ついにお話ができた心の恋人
2016年春季2級・準2級合格
山口 淳
会社役員・東京都
70年代後半の大学時代に法学を専攻し、それに役立つドイツ語を第2外国語として選択した。卒業後は国際的な仕事に従事したいと総合商社に就職した。欧州で英語・ドイツ語と並ぶ有力言語たるフランス語の素養がないことが当時の私の心の片隅でたいへん気がかりだった。
入社当初は鉄鋼製品の輸出を担当し貿易言語の英語の勉強を続ける傍ら、中南米への輸出案件でスペイン語の必要性が出てきたことより、その勉強を独学(基本書+NHKラジオ講座)で始めた。入社6年目に米国留学の機会を得、その後90年代と2000年代の2回のニューヨーク駐在を経験し計12年間の米国生活を送った。この間、北米のみならず中南米諸国の仕事もあった関係よりニューヨークで夜間にメキシコ人の先生にスペイン語会話を鍛えてもらった。
2010年、商社マン人生の終盤にさしかかり、今まで仕事で使った外国語を資格の形で残したいと思い、将来利用できる国家資格の通訳案内士試験の受験を決意。11年に英語、13年にスペイン語の資格を無事取得した。その翌年春に京都・奈良で開催された通訳案内士の新人研修を受講した際に仏語で合格された方が数名おられ、その方々の話をお伺いして心の片隅でずっと気がかりだった仏語への思いに火がついてしまった。気になり始めてから既に30数年の年月が経過していた。
ネット上で良い評価を得ている入門書、文法書と仏検対策本を直ぐに買い込み、仏検受験とNHKラジオ講座を進捗管理手段とすることを決意して独学で勉強を始めた。私は既に56歳となっていた。
英語・ドイツ語・スペイン語の基礎があった関係で、フランス語の文構造は非常に理解しやすかったが、それら文法や語彙使用に微妙な違いもあり、勘だけに頼らず必ず文法書と辞書を参照して確認した。辞書は紙の辞書を使い前後に記載されている語彙も例文を含め極力読むようにした。フランス語の発音は他の言語とは全く異なり一番苦労した。NHKラジオ講座のネイティブの発音を注意して聞くことや仏検対策本附属のCDの聞き取りに専念した。
その甲斐あって仏検は15年春季に3級(成績優秀者として表彰頂いた)、16年春季に2級・準2級のダブル合格もできた。この合格通知が届いた時には私は既に59歳になっていた。35年以上の間、心の片隅で思い続けたフランス語という片思いの恋人についにお話しできたような嬉しさだった。今後も研鑽を続け、現在の仕事を離れた後には外国人に複数の言語で日本の歴史・文化・生活などを伝えられる民間外交官的な仕事をしたく思っている。