日仏高等学校ネットワーク(COLIBRI)
橘木 芳徳 (暁星高等学校)
日仏高等学校ネットワーク(通称コリブリ)については、SJDF(日本フランス語教育学会)を始め、関東でのJournée Pédagogiqueや関西でのRencontres Pédagogiques が開催される度に、設立経過を説明し、実践的活動を報告してまいりました。嬉しいことに、フランス語関係者の間で徐々にではありますが、その存在や名前も知られるようになりました。私たちのこの活動を更に発展させてゆくべく、この紙面をお借りし、あらためて紹介させていただきます。
2002年暮れ、当時の仏大使館文化部のJean-Noël JUTTET氏の発案により、フランス語教育に携わる高校の先生方数名と大使館の関係者との最初の予備会議が開かれ、日本における中学高等学校でのフランス語教育発展のために、フランスの高校との交換留学制度を確立し、そのネットワークを設立していく方向で話しがまとまりました。そして準備にとりかかったのです。
コリブリ(=COLIBRI)という名称は Collège と Lycée (中学高校)、それに Bonnes Relations Internationales (良き国際関係) の音の語呂合わせから生まれました。ちなみに、この単語の意味である「はちどり」は、小柄ながら極めて活発な小鳥です。
フランスの国民教育省、日本の文部科学省の理解と協力を得て、まずは可能性を探るため、2003年、2004年と学校長レベルでの双方の学校訪問並びに教育機関視察が行われました。この期間平行して準備委員会は、フランス語教育を行っている日本の高校,日本語教育を行っているフランスの高校を対象に、日仏交換留学制度設立に関心があるかどうか等、アンケート調査を行いつつ、実現に向かって準備を続けました。また準備期間中は中心メンバ-で10数回も会議を開きました。JUTTET氏の後任Pierre KOOEST氏も率先してこのプロジェクトを推進してくれました。準備金も提供してもらいました。フランス側とも連絡をとりつつ、一緒に推敲を重ねながらコリブリ憲章(Charte)を作成しました。そして現在はJean-François ROCHARD氏も積極的に私たちの活動を支援しています。
日仏の交流を促進発展させる活動の大きな柱として、この日仏高校生交換留学制度を設立いたしましたが、その憲章には次の4つの目的を掲げています。
(1)日仏両国の友好関係を深める。
(2)日仏両国の教育的交流を促進する。
(3)日本におけるフランス語教育、フランスにおける日本語教育を支援する。
(4)多様化する異文化への理解を深めさせ、視野の広い人間を育成する。
加盟の条件は、原則として日本でフランス語を教えている日本の高校とフランスで日本語を教えているフランスの高校ということになります。最終的には所属長(校長先生)の署名が必要です。受け入れる高校の入学金と授業料は免除されます。加盟費、年会費等、金銭的負担は一切ありません。なお、保険費(各自で加入)、現地での交通費、個人的な生活費に関しては参加する生徒個人の自己負担となります。
現在加盟校は日本側が(関西、関東、東北)で23校、フランス側が(Paris, Reims, Lyon, Marseille, Bordeaux, Nice, Lille, Valenciennes など)17校です。まる3年間の準備期間を経て、2005年にまず長期交換留学(9~10ヶ月)から始めました。
長期留学に関しては現在まで5組を成立させました。日本側参加校として暁星高校(東京)、カリタス女子高校(神奈川)、不来方高校(岩手),またフランス側参加校は、Lycée Jean de la Fontaine (Paris), Lycée Honoré Daumier (Marseille), Antoine Watteau (Valenciennes), Magendie (Bordeaux), で、それぞれ高校生は相手校で留学体験を行っています。
