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遅咲きでも…好きなればこそ

2019年春季1級合格・欧明社賞
片岡 ゆかり
研究機関事務員・愛知県

20181101hs_01pol大学でフランス学科を専攻し、授業で古い映画を紹介して下さった先生のおかげでフランス語、文化にすっかり魅了されました。卒業後に仏検2級を取得し、後に Angers へ9か月間留学、帰国後フランス企業に勤める機会を得て、フランス語の上達を図ってきました。

しかし、1級合格への道のりは容易ではありませんでした。2次試験に失敗し、当時の基準で再び1次試験から受験する気力が持てず、20年も月日が経ってしまいました。

その間もフランス語への情熱は失うことなく、翻訳や通訳の講座を受講して単発の仕事もしましたが、⼤半は読書やラジオ、⾔語交流サイトを通して細々と学んでいました。しかし、年を取るにつれ環境が許さなくなる前にとようやく再挑戦を決意。1年だけと決めて学校へ通い、DELF/DALF も併せて受けることにしました。

家のことや仕事の合間を縫って勉強を進めると、思わぬ⽂法ミスを繰り返すことや、かつての2次試験は議論になっていなかったことがわかりました。自分で組んだ受験スケジュールがかなりタイトでしたが、公式ガイドブックからできるだけ対策を練って1次試験に臨みました。若い頃と違い試験中に集中力を保つことが大変でしたが、無事に受け終えることができて心からほっとしました。

1次試験の合格通知を受けたときは本当に嬉しかったです。おそらく記述式の問題で点数を稼げたと思われ、日頃の読み、書き、聴く習慣が大事だと感じました。しかし2次試験まで日がありません。急いで合格した方の対策を検索し、恩師にもアドバイスを請いました。時事問題をいくつか想定し、自分の意見を論理的に組み立て、反論されても首尾一貫して主張することを心がけて2次試験を受けました。

最終通知を受け、ようやく仏検を卒業できました。DELF B2/DALF C1 も無事に合格し、とても長く感じた奮闘の1年が終わりました。遅まきながらの挑戦は、家族、職場や恩師の方々などの理解や激励なくしてとても成しえなかったと思います。この度の受賞を喜んでいただき、恩返しができたのではととても嬉しく思っております。

Square d’Orléansにあるショパンの住んだ家、パリ地下に眠る遺跡、la Crypte archéologique de l'île de la Cité

フランス語を学ぶことで多くの楽しみを得ました。音楽では、フランスで学ばれた先生からピアノをはじめ様々なことを学び、敬愛するショパンのなぜかマズルカが彼のフランス語での呟きに聞こえたり。また、フランス歌曲は私にとってフランス語と音楽というとても魅力的な組み合わせです。そして⽂学では、ユゴーから始まって17-19世紀の作品を、歴史はフランス革命前後の変遷を気の赴くままに読み、次第に興味は時代を遡ってルテティアなど考古学へ。まずはパリでの史跡、遺跡巡りが訪仏の最⼤の楽しみとなりました。

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そこにもうひとつ、かつて勤めたフランス企業での同僚が山岳ガイドになったのを機に randonnée も加わりました。当時の仲間も合流し、私は彼らと四半世紀ぶりの旧交を温めながら、紅葉が美しくはるか先にモンブランも見渡せる Vercors 山地を案内してもらいました。野生の馬たちに出会い、元同僚のガイドさんがスキルとして習っていたとても美味しいお料理をいただきながら、様々な地形や景色を楽しみました。特に、一泊した cabane から水の補給のために時間をかけて泉に行ったことや、翌早朝のまだ恐ろしいほど真っ暗な中、ヘッドランプを頼りに山の中で低く轟き渡るその鳴き声を追って、なかなか見られないという雄鹿を探し歩いたことが印象深かったです。

フランス語に出会って早35年、響きの美しさとロジックさを併せ持つこの素晴らしい言語が存在する奇跡に感謝し、生涯の友としてこれからも学び続けていきたいと思います。