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大阪府立松原高校におけるフランス語活動

 上田 亜津美 (大阪府立松原高校)

勤務し始めて5回目の春を迎える高校での、昨年度のフランス語活動をご紹介したいと思う。

大阪府立松原高校は、大阪府のほぼ中央に位置する松原市にある、生徒数約800人の総合学科高校である。興味や関心に応じて学習できるように、約160の科目から授業を選択することができ、フランス語は、2年生では週に2時間(昨年度は27人)、3年生では週に4時間(昨年度は9人)学ぶことができる。

生徒の選択理由は、話せたらかっこいいから。おしゃれだから。いつか行ってみたい国だから。パティシエになりたいから。フランスで働きたいから。といったところであるが、しかし、フランス語教師は、非常勤講師の私ひとりである。そこで、生徒たちにさまざまなフランス語体験をさせたいと思い、いろいろな活動を取り入れてみた。どの活動も、たくさんの方々の支えがあって成り立つもので、この場を借りて、お礼申し上げたい。

(1)交流授業

大阪市立大学商学部に短期留学に来るフランス人大学生との交流授業を行っている。7月の初めに行われるこの授業で出会う留学生は、ほとんどの生徒にとって、「初めて出会うフランス人」である。そのため、生徒たちは、授業前から準備に大変張り切り、授業当日は、留学生の発する言葉に耳を澄まし、身を乗り出して聴くという、普段は目にすることの出来ない(?)素晴らしい態度で授業に臨む。1時間の授業時間であるが、このときの授業内容の定着は、結果として、考査時にも抜群の効果を示している。

(2)コリブリ

松原高校は、日仏高校ネットワーク=colibriの加盟校である。この交換留学のしくみのおかげで、高校生は、自身の往復飛行機代を負担するだけで、互いの高校に留学できる。この留学を通じて、生活面での成長が望まれるのも(たとえば、家族と自分のお弁当作りを始める。)旅行にはない、コリブリの魅力である。

もちろん、このプログラムの真髄である、フランスの高校で学べるという経験から伝わってくることもある。ある生徒は、レポートの一節で次のように語っている。「フランスの高校では、フランス語、英語の他に、1、2個ほど語学を自発的に学んでいた。そのことが他国への理解へとつながっているのではないかと思う。[…]」このように気づくのであれば、様々な家庭環境や背景を持った生徒が集まってくる公立高校でこそ、複数の外国語を学ぶことができるチャンスの提供をしたいと思うし、また、こどもたちにとって、経済的な心配無しに、フランス語の勉強が出来る環境を整えたいとも思うのである。

(3)フランコフォニーを発見しよう!

一般的な話として、フランスと聞くと、マカロン、エッフェル塔などといった、見た目の華やかさを思い浮かべる人が多いのではないか?(そういうステレオタイプなイメージすら本校の生徒は持ち合わせていないのであるが。)そういったイメージに限定しないものとして、フランス語とその世界をとらえ直したかったので、そして何よりも生徒が楽しむだろうと思い、昨年12月の「フランコフォニーを発見しよう!」(主催:日本におけるフランコフォニー推進会議、日本フランス語教育学会)に参加した。まず、テーマを「フランコフォニーの学校生活」と決めて、自分たちと同じ年頃のリセの生徒を取材するところから始めた。フランス語が六角形のフランスだけで話されているのではないこと、また、彼らの様々な国籍や出身地である、日本、カナダ、チュニジア…を知り、フランコフォニーの世界を体感していく。途中、参加者5人の生徒たちの、東京の会場までの交通費を捻出するのにピンチがあったが、たくさんの方々に助けていただいたおかげで、参加が実現した。このイベントに参加した生徒のひとりは、フランス語学科に大学進学が決まった。私が松原高校で授業を担当してきた4年間で、初めてのフランス語学科への進学者である。今後もこのうれしい変化に期待したい。

(4)仏検

2013年春から、松原高校では学校行事として、準会場で開催している。5級からの実施である。開催のきっかけは、生徒に、「学校でしてくれたら交通費もかからなくて良いのに…。」と言われたことである。もっともなことと思い、学校の先生に相談したところ、「新しい試みでワクワクします。」と快諾してもらえた。日曜日に学校を開けてくれる先生を見つけることはそう簡単ではないと思っていたが、学校行事にすることでその不安は解消された。「生徒のためになること」であれば、教科は関係なく、先生方は力を貸してくださるものだと心強く感じた。昨秋の仏検の朝は寒かった。試験開始の数時間前から会場教室に来て受験勉強をしていた生徒の話によると、当日の担当を引き受けてくれた先生が、「教室は冷え切って寒いだろうから。」と職員室のストーブを入れて会場を暖めてくれたとのこと…。また、卒業生も受験にやって来る。高校卒業後も何らかの形で勉強を続けている姿を見ることは、現役の高校生にとっては、フランス語を続けることが絵空事ではなく、高いレベルの現実のこととして映る。「来年は4級、2年後は3級、または10年後、20年後に2級、1級を受けようね。」という話は最近したばかりである。仏検の日が、フランス語同窓会のようになるかと思うと、仏検を開催したかいがあったというものである。

さいごに。

3月に卒業した3年生たちが、最後のフランス語授業の際、思いがけず「メッセージ」を寄せてくれた(下の写真)。生徒のひとりが、このように書いてきた。「2年間、あほでうるさくて問題児な、えりなを、仏検5級取れるまでのレベルにしてくれてメルシー。」こういうことを言われると、今年もやっぱり仏検受験に向けて、授業をがんばろうと思うのである。