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初心者のための九州フランス語コンクール

阿南 婦美代 (長崎外国語大学教授)

このコンクールは1988年に始まりました。表題にあるように初心者を対象としています。このコンクールを始めようと言われたのは、当時の九州日仏学館の館長ブイスー氏でした。フランス語学習暦2年以内の初心者でも、2~3分のスピーチをし、スピーチの内容に関する試験官の質問に答えることができるということを示そうというのが目的の一つでした。発信型のフランス語教育を目指していた私は、すばらしい企画だと思い、すぐに賛同しました。発案から半年もたたないうちに計画がまとまり、簡単な規約もでき、九州日仏学館、長崎外国語短大、大分日仏協会、熊本アリアンスフランセーズの4機関の共催による、第一回のコンクールが1988年の5月28日に福岡で行われました。その後、毎年一回、熊本、長崎、大分と場所を移動して行われることになりました。熊本アリアンスフランセーズは1992年には閉鎖になりましたので4回の参加に終わりましたが、3機関になっても、年に一度、一回も休まず続いていますので、昨年2007年には、第20回目を福岡で実施しました。今年は第21回目になります。発案者のブイスー氏がこのことを知られたらきっと驚かれるだろうと思います。このコンクールのもう一つの目的は、九州各地でフランス語を学んでいる人、フランス語を教えている人達の出会いの場にし、そこでの情報交換を通して、日仏文化活動も活発化させようということでしたが、それも20年来実行できています。

毎年、実施場所が異なり、実施地の機関が責任者となって実行していることも、このコンクールが長く続いている理由の一つかもしれません。実施地主催者の主な仕事は、会場手配、賞の準備、プログラム作成、当日のコンクール運営と終了パーティの実施などですが、出場者は参加するためには交通費が必要ですので、出場者数は15人~20人前後で変化しますが、多い時も、希望者はできるだけ参加できるようにプログラム上の配慮をしています。出場者にとって、フランス語で自分の考えをまとめ、2~3分話すということは始めての経験ですので、まず、話す内容を自分で考え、フランス語の文章にすることからはじまり、全体をできるだけフランス式にまとめあげ、それを覚えるという作業になります。これは指導する教員にも大きな仕事になりますが、学習者には生きたフランス語のよい勉強になると思います。ただし、例年のことながら、ぎりぎりにならないと考えもまとまらなく、作業も始まらなくて、出場者が決まるのも締め切り直前というのが、各地の現状のようです。それでもコンクールの当日には、出場者は実力を出し切ってがんばり、とても楽しい雰囲気のコンクールになっています。一度スピーチを経験すると、入賞しなくても人前で話をすることがとても好きになるという学生もいます。

20年間にはいろんなスピーチがありました。いまだに、内容を覚えているようなスピーチもあります。主催3機関の性質上、出場者も大学生だけではなく、年齢的にも、高校生からシルバーエイジまで、職業も様々です。試験官で忘れられない方もいます。その一人が元大阪・神戸フランス総領事トランキエ氏です。一度このコンクールの試験官をしてくださってから、スピーチを聞くのがとても楽しいと、在任中、長崎、福岡、大分の3箇所に来てくださいました。質問をするときに、本当に楽しそうだったのが印象的でした。

嬉しいことに、このコンクールの賞は年々豪華になってきています。1回目から続いている賞は、主催者がお金を出し合い、優勝者に出しているパリ行きの航空券です。初回から在日フランス大使館の後援はいただいていましたが、「1ヶ月のフランスでの語学研修」という賞を頂けるようになったのは、第5回目の1992年からでした。語学研修先はフランス大使館の認めている研修先なら、自分の行きたい場所を自由に選ぶことができるものです。パリまでは自費ですが、パリから地方への移動費も出してもらえます。滞在費も支給されます。時間にゆとりのある学生にはこの賞は本当にありがたいものです。今年は予算の関係でこの賞は出ないかもしれないと言われた年も何度かありましたが、めげずにお願いして、ずっと継続していただくことができています。主催者は、可能なかぎり協賛先を探し、参加者全員に賞を用意することに努めていますが、1999年から、フランス語教育振興協会からも賞を提供していただけるようになりました。地方では手に入りにくい仏仏辞典を7冊もいただくことが出来て、賞がうんと華やかになりました。その上、主催者の手が回らなくて、つい忘れてしまう写真なども撮っていただいて、毎年記録が残せていることにもとても感謝をしています。

このコンクールが、フランス語を始めたばかりの人達の学習目標の一つとして活かされ、楽しい日仏交流の場として、今後も発展継続していくことを願っています。