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第33回 フランス語で伝える−初めての2次試験(準2級)

 慶應義塾大学准教授 中川 真知子

  

人には学習タイプというものがあるそうです。視覚から吸収するのが得意な人、聴覚が優位な人・・・。さらに語学教師の肌感覚でいうと、外国語を学ぶ現場では「きっちりさん」と「おおらかさん」に分かれるように思います。「きっちりさん」は正確に積み上げていくのが得意で、「おおらかさん」は間違いをおそれずに堂々と発信できます。どちらも得がたい強みです。ことフランス語で表現するという段になると、「きっちりさん」は大胆に、「おおらかさん」は細やかに伝えることを意識すれば鬼に金棒ではないでしょうか。

日本語環境で生活している場合には、教室や独学で学んだフランス語を使って、はじめて会う人と意思疎通をはかるという機会は、どこにでも転がっているわけではありません。その意味で仏検の2次試験(面接)は、格好の腕試しの場となるでしょう。

とはいえそこは試験ですから、十分に実力を発揮できるよう、準備することは必須です。「2次試験方法の案内」で試験の実施形式を確認してみると、試験内容はフランス語の文の「音読」と、文およびイラストに関する「質疑応答」とで構成されるとのこと。具体的にはどのような内容なのでしょうか。2021年度秋季試験で実施された問題をのぞいてみましょう。

                

印刷された文章

Chaque week-end, Cécile va chez ses parents. Ceux-ci habitent à la campagne depuis trois ans, et cultivent des légumes pour les manger. Cécile est très contente de travailler dans les champs avec eux.

和訳

毎週末、セシルは両親の家に行きます。セシルの両親は3年前から田舎に住んでおり、野菜を栽培して(自分たちで)食べています。両親と畑仕事ができて、セシルはとてもうれしく思っています。

イラスト

庭。若い女性とその両親(らしき男女)がテーブルを囲み、ワイングラスをかたむけている。テーブルの下には犬が1匹。家のかたわらには木が2本ある。太陽が輝いている。

(実際のイラストは、『2022年度版2級・準2級仏検公式ガイドブック』でご覧いただけます)


  
     

まずは音読の注意点です。

リエゾン、アンシェヌマンをする箇所はないでしょうか。この文では2文目の « trois ans » がリエゾン必須でしたね。さらに最後の文の « avec eux » もなめらかに発音する必要があります。また発音しない部分もチェックしましょう。動詞 « habitent »、« cultivent » の語尾 « ent » は主語が複数であるというマークで、発音はしないのでした。さらに実際に声に出したときに戸惑うことのないよう、意味のかたまりに目星をつけておくのも有意義だと思います。たとえば2文目であれば、« Ceux-ci habitent à la campagne / depuis trois ans, / et cultivent des légumes / pour les manger » というかたまりを意識して、意味とリズムとをとることができます。

黙読する1分間を有効に使い、以上の点を確認しておくとよいでしょう。『2022年度版2級・準2級仏検公式ガイドブック』には、「おちついて」「リラックスして、かつ明瞭な声で」読むようにというアドバイスがあります(282頁)。1分間で細部にまで注意をはらったあとには、思い切って読み上げましょう。

        

つづいて質問と答えです。

『2022年度版2級・準2級仏検公式ガイドブック』によると答えは「原則として、主語と動詞をふくむ完全なフランス語の文」にするそうです(282頁)。ただ大意を述べるだけでなく、正確に構成して伝える能力を身につけるという出題意図があるようなので、ここはきっちりおさえておきたいところです。

質問5つのうち、文章について2問、イラストについて3問が問われるとのことです。いずれも質問の要点 ( qui, que, quand, pourquoi, où, comment, combien ) を外さぬように、集中してききとりましょう。

Question 1 : Chaque week-end, chez qui va Cécile ?

(和訳)毎週末、セシルはだれの家に行きますか。

« chez qui » がききとれたら、1文目に対する質問だと分かります。対応するのは « Cécile va chez ses parents » ですが、面接官が発する質問ですでに « Cécile » が出てきているので、Cécile を繰り返さないように、対応する代名詞すなわち « elle » に変えましょう。« (Chaque week-end), elle va chez ses parents. » が正解です。

Question 2 : Depuis quand les parents de Cécile habitent-ils à la campagne ?

(和訳)セシルの両親は、いつから田舎に住んでいますか。

« Depuis quand » と問われているので、 2文目に対する質問です。本文では « Ceux-ci habitent à la campagne depuis trois ans » とあります。これをこのまま読んでしまいたくなりますが、またも代名詞に要注意です。本文中の « Ceux-ci » はあくまでもその文の直前にある « ses parents » を指して、文章のなかで使われています。それに対して私たちはいま、面接官が発した « les parents de Cécile » に関する問いに、答えを返すことを求められており、このような場合に « ceux-ci » はふさわしくありません(そもそも質問文のなかでも、セシルの両親は « ils » で言い換えられていますね)。したがってふさわしい代名詞は « ils » となります。« Ils habitent à la campagne depuis trois ans. » と答えましょう。ちなみに « à la campagne » を繰り返さないよう、« Ils y habitent depuis trois ans. » としてもOKです。(ただし問いの主眼がそこにはないので、こんがらがりそうだったら、そこは無理をしなくても大丈夫だと思います。) « Ils habitent », « Ils y habitent »、いずれも « Ils » のあとのリエゾンをお忘れなく。

Question 3 : est-ce que le chien dort ?

(和訳)犬はどこで眠っていますか。

イラストの質問に入りました。犬はテーブルの下にいます。「完全な文」にするので、« Il dort sous la table. » となります。

Question 4 : Qu’est-ce que ces gens vont boire ?

(和訳)この人たちは、何を飲もうとしているところですか。

« ces gens » とはイラスト上の3名を指します。« gens ジャン » は音と文字で印象が違いますが、発音して練習しましょう。ワインを飲もうとしていますから、« Ils vont boire du vin. » となります。

Question 5 : Combien d’arbres y a-t-il à côté de la maison ?

(和訳)家のよこには、木が何本ありますか。

家のよこには木が2本あります。« Il y a deux arbres. » あるいは中性代名詞 en をつかって、« Il y en a deux. » と言ってもよいでしょう。しつこいようですが、« deux arbres »、« Il y en a » のリエゾンが何も見なくても自然にでてくるように、口頭で練習しておいてください。

                

いかがでしたか?

文章の音読、質問の聞き取り・答え方は、準備のしがいがありますね。過去問を複数こなすのが対策の鍵となりそうです。

いうまでもなく、現実の場面のコミュニケーションが、こんな風に型どおりにいくことはないでしょう。それでもまずは「聞かれたことに答える」という面接の基本は、コミュニケーションの基本でもあると思います。フランス語で表現する場を、細やかに大胆に、楽しんでみてはいかがでしょうか。