中・高生へのフランス語の取り組み
島田 幸子(大妻中野中学校・高等学校)
私が勤務している大妻中野中学校・高等学校は都内にある私立の中高一貫校の女子校で、中高合わせて約1500名在籍しています。そのうち高校生のみ、外国語設置科目としてフランス語を選択することができます。取得単位数は1〜3年まで各2単位(自由選択科目)となっていますが、既存のフランス語クラスのほかに28年度から設置されるGLC(グローバルリーダーズコース)クラスでは、中学1年生(1単位)と高校1年生(2単位)のフランス語が必修科目としてスタートします。
在籍数は多いのですが、フランス語履修生徒は70名(27年度)と少なく若干マイノリティーな状況の中での授業となるため、周囲の環境からフランス語に対する学習意欲を維持させることが少し難しい反面、目が行き届きやすく生徒のモチベーションに対応しやすいことが利点であると感じています。中・高校生の最大の関心事である受験勉強や部活動と並行して、新たにフランス語にチャレンジすることはとても大きな決断となっているようです。ただ、実際授業を始めてみると少人数なだけにフランス語選択者には結束感や一体感が生まれ、他教科と比べて授業に積極的に参加しているように見受けられ、生徒それぞれが個人の目標を達成するために努力しているように思います。卒業生の話を聞いてみると、受験科目には直結しないもののフランス語を学習していたことが生徒自身の満足感や達成感となり、その充実した高校生活が受験にもいい影響を与えていたようです。また、卒業後も定期的に学校へ顔を見せに来てくれて、フランス語の学習状況の現状であったり、フランス語選択者同志で一緒にフランスへ行ったりしていると話に来てくれます。私としても、生徒たちが将来も何らかの形でフランス語とつながっていてくれることを純粋に嬉しく感じています。
生徒のモチベーションが大切なフランス語学習においてまず注目していることは、国際交流(留学生の存在)と仏検です。本校は海外帰国生徒を多く受け入れていることと(全校生徒の約10%)、2015年度からSGH(スーパーグローバルハイスクール)アソシエイトに認定されていることもあり、国際交流・国際教育に力を入れています。そのため英語圏との交流としてはアメリカ、ニュージーランド、オーストラリアの提携校と実施し、海外研修旅行としてもカナダ(中2)、ニュージーランド(中3)、オーストラリア・アメリカ(高1・2)を夏期に実施しています。
昨年度は7月にはブルキナファソ大使夫人のフランス語によるお話、2月にはケベックからの留学生を迎えての文化交流をフランス語・英語で行いました。その他の国際交流行事として、中2から高1までが一堂にそろっての外国語発表会(フランス語・英語)、早稲田大学留学生との交流セッション(文化祭)や帰国小学生英語教室(英語保持教室)、模擬国連やタイの提携校へのフィールドワークなども行っています。フランスとの交流としては、コリブリネットワーク(短期留学)に加盟し、2009度からはほぼ毎年数名程度参加させ、同様にフランス本土やニューカレドニアからの留学生を受け入れています。受け入れ形態としては完全交換留学となり、3週間ずつ日本とフランスで過ごします。本校に在籍中は、バディーである日本人生徒のHRクラスに参加しながら、留学生にはフランス語の授業だけでなく、学校行事・部活にも参加してもらいます。高校の普通授業は1日に3時間程度とし、他学年の授業(中学生の理科や英語、高校の芸術・家庭科の授業等)にも参加させて、学校全体でフランスの風を感じてもらえるようにしています。
さらにフランス人留学生を中学生の授業に参加させたり、集会や校内向けのラジオ放送にも参加させたりすることで、中学生のうちから英語とは異なる文化圏の存在に気付くことが出来、フランス語や文化に自然と興味を持たせることが出来ているように思います。その結果、高校へ入学してから始まるフランス語学習を楽しみにしていたり、フランス語を話している先輩に憧れたりしていて、フランス語の授業へスムーズに移行できているのではないかと思います。
また、仏検の存在も大きいと思っています。授業では仏検取得を目標にし、高校1年生で5級、2年生は4級、高校3年生は3級以上と設定しています。ただ実際には、3級以上を授業の学習だけで取得することはなかなか難しく、生徒本人の相当な熱意と授業外での学習が欠かせません。そのような理由から仏検受験の義務化はしていませんが、仏検の受験を積極的にすすめ成績にも加点しています。通常の定期試験とは異なる仏検を受験することで、自分たちの他にもフランス語を学習している人がたくさんいることを知ってもらいたいことと、英語とは異なり教育指導要領での縛りが少ないために、通常の定期テストだけでは感じにくい学習面で達成感をも感じてもらいたいことがその理由です。特に高校1年生の秋季に行われる仏検では、出題項目の学習が毎年ぎりぎりとなるため綱渡り的な調整となってしまいますが、その結果手にした5級合格の喜びというものは絶大で、毎年嬉しそうに知らせに来てくれます。その後も順調に3級や準2級を無事合格した生徒には、大学のAO試験で活用したり、大学へ入学してからの単位認定を申請したり活用するよう指導しています。
現在は便利な情報社会となり、インターネットを使用すればすぐに海外の情報が手に入るグローバルな時代です。でも中高時代にフランス語を学ぶことは、残念ながらまだまだメジャーなことではありません。単にフランス語やフランス文化の知識を増やすことだけが目標となるのでなく、生徒自身の視野が広がることで将来への選択肢を広げ、新しいことを果敢にチャレンジすることで生まれる苦しみと楽しみを感じ、自分とは異なる相手の文化を拒否せずに受け入れ、相手にも自分のことを受け入れてもらえるように提案できる、強くしなやかな日本女性へと成長してほしいと常々感じています。また、プラスしてフランス語が生徒自身の一生の友となってくれることが私の希望です。
ブルキナアファソ大使夫人とともに
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