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第36回 つなぎの表現をマスターしよう(中級)

 お茶の水女子大学准教授 田中 琢三

 

今回の学習のツボでは、接続詞、副詞、副詞句など、文と文あるいは言葉と言葉をつなぐ表現にフォーカスします。つなぎの表現はフランス語の文章や会話を結ぶ接着剤、あるいはそれらを滑らかにする潤滑油と言ってもいいでしょう。つなぎの表現をマスターすることはフランス語の作文や会話の上達に欠かせませんが、仏検ではとりわけ2級や準2級の穴埋め問題においてつなぎの表現が問われることになります。それでは過去の問題を取り上げて、具体的につなぎの表現を見ていきましょう。

        

Henri:Si on allait ensemble au musée d’art moderne, demain ?
Thomas:Au musée d’art moderne ? Ça fait longtemps que je n’y suis pas
allé. (   1   ), depuis quand tu aimes la peinture, toi ?
Henri:(   2   ). Ce n’est pas pour voir des tableaux que je veux y aller.
Thomas:(   3   ), c’est pour quoi faire ?
Henri:C’est pour voir une exposition spéciale sur l’hisoire des machines.

                        (準2級 2021年度 春季)

アンリがトマに「明日、近代美術館に行こう」と誘うと、トマが「近代美術館に?そこには長いこと行ってないよ」と言って、そのあと(   1   ), depuis quand tu aimes la peinture, toi ?「( 1 )、君はいつから絵が好きになったの?」とアンリに尋ねます。
(1)の選択肢は① Au contraire、② D’ailleurs、 ③ En effet となっています。




①のau contraireは「反対に、それどころか」という意味です。たとえばElle n’est pas malade, au contraire, elle est en très bonne santé.「彼女は病気ではない。それどころか、とても健康だ」のように使われます。

③のen effetは、Ⓐ「たしかに」とⒷ「実際~だから」の2つの意味があります。Ⓐの場合、c’est vraiやeffectivementと同じ意味になり、たとえば « Il fait froid. - En effet. » 「寒いね」「たしかに」のように使われます。Ⓑの場合、carやparce queと同じ意味になり、たとえばIl ne viendra pas : en effet, il est occupé ce soir.「彼は来ないよ。今夜は多忙だからね」のように使われます。

①と③はどちらも言葉がうまくつながりませんので、(1)の正答は②のd’ailleursになります。d’ailleursは、私は「付け足しのd’ailleurs」と呼んでいるのですが、先に述べた内容に何かを補足的に付け足す場合に用いられ、文脈によって「それに、そもそも、もっとも、ただし」などと訳されます。たとえばJe ne veux pas sortir, d’ailleurs, j’ai du travail.「私は外出したくない、それに仕事もある」のように使われます。この問題では、トマが自分の言葉に付け足して、D’ailleurs, depuis quand tu aimes la peinture, toi ? 「そもそも、君はいつから絵が好きになったの?」とアンリに質問しています。

なお、d’ailleursと似たつなぎの表現にpar ailleursがありますが、par ailleursは、前文の内容に何かを補足的に付け足すのではなく、前文の内容とは別の観点から何かを言う場合に用いられ、d’autre part「他方では」に近い表現です。たとえばMa maison est neuve, par ailleurs, elle est très petite.「私の家は新築だが、その反面とても小さい」のように使われます。

トマにいつから絵が好きになったのかを尋ねられたアンリが、(   2   ). Ce n’est pas pour voir des tableaux que je veux y aller.「(  2   )。僕がそこに行くのは絵を見るためではないよ」と答えます。ここはつなぎの表現ではありませんので選択肢の説明は省略します。(2)に入るのはTu te trompes.「君は間違ってるよ」です。

それに対してトマが、(   3   ), c’est pour quoi faire ?「(   3   )、何をするためなの?」と尋ね、アンリが「機械の歴史についての特別展を見るためだよ」C’est pour voir une exposition spéciale sur l’hisoire des machines.と応じています。
(3)の選択肢は① Alors、② Par exemple、③ Pourtantとなっています。

②のpar exempleは「たとえば」という意味ですが、文脈によっては「まさか、どんでもない」という驚きを表わす表現にもなりますので注意しましょう。③のpourtantは「それでも、しかしながら」という対立を表わす副詞で、et pourtantのように前置詞と組み合わせて用いられることもあります。

②と③はどちらも会話の流れに合致しませんので、(3)の正答は①のalorsになります。alorsは「そのとき、それなら、だから」などを意味する副詞で、会話でしばしば用いられます。ここではAlors, c’est pour quoi faire ? 「じゃあ、何をするためなの?」になります。「だから」という意味では、たとえばMa voiture était en panne, alors j’ai pris le train.「私の車が故障していた。だから電車に乗った」のように使われます。

        


以下では、日常会話でよく使用され、仏検にもよく出題されるほかのつなぎの表現をいくつか挙げておきます。

de faitは「実際、そのとおり」という意味で、Elle a beaucoup travaillé, et de fait, elle a réussi son examen.「彼女はとても勉強したし、実際、試験に合格した」のように、先に述べた内容と一致することを言う場合に用います。

en faitは「実際には」という意味で、On dit qu’il est gentil, en fait, il est sévère.「彼は優しいと言われているが、実際はとても厳しい」のように、先に述べた内容と対立することを言う場合に用います。de faitとのちがいに注意しましょう。

donc「したがって、だから」は、デカルトの有名な言葉Je pense, donc je suis.「我思う、ゆえに我あり」で使われているように、結果や結論を導く接続詞です。

c’est pourquoiはdoncと同じ「したがって、だから」を意味する表現で、たとえばJ’avais quelque chose à faire ; c’est pourquoi je ne suis pas allé chez elle.「私は用事があった。だから彼女の家に行かなかった」のように使われます。

そのほか、en plus「そのうえ」、loin de là「それどころか」、par contre「その代わりに」、comme ça「そうすれば」などのつなぎの表現もおさえておきましょう。

            

いずれにしましても、つなぎの表現をマスターするには、できるだけ多くフランス語の文章を読み、分からない表現が出てきたら、辞書や参考書でその意味や用法を丹念に調べることが大切です。フランス語学習の秘訣は何よりもこのような地道な努力の積み重ねなのです。