに等しいでしょう。
  • 2つ目は与えられたフランス語表現の(   )を除いた部分です。とくに(   )の前後の表現から、(   )内に入れるべき語の品詞が想定できる場合が多いからです。
  • 3つ目は(   )内に与えられた語の最初の文字です。この最初の文字が現れない解答を思いついても、それは正答にはなりません。改めて、この文字から始まる語を探してください。 


  
        

それでは各設問を検討していきましょう。

 (1)  今日は何日ですか。
   Nous ( s       ) le combien, aujourd’hui ?

(1)で与えられている日本語は「今日は何日ですか」です。このうち「今日は」の部分は aujourd’hui で表わされており、数字を問う「何日」の部分は combien によって表わされています。combien に先立つ定冠詞のleは、日付けを表わす数字の前に現れるものです。この文全体の主語は nous で、これとこれに続く動詞で、日にち、曜日を訊くために用いられる表現を知っているかどうかが問われています。正答は être です。Nous ( sommes ) le combien, aujourd’hui ? となります。もし「今日は何曜日ですか」という問いに変えたいならばNous sommes quel jour, aujourd’hui ? という文が使えます。また主語をそれぞれ on に変えて On est le combien, aujourd’hui ?、On est quel jour, aujourd’hui ? という文も成り立ちます。

この設問に対してなされた誤答で目立ったのは、*somme です。être の活用形であるということまではわかったものの、それを正しく活用できなかったものです。être の活用は基本中の基本です。しっかり覚えましょう。

 (2)  たぶんね。
   Sans ( d       ) .

(2)で与えられている日本語は「たぶんね」です。フランス語で与えられている文の最初の語 sans は前置詞で「~なしに、~せずに」の意味を表わし、これに続くのは動詞、もしくは名詞です。「~なしに」が「たぶんね」という意味を表わすことができるためには「~」の部分に「疑い」あるいは「可能性」などの意味を帯びる語が必要になります。正答は「疑い」の意味を表わす doute です。つまり、Sans ( doute ) . となります。「たぶんね」に相当するフランス語としては Peut-être. もよく使われますが、この設問の、sans で始まり次に d が冒頭にくる語が続くという条件にあてはまりませんから、この問題の答えにはなりません。

この設問に対してなされた誤答で多かったのは d’accord というものでした。d’accord は「了解しました、同意します」の意味を伝える言い回しで、d’accord の d’ は de がエリジヨンした形であり、それ自体が前置詞です。前置詞 sans の後ろに、さらに前置詞の de が続くことはありません。

 (3)  はい、もう二度としません。
   Non, je ne ferais plus ( j       ) ça !

(3)で与えられている日本語は「はい、もう二度としません」です。このうち「はい」の部分は Non で、「もうしません」の箇所は je ne ferais plus ( … ) ça で表わされており、「二度と」を ( j     ) によって表現します。より正確に言えば、この設問で難しいのは ne が ne... plus 「もう~しない」と ne... jamais 「二度と~しない」の二重の役割を果たす形で用いられていることです。正答は jamais です。Non,  je ne ferais plus ( jamais ) ça ! となります。

この設問に対してなされた誤答で多かったのは jusque でした。jusque は前置詞ですが、やはり前置詞である à と連続させ jusqu’à という形で用いられることがもっとも多く、また他の前置詞や、時を示す副詞である alors や maintenant の前で用いられます。

 (4)  まさか!
   Ce n’est pas ( v       ) !

(4)で与えられている日本語は「まさか!」です。この日本語は「まさか、そんなことはありえない」、「まさか、そんなことは本当ではない」といった具合に用いられますから、これを発話する人間が、聞いたことがらについて「信じられない」という感情を示すものです。「ありえない」は、「そんなことは不可能だ」「そんなことは可能ではない」ということで C’est impossible ! や Ce n’est pas possible ! といったフランス語が考えられます。日本語に自由に対応させるだけなら、これらの言い回しでも「まさか!」の意は伝わります。ただし、この設問では(   )内の語の冒頭の文字を v にするという制約がつきますので、これに適合する語を探さなければなりません。 Ce n’est pas possible ! の possible の位置に入る語ですから形容詞を探します。すると vrai という語が適当だと推測できます。正解は Ce n’est pas ( vrai ) ! となります。

この設問に対してなされた誤答で多かったのは *vien というものでした。 *vien という語はフランス語には存在しません。おそらくは bien という語が最初に頭に浮かんだのでしょうが、最初の文字として与えられたのが v だったので苦し紛れに *vien という綴りを記したのだと思われます。しかし、Ce n’est pas bien ! という文では「それは良くない」という意味にしかならず、日本語で与えられている「まさか!」というニュアンスは出ません。

                

この問題で出題されている表現は、いずれも頻繁に用いられるものばかりです。3級から準2級、2級と級が上がるにつれて、日本語とフランス語の発想の違いが問題にされることが多くなり、正解に達することはより難しくなりますが、それでも非常に使い勝手がよい表現が問われていることに変わりはありません。
これらの表現を確実に習得していくことは、自信をもって、かつ滑らかにフランス語を発話するためにおおいに役立つはずです。