dapf 仏検

apef アペフ

  • サイトマップ

共立女子大学文芸学部のフランス語教育

岡見 さえ(共立女子大学)

“共立・仏文”について

偶然にも、共立女子大学文芸学部創設70周年の年に寄稿の機会をいただき、心から嬉しく思っています。共立女子大学は1886年に創立され、現在は家政、文芸、国際、看護、ビジネス、建築・デザインの6学部の学生が神田一ツ橋キャンパスで学んでいます。

私は、文芸学部文芸学科言語文学領域フランス語・フランス文学専修に所属しています。私たちの文芸学部の特徴は、一学部が複数の専修を擁していることです。1953年に日本初の文芸学部として誕生した際、女性が進出しやすい分野だった出版、放送、図書館、演劇、美術、教育に関する幅広い授業が選択可能になるよう、敢えて大きな枠組が設定されました。この伝統は続き、現在も学生は1年次に幅広く学び、2年次から「言語・文化領域(日本語・日本文学専修、英語・英語圏文学専修、フランス語・フランス文学専修を含む)」「芸術領域(劇芸術専修、美術専修を含む)」「メディア領域(メディア専修を含む)」「文化領域(文化専修を含む)」のいずれかの領域に進み、3年次に専修に進みます。段階的に学びを専門化するカリキュラムですが、領域、専修に進んだ後も、広く学部の授業を履修することが可能です。仏文専修で図書館司書資格、学芸員資格、中高英語教員免許を取得する学生も毎年います。

文芸学部のフランス語教育

文芸学部は英語、フランス語、中国語、ドイツ語から2言語を必修としています。フランス語選択者は、1年次は教科書『エスカパード!』を使用した週2回の授業で、文法とコミュニケーションを学びます。この授業は全学の教養教育科目で、他学部の学生も一緒です。2年次は文芸学部専門基礎科目のフランス語クラスが複数開講され、1年次の学習を深め、応用力を養います。この中級クラスでは会話や講読のテーマに担当教員の専門が活かされ、多彩です。さらに「フランス語学演習」、「フランス語コミュニケーション演習」等の領域・専修の専門科目を履修し、フランス語力を総合的に伸ばしていきます。希望者は、国際学部開講のフランス語の授業を履修単位とすることも可能です。また毎年夏にはアンジェ西部カトリック大学での約30日間の研修が実施され、修了者は単位認定されます。教養教育科目と文芸学部専門科目のフランス語の授業は、仏検の級ごとに単位認定されます。

フランス語・フランス文学専修の取り組み

フランス語・フランス文学専修にやってくるのは、ほぼ全員が大学入学後にフランス語の学習を始め、フランス語圏の文化を発見した学生たちです。フランスの歴史や文学に発想した舞台(ミュージカルや宝塚)、映画、漫画や、ファッション、ダンス(バレエ)、世界遺産、ガストロノミーといった潜在的な文化への興味を、いかにして専門研究へ結び付けていくかが悩ましいところですが、田口亜紀先生のイニシアチブの下、専修では授業外でもフランス語圏の文化を体験できるイベントを企画しています。まず、専門家を招いての講演会。2022年には諏訪敦彦監督がご自身とフランス映画界の結びつきを熱く語り、学生たちを大いに刺激して下さいました。7月のミニ・フェット「パリ祭」、10月の留学生歓迎会も、交流を通してささやかながら文化を体験し、理解を深めることを目指しています。大学には提携校のパリのイナルコ大学とスイスのジュネーブ大学の交換留学生、西アフリカのベナンから特別留学生がやってきます。日本語を学び、日本文化に興味を持つ彼女たちとの交流から、学生たちはフランコフォニーの豊かさと多様性を実感するようです。

大学の枠を越え、フランス語で世界を広げる機会も活用しています。例えば「フランコフォニーを発見しよう!」には2020年からプレゼンテーション部門に参加しています。2020年はフランコフォンの集うカフェバーのオーナー、21年はセネガル出身のプロバスケットボール選手、22年はKバレエ カンパニーのダンサーという取材対象の顔ぶれから、共立仏文の学生たちの興味のありかが伝わるでしょうか。フランス語で日本に暮らすフランコフォンにインタビューし、発表にまとめ、会場で発表するプロセスは学生たちを大いに鍛えてくれます。語学力の向上に加え、自分たちで広報担当者に交渉し、インタビューを実現する教員も驚く行動力も学生たちは発揮します。近年、全学で力を入れているリーダーシップ教育の成果を感じる機会でもあります。

*仏検の活用

仏検は授業におけるフランス語学習の指針であるばかりでなく、こうした異文化コミュニケーションの実践の基盤となり、学生たちの自信の根拠となっています。文芸学部では1年次のフランス語の授業から仏検受験を奨励し、学生は検定受験料補助金を受けられます。仏文専修の学生は専修の補助金も受けることが可能です。受験料補助に加え、専修では級別の仏検対策講座、ネイティヴ教員による2次試験対策講座を実施しています。仏文専修の学生はほとんどが1年次から受験を続け、4年の春に2級に合格する者も複数います。努力型の学生が多いため、継続学習が合格に結実する達成感を楽しんでいるようです。

仏文を卒業する学生の進路はさまざまですが、フランス語やフランス語圏文化との関わりを持ち続ける者が一定数います。修士課程への進学、フランスの高級食材を扱う商社やラグジュアリーブランド、旅行関係の仕事、留学経験と学芸員資格を活かし複合文化施設に勤める者など、卒業後もフランス語を使う機会があることを喜々として報告してくれます。教える仕事に就いた卒業生は、大きな声が出るよう習い始めた声楽の先生がフランス歌曲の専門家だった偶然を楽しそうに話してくれました。卒業後もさまざまな形でフランス語の学びは続いているようです。

1963年に仏文コースとして誕生した専修は、今年60周年を迎えます。仕事であれプライベートであれフランス語の学びが人生を豊かにすることを信じ、私もバトンを繋いでいきたいと思っています。そして仏検は客観的な指標を提供し、大学を離れた後もフランス語学習を続ける意欲を応援してくれる心強い味方なのです。