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Bruxelloisとして暮らしたい

2017年度秋季3級合格・在日ベルギー大使館賞
旭 貴弘
会社員(ダイキン工業株式会社)・大阪府

私がフランス語に出会ったのはちょうど3年前のブリュッセルでのことでした。ブリュッセルに赴任して初めての海外生活を送ることになった私ですが、当初知っていたのはbonjourやmerciくらい。大学時代に友人が「フランス語は数学やで。90は4×20+10って言うねん。」と困惑気味に話していたことをうっすら記憶していた程度でした。

職場はインターナショナルな環境で、共通語は英語。フランス語を使う機会はありませんでした。当初は英語も十分と言えず、せっかくブリュッセルに暮らしながらフランス語にまでは手が回りませんでした。しかし、しばらく暮らすうちに「この町に暮らすのならやっぱりこの町の言葉を話したい」「期間限定の”腰掛け”外国人としてではなくBruxellois(ブリュッセル人)として暮らしたい」と思うようになり、現地のコミューン(区)が開設するフランス語の講座におそるおそる申し込みました。

日本人はほとんどおらずフランス語のみで学習するフランス語…先生の身振りや表情だけを頼りに少しずつフランス語を習得する過程は、ちょうど赤ちゃんが言葉を覚えていくようなものでしょうか。いつしか挨拶、自己紹介から買い物やレストランでの会話、複合過去や近接未来まで色々な表現を学んでいき、それはまるでマジックにでもかけられたようでした。

それ以降、日曜日はきまってマルシェに足を運び、オリーブ屋のおじさんにオススメのオリーブを教えてもらったり、果物屋さんに見たことのない高級イチゴ(fraise framboise)を教えてもらったり、メトロで困っているおじいさんに行先を教えたり、ベルギーで活躍するアーティストのコンサートで小さな村を訪れてみたり…言葉はまだまだおぼつかないながらもBruxelloisの一員になれたような気がします。

(左上から)Atomiumにて/高級イチゴfraise framboise/オリーブも多種多様/
Grand Placeのイルミネーション/空港にてタンタンロケットと

帰国して間もなく1年となりますが、今も日本に住む一人のBruxelloisとしてラジオはNostalgieを聞き、フランス語圏の美術展を訪れ、最近はシャンソンの魅力に惹かれ、Charles Aznavourの来日コンサートにも訪れます。フランス語がきっかけでベルギーをはじめフランス語圏の文化へと人生の楽しみが広がったことが、フランス語を学んでいることの最大の喜びだと思います。AIによる自動翻訳が発展すると言語を学ぶ意味が薄れると言う人もいます。機械的な翻訳であれば機械が人間を助けることはできるでしょう。しかし、自らフランス語を学ぶことでしか得られない文化との出会い、マルシェで挨拶を交わした時の温かい笑顔、フランス語の会話が奏でる美しい響き…これらがある限り、言語を学ぶ意味は何ら変わらないでしょう。

仏検は、そんな私の学習の伴走者として私を励まし続けてくれています。妻と二人三脚で仏検に挑戦し、これからもフランス語のレベルを向上させていきたいと思います。いつか再びBruxellesで生活できる日を夢見ながら…

テルヴューレンTervurenの紅葉