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第34回 並べかえ問題の攻略法(中級)

 中央大学教授 金澤 忠信

 

あたえられたいくつかの語を並べかえて文を完成させる問題は5級からありますが、並べかえる語の数は、5級では3語、4級では4語、3級では5語と、級があがるごとに1語ずつふえ、それだけ文が複雑になり、難易度もあがります。並べかえ問題は、一見簡単そうですが、実際には、並べかえる部分とその前後の部分にあるすべての単語それぞれの意味・用法と文中での機能(品詞)、そして文全体の構造がわからないと解けない、かなりむずかしい問題です。ある意味、フランス語の真の語彙力が試される問題と言っても過言ではありません。

3級の並べかえ問題(筆記[ 5 ])の平均得点率はおおよそ50%から70%のあいだを推移しています。すなわち、4問中2問か、3問できるかできないか、というところです。これを、確実に3問はでき、さらに、多少むずかしい問題があってもなんとか4問全部できるくらいのレベルに引きあげることができれば、おのずとほかの語彙問題や読解問題に対しても難なく対応できるようになるでしょう。

ここでは、過去数年間に出題された3級の並べかえ問題のうち、正答率が50%を下回る、比較的むずかしい問題を取り上げて、多くの受験者がどのポイントでつまずいているのか、どのように考えれば、またどのようなことを事前に知っていれば正解にたどりつけるのか、見ていきたいと思います。

                  

Il                 (       )                 notre présidente.

① avoir   ② confiance   ③ en   ④ mieux   ⑤ vaut   

(2021年度秋季・正答率21%)

並べかえ問題で最初にすべきことは、主語とそれに対応する活用した動詞を見つけることです。 ここでは主語 Il がすでに文頭に出ています。活用した動詞は、選択肢のなかでは ⑤ vaut しかありません。まずこれで文の構造のもっとも基本的な部分が確定します。これに ④ mieux をつなげると、〈Il vaut mieux+不定詞〉「〜したほうがよい」という非人称構文ができます。この構文は『仏検公式基本語辞典』の valoir「価値がある」の項に載っています。不定詞は ① avoir があります。これを、残った選択肢 ② confiance、 ③ en とまとめると、〈avoir confiance en+人〉「(人を)信頼する」という熟語になります。これも『公式基本語辞典』のconfiance「信頼、信用」の項に、Nous avons confiance en lui.「私たちは彼を信頼しています」という例文があります。以上から、Il vaut mieux (avoirconfiance en notre présidente.「私たちの大統領(議長、社長)を信じたほうがいいですよ」という文が完成します。この問題は〈Il vaut mieux+不定詞〉と〈avoir confiance en+人〉という2つの定型表現を組み合わせるのがポイントと言えますが、ちょうど両者の重なる部分が3番目の空欄にあたるので、どちらか一方でもうろ覚えだと、おそらく正解にはたどりつけません。(『2022年度版3級・4級・5級仏検公式ガイドブック』参照)    

    
   

Mon frère                 (       )                 moi.

① autant   ② de   ③ lit   ④ livres   ⑤ que   

(2019年度秋季・正答率36%)

文頭の Mon frère が主語だとすると、対応する活用した動詞は、選択肢のなかでは ③ lit があります。lit は「ベッド」を表わす男性名詞でもありますが、ほかに動詞になりうるものは見当たりませんので、これを動詞として用いることになります。意味的にも、③ lit「読む」と ④ livres「本」は親和性があります。さて、この問題のもっとも重要なポイントは、① autant の用法にあります。これは〈autant de+名詞 que+比較の対象〉「(比較の対象)と同じ数・量の〜」という同等比較の定型表現で用いられます。フランス語の教科書・参考書の類では、「比較級」のところで出てくるはずなのですが、同じ同等比較の〈aussi+形容詞/副詞 que+比較の対象〉「(比較の対象)と同じくらい〜」とくらべると、見落とされがちのようです。それがこの正答率に反映しているのでしょう。ちなみに、比較の対象をみちびく que のあとの人称代名詞は強勢形になります。ここでは moi が空欄の外に出ていますが、この要素もふくめて問われることがありますので、しっかり覚えておきましょう。文を完成させると、Mon frère lit autant (de) livres que moi.「私の兄/弟は私と同じ数の本を読む」となります。

  

Il mange                 (       )                .

① fois   ② nous   ③ plus   ④ que   ⑤ trois

(2018年度秋季・正答率30%)

選択肢を見ると、③ plus と ④ que がありますので、これも比較の表現だろうということはすぐわかるはずです。ただし、plus のあとにくるはずの形容詞あるいは副詞が見当たりませんので、この  plus は副詞 beaucoup がそのまま比較級になったものだと気づく必要があります(文の原形は Il mange beaucoup.「彼はたくさん食べる」)。比較の対象は、すぐ上で見たように、人称代名詞の強勢形である ② nous です。nous と vous は主語、直接目的補語、間接目的補語、強勢形がすべて同じ形なので、どの役割を担っているかについては、文の構造のなかで判断しなければなりません。あとは ① fois と ⑤ trois が残っていますが、これは trois fois「3回、3倍」とするしかないでしょう。これらをまとめて文を完成させると、Il mange trois fois (plus) que nous.「彼は私たちより3倍多く食べる」となります。これとほぼ同じ例文が、「[比較級の前で]…倍」という説明とともに『仏検公式基本語辞典』の fois の項に載っています。比較の表現でのこの fois の用法をしっかり身につけましょう。また、beaucoup の優等比較、同等比較、劣等比較は、それぞれ plus、autant、 moins であることも覚えておきましょう。名詞がつづく場合は、〈beaucoup de+名詞〉と同様、〈plus de+名詞〉、〈autant de+名詞〉、〈moins de+名詞〉となります。

   

Son                 (       )                 ?

① couleur   ② de   ③ est   ④ quelle   ⑤ vélo

(2018年度秋季・正答率44%)

文頭の Son は所有形容詞で、男性・単数の名詞と、母音または無音の h で始まる女性・単数の名詞につきます。選択肢に名詞は2つありますが、① couleur「色」は子音で始まる女性名詞ですので、⑤ vélo「自転車」が最初の空欄に入ることになります。① couleur は同じ女性・単数の疑問形容詞 ④ quelle と組み合わせます。この問題を解くポイントは、ずばり… est de quelle couleur ?「〜は何色か」という表現を知っているかどうかです。もう少し文法的な説明をすることもできるのですが、3級の段階では、とりあえず être de quelle couleur ? を定型表現として覚えたほうが手っ取り早いでしょう(『仏検公式基本語辞典』、couleur「色」の項参照)。この表現を知らなかった受験者は、おそらく de の置き場所に苦慮したのではないでしょうか。完成文は Son vélo est (de) quelle couleur ?「彼/彼女の自転車は何色ですか」となります。 

                

並べかえ問題では、基本的に主語とそれに対応する活用した動詞を見つけることが最優先課題ではあるのですが、フランス語には、〈voilà+名詞〉や〈merci de+不定詞〉など、主語も活用した動詞もない特有の構文があります。また、命令文では主語が落ちたり、補語人称代名詞の位置が変わったりします。基本的な事柄を問う問題にせよ、例外的な事柄を問う問題にせよ、解答に際しては、ひとつひとつの単語の意味(というか日本語訳)だけでなく、用法・機能、熟語・定型表現、取りうる構文などの知識も必要になります。日ごろから、辞典・辞書をひくときに、ちらっと見るだけでなく、説明や例文もふくめしっかり読むことが「学習のツボ」です。