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大人になってから勉強するということ

2015年度秋季2級合格
新井 郷子
大学教員(東京大学医学系研究科)・東京都

今から約20年前に大学の教養課程で第2外国語としてフランス語を2年間学び、それからフランスに憧れを抱きながら、いつかまたフランス語を学びたいなあ、と漠然と考える日々をずっと過ごしていました。でも仕事も忙しいし、毎週語学学校に通うなんて無理かなあ…と考え、何もせずにいた日々。そんなときに起こったのが2011年3月の東日本大震災でした。福島に住む近い親戚が被災し、自分や家族には直接の被害こそなかったものの、東京でも震災後しばらくは節電やそれによる交通機関の混乱で仕事も日常もままならない不安な日々を過ごしたことが、私に人生について考えさせることになりました。そのとき「人生は短い。やりたいことはすぐにやらなければ」と強く感じたのが、再びフランス語を勉強することになったきっかけです。思い立ったその足でフランス語学校の申し込みに行き、それから今日まで、週1回の教室通いを続けています。

20150201sa-01こうして突如始まった私のフランス語教室通いは、幸い気の合う学友や素晴らしい先生達にめぐまれ、楽しく過ごしながらゆるゆると学び続けていつしか約4年という歳月が流れました。そんななか、だんだんと自分の上達に行き詰まりを感じはじめ、このままでいいのかな…と思ったのが仏検を受験したきっかけです。

「ただ授業を受けているだけ」になりつつある自分。このままでは思い描くようなフランス語を喋れる自分は程遠いと感じ、今のレベルを知り、明確な目標に向かって進みたいという気持ちが芽生えてきたのです。そしてまずは準2級と2級に挑戦し、結果、無事両方合格したものの、ここから先へ進むには今とは違う努力をしないと無理だな、という実感も生まれました。

仏検当日は、フランス語関連の専攻と思われるたくさんの学生さん達に囲まれて久しぶりに試験というものを受け、こんなにも多くの若者がフランス語を勉強しているんだなあと感心すると共に、私ももっと早くから勉強を始めていれば…、と少し悔しい気持ちにもなりました。と同時に、普段一緒に学んでいる仲間達の多くは大人になってから趣味で勉強している人ばかりであり、誰に強制されるわけでもなく、純粋に「フランス語が好き」という人達であることが、逆になんだかすごいことのように思えてきました。

それぞれ本業もあり、また若い頃とは違い物覚えも悪くなった年齢で語学を習得するのは決して容易いことではありません。仕事が忙しかったり疲れていたり、途中で息を吐きながらも、ときに仲間と励ましあい、フランス語の勉強を継続すること、それは以前は私にとって生活の‟スパイス“でありましたが、いつしか生活の一部になり、そして今では自分を構成する大切なひとつの要素になっていると感じます。

そんななか今回の仏検受験は、私の終わりなきフランス語学習における現在の自分の立ち位置を確認させ、そしてそれがさらなる目標を与えてくれる良い機会となりました。大人になってから得た一生付き合える趣味、勉強、そして夢として、生涯フランス語を学び続けたいと思います。