短期留学(3週間)に関しては、昨年2006年度はフランス人留学生27名(参加校7校)が来日、今春日本人高校生17名(参加校8校)が渡仏し、それぞれ相手側パートナーの家庭での日常生活、相手校での学校生活を体験しました。
今年2007年度は、この秋10月から11月にかけて、33名のフランス人高校生(参加校7校)を日本側(参加校10校)が受け入れることになっています。そして来春、同数の日本人高校生がそれぞれのパートナーの家庭に3週間滞在し、現地の高校に通うことになっています。今回は、長期交換留学でも参加している上記の3校の他に、宝塚西高校(兵庫)、松原高校(大阪)、千里高校(大阪)、神奈川総合高校(神奈川)、聖ドミニコ学園高校(東京)、伊奈学園総合高校(埼玉)、聖ウルスラ学院英智高等学校(宮城)が参加しました。長期、短期あわせますと、これまで日仏双方で130名の高校生が参加したことになります。
短期留学に関しては昨年が初めての試みであり、正直手探り状態でした。参加者募集、応募者の個人データ作成、日仏パートナーの組み合わせリストの作成(フランス側責任者Stéphane LAMACQ氏と私とで調整)から始まり、受け入れる側としては、到着便日時の確認、出迎えと受け入れ態勢の確立(各学校で,当該生徒と家庭への説明会)、留学生へのオリエンテーション(通学経路、授業プログラム、校則等の説明)、見送り態勢の確認、一方派遣する側としては、航空券の購入手配もてがけています。また、大学生とは異なり未成年である高校生を対象としていますので、細かい配慮が必要となってきます。日仏パートナー同士で些細な勘違いや誤解からトラブルが生じた場合は、受入れ校の担当教員が二人の中に入り、お互いの話を聞いたり、双方が理解をしあうための時間を作ったりする場合もあります。このように留学生を受入れている間、コリブリ担当の先生方は、一時も気が休まることはないと言っても過言ではありません。この大変な任務をavec volonté, passion, dévouementに、そしてbénévolementに活動しています。コリブリ担当の先生は、必ずしもフランス語専任の教師とは限らず、多くはフランス語の非常勤講師であったり、英語兼任の先生であったり、また国際交流課担当の他教科の先生方であったりします。私たちコリブリ担当の教員は皆、現役の教え子たちが交換留学を通して多くのことを学び、そこから得た貴重な体験を将来に生かしてくれるであろうという期待感に喜びを感じながら活動しています。実際に、参加者たちの体験談は「有意義、発見、大満足、充実感」などの言葉で溢れています。私は、コリブリ日本側代表としてこの数年にフランス側のコリブリ加盟校を10校ばかり訪問し、校長先生、担当の先生、さらには現地の高校生とも話す機会がありました。教育関係者のコリブリに対する期待の大きさ、高校生たちの日本、日本語、日本の文化に対する関心の高さを肌で感じてきました。
在日仏大使館文化部の協力を得て、コリブリ担当の先生方のチームワークを大事にしながら、この活動を続けてまいります。コリブリ実行委員会の中心メンバーである、日本私学研究所の山崎吉朗氏、カリタス女子高校の櫻木千尋先生、Richard STIENNE先生始め、今回、短期留学の参加校であるコリブリ担当の先生方、鷲頭弘子先生(カリタス女子)、松田雪絵先生(伊奈学園総合)、本間仁先生(神奈川総合)、上村純子先生(聖ドミニコ学園)、東北の鷹觜洋子先生(不来方)、大槻多恵子先生(聖ウルスラ学院英智高等学校)、また関西の菅沼浩子先生(宝塚西)、秋本由美子先生(松原)、岡崎節子先生(千里)、お互いに頑張っていきましょう。我々は、日仏高等学校ネットワーク(コリブリ)の広がりとその働きが、日本における中学高等学校でのフランス語教育発展のために貢献していくものであると確信しています。今後、コリブリの加盟校が増え、活発な交流を続けるべく、先生方と協力して活動を続けて行きたいと思っております。
最後に、コリブリの活動に賛同し、活動資金を提供してくださっているAPEFに心より感謝申し上げます。
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