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絵はがきのパリにあこがれて
2022年秋季準2級合格・在日フランス大使館賞
岸本 明子
自由業・東京都
私がフランスという国を知ったのは1967年。6歳のときでした。父が出張でフランスに行き、現地で病に倒れ入院。その病床から家族に宛てた絵はがきの写真がフランスとの最初の出会いでした。家族に心配をかけまいと気遣った文面には、パリがどれほど素敵な街であるかが明るく綴られていました。
「いつか自分も行ってみたい」という夢は比較的あっさりと叶いましたが、フランス語は何年勉強しても初級のまま。大学でも語学学校でも学びましたが、中途半端なまま挫折して30年以上が過ぎました。もはや受験も就職も関係ない年齢。今さら仏検を受けても仕方ないと思っていましたが、ある日、書店で仏検の問題集がふと目にとまり “4級” を買ってみました。試しに中身を見てみたら、どの問題もさっぱりわからず…。けれども、解答を見たとき、頭の片隅に残っていた単語や熟語の記憶がゆっくりと溶け出すような感覚がありました。同じ0点でも「知らない」ことと「忘れていること」とは違うと気づき、ならば、もう少し記憶をよみがえらせてみようと思い、2年かけて4級、3級、準2級とレベルを上げていきました。
仏検を受けてみようと思ったのはほんの軽い気持ちからです。でも、いざ申し込みをした途端に緊張して落ち着かない毎日。本物の受験生のように、勉強だけでなく、食事や睡眠にも気をつけるようになりました。そして迎えた試験当日。家では、わからない問題はすぐに解答を見てしまいますが、試験中退室はできなかったので、制限時間ギリギリまで何度も問題を読んで考えてスペルをチェック。その甲斐あって普段より正解率が上がりました。決して本番に強いわけではなく、むしろその逆ですが、勉強に大切なのは根気と集中力であることを改めて実感しました。
結果はどうであれ、試験を受けることで気づくことがたくさんあります。私が学生だった’80年代に比べるとどのテキストもわかりやすく、インターネットのおかげでヒヤリングやディクテが「家にいながらにして」できます。あの頃こんなものがあれば… と思うより、この恵まれた環境でもう一度勉強してみること。その楽しさに気づかせてくれた仏検は決して「今さらながら」の試験ではありませんでした。仏検のグレードはいわば一里塚。次の目的地まで着実に歩を進めていけば、これまで苦戦していた初級の壁を乗り越えられると確信しています。