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美しいコミュニケーションを極める

2015年度秋季2級合格
小出 智子
会社員・東京都

私がフランス語を学ぼうと決意したのは、12歳のときにミュージカル「レ・ミゼラブル」を観て、フランス文学の面白さに目覚めたことがきっかけです。中高時代は、図書室にある『レ・ミゼラブル』に関する日本語書籍や、その他の邦訳された19世紀フランス文学を読みふけりながら、早く大学で本格的にフランス語を学びたいと胸を高鳴らせていました。

大学受験の際、迷わずフランス文学が専攻できる学部を選びました。英語よりはるかに複雑な文法や発音に圧倒されましたが、だからこそやりがいを感じ、毎日フランス語の授業が楽しみでなりませんでした。そして、更に主体的な学習がしたい、本場フランスにも足を運びたいと考え、大学2年の春にパリの語学学校に短期留学をしました。仏検5級取得直後のことでした。

paysage現地の方とのコミュニケーションに苦労しましたが、初めて自らの目で見るフランスは実に刺激的で、私はますます勉強の虜となりました。その後は日本でもコミュニケーション能力を培うべく、フランス人の家庭教師についたり専門学校へ通ったりして、大学4年生の夏に2級を取得しました。その年はブルゴーニュ大学の夏季講座に留学し、多くの留学生の方と交流をしました。相変わらずフランス文学への情熱は衰えず、この時は観光もせずに寮の自室で卒業論文の対象となる原書を読み耽る日々でしたが、こうした短期留学の経験を通し、文学内だけではない、フランス語の魅力をより感じることができたと思います。

将来を考える時になり、私が真っ先に考えたのは、大好きな語学を使う仕事がしたい、ということでした。フランス文学への情熱があまりにも大きすぎた私は、語学自体に対する学習意欲を理解されなかったこともあります。しかし、自身のフランス語との向き合い方を考え直してみたときに、フランス語は文学を読解するためのツールではなく、より深いコミュニケーションの根幹となっているもの、文学を介さずとも、積極的に学び、極めていきたいものであると再確認しました。

就職活動では、グローバルな環境に身を置ける仕事に狙いを絞って活動を行いました。英語は話せて当たり前、という厳しい条件が課されていましたが、その中でも第2外国語が話せるということは大きな武器になりました。特にフランス語は文法が難しいことは未修者にもよく知られているため、大学生から本格的に始めて英語と同等のスキルを身につけたという根性が、一番のアピールポイントになったと思います。

これからはビジネスの現場でもフランス語を使っていくことになります。大学での学びを活かせる仕事に就けることは、大変恵まれたことであると思います。どれだけ海外とのやり取りが円滑に進んだとしても、自分が一学習者であることも忘れず、驕り高ぶらず真摯にコミュニケーションを学び続けていきたいです。言葉は、使い方次第では人を不愉快にさせることもあり、またはいつまでも心に残る、豊かな言葉を投げかけることもできます。だからこそ私は、常に相手と良い関係が築ける、美しいフランス語を使い続ける人間になるために、今後もフランス語という学問に向き合い続けたいと思います。

L’homme ne doit être gouverné que par la science. 
                    ― Victor Hugo, Les Misérables
人は学問によってのみ支配されるべきである。
                    ― ヴィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』より