【仏検だより】仏検とフランス語書籍とおどけた猫たち
2023年10月3日
榎本 恵美(レシャピートル書店主)
仏検2級を受験したのは20代のころ、今から20年以上前の話だと記憶します。無事に合格し、あまり煌びやかではない私の履歴書に華々しく書き添えたことを覚えています。その後フランス語専門書店「欧明社」本店で働き始め、結婚、育児とライフステージが変化し、多忙な日々を送る中で2級以上を目指すことはありませんでした。2022年2月に欧明社が閉店、選書や輸入業務をしていた経験を生かし、フランス語専門オンライン書店「Les Chats Pitres – レシャピートル」で独立しました。ウクライナ戦争によるフライトの激減、燃料費高、歯止めない円安、順風満帆な出航ではなかったレシャピートルでしたが、一年が過ぎようやくこれからの展望が見え始めてきたところです。「実店舗を開店してほしい」という声が当初からあり、いずれ作家や翻訳者、読者が交流できるサロンのようなリアル店舗を持ちたいと思っています。
プロフィールはここまでにして、ここからは経験をベースとした、学習者に有益な参考書や選書のアドバイスをジャンルごとにお伝えしようと思います。■試験対策参考書
「旅行に行く」「映画が好き」「料理を勉強したい」などフランス文化は多角的で、フランス語へのアプローチは人それぞれです。目的に合った参考書を使って学習するのが一番効率的ですが、学習手段を見つけるのはなかなか難しいものです。その場合、仏検やDELFといった試験対策の参考書がおすすめです。参考書は初級から上級レベルまで刊行されており、設問を解きながら、レベルに応じた文法事項、語彙、表現などが習得できます。仏検の参考書は全国各地の大型書店の棚に並んでいて、なかでも前年度の過去問題を詳細な解説付きで掲載したAPEFの『仏検公式ガイドブック』(駿河台出版社刊)は毎年4月に刊行されます。新しい年度の幕開けを感じてやる気が湧いてくるものです。日本では圧倒的に仏検受験者数が多いのですが、世界基準であるDELFも近年受験者が増えているようです。DELFのB2を保持していれば、フランスの大学入学免除にもなります。当店は洋書をメインに取り扱っていますが、仏検参考書も販売しています。ディクテや文書作成など苦手科目克服のための教材やアプリ版教材なども取り揃えています。
■リーダー/多読教材
書く・聞く・読む・話すをまんべんなく学習できる「試験対策参 考書」と並行して、学びの手段として、内容のある何かを「読む」ことにも挑戦してほしいと書店員として願っています。フランス語で書かれた文学作品を読むことは、初学者には少しハードルが高いと思われますが、レベルに応じた文法や語彙でリライトされた文学作品をラインナップした「グレーデッド・リーダー」があります。FLE (Français Langue Etrangère – 外国語としてのフランス語教育)大手出版社CLEやDidier、Hachette FLEでは、ユゴーの Les Misérables、モーパッサンの短編集、Arsène Lupinシリーズなど、古典をはじめジャンルに富んだストーリーが実に多くあり、楽しく読めるような工夫がされていて多読におすすめです。グレーデッド・リーダーとはいえ、原書を読了した時の達成感は大きいものです。作品が気に入ったら、オリジナルに挑戦するのもいいと思います。フランス文学を読むことで選書の幅が広がり、多様な価値観、独特のユーモアセンスを培い、それはやがて人生を豊かにしてくれる土壌となります。