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攻めの姿勢で、敢えて目標を高くしたことが功を奏したのだと思います

と言えばかっこいいですが、これは、自分に甘い崖っぷち人間がなりふり構わぬ形で受験した体験記です。

2020年秋季1級合格・文部科学大臣賞
友重 山桃
通訳翻訳業・東京都

コロナ禍は、多くの方々の仕事や日々の暮らしに大きな変化をもたらしました。通訳翻訳業界も、特に人の移動の停止と共に経済的・文化的交流が一気に引いた2020年3月以降は、大変厳しい状況が続きました。そんななか、自粛の流れに乗った私はNetflixやゲームや読書三昧の巣ごもりライフに耽っていたのでした。

我に返ったのは8月の終わり頃、ふと目覚めた明け方の空に秋の気配を感じたのが引き金となりました。「今出来ること・これからやりたいこと」を自己分析した結果、今のうちに仕事の量よりその内容・難易度を高めることに全力を注ぐべきだと判断しました(難易度、例えば商談通訳→二国間会議通訳)。しかし、私には「フランス語が出来る」というスキルしかありません。色々やることがあるなか、ひとつは出来ることをもっとアピールしようと考えました。これで方向は決まったものの、これまで楽な方へ流されてきたツケは大きく、追い込まれた感は否めませんでした。そんななか、第三者が私の仏語能力をなるべく端的に具体的にイメージ出来るもの、と考えた時に浮かんだのが「仏検」でした。

調べると、コロナ禍で2020年度秋季に限り「1級」と「準1級」を同時に受けられ、その申込み期限が迫っていることが判明しました。これはもう神の啓示。受けるならワンチャンス。逃げ道を与えてはいけない自分の性格が分かっていたので、敢えて「1級」1本に絞りました。しかし。ここまで来て、私の悪い癖がまた出てしまいました。仕事でフランス語を使っていることもあり、「受ければ受かるだろう」と高をくくり、受験勉強を怠けたのです。そして1次試験1週間を切り、仏検公式サイトの過去問を解こうとして当然挫折。時間の無い恐怖と己に対する怒りで呆然としました。

でもやるしかない。余裕はゼロでしたが、目標を「なんとか合格」にすると、私の性格上本当にそれだけの分しか頑張らないと分かっていたので、敢えて「高得点で合格」とその為のルールを決めました。

まず勉強ツールと内容を大まかに①仏検公式ガイドブック「セレクション1級」と「仏検対策準1級・1級問題集」の2冊をやりつくすことと、②ネットコンテンツ(各種サイト・記事・ブログ・ニュース動画)から時事テーマの収集に絞りました。

①:出来なかったところも出来たところも何度でもやり直し、敢えて日仏辞典は使わず電子版Larousse1本にしました。定義・言い回し・動詞の活用・類語や反対語もこれひとつで賄えます。

②:勉強する時事テーマは2つ3つに絞りました(政治、経済、社会など)。情報は「これは自分が後からアウトプットする」と意識しながら収集しました。多少意識するだけでも、入ってくる情報の量と質はだいぶ変わりました。日本語とフランス語のコンテンツを見て・聞いて・読んで、良かった!と思ったものはその場で(必ず日本語とフランス語で)簡単な表や図をつくる作業を繰り返し行いました。得た知識の言語化・見える化=アウトプット作業です。今度はコンテンツを数本に絞り、それぞれ日本語とフランス語の文章でまとめる作業を繰り返し、最終的にはひとつのテーマが日本語とフランス語のレポート各A41枚分にまとまるようにしました。知らない単語はどんどん拾い、覚える時間が無くとも無駄にならないと信じて単語帳は作りました。また、ネット上の記事や動画にコメント項目があればフランス語コメントに挑戦しました。コメントは、元の内容をちゃんと理解していないとフランス人に容赦なく「バーカ」と評価されます。逆に「確かにそうだ」と返信があると、これからも勉強頑張ろう、と励みになりました(相手に「いいね」を忘れずに)。主に集中力を維持するためでしたが、敢えて脱線してゴシップネタにも走りました。これらには、娯楽要素以上に試験対策に活かせる情報がいくらでもあり(特殊な表現など)、それがまた勉強のスパイスになりました。

アウトプットを通して、フランス語の知識が自分のものになっていく成果が目に見えるのでいっそう面白く、面白いと思うほど吸収する知識の量も増えました。この感覚は最後まで続き、実は当日試験の問題を解きながらも問題を「面白く」感じてました。うまく言えませんが、「成し遂げてやるぞ」というやる気エネルギーに変換されていく感覚でした。

その結果。やり遂げたという高揚感に溢れていた私は、合格通知を見て「思っていたより点数が伸びなかった」と拍子抜けしました。随分うぬぼれたものですが、そのような発想が出来るほどなりふり構わずやれたからこそ、此度の賞を頂けたのかもしれません。フランス語の出来を評価してくださった方々、一緒に喜んでくれた家族や友人達に、心から感謝しております。敢えて目標を高くせざるを得なかった自分を反省します。崖っぷちはお勧めしませんが、この体験が誰かのお役に立てれば幸いです。