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第10回 文と文を接着させる語および文の構造 (初級)

東京工業大学名誉教授 中山 眞彦

文と文を接着させる語、すなわち関係代名詞であります。さっそく次を解いてください。2008年秋季仏検3級筆記問題より。

下欄の語をすべて用いて文を完成したとき、(  )内に入る語はどれですか。
Tu connais _ _ (  ) _ _ tes soeurs?
avec / garçon / le / parle / qui

quiが関係代名詞すなわち接着剤ですね。quiの後には動詞がくるはずですから、まずはqui parle(話す、話している)。parler avcc(~と話す)とつなぐと、tes soeurs(君の姉妹)は話し相手であることがわかります。したがって全体は Tu connais le garçon qui … となります。

Tu connais le garçon qui parle avec tes soeurs?
「君は君の姉妹と話をしている男の子を知ってる?」

この問題は沢山の語を並べなければならないので、かなりてこずるのではないかと心配しましたが、案に相違して正解率は80%に近い。これに対して、空白は一箇所だけの次の問題では正解率が65%ほどでした。やはり2008年秋季3級筆記問題より。

(  )内に入れるのに最も適切な語はどれですか。
J’ai une amie (  ) le frère travaille à Paris.
dont / que / y

y は動詞の直前にくるべき語であるということだけですでに不適切。意味の上でも y 「そこで」を括弧内に入れたらちんぷんかん。さすがに y を入れる人は極めて少数でした。

残る dont と que のどちらを選ぶかということになります。これらが関係代名詞だということを知っていることが大事ですね。関係代名詞は文と文を、それぞれの一部を重ね合わせる形でくっつけます。重なる部分は、関係代名詞の直前の語(句)すなわち先行詞と、関係代名詞に続く文の基本要素です。ここで言う基本要素とは、文が文として成り立つために不可欠な部分のことです。関係代名詞を使いこなすためには、ぜひとも文の基本構造を理解しなければなりません。

フランス個の文の基本構造を見極めるためには、まずは次の二つの目安があります。
(A) 主語 + 自動詞
(B) 主語 + 他動詞 + 目的語

問題文の関係代名詞に続く文 le frère travaille à Parisについて見れば、これは基本型(A)に属します。le frère travaille 「その兄さんは働いている、勤め人である」だけで最低限の意味はすでに成立しますから、à Paris「パリで」はいわば付け足し、補足説明の役です。ただし実際のコミュニケーションにおいてはこちらの情報こそが大事だということが多々あります。今回はあくまでも説明を文の基本構造に集中していることをご理解ください。

というわけで、(  )には que は入りません。que(目的格) は基本構造(B)の場合ですね。que を入れる答案が少なくなかったのには驚きました(約3割)。文の基本構造を理解することは意味を読み取り聴き取るための第一の条件です。これが不十分であれば意味の理解が支離滅裂になってしまいます。

参考として、次は2008年秋季仏検3級筆記問題の中からの抜粋です。
Je voulais retrouver les jouets en forme d’animaux que j’avais aimés quand j’étais petit. 「私は、小さいときに好きだった動物の形の玩具を見つけ出したいと思っていた。」

j’avais aimés「私か好きだった」はこれだけでは文になりません。何が好きだったか、すなわち他動詞aimerの目的語が不可欠です。関係代名詞que (= les jouets en forme d’animaux)はこの目的語に相当します。

ついでながら、関係代名詞が文の主語に相当するケースの例文をあげます。2008年秋季仏検3級の聞き取り問題より。Sylvieが日本からの旅行者に宿を取るためにホテルに電話をかけています。
LE RÉCEPTIONNISTE. Très bien. C’est à quel nom?
「受付係。かしこまりました。お名前は?」
SYLVIE. Madame Tanaka. C’est une amie qui arrive de Tokyo.
「シルヴィ。タナカさん。東京から到着する友だちです。」

arriverは自動詞ですから、目的語はいらない。すなわち基本構造(A)ですね。でも主語はぜひ必要で、これがqui (= une amie)に相当します。

さて当初の穴埋め問題にもどりますと、消去法によって残るのはdontだけですから、これを入れればおのずと正解になりますが、いますこしle frère travaille à Parisを眺めてみましょう。どこか据わりが悪い感じがしませんか?

le frèreの定冠詞 le が気になりますね。「その兄さんはパリで勤めている」の「その」とは何を言っているのか? これを説明するのがここでは関係代名詞 dont の役目です。すなわち dont は de+先行詞であり、le frère d’une (de cette) amie「友人の兄さんは」と読めば文意が完全に明瞭になります。

最後に3級の穴埋め問題過去問(2003年春季)から次を引きます。
C’est le roman (   ) on parle beaucoup.
dont / que / qui

これを解くためには、先に述べた文の基本構造について補足をしなければなりません。(A)型は実は二つに分かれます。
(A-1) 主語+自動詞
(A-2) 主語+自動詞+前置詞+補語
parler「話す」は自動詞ですが、これ単独で意味をなす(Il parle trop vite.「彼は早く話しすぎる、早口すぎる」)ほかに、前置詞をともなってはじめて意味が決まる場合が多々あります。最初に出した作文問題、Tu connais le garçon qui parle avec tes soeurs? もそれですね。parler avec ~「~を相手に話す」。同様にparler de ~「~について話す、~を話題にする」という用法があります。parler =「話す」と単語を暗記するだけではなく、このような前置詞付きの用法を理解することがぜひとも必要です。要するに単語はその用例と一緒におぼえたほうが効果的でね。

上の過去問の正解は、parler du (de ce) romanと理解して、C’est le roman dont on parle beaucoup.「それは(いま)話題の小説です。」