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フランス語の錆落とし – 仏検は人生の deuxième étape への糧

2021年度春季1級合格・日仏会館賞
小池 穣治
千葉県

中学生の時、Radio France Internationale を短波放送で聞いてフランス語の美しさに魅せられ、大学ではフランス語を第2外国語として選択しました。その後、20代終わりにパリに赴任することとなり、2年間本格的にフランス語に接することとなりました。

当時は(今も?)パリでは英語があまり通じない中、フランス語でのコミュニケーションに悪戦苦闘する日々でした。不幸にも住居が盗難にあってしまい、警察に出向いたら、≪ English, I speak, ehhh… quelqu’un qui parle anglais? ≫ と同僚に振る始末、フランス語で状況説明しなければなりませんでした、また、車の免許を取るため「日本人OK」という現地の自動車教習所を訪れると、フランス語しかしゃべれない教官たち。話が違う!いきなりパリの公道を運転させられました。しかし、こんな修羅場を経験したおかげでフランス語は鍛えられました。まさにピンチをチャンスに、です。

日本に帰国後、仏検2級を取得しました。今から30年ほど前のことです。

その後、残念ながらフランス語を使う機会はほとんどなく、フランス語の能力はどんどん落ち、忘却のかなたに追いやられていた状況でした。

第二の人生設計を考えなければいけない年齢になったことをきっかけに、「今まで曲がりなりにも培ってきたフランス語を忘れるに任せるのはもったいないのではないか、今後フランス語を活かせる機会もあるのではないか」との思いが強くなりました。そのため、フランス語の再学習の目標とすべく30年ぶりに仏検を受験することにしました。

当初、仏検準1級の合格を目標にしました。錆びついたフランス語は相当リハビリが必要でしたが、勉強を進めていくにつれ、昔の知識・感覚が蘇ってきました。昔身につけた知識は無駄になっていなかったと実感しました。そうなると欲が出てくるもので、あまり深く考えずに仏検1級も受けることにしました。

幸運にも2020年秋季の仏検準1級に続き、2021年春季の仏検1級に合格することができました。初回での1級合格は想定外だったので、こんなに嬉しいことはありませんでした。

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さて、仏検に向けどんな勉強を行ったか、少し触れたいと思います。

まずは30年間ほぼ使う機会がなかったフランス語の錆落としをする必要がありました。このため、昔使っていたフランス語の入門書を引っ張り出して復習、特に性・数の一致、条件法、接続法を重点的に復習し、カンを取り戻す努力をしました。仏検を受験した際、こうした基礎固めの重要性を改めて認識したところです。

ネットで提供されるフランス語のニュースについて、毎日欠かさず国際情勢、仏国内の出来事を含め幅広く読むようにしました。これに加え、医療・健康や科学関連のネット配信記事を読むことにより、知識習得とフランス語能力の向上を図るようにしました。

仏検1級に特化した勉強としては、過去問や類題を何回か解き、出題傾向の相場観を養うようにしました。個別の出題分野について行った対策をいくつかご紹介します:

名詞化問題:重点的に対策を行なった分野の1つです。市販やネットの教材などを活用しつつ、名詞形と名詞化構文への変換について繰り返し学習しました。特に留意したのが特殊な名詞形と複数の名詞形があるケースです。名詞構文への変換についてはいくつかのケースに類型化し、それぞれの名詞構文化にあたってどのような動詞が用いられるかなどを別途まとめる作業を行いました。また、名詞構文への変換は1対1ではなく様々な方法があるため、市販の教材にある名詞化構文を敢えて別の名詞化構文にするといった試みをしました。仏検公式ガイドブックの解説には様々な名詞構文のパターンが解説されており、大変役に立ちました。

多義語:市販の教材がなく、最も対策が取りにくい分野でした。仏和辞書から違う意味を含む基本語彙を拾い上げ、別途単語帳にまとめるという作業を行いましたが、手間がかかるため途中で挫折しました。幸運にも対策済の部分から実際に出題されたので、作業は無駄にはなりませんでした。

時事用語:出題対策というよりは、むしろ多様な分野においてフランス語で表現する能力を高めたいという動機で覚えました。様々なソースを頼りに分野別の時事用語集を半年くらいかけて1,000単語程集めて作り、暗記しました。(例えば「新型コロナ関連」、「医療」、「政治」、「経済」、「環境・エネルギー」、「スポーツ」、「IT」など)。東京オリンピック開催年だったため関連の出題を想定していたところ、的中してよかったです。

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どうにか取得できた仏検1級ではありますが、私にとって自信を持たせてくれる心の拠り所です。ただ、1級合格に満足し、フランス語のメンテナンスが怠りがちなのも事実です。再び錆びつかせてしまわないよう、たゆまぬ努力を続けていかねばと自戒の念を込めて強く思っているところです。まもなく人生の第2フェーズに入ろうとする中、仏検合格をこの先まだ続く人生の選択の幅を広げる糧にしていければ、と思っています。