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フランス語学習を通し、夢を育てる

2012年秋季準2級合格
安原 章
高校教員(立教池袋高等学校)・埼玉県


私の場合、高校教員として日々多忙なこともあり、仏語学習の時間をいかに捻出するか、独学ながらいかに学習を効果的なものにするかに苦慮しました。

通勤電車で動詞活用を確認したり、帰宅後録音しておいたラジオ講座を聴いたり。そして、ことあるごとに簡単な仏作文を声に出しながら行ったり…
電車の中で分厚い紙の辞書の例文を頭の中で音読しながら頭に叩き込むのも効果的であるように感じます。紙の辞書特有の「芳醇な香り」を愉しみつつ…そう、やはり外国語学習は五感を総動員して味わうものですね。特に「文化」の香りが豊かなこの言語は、自分の生活に彩りを加えてくれます。

昨冬はパリひとり旅の夢が叶い、クリニャンクールの蚤の市に出かけ、かねてから興味のある昔のビュヴァール(企業広告が印刷されたインク吸い取り紙)を扱う店の方と片言の会話を楽しんできました。自分の発した言葉がネイティヴに通じたときの歓びは何物にも代え難いですね。時の過ぎるのも忘れ、お店に並んでいる1960年代のビュヴァールや紙袋の意匠の細部に見とれてしまいました。

あるいは、ルイ・マル監督『地下鉄のザジ (Zazie dans le Métro) 』に登場するガブリエル叔父さんの暮らすアパートの前で写真を撮ったり…Bonne Nouvelle界隈も50年前の雰囲気をそのまま残し、映画の舞台にタイムスリップしてきました。

また、高架部分を走ることが多い地下鉄6号線に目的もなく乗り、車窓の街並から歴史を味わい、訳ありの駅名を本で調べたりしていました。ニューヨークの地下鉄の駅名が「〜丁目」と付けられていることが多いのに対し、歴史的記念日や人名が刻まれたパリの駅名は、口に出して発音するだけでも愉しいものです。Place d’Italieの明るい「イ」の音や、Barbès-Rochechouartに3回現れる“r”の音に、本業で教えている英語にはない艶やかさと気品さえ感じられます。

この他、いわゆる「美しく洒落た」パリとは対極的な、「普段着」のパリ(18区など)でセネガル料理を味わったり、すっかりこの街の懐の深さに吸い込まれ、すでに引退後の逗留計画を立てています!!

外国語学習は忘却との闘いで骨が折れますが、何事にも代えがたい歓びと宝物が手に入るということを、自らの学習を通し、日々生徒にも伝えていければと思っております。そして、業務や付加価値のためとしての語学は勿論、好奇心や興味といった純粋かつ情動的な部分も外国語学習の推進力となるのだと、あらためて認識しました。学習の具体的なステップを与えてくれた仏検に感謝しており、今後も上位級目指し、地道に励もうと思います。