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仏検によって前進した東海大学

惟村 宣明 (東海大学外国語教育センター)


私が勤務する東海大学湘南キャンパスには、文学部、政治経済学部、法学部、教養学部、理学部、情報理工学部、工学部、東海大学掲示板体育学部、観光学部(1年次生のみ)の9学部43学科があり、現在19,644名の学生が在籍しています。しかし、フランス語を主専攻とする学科はなく、第二外国語として選択必修を課しているのは、2学科1専攻のみです。私が所属している外国語教育センターは、湘南校舎の外国語教育全般を担当する部署で、英語、中国語、コリア語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語、フランス語の7言語が副専攻科目として開講されています。

この様な状況のもと、近年の英語重視の傾向から、それ以外の言語は、常に厳しい問いかけにさらされてきました。教えることに何の意味があるのか、何ができるのか、履修人数が増やせるのか、などを問われるのは、どこの教育現場でも同じだと思います。

私自身は、若者の知性を磨き、人格を陶冶するために、第二外国語学習は極めて重要であると考えています。発見や驚きに満ちた冒険だ、ということを伝えたいと思って教壇に立っています。しかし、それを理解してもらうためには時間が必要です。自由選択科目であるフランス語を継続して学習させるために、やりがいのある身近な目標を示すことが必要です。仏検は、まさにうってつけの目標となりました。

東海大学湘南校舎は、1998年秋より、準会場として団体受験を実施しています。最初の受験者総数は32名、そのうち3級合格者は2名と、ささやかなものでした。しかし学生たちの向上心には火が付いたようです。2000年に、1人の女子学生が「3級を取得し、新しい目標がほしいのですが、2級は私には無理でしょうか」と申し出てきました。2級はフランス語を主専攻とする大学4年生のレベルに相当するとされています。「授業以外で、特別な勉強をする必要があるだろう」と答えると、「仲間を何人か集めるから、勉強会をやってもらえないでしょうか」とのことで、3~4名の学生が集まってきました。その年の秋に最初の2級合格者があり、2015年度に至るまで、毎年合格者が出ています。仏検上級を目指す勉強会も今日まで存続しています。

書かせる問題が初めて出てくる3級では、当初の学生たちはかなり苦労し、優秀な学生でも何回か落ちるほどでした。最初の3年間は合格者が2~3名程でしたが、2002年度より6~8名になりました。2010年度には年間合格者数が20名近くになり、本学の学生にとって3級は普通に合格できる級となりました。

ここ10年間の仏検受験者数と3級・準2級・2級の合格者数、春学期のフランス語履修者数、派遣留学者数をまとめたデータがありますので、ここにご紹介したいと思います。 

東海大学では、第二外国語は多くの学科で必修科目からはずれ、受講者の減少とクラス数の減少という事態に見舞われました。2007年には、フランス語履修者数は過去最低となってしまいました。そこからゆっくりと履修者数が右肩上がりに回復しつつあることが見て取れます。これは、仏検合格者数が増えると、これに刺激されて、もっと向上しようする学生、自分も続こうと思う学生が増え、学習継続率が高まることを意味すると思います。そして、留学する学生が増え、さらに実力が高まり、雰囲気も良くなり、履修者が増えるという上昇の力に変わります。この表をみると、仏検受験が東海大学湘南校舎のフランス語履修者数増加とレベルアップに寄与していることは明らかです。2006年の資料が欠損し、2007年に受験者が激減していますが、これは、私が2006年に海外研究で不在だったことが影響しています。2014年に受験者数、中級以上の合格者数が急上昇しています。これは2013年に、優秀な同僚、深井陽介君が東海大学に赴任した結果です。

第45回全日本学生フランス語弁論大会の東海大学チーム第46回弁論大会にて実力をつけた学生たちが、さらに力試しをしてみたいということで、近年東海大学は、京都外国語大学が主催する「全日本学生フランス語弁論大会」と日仏会館主催の「フランス語コンクール」に参加するようになりました。しばしば決勝に進むようになりましたが、そこで我が校の学生は質疑応答に極端に弱いという欠点が暴露されてしまいました。深井君がこの弱点を大いに補強し、「全日本学生フランス語弁論大会」では、2013年優勝(写真②)、14年には連続優勝と5位入賞を果たし(写真①・③)、「フランス語コンクール」でも2013年入賞、14年中級の部に2名決勝進出という成果を得ることができました。

仏検というきっかけが与えられ、向上しようという学生が現れ、それを教員が支援する。ささやかな一歩から始まりましたが、これが今や大きな流れになりつつあります。ここで私たちが最も重視するのは、仏検やコンクールの結果ではありません。大切なのは、フランス語という共通の目的を持った仲間と人間関係を深め、目標を持ち、やり遂げたという経験なのだと思います。東海大学のフランス語教育は、まだまだ完成形ではありません。端緒に立ったばかりで改善すべきことは多々あります。しかし、学生と教員がチームとして、家族のように共に前進してゆきたいと思っています。特筆すべきは、東海大学で仏検やDELFの中級・上級に合格する学生、弁論大会などで活躍する学生の中に、航空宇宙学科、生命科学科、デザイン学科、芸術学科音楽専攻などの学生が含まれていることです。グローバル社会では、外国語に通じたこのような人材が求められているはずです。フランス語教育の可能性は無限にあると私たちは信じています。