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第16回 動詞の時制と活用形(初級)

東京工業大学名誉教授 中山眞彦

今回は動詞の時制(過去・現在・未来、等)とそれに応じた活用形を取り上げます。仏検2008年秋季の4級では筆記試験の第4番がそれです。(  )に入れる語を選択する問題で、文意を示す日本語文が付いています。合計で4問、その最初は、

(1)明日、電話してください。
(   )-moi demain, s’il vous plaît.
1. Téléphone 2. Téléphonez 3.Téléphonons

決め手は《s’il vous plaît》のvousですね。したがって答えは 2.Téléphonez。もし《s’il te plaît》だったら、すなわち親しい人と話しているのだったら 3.Téléphoneです。ここではとくに親しくはない人と話しています。

この問題の正解率は80%台。多くの人が合格ラインをクリアしていると言えるでしよう。この問題を含み全体として、活用形そのものは受験者の頭の中に入っているようです。肝腎な点は、どの活用形を選ぶかということであり、そのためには文の内容を具体的かつ正確に把握する必要があります。とくに内容を組み立てる要となる語句に注意しなければなりません。

この第4番には5個の設問がありますが、(3)の正解率は60%台、(4)と(5)は70%前後でした。ここが合格ラインのひとつでしょうね。

(3) 彼らはこれから公園を散歩します。
Ils vont (   ) dans le jardin.
1. se promène 2. se promènent 3. se promener

3.se promènentをマークした答案が約35%。なるほど主語ilsにあわせて三人称複数形というわけですね。ただしすでに《Ils vont …》があります。一つの文の中で活用する動詞は一つだけ。したがってこのマークは間違いです。

フランス語には動詞の不定法形(変化しない形)を直接に後に従える動詞があります。英語のcanに類するものですが、その数は英語よりも多い。やはり2008年秋季4級の問題中に次があります。

《Je voudrais manger de la viande.》「お肉(料理)をいただきたいと思います。」
vouloir + 不定法形(〜したい)の言い方ですね。英語ではwant to 〜となるはずです。

4級の過去問に次もあります。
《Il est venu me voir la semaine dernière.》「彼は先週わたしに会いに来た。」
venir + 不定法形(〜するために来る)。英語ではto come to 〜ですね。

さて(3)の答えは 3.se promenerで、全文は《Ils vont se promener dans le jardin.》となります。aller + 不定法(これから〜しようとしている)。英語ならbe going to 〜でしようか。

問題(4)に行きます。

(4) 今晩、宿題を終えるのよ。
Tu(    )tes devoirs ce soir.
1.finiras 2.finissais 3.finissez

ポイントは ce ですね。言うまでもないことですが、話している人が自分の場所や時点を基点として「これ、それ」と指しています。「いま・ここ」から近い soir「晩」ですから「今晩」ということで、話している時点はその日のうち、多分、午後のことでしよう。したがって単純未来形を選んで、正解は1.finirasです。

2.finissaisをマークした答案が約30%。同情するなら、次のような文もまったく不可能ではありません。
《Tu finissais tes devoirs ce soir-là.》「その晩、君は宿題を終えつつあった。」

なんだか小説の中の文みたいになりました。この後で何か事件が起きそうな気配ですね。《ce soir-là》に注意してください。-là は「いま・ここ」から見て遠くにあることを指しています。(4)で与えられた文の内容とはまったく別です。

最後に問い(5)。

(5) 祖母は若いころスポーツをしていました。
Ma grand-mère (    ) du sport quand elle était jeune.
1.faisait 2.fait 3.fera

《quand elle était jeune》「彼女が若かったころ」の半過去形(était – être)が決め手です。それと同じ時のことですから、2.の現在形や3.の単純未来形はあり得ません。正解はもちろん 1.faisait。

ついでながら過去問に次があります。やはり4級です。
《J’avais cinq ans quand ma soeur est née.》「妹が生まれたとき私は5歳だった。」
ここは半過去形《J’avais …》と複合過去形《ma soeur est née》の組合わせです。半過去形は持続する行為・状態を、複合過去形は一度限りの事を表します。

それでは、(5)のおばあさんが若いころオリンピックの選手だった(être championne aux Jeux Olympiques)、はどう言えばいいでしょうか。

オリンピックは4年に一度、さすがのおばあさんも選手は一回だけとしましょう。すると、《Ma grand-mère a été championne aux Jeux Olympiques quand elle était jeune.》という具合に、複合過去形と半過去形の組合わせになります。

以上、一口に動詞の活用の問題とは言っても、実際はフランス語の多くの領域にまたがっていることを確認していただけたと思います。もちろん活用形を暗記することが不可欠ですが、しかし用法の理解はあくまでも具体的な文に添うことが大事で、それがもっとも効果的であります。