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矢上キャンパスという「フランコフォニー」

2022年春季1級合格
草壁 慧
慶應義塾大学理工学部機械工学科4年 安藤研究室・千葉県

仏検の合格体験記を掲載していただけるという貴重な機会をいただき、ちょうど大学を卒業するというタイミングですので、私の大学生活4年間を振り返ることで、私のフランス語との出会いやフランス語の勉強法、フランス語での思い出について、書きたいと思います。

私がフランス語に初めてふれたのは、慶應義塾大学理工学部に入学してからでした。当時は、「ボンジュール(スペルも知らず…)」くらいしか知らない状態でしたが、フランス語を選んだ理由は、アクサンのついた文字(éやâなど)がとてもきれいだと思ったことと、フランス語は多くの国際機関で公用語となっており、今後使う機会があるかもしれないと感じたからでした。授業が始まり、スペルだけでなく、発音にも魅了され、フランス語が好きになっていきました。1年生の秋に、初めて仏検3級を受け、いずれは仏検1級を取得できればいいな、とぼんやり思ったことを覚えています。

フランス語の勉強に関しては、理工学部のフランス語の授業をベースに行っていました。1年次では必修の授業があり、主に文法を一通り学習することができました。2年次からは必修ではなくなりましたが、フランス語を本格的に習得することができるインテンシブコースがあり、それを履修しました。インテンシブコースでは、文法を復習した上で、ほとんどの授業時間は「とにかく話す」ことに重点を置いており、授業内でフランス語圏出身の留学生のティーチング・アシスタント (TA) と会話することで、「生きたフランス語」に常に接することができ、フランス語を即座に口から出す練習ができました。授業内で仏検の準備をすることもあり、文法や語彙のおさらいを効率的に行えました。私が2年生のときは、ちょうどパンデミックが始まった頃であり、授業が全てオンラインとなり、外国語習得へのモチベーションが薄れてしまう状況でしたが、オンラインながらも留学生と会話できたことや仏検取得といったことが大きなモチベーションとなり、続けることができました。授業外でも、ニュースを読んだり、聴いたりし、意味を知らなかった単語はノートに例文とともに書いて覚えていました。他にも使い方が美しかったり、単語の使い方や論理の通し方がネイティブらしく、まだ自分には書けそうにないような表現を用いていたりする文章はノートに写して時々見返していました。3年次からは、キャンパスが日吉から矢上へと移りますが、変わらずフランス語の授業は、様々なものがあり、私はディスカッションや留学生 TA との会話がベースとなっている授業を履修しました。この頃ぐらいから、ようやく France 2 の 20h が少しずつ聞き取れるようになり、ますますフランス語の学習が楽しくなってきたのを覚えています。4年生となり、ドイツへの留学を目指すようになり、卒業研究やドイツ語の勉強の傍、フランス語の勉強を続け、なんとか春季に仏検1級に合格することができました。準1級との単語の難易度の差に当時圧倒されてしまいましたが、ニュースを読んだり、聴いたりしてメモする、単語帳を自分で作る、などの以前からの勉強法を継続させることで、名詞化や時事の単語、動詞活用などは対策することができました。また、リスニングやスピーキングに関しては、大学院にフランス語圏出身の留学生と共にフランス語でディスカッションを行う授業があり、これに参加していました。とても高難度な授業で、フランス語が話されるスピードが速く、ついていくのに必死でしたが、これを続けたことでリスニングやスピーキングは相当鍛えられました。もちろん、日常的な留学生とのフランス語での会話によっても、これらは鍛えることができました。

 






















フランス語を大学に在籍している間継続したことで、フランス語で様々な思い出を作ることができました。ここでは、2つほど紹介させていただきたいと思います。まず挙げられるのが、留学生との交流です。授業中に TA として来てくれていた留学生やキャンパスで知り合った留学生と友達になり、ご飯に行ったり、旅行に行ったりしました。3年生の夏休みと4年生の夏休みに、日光に旅行に行ったのですが、3年生のときにはフランス語で名所などの説明ができず、多くの時間を英語で話してしまったものの、4年生になって再度行った時には、全てフランス語で会話、説明ができるようになっており、成長を実感したのを覚えています。その他にも、フランス語圏の留学生と日本語が母語の学生が互いの言語を学び合えるような団体を設立することで、様々な活動を通して、楽しくフランス語を習得できたと同時に、フランス語がさらに身近なものとなりました。 そして、2つ目に、私の研究分野である、気泡力学や流体力学ともフランス語は大きく関わっています。私の所属している研究室には、昨年までフランス出身の留学生がいたため、研究室というとても身近な環境でフランス語を常に使うことができました。また、卒業論文の研究では、ゼラチンゲル内の気泡の力学に関する研究を行いました。この研究のベースには、流体力学や連続体力学、熱力学といった知識が必要ですが、例えば、研究に欠かせない流体力学では、Navier-Stokes 方程式の Navier や、Rankine-Hugoniot の式の Hugoniot、Laplace 圧や Laplace 方程式の Laplace、連続体力学の分野では、Lamé 定数の Lamé、熱力学では、Carnot サイクルの Carnot など、ざっと挙げるだけでもたくさんのフランス語圏出身の研究者が出てきます。教科書や論文に研究者の名前が出るたびに、何語圏由来の名前かを当てるゲームを楽しんでいました。また、過去の文献まで遡ると、フランス語で書かれた教科書が出てきて、これを読めたときには、フランス語をやっていてよかったと思いました。さらには、少し前の論文を読んでいたりすると、アブストラクトが英語だけでなく、フランス語とドイツ語で書かれていたり、研究の対象が気泡であることから、Champagne の気泡を対象とした研究に遭遇したりと、研究している時の方がフランス語を身近に感じることができました。

この4年間を振り返ると、フランス語がとても日常的に存在していており、フランス語を勉強するには非常に恵まれた環境であったと実感しています。フランス語圏に行こうにも行けなかった時期が続きましたが、矢上キャンパスに行けば、研究室でフランス語を話し、コンビニに買い物に行こうと研究室から出ると、歩いているだけで、フランス語が日常的に聞こえてくるという、まさにキャンパスが「フランコフォニー」であると言っても過言ではないような環境でした。今秋からは、留学を予定しており、語学の勉強を継続しつつ、専門分野の勉強や研究に一層励みたいと思います。そして、キャンパスで出会った友人たちとフランスで再会することも楽しみです!

最後に、フランス語の勉強に付き合ってくれたフランス語圏出身の友人、フランス語学習にモチベーションを与えてくださった仏検、フランス語を教えてくださった先生方に、大変感謝しております。特に、小林拓也先生には、フランス語を教えていただいただけでなく、留学経験のない私に、グローバルな教養も様々な観点からご教授いただきました。この場を借りて、お礼を申し上げます。